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第1章
6 サントニ町
しおりを挟むここ、スリーター公国は自然豊かで農業の盛んな国だ。海にも面している。
国内で自給自足が可能なので他の国からの人の出入りがとても少ないのだとシリウスが言っていた。
そしてこのサントニ町は俺の村からずっと西の方、隣のシメリア公国との境にある。
……そしてなぜか村に入るのに、シリウスが女装をしている。
「…いやなんでだよ!」
『わ。なに~?うるさいな~急に騒がないでよね~』
「いやいや、準備って何なのかと思ったらほんとになんなんだよ!その恰好なに?」
シリウスは少し濁りのある赤い布を頭にかぶり、黒い飾りヒモで留めていて髪の毛を全て覆っていた。そして顔にも鼻あたりまでの同じ色の透ける布を付けている。
『これは北の方に住んでいる人たちの衣装だよ。そこは陽の光が強い砂漠地帯だからこの恰好が普通なんだよ』
「で、なんでそれをお前が付けてるんだ?ここ砂漠でもなんでもないだろうが」
隠されているのにうっすらと透ける顔が一層美人に見えるのだろう。さっきから道行く者、男女問わずシリウスを見ている。
『目立ちたくないから』
いやいや?
その恰好の方がよほど目立つのでは?
「ならそれ取れよ」
そう言うとシリウスは馬鹿でも見るような目つきでこちらに視線を送り、そのあと顎で回りを見るよう促して答えた。
『はあ~…周りをよく見なさい。ほら、街の人の髪の色と目の色は?』
俺は促されるまま辺りを見渡して答える。
「…茶色の髪。あ、黒もいる。目の色は…同じく茶色か黒かな?」
シリウスの顔にかかる赤い布で、今彼の瞳の色は茶色に見える。もちろん髪の毛は隠されてるので白金の髪は見えない。そんなに隠したいのか??
『そうだよね。じゃあここで一つ問題です。もしここに、金色の髪の人間が現れたらどうなると思いますか?』
え、どうなるんだろう…?
「……珍しがって近寄ってくるのか?」
『 不正解。 みんな静かになるんだよ。』
・・・・・・
サントニ町は赤い屋根で統一されており、人の数も多く豊かなところだ。
こんな場所初めてきたから街を見るのが楽しい。
ウキウキしながら歩いていると遠くの方からざわめきが聞こえてた。
「ん?なんだろ?なんかあっちの方騒がしくないか?何かあるのかな?」
『んー…喧嘩だね』
「え、見えるの?」
『見えるし聞こえる。身体強化してるから』
え、身体強化…って芸で?
芸ってそんなこともできるのか!
教えて欲しい!けどその前に…
見に行こう!けんか初めて見る!
圧倒的野次馬根性でその現場に行ってみると、細見の男が屈強そうな男に胸倉をつかまれていた。細見な男の頬は殴られたのか赤く腫れている。
うわぁ、いったそう…。
「おら!俺の言うこと聞けねえんなら何されたって文句言えねえよなあ?!ああ?!」
「すいません!!けどこれ以上は本当にもう無理なんです…!お支払いしてもらわないと…!」
おう…あの細見の方もすごいな…
あの状況で一歩も引かないのか
そんなことを考えてると、俺の後ろで見ていたシリウスが俺のことを思いきり突き飛ばした。
「なあ?!」
なんで突き飛ばした?!っと言う前に俺は勢いよく前に出て、細見の男に殴り掛かろうとしていた屈強な男に思いっきりタックルをかましてしまった。
そして屈強な男が地面に転がった。
ああ、オワッタ…
「おい!てめえ!何してくれてんだ、よ!!」
男は今度は俺に狙いを付けたのか、思いっきり振りかぶり殴ろうとしてきた。
けれど……
……あれ?これはいける。
この町に行く間に10匹近くの芸獣と戦った。その中には素早いサルのようなものもいた。それに比べたら、全然遅かった。
俺はその男の手を避けて大きくかがみ、そのまま男の腹を2回突く。そしてすぐ男の背後に回り込み首を叩いてみた。
・・・男はゆっくりと倒れ、そのまま意識を離した。
どうしたもんかと思いつつ俺は立っていると、先ほどの細見の男が急いで走りよってきて俺の両手を掴んだ。
「あああ、ありがとう!な、な。旅人だろ??今日の宿はあるか?なければどうかうちに泊まって欲しい!安くするし飯もつけるから!」
『まあ!ありがとうございます。喜んで』
俺が答える前にシリウスが答える。
そして細身の男はもう女装したシリウスの事しか見てない。
くそっ。俺まんまとシリウスに使われたな…。
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