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王子に突撃した姉のもとへ突撃してくる弟
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話がまとまったそのとき、エルが王家の秘薬らしき小瓶を持って戻ってきた。
しかしその背後にいた人物を見て、ロレーヌは目を丸くする。
「姉さん!」
「ジェント!?あなたどうして……!」
護衛に囲まれてやってきた弟は、黒い正装を纏っているが、痩せた体には少々大きすぎたようで不格好であった。だが、生来の美しさに儚げな雰囲気が加わったことで庇護欲をそそり、目撃した侍女が立ち眩みを覚えるほどの輝きを放っている。
エルはその鋭い目をリオネルに向け、状況を説明した。
「どうしても殿下に目通りを、姉を返してほしいと訴えていたそうで、何か事情があるのではと特別に連れてまいりました」
姉が自分のために身を投げ出そうとしていることを知ったジェントは、弱った体でここまでやってきたのだという。
リオネルは彼をにこやかに迎え、「たった今ロレーヌが婚約者に決まったところだ」と端的に述べた。
「なっ……!?」
ジェントは驚愕で顔を歪め、すぐさま苦しそうに胸を抑えた。
「ジェント!発作が!」
駆け寄って彼を支えた姉を制し、ジェントは呼吸を整えてからリオネルに向き直った。
そして、敬意と謝罪の念を示すために片膝をついて頭を垂れる。
「無礼を承知で申し上げます!此度のこと……、姉との婚約はなかったことにしていただきたい!」
「ジェント!?あなた何をっ」
ロレーヌも弟のそばに跪き、その顔を覗き込む。
「姉は私のために!ただ私のために思い余ってこのようなことを……!罰は私が受けます故、どうか浅はかな姉のことはご容赦ください!」
しんと静まり返る部屋。
今にも倒れそうなジェントから必死で訴えかけられ、リオネルは気まずそうにエルを見た。
「この状況って、私が悪者?」
「まぁそうですよね。どう見ても美男子を虐める権力者です」
「おい」
「ほら、早く話を進めてください。そろそろ昼食の休憩です」
「……おまえは本当に自分のペースを乱さないな」
軽くため息をついたリオネルは、ジェントの前に同じように片膝をついた。
「殿下!何を……!」
驚いて目を瞠る彼に向かって、リオネルは安心させるよう笑いかける。
「君は誤解している。確かにロレーヌは秘薬が欲しくて婚約者候補になろうとしたが、そんな彼女を気に入ったのは私自身だ。こんなにまっすぐな女性はいないと思うよ。裏表がない方が、何かとこちらとしても都合が……ってこちらの都合は関係ないか。ロレーヌが秘薬を求めたのは、ただのきっかけに過ぎないよ。だからお咎めなし」
「は?いや、しかしそんなわけには……」
「私の言うことに逆らうの?」
「まさか!」
わざと傲慢な物言いをしたリオネルは、まるで子どもをなだめるかのように言った。
「わかったら、君は城内の医者に診てもらうんだ。王家の秘薬がどこまで作用するかはわからないが、こちらとしても君がどのように回復するのか興味がある。医師は探求心が異常なタイプなんだが、そこはもう薬をもらう対価として受け入れてくれ」
リオネルはジェントの返事を待たずに、近くにいた護衛に目を向ける。
彼らはジェントに立ち上がるよう促し、彼を連れて医師のいるところへ連れて行こうとした。
「ジェント!」
ロレーヌは慌てて立ち上がり、しかし勝手にこの場を去るわけにいかないとリオネルを振り返る。
「大丈夫。後は医者とエルに任せて。エル、王家の秘薬について彼に説明しておいてね」
「かしこまりました」
ジェントはリオネルに対し「ありがとうございます」と小さく言った。
しかしロレーヌをちらりと見たその目は、まだ納得していないようで不満が見て取れる。
「あとでね、姉さん」
「え、ええ……」
勝手なことをしたと怒っている、ロレーヌは弟を見てそう思った。
扉が閉まり、再びリオネルとの私的な時間に戻ったロレーヌは、おそるおそる王子に視線を向けた。
「さぁ、これからの話を詰めようか」
飄々とした態度のリオネルは、元の冴えないが優しい男にすっかり戻っている。
(さっきまでの殿下とどちらが本当の姿なのかしら……?)
垣間見える二面性に、ロレーヌは混乱していた。
が、どちらが本性にせよ、自分たちにとって敵ではないことには違いない。
二人はテーブルに着き、侍女が淹れなおしたお茶を口にして話を再開するのだった。
しかしその背後にいた人物を見て、ロレーヌは目を丸くする。
「姉さん!」
「ジェント!?あなたどうして……!」
護衛に囲まれてやってきた弟は、黒い正装を纏っているが、痩せた体には少々大きすぎたようで不格好であった。だが、生来の美しさに儚げな雰囲気が加わったことで庇護欲をそそり、目撃した侍女が立ち眩みを覚えるほどの輝きを放っている。
エルはその鋭い目をリオネルに向け、状況を説明した。
「どうしても殿下に目通りを、姉を返してほしいと訴えていたそうで、何か事情があるのではと特別に連れてまいりました」
姉が自分のために身を投げ出そうとしていることを知ったジェントは、弱った体でここまでやってきたのだという。
リオネルは彼をにこやかに迎え、「たった今ロレーヌが婚約者に決まったところだ」と端的に述べた。
「なっ……!?」
ジェントは驚愕で顔を歪め、すぐさま苦しそうに胸を抑えた。
「ジェント!発作が!」
駆け寄って彼を支えた姉を制し、ジェントは呼吸を整えてからリオネルに向き直った。
そして、敬意と謝罪の念を示すために片膝をついて頭を垂れる。
「無礼を承知で申し上げます!此度のこと……、姉との婚約はなかったことにしていただきたい!」
「ジェント!?あなた何をっ」
ロレーヌも弟のそばに跪き、その顔を覗き込む。
「姉は私のために!ただ私のために思い余ってこのようなことを……!罰は私が受けます故、どうか浅はかな姉のことはご容赦ください!」
しんと静まり返る部屋。
今にも倒れそうなジェントから必死で訴えかけられ、リオネルは気まずそうにエルを見た。
「この状況って、私が悪者?」
「まぁそうですよね。どう見ても美男子を虐める権力者です」
「おい」
「ほら、早く話を進めてください。そろそろ昼食の休憩です」
「……おまえは本当に自分のペースを乱さないな」
軽くため息をついたリオネルは、ジェントの前に同じように片膝をついた。
「殿下!何を……!」
驚いて目を瞠る彼に向かって、リオネルは安心させるよう笑いかける。
「君は誤解している。確かにロレーヌは秘薬が欲しくて婚約者候補になろうとしたが、そんな彼女を気に入ったのは私自身だ。こんなにまっすぐな女性はいないと思うよ。裏表がない方が、何かとこちらとしても都合が……ってこちらの都合は関係ないか。ロレーヌが秘薬を求めたのは、ただのきっかけに過ぎないよ。だからお咎めなし」
「は?いや、しかしそんなわけには……」
「私の言うことに逆らうの?」
「まさか!」
わざと傲慢な物言いをしたリオネルは、まるで子どもをなだめるかのように言った。
「わかったら、君は城内の医者に診てもらうんだ。王家の秘薬がどこまで作用するかはわからないが、こちらとしても君がどのように回復するのか興味がある。医師は探求心が異常なタイプなんだが、そこはもう薬をもらう対価として受け入れてくれ」
リオネルはジェントの返事を待たずに、近くにいた護衛に目を向ける。
彼らはジェントに立ち上がるよう促し、彼を連れて医師のいるところへ連れて行こうとした。
「ジェント!」
ロレーヌは慌てて立ち上がり、しかし勝手にこの場を去るわけにいかないとリオネルを振り返る。
「大丈夫。後は医者とエルに任せて。エル、王家の秘薬について彼に説明しておいてね」
「かしこまりました」
ジェントはリオネルに対し「ありがとうございます」と小さく言った。
しかしロレーヌをちらりと見たその目は、まだ納得していないようで不満が見て取れる。
「あとでね、姉さん」
「え、ええ……」
勝手なことをしたと怒っている、ロレーヌは弟を見てそう思った。
扉が閉まり、再びリオネルとの私的な時間に戻ったロレーヌは、おそるおそる王子に視線を向けた。
「さぁ、これからの話を詰めようか」
飄々とした態度のリオネルは、元の冴えないが優しい男にすっかり戻っている。
(さっきまでの殿下とどちらが本当の姿なのかしら……?)
垣間見える二面性に、ロレーヌは混乱していた。
が、どちらが本性にせよ、自分たちにとって敵ではないことには違いない。
二人はテーブルに着き、侍女が淹れなおしたお茶を口にして話を再開するのだった。
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