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第05話 火熾し

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 住居が決まれば、次は火だ。

 幸いなことに、最近雨が降った形跡はない。落ちている枝や枯れ葉は乾燥している。

 これなら、摩擦を使った原始的な火おこしもできそうだ。

 火熾しで一番大事なのは乾燥していること。意外と知られていないが、木の質も大事だ。

 摩擦で温度を上げるという性質上、適度に抵抗がある木がいい。スカスカだったり、棒が回転しないほど抵抗が強いと火をおこしづらい。

 棒を擦るときは、回転速度ではなく摩擦を意識する。上から押し付けるように棒を回転させていく。

 動画サイトなどで、摩擦を使い一分も立たずに火を熾|《おこ》している動画を見たことがある。

 一分で火おこしができるのは驚異的なことだ。

 ディス○バリーチャンネルのサバイバル番組などでは、一日掛けても火がおこせないこともよくあるからだ。

 ただ、それらのサバイバル番組と違い、乾燥した空気と適切な木材を適切に加工しているため素早く火熾しができる、といった理由がある。

 逆に言えば、適切な道具で適切な手順を踏めば、意外と簡単に火はおこせるということだ。

 熱帯雨林など、湿度の高い場所では難易度が高い。下手をすれば一日中棒をこすっても、火をおこせないこともある。

 ちょっとしたコツを知っているかでも、火おこしの難易度が変わってくる。

 受け口にひと摘み砂を入れる。松屋になどの脂を着火剤だけではなく、皮膚の保護や摩擦力を上げるため手に塗る。

 空気の通り道を意識する。道具があれば、受け口に小さな穴を空け、地面を掘ることで空気の流れを作ることもできる。


 摩擦で火種を作った後も油断はできない。小さな火種はすぐに消えてしまう。火種から火を大きくする火口ほぐちも非常に重要だ。

 しっかり乾燥しているのはもちろんのこと、火が付きやすい性質も重要だ。

 具体的には、ふわふわもこもこしていて空気を多く含んでいそうな感じと言えばわかりやすいだろうか。

 サバイバルでは麻ひもをナイフで解いたものを火口として使ったり、古くはヨモギの裏側の繊維を集めたもぐさと呼ばれるものを使用していた。

 ここにそんな気の利いたものはないので、しっかり乾燥した枯れ葉を解して火口にする。

 枯れ葉を両手ですり潰すように擦り合わせ、なるべく細かくふんわりに仕上げることをイメージしながら火口を作っていく。

 最後に道具やポジションをもう一度確認。なるべく水平な場所を探し、体重を掛けやすいポジションに道具と自分をセット。
 
 後は摩擦力を意識してひたすら擦るだけだ。

 今回は幸運なことに、手の皮がボロボロになるぐらいで火を熾すことができた。日が沈み、暗くなる前に火を熾せてラッキーだったぜ。

 異世界の森で暗闇に包まれるなんて、想像しただけでもチビリそうなほど怖いからなぁ。

 流石に体力を使った。もうすぐ日も暮れる。

 腰蓑と拠点を燻したら、後は拠点でゆっくり休むとしよう。
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