24 / 297
24.大人の会議(3)
しおりを挟む
「俺は気に入った! マレビト様の思う通りにすればいい」
と、フーチャオさんが続けた。
はは。その「思う通り」の、思うことがないから困ってるんですよ。
「元々、この城のことは城主が全部決めてた。俺達が話し合って決めるなんてことは一切なかった訳だ。こんな大ピンチでも、慣れないことが突然出来る訳がねぇ。マレビト様がその目で見て、その耳で聞いて、思うこと感じることを、俺達に命令してくれればいい。なあ? 三卿の皆様方もそうは思わねぇですか?」
「一理ありますな」
と、柔らかな声で応えたのは、人の良さげな小太りのウンランさんだ。
「事ここに至って、長々と評定に時間を費やすことも無駄でしょう。我らは各々、自分の持ち場をしっかり務めておりますれば、大きな方針はリーファ姫が命を賭して召喚し、祖霊がお遣わしになったマレビト様に委ねるのも、悪くはございませんわい」
「リーファ姫は……」
と、口を開いたのは剣士長のフェイロンさんだ。
「この危難にあって、見事な采配を振るわれた。儂が王都にある時分には、第4王女たるリーファ姫と接する機会は少なく、あれほど毅然としたお振る舞いの出来る方とは気付かなかった」
シアユンさんが気品あるポーカーフェイスのまま、目を伏せた。
「リーファ姫の判断で召喚されたマレビト様である。儂に異存はない」
そうかい、そうかいと頷くフーチャオさんが、ミンリンさんの方を向いた。たぶん、一番身分が低いのはフーチャオさんなのだろうに場を仕切ってる感じが、これまで色んな修羅場を渡ってきたことを表してるんだろうなって思った。兄貴だ。
「私は……」
と、ミンリンさんは、少し目を泳がせながら小さな声で応えた。今朝の風呂場で思った『土木好き黒髪インテリ巨乳陰キャ女子』という言葉を、頭の中で払おうとするんだけど、なかなか出て行かない。
「私は、マレビト様のご負担にならないか……。心配なのは、それだけです……」
と、目元を赤らめたミンリンさんが、上目遣いに俺を見た。このタイミングで、可愛い感じの仕草はやめてほしい。場にそぐわず、ドキッとしてしまう。
ふむと、フーチャオさんが少し考えてから、俺の方に向き直った。
「マレビト様はどうだい? 今のところの気持ちでいいんで、どうしたいか教えてくれないですか?」
「そ、そうですね……」
正直な感想は、シアユンさんも入れて大人5人に囲まれて面接を受けてるみたいだ。少し考えをまとめてから、口を開いた。
「まずは、城の中を見て回りたいです。最終城壁の中? それに、住民の皆さんの話も聞いてみたい。それで思い付いたり、感じたことがあれば、皆さんにお話しさせてもらいます。それで、どうでしょうか?」
「いいんじゃねぇか?」
と、フーチャオさんが一同を見回した。フェイロンさんも、ウンランさんも、ミンリンさんも頷いてる。
決まりだなという、フーチャオさんの言葉で皆さんが頭を下げて、席を立った。
ああ、終わりなんだと思って、皆さんを見送ろうとしてたら、誰もその場を動かず、だんだん怪訝な表情になってきた。
シアユンさんが、俺の耳元に口を寄せて囁いた。小さくてお綺麗な顔が近いです。吐息が耳にかかってますし。
「マレビト様が先に部屋をお出にならないと、皆が動けません」
おう。そういうの、言われないと分からないです。高校生ですから。卒業式は済ませましたけど。
慌てて立ち上がって、皆さんに一礼して、シアユンさんと一緒に部屋を出た。
ふうっと、大きな息が漏れた。大人の会議、緊張した。
あとは、ミンリンさんに「あ! 今、この人、私の裸を思い出してる!」って思われてないことを祈るだけ。だいぶ、思い出してたけど――。
と、フーチャオさんが続けた。
はは。その「思う通り」の、思うことがないから困ってるんですよ。
「元々、この城のことは城主が全部決めてた。俺達が話し合って決めるなんてことは一切なかった訳だ。こんな大ピンチでも、慣れないことが突然出来る訳がねぇ。マレビト様がその目で見て、その耳で聞いて、思うこと感じることを、俺達に命令してくれればいい。なあ? 三卿の皆様方もそうは思わねぇですか?」
「一理ありますな」
と、柔らかな声で応えたのは、人の良さげな小太りのウンランさんだ。
「事ここに至って、長々と評定に時間を費やすことも無駄でしょう。我らは各々、自分の持ち場をしっかり務めておりますれば、大きな方針はリーファ姫が命を賭して召喚し、祖霊がお遣わしになったマレビト様に委ねるのも、悪くはございませんわい」
「リーファ姫は……」
と、口を開いたのは剣士長のフェイロンさんだ。
