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196.持ち直し大浴場(2)

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「アスマの馬に乗せてもらって、一緒に見に行こうよ!」

――むにゅん(背中/下)。

「わ、私の馬でか……?」

――むにんっ(左腕/下)。

「あれ? ダメだった?」

「いや、そんなことはない……。我があるじがイヤでなければ……」

と、アスマが俺の顔をチラッとうかがった。

「イヤじゃないよ」

あのカッコいい黒衣こくいの女騎士の馬に乗せてもらって草原をける。後ろで、必死にしがみついてる自分まで想像出来る。

「むしろ、楽しみだ」

メイファンが「ひひっ!」と、笑った。

「実は、私とミンユーも馬に乗れるんだ」

「なんと」と、アスマが嬉しげに驚いた。

「お父さんがリヴァントにいた頃に馬の乗り方を教えてもらってたんだって。だからウチら姉妹も小さい頃から、こっそり教えてもらってたの」

ユーフォンさんが右腕をまま、微笑ほほえんだ。

「いいですね! 私たちも馬車で付いて行きます!」

身体のしんに力がもどるのを感じたと同時に、あわだらけで感触も急速に生々しく感じられて、気恥きはずかしさがげてきた。

――むにゅん(背中/上)。

「アスマは、どこかマレビト様に見せたい場所はない?」

と、メイファン。

――むにんっ(左腕/上)。

「そうだな。リヴァントの北辺ほくへん氷山ひょうざんをくり抜いて作った『こおり宮殿きゅうでん』というものがある」

と、アスマ。

――ふにゅん(右腕/上)。

「うわっ。想像するだけで素敵じゃないですか!」

と、ユーフォンさん。

すっかり日常になってしまってたけど、改めてすごい状況シチュエーションではある。3人の女子が泡だらけのふくらみを俺の身体に押し当てて滑らせてる。

自分が一気に赤面してしまったのが分かって、余計に気恥ずかしい。

「アスマ……」

と、話しかけた。

「なんであろうか……」

「俺にも、馬の乗り方を教えてくれない?」

「そ、それは、喜んで……!」

メイファンがまた「ひひっ!」と笑った。

「いいねいいね! さっさと人獣じんじゅうやっつけて、んなで旅しよう! ユーフォン様は? どこかマレビト様を連れて行きたいところないですか?」

「そうねぇ。私は王都の庭園ていえんをご覧いただきたいですね」

「へえ! スゴい綺麗きれいそう!」

「ダーシャン王国のぜいくしてつくられた庭園です。すべて見て回るのに10日かかると言われているんですよ」

「それは、スゴいな」

と、アスマも感嘆かんたんの声を上げた。

「アスマ殿にも見ていただきたいですわ」

「いいのか? 私がダーシャンの王都に足をれても……」

「今はジーウォ公国の臣民しんみんではありませんか。マレビト様もメイファンも一緒に、みなで楽しみたいものです」

「私もいいの!?」

と、メイファンが喜声きせいを上げた。

「もちろんですよ。メイファンだって、ジーウォのだい功臣こうしんです。なんの遠慮もりませんよ」

「そっか……。ひひっ。だい功臣こうしんなんて言われると照れちゃうね」

宮城きゅうじょう北側の大樹に矢を射掛いかけて練習していたメイファンにかれた。同い年のメイファン。最初から距離の近いで、いつも気付いたら横にいる。メイファンが望楼ぼうろうから長弓ながゆみで放った最初の一矢いっしが、人獣じんじゅうへの反攻の狼煙のろしになった。

まだ40日にもたない付き合いだけど、一緒に積み重ねたがある。

第3城壁の外の景色を一緒に見に行きたい。

――むにゅん。

そういえば、おっぱいを押し当てて背中を流したのも、最初はメイファンだった。

――むにゅん。

あの生き残ろうと必死に知恵をしぼっていた頃の感覚が、身体からだしんよみがえってくる。今は、んなが動いてくれてて、忘れかけてた感覚だ。

遠い未来のことは分からない。里佳にまた会えるのかも分からない。でも、ほんの少し先。城壁の外側までは歩みを進めよう。メイファンやアスマやユーフォンさんに、おすすめの景色を見せてもらいに行こう。

――むにゅん。

――むにんっ。

――ふにゅう。

この後、まずはシアユンさんと例の呪符じゅふを開く。祖霊は果たして何と言うのか。どんな知恵をさずけてくれるのか。どんな未来を教えてくれるのか。

――むにゅん。

――むにんっ。

――ふにゅう。

しかし、気持ちがなおすのに合せて、気恥ずかしさと照れ臭さも込み上げてくるのは、いたしかたがない。んな、柔らかくてスベスベのモチモチで、気持ちいいなぁ……。
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