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255.全員幼馴染
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宮城全体に呪符を刻み始めた。
「ふふふ。名付けて、積層式立体呪符!」
と、ドヤ顔をする俺にリーファが笑った。
「勇吾、マレビト様っぽい!」
ダーシャン史上で最後となる、4代マレビトの俺が起こした呪術のイノベーションは呪符の立体化だった。1200人を転生させる膨大な呪力の制御に、平面の呪符では対応し切れなかったのだ。
ちなみに積層式に深い意味はない。ただの中二病魂だ。
立体呪符に刻む呪言と呪紋は、呪学の権威たるリーファが慎重に検証を重ねている。思わぬ働きが生じてしまわないように、調整と修正が続く。なにせ、この世界の理は脆弱で冗長でバグだらけだ。
あと、大きな方針は決まったけど、細かなところの話し合いは続いている。
「転生後も側室に……」
という控え目な要望に、俺とリーファは一番頭を悩ませた。
側室なんてあり得ないという、現代日本の価値観が上手く伝わらない。ここまで来て今さら、リーファが俺を独り占めしたいだけだと誤解されるのも困る。どうせなら気持ち良く転生してほしい。
なにより、妙な約束をして、日本に生まれ直した後で新しい人生の呪いになってしまうことが怖い。新しい恋に出会ったとき、屈託なくときめいてほしい。ゼロ歳から始まる日本ライフを謳歌してもらいたい。
腑に落ちない顔をする側室たちと困惑するリーファを見て、俺はパンッと膝を打った。
「分かった! こうしよう。向こうで18歳になっても、まだ気持ちが変わらなかったら俺を訪ねて来て」
「勇吾……」
「皆んな、俺をずっと支えてくれた訳だし、18年も想い続けてくれたなら、俺も腹をくくって責任を取るよ」
「よし」
と、アスマが笑った。
「その辺りで手を打とう」
「だけど、リーファも転生して18年かけて幼馴染の俺と結ばれた訳だし、皆んなにも素敵な幼馴染が側にいるかもしれないよ?」
「勇吾……」
シーシがニシシと笑った。
「マレビト様が自分で自分を素敵って言ってるのだ」
「あれ? 素敵じゃなかった?」
「ニシッ。マレビト様も図太くなったのだ。さすがは、ボクを誑かした男なのだ!」
「俺は希望ヶ辻って街に住んでる。ずっとそこにいるよ」
「いい名前の街ですね」
と、シアユンさんが微笑んだ。
召喚からちょうど1年という日に、ヤーモンとエジャが生まれたばかりの赤ん坊を抱いて姿を見せてくれた。
「すぐにお別れになりますけど、顔を見られて良かったです」
と、エジャが微笑んだ。
「残された時間、精一杯、愛を注いで育てます」
人獣のような怖ろしい目に、この子や、そのまた子どもを遭わせたくないと覚悟を決めているエジャの笑顔に、リーファの気持ちが救われた。
ひと月ほどして、里帰りチームの蒸気自動車が続々とジーウォに戻ってきた。
ただ、シアユンさんやナフィーサなど、無人になった故郷は見たくないと言って、ジーウォに止まった住民も多い。
全員がジーウォに帰還し、東の山奥から老師も揃った晩から、明るく輝く満月の下で惜別の宴を開いた。この世界の全人類が集結した宴は多いに盛り上がり、皆で別れを惜しんだ。
4日続いた宴がお開きとなり、転生が始まる。
さすがに1200人全員を一度に転生させることは出来ず、概ね120人ずつ10日に渡って呪術が行使される。
生まれる場所は日本のどこか、までしか指定できなかったけど、皆の魂には呪力でマーキングが施される。日本ですれ違えばお互いにピンッと来るはずだ。
つまり、永遠の別れではない。
「クゥアイと同い年にねぇ……」
と、嬉しそうに笑ったお祖母さんも転生していった。全員がほぼ同じ時期に生まれるはずだ。
「全員、幼馴染みたいなもんだ」
と、ミオンさんが笑うと、フーチャオさんが後ろから抱き締めた。
「また、俺の嫁っ子になってくれよ」
「そりゃ、あんたがまた私を惚れさせてくれるかどうかだろ?」
「厳しいな」
「もっともっといい男になって、迎えに来てくれるって信じてるよ」
召喚に術者の命が必要だったように、転生には本人の身体を用いた。つまり、この世界では姿を消し、魂だけが生まれ変わる。
望楼に並んで立ったフーチャオさんとミオンさんが笑顔のまま、白い光に包まれて姿を消した。
「儂に下された3つ目の託宣は『いずれ生まれ変わる』であった」
と、ウンランさんも笑顔で姿を消した。
