再創世記 ~その特徴は「天使の血筋」に当てはまらない~

タカナデス

文字の大きさ
上 下
6 / 174
第1章

6 サントニ町

しおりを挟む
 
ここ、スリーター公国は自然豊かで農業の盛んな国だ。海にも面している。
国内で自給自足が可能なので他の国からの人の出入りがとても少ないのだとシリウスが言っていた。

そしてこのサントニ町は俺の村からずっと西の方、隣のシメリア公国との境にある。

……そしてなぜか村に入るのに、シリウスが女装をしている。

「…いやなんでだよ!」

『わ。なに~?うるさいな~急に騒がないでよね~』

「いやいや、準備って何なのかと思ったらほんとになんなんだよ!その恰好なに?」

シリウスは少し濁りのある赤い布を頭にかぶり、黒い飾りヒモで留めていて髪の毛を全て覆っていた。そして顔にも鼻あたりまでの同じ色の透ける布を付けている。


『これは北の方に住んでいる人たちの衣装だよ。そこは陽の光が強い砂漠地帯だからこの恰好が普通なんだよ』

「で、なんでそれをお前が付けてるんだ?ここ砂漠でもなんでもないだろうが」

隠されているのにうっすらと透ける顔が一層美人に見えるのだろう。さっきから道行く者、男女問わずシリウスを見ている。

『目立ちたくないから』


   いやいや?
   その恰好の方がよほど目立つのでは?


「ならそれ取れよ」

そう言うとシリウスは馬鹿でも見るような目つきでこちらに視線を送り、そのあと顎で回りを見るよう促して答えた。

『はあ~…周りをよく見なさい。ほら、街の人の髪の色と目の色は?』

俺は促されるまま辺りを見渡して答える。

「…茶色の髪。あ、黒もいる。目の色は…同じく茶色か黒かな?」

シリウスの顔にかかる赤い布で、今彼の瞳の色は茶色に見える。もちろん髪の毛は隠されてるので白金の髪は見えない。そんなに隠したいのか??

『そうだよね。じゃあここで一つ問題です。もしここに、金色の髪の人間が現れたらどうなると思いますか?』


   え、どうなるんだろう…?


「……珍しがって近寄ってくるのか?」


『 不正解。 みんな静かになるんだよ。』





・・・・・・






サントニ町は赤い屋根で統一されており、人の数も多く豊かなところだ。
こんな場所初めてきたから街を見るのが楽しい。

ウキウキしながら歩いていると遠くの方からざわめきが聞こえてた。

「ん?なんだろ?なんかあっちの方騒がしくないか?何かあるのかな?」

『んー…喧嘩だね』

「え、見えるの?」

『見えるし聞こえる。身体強化してるから』


   え、身体強化…って芸で?
   芸ってそんなこともできるのか!
   教えて欲しい!けどその前に…
   見に行こう!けんか初めて見る!


圧倒的野次馬根性でその現場に行ってみると、細見の男が屈強そうな男に胸倉をつかまれていた。細見な男の頬は殴られたのか赤く腫れている。


   うわぁ、いったそう…。


「おら!俺の言うこと聞けねえんなら何されたって文句言えねえよなあ?!ああ?!」

「すいません!!けどこれ以上は本当にもう無理なんです…!お支払いしてもらわないと…!」


   おう…あの細見の方もすごいな…
   あの状況で一歩も引かないのか


そんなことを考えてると、俺の後ろで見ていたシリウスが俺のことを思いきり突き飛ばした。

「なあ?!」

なんで突き飛ばした?!っと言う前に俺は勢いよく前に出て、細見の男に殴り掛かろうとしていた屈強な男に思いっきりタックルをかましてしまった。

そして屈強な男が地面に転がった。


   ああ、オワッタ…


「おい!てめえ!何してくれてんだ、よ!!」

男は今度は俺に狙いを付けたのか、思いっきり振りかぶり殴ろうとしてきた。

けれど……


   ……あれ?これはいける。


この町に行く間に10匹近くの芸獣と戦った。その中には素早いサルのようなものもいた。それに比べたら、全然遅かった。

俺はその男の手を避けて大きくかがみ、そのまま男の腹を2回突く。そしてすぐ男の背後に回り込み首を叩いてみた。

・・・男はゆっくりと倒れ、そのまま意識を離した。

どうしたもんかと思いつつ俺は立っていると、先ほどの細見の男が急いで走りよってきて俺の両手を掴んだ。

「あああ、ありがとう!な、な。旅人だろ??今日の宿はあるか?なければどうかうちに泊まって欲しい!安くするし飯もつけるから!」

『まあ!ありがとうございます。喜んで』

俺が答える前にシリウスが答える。

そして細身の男はもう女装したシリウスの事しか見てない。



   くそっ。俺まんまとシリウスに使われたな…。





しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

魔石と神器の物語 ~アイテムショップの美人姉妹は、史上最強の助っ人です!~

エール
ファンタジー
 古代遺跡群攻略都市「イフカ」を訪れた新進気鋭の若き冒険者(ハンター)、ライナス。  彼が立ち寄った「魔法堂 白銀の翼」は、一風変わったアイテムを扱う魔道具専門店だった。  経営者は若い美人姉妹。  妹は自ら作成したアイテムを冒険の実践にて試用する、才能溢れる魔道具製作者。  そして姉の正体は、特定冒険者と契約を交わし、召喚獣として戦う闇の狂戦士だった。  最高純度の「超魔石」と「充魔石」を体内に埋め込まれた不死属性の彼女は、呪われし武具を纏い、補充用の魔石を求めて戦場に向かう。いつの日か、「人間」に戻ることを夢見て――。

世の中は意外と魔術で何とかなる

ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。 神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。 『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』 平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

(改訂版)帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

黒猫
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

処理中です...