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220.里佳の事情⑥
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勇吾との4回目の交信を終えて、私はポワポワした気持ちになっていた。
もう!
……どうしても純潔は私がいいなんて。
私だって……、そうだけど……。
顔がニマニマするのを抑えられないまま、布団に入った。
考えてみれば、勇吾はジーウォでも相当に子づくりを迫られてきたはずだ。その誘惑を毅然と断って、私への愛を貫いてくれていたのだ。
私の彼氏は、なんと男前なのだ!!!
勇吾が私だけに向けてくれる愛の深さに、身体の芯から嬉しくなって、なかなか寝付くことが出来ない。
シアユン、ツイファ、ユーフォン、たしかミンリンも……。思い出せる純潔の乙女たちは皆、美しい。彼女たちもダーシャンの臣民の務めとして、勇吾に身体を捧げようとしたはずだ。
でも、私が良かったってぇ!?
一晩中、布団の中で身悶えして過ごしてしまった。
寝不足のまま起きて、私は引っ越しの荷造りを始めた。この先どうなるかはともかく、やるべきことはやっておかないと……。
そして、深夜。5回目の交信が来た。
興奮気味の勇吾の口からは思いも掛けない言葉が飛び出し、私は思わず聞き返してしまった。
「だから、3代マレビトが発見されたんだよ!」
「ど、どういうこと……?」
3代マレビト生存説は私も耳にしたことがあった。ただの伝説だと思ってたけど……。
「老師さんは山奥で見付かって、それにも色々あったんだけど、とにかくジーウォにお招き出来たんだ」
「うん」
「それで、秘かに事情を打ち明けて、まずは召喚の呪符や眠ってるリーファ姫を見てもらったんだ」
「うん、それでそれで」
「それは、リーファ姫の呪術が高度過ぎて自分には分からないって言われちゃったんだけど」
……師匠を超えていたか、私。
「生存してる他の呪術師がいないか探そうってことになって、老師が【探知】の呪術を使ってくれたんだ」
「そっか!」
「国中を隈なく探知するのに7日くらいかかったんだけど、偶々、3代マレビトの気配にヒットしたんだ!」
「スゴいね……、勇吾……」
「いや、スゴいのは老師さんだよ!」
「ううん。勇吾の情熱がなかったら、こんなこと起きなかったよ……」
純潔は、どうしても私がいいという情熱だ。なんて言うか、性欲ではない。性欲を満たすためなら、今の勇吾は、よりどりみどりの筈だ。
そうかな? なんて、照れ臭そうに笑ってる勇吾。
早く会いたい……。
「だけど、もうジーウォは完全に雪に埋もれててさ」
「あ、そっか」
「だから、春を待って3代マレビトを探しに行くよ。出発は次の次の交信の頃になるかなあ?」
「そうか。ジーウォの冬は長いもんね。大丈夫? だいぶ寒いんじゃない?」
「寒いけど、リーファ姫……、って里佳か。里佳の残してくれた熱の呪符がいい仕事してくれてるんだ」
「そっか。私の身体、生きてるんだもんね」
「シーシがパイプを作ってくれて、お湯を通して床暖房にしたり、畑に雪が積もらないようにしたり」
「うわ。あの娘、やるわね」
「里佳も帰ったら、褒めてあげてよ。こっちの人ってあまり人のこと褒めないだろ? だから、すっごく喜んでくれるよ」
「そうか。分かった」
「大好きなリーファ姫に褒められたら、すごく喜ぶと思うよ」
勇吾がどうやってジーウォの人々の心を開かせていったのか、その一端を見た気がする。お世辞じゃなくて、心から他人のことを賞賛出来る人だ。
「スゴいね。勇吾は」
そんな勇吾は、私が褒めてあげたい。もちろん、心からの賞賛だ。本当に私の彼氏はスゴい男だ。
5回目の交信は途絶え、夜の静けさに包まれた。
私はスマホを手に取り、電話をかけた。
「あ、もしもし。佐藤さんですか? 私です、里佳です。夜遅くにすみません……。ちょっとご相談があって……」
もう!
