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125.貴族の誇り(2)

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昨日の昼間、俺はどうしてもを望んでない自分と向き合った。

純潔じゅんけつ乙女おとめだって同じだ。

いくらシキタリだからって、望まないことしなくていいよっ! 絶対!

――ふにん(上)。

「シャオリン」

「はい……」

少し嗚咽おえつじってるようにも聞こえる。

――ふにん(下)。

いやなら、しなくていいんだよ? こんなこと」

「……」

――ふにん(上)。

「ね」

「……嫌ではありません」

――ふにん(下)。

「本当に?」

「はい……」

――ふにん(上)。

「……」

「……」

――ふにん(下)。

き、気まずい……。

「……」

――ふにん(上)。

「「あの……」」

2人同時に話しかけてしまった。

――ふにん(下)。

「なんでしょう……?」

「ううん。シャオリンから話して」

――ふにん(上)。

「ぞ……」

ぞ?

――ふにん(下)。

ぞく襲撃しゅうげきがあったはずです……」

「え……?」

なんで知ってるの? あのこと知ってる人は限られてるはず。

――ふにん(上)。

黒幕くろまく司徒しとのウンランです……」

「――っ!」

あの小太こぶとりの人の良さそうなおっさんが⁉︎

いつもニコニコしてて、俺のちょっとしたいやしになってる、あのおっさんが? なんで?

――ふにん(下)。

「……」

ていうか、シャオリンはなんでそんなこと知ってるの?

信じていいの?

でも、きながらけてくれてるよ?

と、俺は混乱こんらんしていた。

――ふにん(上)。

いや……、結構けっこうな話をしながら、一定のリズムですべらせますね?

――ふにん(下)。

「私は……」

「うん……」

――ふにん(上)。

「ウンランのまごです……」

シャオリンが上に下に滑り続ける中、俺はシアユンさんを目でさがし、目配めくばせしてそばに呼んだ。

シアユンさんに耳打みみうちして確認すると、シャオリンは確かにウンランさんの孫だった。

そして、「湯あたりしたようですね」とシャオリンに話しかけ、ツイファさんと一緒に大浴場の外にれ出してくれた。

出来るだけ動揺どうようらさないように、ひとつ深呼吸しんこきゅうした。

平静へいせいよそおっていつも通りに過ごし、風呂を上がって、シャオリンの話を詳しく聞かないといけない。

シアユンさんとツイファさんも、今頃、シャオリンの話を聞いてくれてるはずだ。

まずは落ち着こうと、もう一度、深呼吸をした、その時。

――むにゅん。

し、知ってる。この感触かんしょく、知ってる!

「続きは私がやるねー!」

と、背中越せなかごしにメイファンが言った。

――むにゅん(下)。

せ、背中に来られるのは、ひ、久しぶりですね。

いやー。ユーフォンさんたちと話して、色々、小難こむずかしいこと考えちゃいましたけど、まずは単純たんじゅんびますね。なにもかも。

――むにゅん(上)。

こんなやわらかな感触を押し当てられて、あわだらけですべらせられたら、シンプルに気恥きはずかしくて、くさくて、たまりません。

――むにゅん(下)。

「マレビト様、ありがとね」

「な、なにが……?」

――むにゅん(上)。

「ユエのこと」

「あ、ああ……」

――むにゅん(下)。

「ずっとおれい言わなきゃって思ってたんだけど、なんかバタバタしてて言いそびれちゃってた」

「あ、うん。メイファンも連弩れんどづくりにずっと協力してくれてたしね」

そのせつは、ずっと左腕がになってましたね。

――むにゅん(上)。

「ユーフォン様にも、お礼言っといた」

そっか、ユーフォンさんも『様』になるのか。

「そかそか。仲良くやれてるみたいだよ」

それにしても、メイファンは面倒見めんどうみがいいしよく気が回る。長弓ながゆみ隊の面々めんめんもいつもフォローしてくれてて、ありがたい。

――むにゅぅん(下)。

「うん! ユエも楽しそうで良かった!」

「そうだね」

――むにゅぅうん(上)。

「そだ、マレビト様ぁ……」

「ん? なに?」

――むにゅぅぅうん(下)。

「ユエのすごいんだって?」

うぐっ! 一瞬、返す言葉にまったけど、ユーフォンさんにバラされて今さらかくしようもない。

「……はい」

――むにゅぅぅぅぅうううん(上)。

「ひひっ! ……今度、私のも見せてあげるねっ」

そ、そんな予告よこくを、耳元みみもとささやかれましても……

え? それも面倒見の良さなんスか?

ていうか、今、なまで当たってますし……。

シャオリンのことも気になってるんだけど、吹っ飛ばされるわー。
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