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59.剣士府の演説(2)
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剣士さんたちの闘いを何度か見せてもらって、たとえば日露戦争くらいの、大砲の援護射撃を受けながら歩兵部隊が突撃していくような戦争観、戦術観もないんだとは感じてた。
どちらかと言うと、鎌倉武士が「やあやあ、我こそは」と名乗りを上げて一騎打ちを始めるような戦闘観。いやむしろ、佐々木小次郎に挑む宮本武蔵か。一人で豪剣を振るう宮本武蔵が、たまたまズラッと並んでる感じ。
俺の前で眉を寄せて机を睨み付けてるイーリンさんが目に入る。
今朝の風呂場で、湯面越しに透けて見えたイーリンさんの、……は、ともかくとして、イーリンさんは『前線』って言葉を使ってた。人獣襲来の初日に「前線が、特に混乱した」という言い方をしてた。
集団を意識してないと「前線」って言葉にはならないんじゃないかって思うけど、その辺が、剣士の中でどういう風に整理されてるのかまでは、今のところ分からない。
とにかく、なんらかプライドを傷つけてしまったんだろうと思う。
しばらく静寂が流れたあと、フェイロンさんが、口を開いた。
「押さえ込むことは出来ます。ですが、それでは――」
「今晩の戦闘に、迷いが出る」
と、俺が言うと、フェイロンさんが深く頷いた。イーリンさんは、また唇を噛んだ。
フェイロンさんが続けた。
「騒いでいる者たちを、密かに集めます。申し訳ないが、マレビト様から真意を話していただく訳にはいきませんか?」
「いや。全員、集めましょう」
「むっ」
と、フェイロンさんは言葉に詰まった。
俺は身を乗り出して、フェイロンさんに話しかける。
「限られた人だけ、内緒で集まってもらったのでは、呼ばれなかった人は隠し事をされているように受け止めるかもしれません。それに、見えるところで騒いでなくても、内心では不満や疑問を持っている人の方が、たぶん、多い。剣士さんたち全員に集まってもらって、全員に聞いてもらう方がいいと思うんです」
「……なるほど」
「もし、フェイロンさんが許して下さるなら、『三卿一亭』の皆さんにも立ち会ってもらいたい。ジーウォ城の最高幹部が勢揃いする中で話せば、隠し事があると思う方は、たぶん、いないでしょう」
フェイロンさんは、ふむと唸って考え込んだ。
陽光にエメラルドグリーンの髪を輝かせたイーリンさんは、心配げにフェイロンさんの顔を見詰めている。
そうだ。この2人以外の剣士は、まだ俺のことを知らない。
マレビト云々はともかく、知らない人間が、自分たちの知らないうちに好き勝手していると受け止められていても、何も不思議なことはない。
フェイロンさんは、静かに顔を上げ俺の目を見据えて、口を開いた。
「分かりました。そのように、いたしましょう」
どちらかと言うと、鎌倉武士が「やあやあ、我こそは」と名乗りを上げて一騎打ちを始めるような戦闘観。いやむしろ、佐々木小次郎に挑む宮本武蔵か。一人で豪剣を振るう宮本武蔵が、たまたまズラッと並んでる感じ。
俺の前で眉を寄せて机を睨み付けてるイーリンさんが目に入る。
今朝の風呂場で、湯面越しに透けて見えたイーリンさんの、……は、ともかくとして、イーリンさんは『前線』って言葉を使ってた。人獣襲来の初日に「前線が、特に混乱した」という言い方をしてた。
集団を意識してないと「前線」って言葉にはならないんじゃないかって思うけど、その辺が、剣士の中でどういう風に整理されてるのかまでは、今のところ分からない。
とにかく、なんらかプライドを傷つけてしまったんだろうと思う。
しばらく静寂が流れたあと、フェイロンさんが、口を開いた。
「押さえ込むことは出来ます。ですが、それでは――」
「今晩の戦闘に、迷いが出る」
と、俺が言うと、フェイロンさんが深く頷いた。イーリンさんは、また唇を噛んだ。
フェイロンさんが続けた。
「騒いでいる者たちを、密かに集めます。申し訳ないが、マレビト様から真意を話していただく訳にはいきませんか?」
「いや。全員、集めましょう」
「むっ」
と、フェイロンさんは言葉に詰まった。
俺は身を乗り出して、フェイロンさんに話しかける。
「限られた人だけ、内緒で集まってもらったのでは、呼ばれなかった人は隠し事をされているように受け止めるかもしれません。それに、見えるところで騒いでなくても、内心では不満や疑問を持っている人の方が、たぶん、多い。剣士さんたち全員に集まってもらって、全員に聞いてもらう方がいいと思うんです」
「……なるほど」
「もし、フェイロンさんが許して下さるなら、『三卿一亭』の皆さんにも立ち会ってもらいたい。ジーウォ城の最高幹部が勢揃いする中で話せば、隠し事があると思う方は、たぶん、いないでしょう」
フェイロンさんは、ふむと唸って考え込んだ。
陽光にエメラルドグリーンの髪を輝かせたイーリンさんは、心配げにフェイロンさんの顔を見詰めている。
そうだ。この2人以外の剣士は、まだ俺のことを知らない。
マレビト云々はともかく、知らない人間が、自分たちの知らないうちに好き勝手していると受け止められていても、何も不思議なことはない。
フェイロンさんは、静かに顔を上げ俺の目を見据えて、口を開いた。
「分かりました。そのように、いたしましょう」
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