「この危難にあって、見事な采配を振るわれた。儂が王都にある時分には、第4王女たるリーファ姫と接する機会は少なく、あれほど毅然としたお振る舞いの出来る方とは気付かなかった」
シアユンさんが気品あるポーカーフェイスのまま、目を伏せた。
「リーファ姫の判断で召喚されたマレビト様である。儂に異存はない」
そうかい、そうかいと頷くフーチャオさんが、ミンリンさんの方を向いた。たぶん、一番身分が低いのはフーチャオさんなのだろうに場を仕切ってる感じが、これまで色んな修羅場を渡ってきたことを表してるんだろうなって思った。兄貴だ。
「私は……」
と、ミンリンさんは、少し目を泳がせながら小さな声で応えた。今朝の風呂場で思った『土木好き黒髪インテリ巨乳陰キャ女子』という言葉を、頭の中で払おうとするんだけど、なかなか出て行かない。
「私は、マレビト様のご負担にならないか……。心配なのは、それだけです……」
と、目元を赤らめたミンリンさんが、上目遣いに俺を見た。このタイミングで、可愛い感じの仕草はやめてほしい。場にそぐわず、ドキッとしてしまう。
ふむと、フーチャオさんが少し考えてから、俺の方に向き直った。
「マレビト様はどうだい? 今のところの気持ちでいいんで、どうしたいか教えてくれないですか?」
「そ、そうですね……」
正直な感想は、シアユンさんも入れて大人5人に囲まれて面接を受けてるみたいだ。少し考えをまとめてから、口を開いた。
「まずは、城の中を見て回りたいです。最終城壁の中? それに、住民の皆さんの話も聞いてみたい。それで思い付いたり、感じたことがあれば、皆さんにお話しさせてもらいます。それで、どうでしょうか?」
「いいんじゃねぇか?」
と、フーチャオさんが一同を見回した。フェイロンさんも、ウンランさんも、ミンリンさんも頷いてる。
決まりだなという、フーチャオさんの言葉で皆さんが頭を下げて、席を立った。
ああ、終わりなんだと思って、皆さんを見送ろうとしてたら、誰もその場を動かず、だんだん怪訝な表情になってきた。
シアユンさんが、俺の耳元に口を寄せて囁いた。小さくてお綺麗な顔が近いです。吐息が耳にかかってますし。
「マレビト様が先に部屋をお出にならないと、皆が動けません」
おう。そういうの、言われないと分からないです。高校生ですから。卒業式は済ませましたけど。
慌てて立ち上がって、皆さんに一礼して、シアユンさんと一緒に部屋を出た。
ふうっと、大きな息が漏れた。大人の会議、緊張した。
あとは、ミンリンさんに「あ! 今、この人、私の裸を思い出してる!」って思われてないことを祈るだけ。だいぶ、思い出してたけど――。
4
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
クラスで一人だけ男子な僕のズボンが盗まれたので仕方無くチ○ポ丸出しで居たら何故か女子がたくさん集まって来た
pelonsan
恋愛
ここは私立嵐爛学校(しりつらんらんがっこう)、略して乱交、もとい嵐校(らんこう) ━━。
僕の名前は 竿乃 玉之介(さおの たまのすけ)。
昨日この嵐校に転校してきた至極普通の二年生。
去年まで女子校だったらしくクラスメイトが女子ばかりで不安だったんだけど、皆優しく迎えてくれて ほっとしていた矢先の翌日……
※表紙画像は自由使用可能なAI画像生成サイトで制作したものを加工しました。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
死んだら男女比1:99の異世界に来ていた。SSスキル持ちの僕を冒険者や王女、騎士が奪い合おうとして困っているんですけど!?
わんた
ファンタジー
DVの父から母を守って死ぬと、異世界の住民であるイオディプスの体に乗り移って目覚めた。
ここは、男女比率が1対99に偏っている世界だ。
しかもスキルという特殊能力も存在し、イオディプスは最高ランクSSのスキルブースターをもっている。
他人が持っているスキルの効果を上昇させる効果があり、ブースト対象との仲が良ければ上昇率は高まるうえに、スキルが別物に進化することもある。
本来であれば上位貴族の夫(種馬)として過ごせるほどの能力を持っているのだが、当の本人は自らの価値に気づいていない。
贅沢な暮らしなんてどうでもよく、近くにいる女性を幸せにしたいと願っているのだ。
そんな隙だらけの男を、知り合った女性は見逃さない。
家で監禁しようとする危険な女性や子作りにしか興味のない女性などと、表面上は穏やかな生活をしつつ、一緒に冒険者として活躍する日々が始まった。
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる