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135.新しい段階の大浴場(2)

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日がれて、人獣じんじゅうたちとの戦闘が始まったけど、月がち始めて14日。月はついに半月になった。

地球の倍ほどの期間をかけて満ちる月。

夜は、だいぶ明るくなった。玉篝火サーチライトで影がくなるところも、見えやすくなっている。

スイランさんの説得せっとく見通みとおせなかったけど、人獣じんじゅうとの戦闘は安定感あんていかんしている。

そして、今晩ついに目標の75小隊が投入とうにゅうされている。今晩の戦闘で全小隊が安定的に闘えることが確認されたら、明日から15小隊ずつオフを取る。

それに合わせて、剣士と長弓ながゆみ隊も5日に1度オフを取る。今晩はそのテストで、すでに5分の4の戦力で闘えるか試している。

今のところ、問題なく闘えているように見える。

今晩は西側城壁の攻撃に加わっているメイファンが、インターバル中に手をってきた。

俺が手を振り返すと、上着うわぎをちょっとめくり、ノースリーブのわきからをアピッてきた。

な、なに考えてんだ……。思わず赤面せきめんすると、声は聞こえなかったけど「ひひひっ」っと笑ったのが分かった。

また、うれしそうに……。

長弓ながゆみ隊は人獣じんじゅうとの近接きんせつ戦闘ではないけど、戦闘に参加して一番長い。メイファンもつかれがまっているはずだ。

俺が顔を赤くするくらいのことで、楽しげにしてくれるなら、安いものだ……。

と、自分に言い聞かせてみる。

夜が明け、戦闘は無事に終了した。

明日から順番にオフを取ってもらうことが決まった。人獣じんじゅうとの闘いは、新しい段階に入った。

覚悟かくごを決めました」

と、スイランさんが言った。

――くにゅ(下)。

「そうですか! ありがとうございます」

大浴場ハーレム風呂で、スイランさんに背中をもらいながら昼間の話の続きをしている。

そう言えば、この『背中流し打ち合わせ』を最初にやったのもスイランさんだった。

――くにゅ(上)。

「私は平民の出です。ウンラン様に見出みいだされ、ここまで引き上げていただきました。私にとっては、良い上司じょうしでした。正直、戸惑とまどったままです」

「はい」

スイランさんには、ウンランさんのつみと、地下牢ちかろうつながれていることを伝えてある。

――くにゅ(下)。

戸惑ってると言いながらも、背中を動きは一定のリズムで効率よく続くのが、スイランさんらしい。

「もっと正直に言えば、こわいです」

「はい」

――くにゅ(上)。

「ですが、マレビト様とお話した後、事情じじょうを知る何人かが、私をひそかにたずねてくださりました……」

……俺は聞いていない。

――くにゅ(下)。

大浴場を見回す。

みんなが、む朝の陽光ようこう肢体したいを輝かせながら、いつものようにキャッキャと風呂と会話を楽しんでいる。

昨日のホンファのいから、ここにいる純潔じゅんけつ乙女おとめたちにも、本当は厳然げんぜんとした身分差みぶんさがあることが改めてさっせられた。

――くにゅ(上)。

そのホンファが今朝はもう、ユエやユーフォンさん、それにイーリンさんたちとも打ち解けた様子で楽しげにお喋りしてる。

大浴場ここでは、みんなへだてなくキャッキャしている。

――くにゅ(下)。

そんなみんなのうち事情を知る誰かが、あるいは全員が、それぞれにスイランさんの置かれた立場を心配して、そっとけてくれたんだろう……。

元々の身分や立場を超えて、大浴場で毎朝キャッキャしてる仲間として……。

――くにゅ(上)。

いつもは実務的じつむてき効率的こうりつてきなスイランさんの動きに、ほんの少し感情のたかぶりを感じる。

陽光ようこう湯気ゆげつつまれる全裸ぜんらの女子たちが、いつにもしてあたたかに感じられた。

――くにゅ(下)。

「……色々と話を聞いてもらい、聞かせてもらい、色々と考えました」

「はい」

スイランさんの話に耳を傾ける――。
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