そして、世界に残るのは俺とリーファと22人の乙女たちだけになった――。
「ふふふ。名付けて、積層式立体呪符!」
と、ドヤ顔をする俺にリーファが笑った。
「勇吾、マレビト様っぽい!」
ダーシャン史上で最後となる、4代マレビトの俺が起こした呪術のイノベーションは呪符の立体化だった。1200人を転生させる膨大な呪力の制御に、平面の呪符では対応し切れなかったのだ。
ちなみに積層式に深い意味はない。ただの中二病魂だ。
立体呪符に刻む呪言と呪紋は、呪学の権威たるリーファが慎重に検証を重ねている。思わぬ働きが生じてしまわないように、調整と修正が続く。なにせ、この世界の理は脆弱で冗長でバグだらけだ。
あと、大きな方針は決まったけど、細かなところの話し合いは続いている。
「転生後も側室に……」
という控え目な要望に、俺とリーファは一番頭を悩ませた。
側室なんてあり得ないという、現代日本の価値観が上手く伝わらない。ここまで来て今さら、リーファが俺を独り占めしたいだけだと誤解されるのも困る。どうせなら気持ち良く転生してほしい。
なにより、妙な約束をして、日本に生まれ直した後で新しい人生の呪いになってしまうことが怖い。新しい恋に出会ったとき、屈託なくときめいてほしい。ゼロ歳から始まる日本ライフを謳歌してもらいたい。
腑に落ちない顔をする側室たちと困惑するリーファを見て、俺はパンッと膝を打った。
「分かった! こうしよう。向こうで18歳になっても、まだ気持ちが変わらなかったら俺を訪ねて来て」
「勇吾……」
「皆んな、俺をずっと支えてくれた訳だし、18年も想い続けてくれたなら、俺も腹をくくって責任を取るよ」
「よし」
と、アスマが笑った。
「その辺りで手を打とう」
「だけど、リーファも転生して18年かけて幼馴染の俺と結ばれた訳だし、皆んなにも素敵な幼馴染が側にいるかもしれないよ?」
「勇吾……」
シーシがニシシと笑った。
「マレビト様が自分で自分を素敵って言ってるのだ」
「あれ? 素敵じゃなかった?」
「ニシッ。マレビト様も図太くなったのだ。さすがは、ボクを誑かした男なのだ!」
「俺は希望ヶ辻って街に住んでる。ずっとそこにいるよ」
「いい名前の街ですね」
と、シアユンさんが微笑んだ。
召喚からちょうど1年という日に、ヤーモンとエジャが生まれたばかりの赤ん坊を抱いて姿を見せてくれた。
「すぐにお別れになりますけど、顔を見られて良かったです」
と、エジャが微笑んだ。
「残された時間、精一杯、愛を注いで育てます」
人獣のような怖ろしい目に、この子や、そのまた子どもを遭わせたくないと覚悟を決めているエジャの笑顔に、リーファの気持ちが救われた。
ひと月ほどして、里帰りチームの蒸気自動車が続々とジーウォに戻ってきた。
ただ、シアユンさんやナフィーサなど、無人になった故郷は見たくないと言って、ジーウォに止まった住民も多い。
全員がジーウォに帰還し、東の山奥から老師も揃った晩から、明るく輝く満月の下で惜別の宴を開いた。この世界の全人類が集結した宴は多いに盛り上がり、皆で別れを惜しんだ。
4日続いた宴がお開きとなり、転生が始まる。
さすがに1200人全員を一度に転生させることは出来ず、概ね120人ずつ10日に渡って呪術が行使される。
生まれる場所は日本のどこか、までしか指定できなかったけど、皆の魂には呪力でマーキングが施される。日本ですれ違えばお互いにピンッと来るはずだ。
つまり、永遠の別れではない。
「クゥアイと同い年にねぇ……」
と、嬉しそうに笑ったお祖母さんも転生していった。全員がほぼ同じ時期に生まれるはずだ。
「全員、幼馴染みたいなもんだ」
と、ミオンさんが笑うと、フーチャオさんが後ろから抱き締めた。
「また、俺の嫁っ子になってくれよ」
「そりゃ、あんたがまた私を惚れさせてくれるかどうかだろ?」
「厳しいな」
「もっともっといい男になって、迎えに来てくれるって信じてるよ」
召喚に術者の命が必要だったように、転生には本人の身体を用いた。つまり、この世界では姿を消し、魂だけが生まれ変わる。
望楼に並んで立ったフーチャオさんとミオンさんが笑顔のまま、白い光に包まれて姿を消した。
「儂に下された3つ目の託宣は『いずれ生まれ変わる』であった」
と、ウンランさんも笑顔で姿を消した。
そして、世界に残るのは俺とリーファと22人の乙女たちだけになった――。
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