【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら

文字の大きさ

大中小

43 / 297

43.像を結んでいく

しおりを挟む

ミンリンさんに頼たのんで、現状げんじょうのジーウォ城の図面ずめんと、異性界こっちのモノサシを見せてもらった。

やっぱり異世界こっちの長さの単位は初めて聞くものだったけど、だいたいのメートル換算かんざんは出来た。状況的に、馴染なじみのない単位でヨタヨタ考えるより、パッと把握はあくできる方がいい。

建築図面けんちくずめんに詳くわしい訳わけでもないので、ミンリンさんに説明してもらいながら、把握していく。

覚おぼえ切れる量ではないので、紙と筆を借りてメモしていく。そうか、紙はあるんだな。結構、しっかりしてる。いや、薄く作れないのか。興味深きょうみぶかいけど、今は目の前のことに集中しよう。

目測もくそくしてたサイズ感に、そう大きな狂くるいはなくて、最終城壁の高さは約４m、宮城きゅうじょうの望楼ぼうろうの高さと第２城壁の高さは同じで、どちらも約12ｍ。

三角関数さんかくかんすうを使って宮城の望楼から第２城壁までの距離きょりを割わり出だす。大学受験直後の身みの上うえ。手早てばやく計算していると、ミンリンさんが興味を示した。

簡単に三角関数をレクチャーすると、目を輝かがやかせてメモし始めた。サイン・コサイン・タンジェントってヤツだ。

ミンリンさん、本当に学問が好きなんだなぁ。活いき活いきしてるし、なんなら少し興奮こうふんして見える。

ふと、マレビトとしての俺が起こす『呪術』の『イノベーション』が、高校レベルの数学だと、ちょっと寂しいかもと思ったけど、いや！なんかもっと派手なののハズ！と、根拠こんきょなく気持ちを立て直した。

だいたい知っておきたいことは教えてもらえたので、俺はミンリンさんにお礼を言ってから、急遽きゅうきょ、スイランさんのいる司徒府しとふに向かった。

ミンリンさんが、名残なごり惜おしそうな表情で見送ってくれたのは、たぶん、もっと数学の話をしたかったんだろう。高校レベルだけど、また機会きかいがあれば知ってることは教えてあげよう。

仮設住宅かせつじゅうたくを作る資材しざいを出してもらうのに、スイランさんを訪たずねるのだけど、シーシを待またせ過ぎることになるんじゃと、少し気になったので、移動は自然と早足はやあしになった。

最終城壁に四方しほうを囲かこまれたエリアの中央より少し北に、宮城きゅうじょうが建っている。ミンリンさんやシーシがいる『司空府しくうふ』は西に張はり出だしていて、スイランさんやウンランさんがいる『司徒府しとふ』は東に張り出している。

宮城きゅうじょうの中央が城主や王族のエリアで、３階に俺やリーファ姫の部屋、それに王族用の大浴場がある。そして、更さらに上に昇のぼると望楼ぼうろうがある。

宮城の南側が正面入口になっていて、宮城を出ると石畳いしだたみの広場がある。その両脇りょうわきに剣士たちの宿舎しゅくしゃが建たち並ならんでいて、宮城の南側には『剣士府けんしふ』が張り出している。

まだ立ち入ったことのない剣士府の入口を横目よこめに、司空府から司徒府に、真東まひがしに向かって足早あしばやに移動している。ちなみに、宮城の北に張り出しているのは、祖霊それいを祀まつる『祖霊廟それいびょう』らしい。

今はリーファ姫の代わりにシアユンさんが、毎日の祭祀さいしを行っているそうだ。

司徒府しとふに着いてスイランさんの部屋を訪ねると、シーシが先に来ていた。

「ニシシ。スイランに鍋なべの追加を融通ゆうずうしてもらってたんだ」

と、シーシがいたずらっ子のような笑えみで教えてくれると、スイランさんは咳払せきばらいをひとつしてから、口を開いた。

「内密ないみつにお願いいたします」

「大丈夫、大丈夫。マレビト様の御用ごように使う鍋なんだし」

このチビッ子コンビがツーカーなのは、後々あとあと楽らくに物事ものごとを進められそうな気がして、俺は好意的こういてきに受うけ止とめた。

膨ふくらみがほどよい２人なのも、クラスの同級生女子と接せっしてるようで、気楽きらくなものがある。

チビッ子と言っても、シーシは俺より３つ年上の21歳だったけど。

あれ……？イヤな予感。スイランさん、仕事出来できる感じに敬意けいいを持って「さん」付けにはしてたものの、幼おさない顔立かおだちで同い年か年下って思ってたけど……。

「さて、問題です。スイランは何歳でしょう？」

シーシ。お前、エスパーか？

「えっと……、18？ 17？」

正直、若く言っておけば、とりあえず角かどが立たないと思っています。

「不正解ふせいかいです！正解は25歳でした！」

スイランさんが、もう、といった呆あきれた表情を浮うかべている。……に、25だと。このテキパキ学級委員長みたいな幼い顔立ちの赤縁あかぶちメガネ少女が、25。……異世界ゆえなのか？とにかく、自分の感覚かんかくを信じるのはやめよう。

「司空府ウチのミンリン様と一緒で、仕事大好きで行き遅れたパターンなのだ。ニシシ」

「仕事大好きなのはシーシも一緒でしょ？もう21？ 25なんてスグよ、スグ。早い娘こだと16で嫁とついじゃうんだから」

「ボクのことは別にいいのだ！ボクはミンリン様がいればいいのだ！」

「わ、私も……」

と、同行してくれていたユーフォンさんが、おずおずと手を挙あげた。

「20歳です……」

ユーフォンさんも同い年くらいかと思ってました。２つ上のお姉さんだったんですね。

お、お姉さま３人に囲まれてるのか……。２人は、そうは見えないけど。

「すみません、くだらない話を。ご用件はなんでしたでしょうか？」

と、スイランさんがピシッと仕切り直してくれて、本来の用事を思い出した。意外と余裕よゆうあるな、俺。

ミンリンさんから預あずかった、仮設住宅かせつじゅうたく建設けんせつに必要な資材しざいをまとめてある書付かきつけを、スイランさんに手渡てわたす。ふんふんと、確認したスイランさんが顔を上げた。

「承知しょうちしました。司徒府ウチの者ものに、早急そうきゅうに納入のうにゅうさせます」

と、スイランさんは赤縁あかぶちの眼鏡をクイッと上げた。25歳の童顔どうがん姉ねえさん、仕事出来できる感がスゴイ。資材の種類ごとの在庫量ざいこりょうも全部、頭に入ってるんだな。

この城のチームが、どんなふうに動いてるのか、どう動かせばいいのか、俺の頭の中で少しずつ像ぞうを結むすんでいく。

しおりを挟む