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36.動かそう!

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風呂から上がるとグッスリ寝られたけど、里佳りかの夢で目が覚めた。

夢の中で俺は里佳に色々、相談してた。人獣じんじゅうがシンプルにこわいこと。夜間の戦闘に使う照明しょうめいが問題なこと。剣士の剣技けんぎ素晴すばらしいこと。狩人かりうどに弓矢の攻撃で戦闘に加わってほしいこと。

里佳はウンウンと、いつものようにうなずきながら聞いてくれた。ただ夢の中の俺は、女子たちと一緒にお風呂に入ってることは言っちゃいけないって思ってた。

里佳は、知ってるはずのない、ミンリンさんやシーシ、スイランさん、シアユンさんなんかの名前を挙げて、みんなを頼ればいいよって笑ってた。

なんで、みんなを知って……?

と、慌てたところで目がめた。日はまだ高かったけど、たっぷり寝られたような感覚もある。

夢の中だけど、笑顔の里佳に会えて、……良かったと、思ってた。涙目なみだめあやまらせてしまったことは頭から消えてくれないけど、元々のなんでも話せる里佳の姿を見られて、少し気持ちが軽くなったことを感じてた。

でもまあ、夢の中でも異世界こっちの女子たちのことは、里佳に知られたくないってあわててた。

やましいことはないんだけど、里佳に知られたらどう思われるか……? おもいをけたのは、まだ5日前のこと。

……腰抜こしぬ純情じゅんじょう野郎やろう

という、ユーフォンさんの言葉が浮かぶ。腰抜けでもいいです。やっぱり、ひょいひょい次に行けるようなキャラじゃないし。

異世界に召喚されて命の危機ってだけで、だいぶ無理してるのに、里佳への気持ちまで無理することないよな。

って思った瞬間しゅんかんに、ポンっと大浴場でキャッキャする純潔じゅんけつ乙女おとめたちの姿が浮かんで、反射的はんしゃてき赤面せきめんしてしまった。豊かなのから、控え目なのから、顔と名前が一致いっちし始めて、少しずつ色々が克明こくめいに思い出せるようになってしまった。

いかんいかん。

健全けんぜんな男子としてさわってみたり、んでみたりしたくないというワケじゃないけど、今はまだ、里佳だけにしておきたい。いや、里佳のを触っても揉んでもないけども。

戸惑とまどってるし、れないし、赤面するけど、あの時間にいやされてるのも確かなんだろうな。癒されてるというか、気がまぎれてる。

目の前をウロウロするぱだかの女子たちで、頭の中が全部上書うわがきされる時間。余計なことを考えすぎない時間。恥ずかしさで、のぼせてるだけなんだけど、一旦いったん、頭の中がリセットされてる。

女子たちは女子たちで、シキタリに従順じゅうじゅんでありたいだけなんだろうし、少しくらい楽しみにしてもいいよな……。

うーん。俺、なんとか正当化せいとうかしようとしてるな。里佳に対しても、自分に対しても。

なんて考えてると、ツイファさんが顔を出してくれた。髪色と同じツヤのある紫のドレスは、腰の辺りまで、ざっくりスリットが入ってる。くびれた腰のラインはハッキリ分かるし、チャイナドレス風っていうのは、なんともドキッと、させられてしまう。

さて、やることが多くなってきた。

まずは司空府しくうふにシーシをたずねて製作せいさくを頼んだ照明の具合ぐあいを確認して、ミンリンさんに避難民ひなんみんの皆さんの仮設住宅かせつじゅうたくの件を確認して、それからフーチャオさんの所に、狩人かりうどを主にした住民の戦闘参加の件を相談に行かなくちゃいけない。

そうだ。狩人の姉妹、メイファンとミンユーの意見も聞いてみたい。現実的に一番効果的なのは、どんな使い方だろう?

あ、そうだ。昨日、フーチャオさんに頼んださんの件はどうなったかな?

やることがあるのは、いい。なにせ、毎晩が存亡そんぼう危機ききだ。こまかなところは後回あとまわしでいいから、出来ることから進めないと……、みんな、死んでしまう。

よし! やろう。動かそう! 動き出そう。

俺はツイファさんに司空府に行くと告げて、ベッドからりた。

ゆかみしめると、自分の身体からだの重みを、しっかりと感じられた。少しずつだけど、に足がき始めてる感じが、気持ちを前に向かせてくれた。
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