……どうしても純潔は私がいいなんて。
私だって……、そうだけど……。
顔がニマニマするのを抑えられないまま、布団に入った。
考えてみれば、勇吾はジーウォでも相当に子づくりを迫られてきたはずだ。その誘惑を毅然と断って、私への愛を貫いてくれていたのだ。
私の彼氏は、なんと男前なのだ!!!
勇吾が私だけに向けてくれる愛の深さに、身体の芯から嬉しくなって、なかなか寝付くことが出来ない。
シアユン、ツイファ、ユーフォン、たしかミンリンも……。思い出せる純潔の乙女たちは皆、美しい。彼女たちもダーシャンの臣民の務めとして、勇吾に身体を捧げようとしたはずだ。
でも、私が良かったってぇ!?
一晩中、布団の中で身悶えして過ごしてしまった。
寝不足のまま起きて、私は引っ越しの荷造りを始めた。この先どうなるかはともかく、やるべきことはやっておかないと……。
そして、深夜。5回目の交信が来た。
興奮気味の勇吾の口からは思いも掛けない言葉が飛び出し、私は思わず聞き返してしまった。
「だから、3代マレビトが発見されたんだよ!」
「ど、どういうこと……?」
3代マレビト生存説は私も耳にしたことがあった。ただの伝説だと思ってたけど……。
「老師さんは山奥で見付かって、それにも色々あったんだけど、とにかくジーウォにお招き出来たんだ」
「うん」
「それで、秘かに事情を打ち明けて、まずは召喚の呪符や眠ってるリーファ姫を見てもらったんだ」
「うん、それでそれで」
「それは、リーファ姫の呪術が高度過ぎて自分には分からないって言われちゃったんだけど」
……師匠を超えていたか、私。
「生存してる他の呪術師がいないか探そうってことになって、老師が【探知】の呪術を使ってくれたんだ」
「そっか!」
「国中を隈なく探知するのに7日くらいかかったんだけど、偶々、3代マレビトの気配にヒットしたんだ!」
「スゴいね……、勇吾……」
「いや、スゴいのは老師さんだよ!」
「ううん。勇吾の情熱がなかったら、こんなこと起きなかったよ……」
純潔は、どうしても私がいいという情熱だ。なんて言うか、性欲ではない。性欲を満たすためなら、今の勇吾は、よりどりみどりの筈だ。
そうかな? なんて、照れ臭そうに笑ってる勇吾。
早く会いたい……。
「だけど、もうジーウォは完全に雪に埋もれててさ」
「あ、そっか」
「だから、春を待って3代マレビトを探しに行くよ。出発は次の次の交信の頃になるかなあ?」
「そうか。ジーウォの冬は長いもんね。大丈夫? だいぶ寒いんじゃない?」
「寒いけど、リーファ姫……、って里佳か。里佳の残してくれた熱の呪符がいい仕事してくれてるんだ」
「そっか。私の身体、生きてるんだもんね」
「シーシがパイプを作ってくれて、お湯を通して床暖房にしたり、畑に雪が積もらないようにしたり」
「うわ。あの娘、やるわね」
「里佳も帰ったら、褒めてあげてよ。こっちの人ってあまり人のこと褒めないだろ? だから、すっごく喜んでくれるよ」
「そうか。分かった」
「大好きなリーファ姫に褒められたら、すごく喜ぶと思うよ」
勇吾がどうやってジーウォの人々の心を開かせていったのか、その一端を見た気がする。お世辞じゃなくて、心から他人のことを賞賛出来る人だ。
「スゴいね。勇吾は」
そんな勇吾は、私が褒めてあげたい。もちろん、心からの賞賛だ。本当に私の彼氏はスゴい男だ。
5回目の交信は途絶え、夜の静けさに包まれた。
私はスマホを手に取り、電話をかけた。
「あ、もしもし。佐藤さんですか? 私です、里佳です。夜遅くにすみません……。ちょっとご相談があって……」
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