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236.霊縁(3)ユーフォン

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「あ、そうか」

と、なにかに気付いたようにリーファはするりと寝台を降りて、裸のままで机に向かった。

「何をメモしてるの?」

「んー? 呪言じゅごんの解釈……」

「解釈?」

「そう。ことわりが解き明かされても、それを呪術じゅじゅつとして顕現けんげんするには意味を解釈しないとね……、使えないの……」

リーファはカリカリとメモを続けている。シーシに万年筆を作らせてたリーファは、やっぱり王族らしく人使いが荒いと思う。

ペンを置いたリーファは、ニコッとドヤ顔をした。

「これでも呪学じゅがく権威けんいだったのよ?」

「そんなのあるんだ」

「3代マレビト様の時に飛躍的に発展したの」

引きもりの成果か……。

昨夜はリーファと、たっぷりた。

ハッキリとは言わないけど、1人と霊縁れいえんを結んだら1日はリーファと過ごすのをルーティンにするつもりみたいだ。

部屋に戻ると、ユーフォンさんが俺の寝室を飾り付けていた。

「しばらくお世話になりますし」

と、ファンシーになった寝室の真ん中に立ったユーフォンさんが、だいだい色のビキニ姿でケラケラ笑ってた。

「お色気大作戦ですか?」

なつかしいでしょう?」

と、ほほを赤くした。

「ユーフォンさんって、実はずっと自分を殺してましたよね?」

「え――っ? 今さらそんなこと言うのはズルいですよ」

「でも、すくわれたなあ……。ユーフォンさんの笑顔には」

「もう……。私が口説くどくんですよ……?」

ビキニ姿で出歩く訳にもいかず、ベッドに隣り合って腰掛けた。

「だって、泣いたり怒ったりしてても、何も変わらないじゃないですか……。マレビト様は、ちっともあきらめないし」

「ふふっ。そうですね」

「なんにもあきらめないし。ホント、頑固がんこですよね」

と、ユーフォンさんは俺の肩に頭を乗せた。

「普通はあきらめた方が楽なんですよ?」

「あ――、俺は違うかなぁ」

「ホント、頑固がんこ

「すみません」

呆れたように言うユーフォンさんに苦笑いしてしまった。

「こっちも……、あきらめられなくなるじゃないですか……」

「はい……」

――私たちもあきらめずに出来ることを頑張りたいんです。

と、ビキニ姿で語りかけてくれたのも、この部屋だった。

呪力チートなんかじゃなくて、俺の行動や人格を認めてくれてるんだって胸が熱くなったのが昨日のようだ。あれがなければ、どこかで心が折れていたかもしれない。

ユーフォンさんはユーフォンさんで、必死に歯を食いしばって前だけ向いてくれてた。

「ねぇ、マレビト様……」

「なんです?」

「おっぱい揉んでくださいよ」

「ええっ?」

「もう、我慢しなくていいですよね?」

「そ、そうですね……」

そっと、ふくらみに手を当てた。

「ふふっ。こんな感じだったんだぁ。回廊かいろう戦の時に、揉んでもらってるたち、いいなあって思ってたんです」

と、ユーフォンさんが笑うと、やっぱり華が舞い散るような明るさがある。

そして、俺の胸に顔をうずめた。

「怖かったなあ……」

「そうですね」

「マレビト様のせいですからね? ちゃっちゃと私に手を出して、パパッと呪力じゅりょくでやっつけてくれたら良かったのに……」

「ホントですね」

「ウソです。好きな人をあきらめない、マレビト様が……、好きでした」

「はい……」

「その相手がリーファ姫で、死ぬほど嬉しかったです」

「ありがとうございます……」

側室そくしつにしてもらえて、嬉しくて死ぬかと思いました」

「はい……」

「はあ……」

と、ユーフォンさんは大きく息を吐いた。

「もういはありません」

「えっ?」

「私のおもいを聞いてもらえて、いはないです……」

「はい」

「……ウソです」

と、顔を上げて俺を見詰みつめた。

「まだ、怖いです」

「なにがですか?」

「私は選んでもらえないんじゃないか、私の純潔はじめてもらってもらえないんじゃないかって、怖いです……」

そっと抱き締めた。

「もう、ズルいなぁ」

「お返しです」

「やられました」

もらってくださいよお」

そのまま、ゆっくりと2人でベッドに倒れて、無事、霊縁れいえんが結ばれた――。

視界では紋様もんようの輪がまた一つ増えてうごめいている。

「せっかく飾り付けたのに」

と、俺の肩でユーフォンさんが笑った。乗ってるふくらみは柔らかくて、まだ熱い。

「なんか、すみません」

「マレビト様がチョロいせいですよ?」

「もう1日くらい……」

「いいえ、次は私の部屋で待ってます。側室そくしつですから。また……、選んでくださいね」

ユーフォンさんがいつもの華をき散らした。

翌日はまた、大浴場ハーレム風呂んなからむにゅむにゅもらった。

――これは、お祝いしてる?

と、気が付くと急に気恥ずかしさがみ上げてきた。

「マレビト様は、それでいいのだ」

と、シーシが耳元でささやいた――。
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