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36."本当の私"も、愛してください(1)
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私が魔王に対峙するのは2度目だ。
宝玉が擬態を吸い込み続ける中、私は身体をゆっくりと宙に浮かせていく……。
――夢に出てきた景色。
黒々と聳える山々に囲まれた、瘴気渦巻く禍々しい窪地を、最初の人生と同じように見下ろした。
しかし、今度の人生ではまだ、すべての聖騎士が死体になってはいない。
*
魔王に初めて対峙した、私の最初の人生――。
「聖女様! 私の魔力をお使いください! 魔王を倒し、世界をお救いください!!」
そう叫んで、自分の全魔力を渡してきたのは、悪人面の聖騎士団副長アンドレアス・シュヴァルツだった。
「ぐふっ! う、うぐっ…………」
魔力を失い魔法障壁が解かれ、高濃度の瘴気に侵された副長は、呻き声を上げながら倒れた。
――なんてことを!
「副長に続け――っ!!!」
と、声を上げたのは、魔導師団長エミリア・シュルツブルーメだ。
狼狽える私を尻目に、次々と聖騎士たちが、私に全魔力を捧げ始める。
「聖女様! 世界をお救いください!」
「聖女様! お使いください!」
「聖女様! 私の魔力も!」
「聖女様! どうか!」
そして、魔法障壁を失い、倒れ、苦悶の表情で息絶える。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
魔王の前に立つまでに、魔力を消費し過ぎていた私に、皆が魔力を捧げ、死んでいく……。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
聖騎士をひとりも死なせずに、魔王の前にたどり着いたのは、なんのためだったのか…………。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
――魔王……。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
――ゲタゲタ嗤うな……。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
折り重なる聖騎士10万人の死体の上で、魔王の不快な嗤い声がゲタゲタと響く。
その中央……、
仲間の死体に囲まれて、聖騎士団長マルティン・ヴァイスが、私を見上げていた。
「聖女アリエラ。世界を救うのです」
私はひとりになった。
それでも、魔王は嗤うのをやめない。
「なにが、そんなにおかしい――ッ!」
私が聖女となって初めての怒声。
けれど、魔王の嗤いは止まらない。
《ゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタ》
湧き上がる憤怒のままに、聖騎士10万人分の魔力が収まった宝玉を、私は魔王に向けた。
そして、愕然とした。
――足りない……。
大きく開かれた赤い口から放たれようとしている魔王の魔力には、到底及ばない。
絶望。
眼下には、私に希望を託して死んでいった聖騎士10万人の死体。
眼前には不快な嗤い顔で、最後の一撃を放とうとしている魔王。
手には、託された魔力。
私が斃れれば国を守る者は、もう、誰もいない――。
どうする?
どうすれば、守れる?
聖騎士10万人が託してくれた魔力を、命を、どうすれば無駄にせずに済む?
魔王の口から、赤い光が膨らみ始めた時――、
私は、禁忌魔法《回帰》を使うことにした。
もう一度、生まれ直す。
10万人が託してくれた魔力があれば、禁忌の魔法も使える。
そして、生まれたその日から魔王に対峙する瞬間まで、魔力を蓄え続ける。宝玉がなくとも身体の外にも蓄える。やってやる。私の人生のすべてを魔王にぶつけてやる。
――だけど……。
【目の前のひとりにも全力の慈悲を注ぐ】
それが、聖女である私が避けられぬ、性だ。
この魔王討伐にしても、私が魔力を使わなければ、ここに来るまでに5万人は死んでいただろう。
私は救けてしまう。
もう一度、人生をやり直したところで、聖女修行を経た私は、死にゆく人を見捨てたりできない。絶対に魔力を使って救けてしまう。
それでは、同じことの繰り返しになるだけだ。
やり直しの私が聖女修行に送り込まれないよう、強固な擬態魔法をかけた。魔力をその内側に蓄えれば絶対に解けない。
そして、記憶を封印した。
記憶と魔力の解放条件は《聖女の宝玉》に触れること。聖女の力を再発現させると同時に、記憶と魔力も戻す。
そうすれば、ギリギリまで魔力を蓄えて、魔王に対峙できるハズだ。
そのために、魔王が復活したら、どうしてもそこに行かずにはいられない暗示もかけた。
雑すぎる条件だけど、魔王の光線がこの身に届くまでの短い時間で考え付くには、これが精一杯。
どうか、届いて。
次は魔王に届いて――。
*
これが、私の最初の人生、アリエラ・グリュンバウワーが見た、最後の記憶だ。
だけど……、
まさか、アリエラ・ヴァイスになってるとはなぁ――っ!!!
あの不愛想で女嫌いのヴァイス団長が、私の夫になぁ……。
2つの記憶が重なる私は、苦笑いを禁じ得ない。
だけど2度目の私も、私だ。
マルティン様への愛で満たされている私も、"本当の私"なのだ。
そこに、マルティン様の声が響き渡った。
「聖女出現――――ッ! 総員、全力で聖女様をお守りせよ!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
生き残った聖騎士6万人が呼応し、雄叫びがリエナベルクの盆地を満たす。
前の人生の私が思ってたより1万人多く生き残ってる。
それは、マルティン様の聖騎士団長としての優れた手腕のなせる業なのです。
私の擬態が宝玉に収められていくに従って、魔王の表情が激しい憎悪に染まっていく。
魔王。
やっと、嗤うのをやめたな――。
宝玉が擬態を吸い込み続ける中、私は身体をゆっくりと宙に浮かせていく……。
――夢に出てきた景色。
黒々と聳える山々に囲まれた、瘴気渦巻く禍々しい窪地を、最初の人生と同じように見下ろした。
しかし、今度の人生ではまだ、すべての聖騎士が死体になってはいない。
*
魔王に初めて対峙した、私の最初の人生――。
「聖女様! 私の魔力をお使いください! 魔王を倒し、世界をお救いください!!」
そう叫んで、自分の全魔力を渡してきたのは、悪人面の聖騎士団副長アンドレアス・シュヴァルツだった。
「ぐふっ! う、うぐっ…………」
魔力を失い魔法障壁が解かれ、高濃度の瘴気に侵された副長は、呻き声を上げながら倒れた。
――なんてことを!
「副長に続け――っ!!!」
と、声を上げたのは、魔導師団長エミリア・シュルツブルーメだ。
狼狽える私を尻目に、次々と聖騎士たちが、私に全魔力を捧げ始める。
「聖女様! 世界をお救いください!」
「聖女様! お使いください!」
「聖女様! 私の魔力も!」
「聖女様! どうか!」
そして、魔法障壁を失い、倒れ、苦悶の表情で息絶える。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
魔王の前に立つまでに、魔力を消費し過ぎていた私に、皆が魔力を捧げ、死んでいく……。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
聖騎士をひとりも死なせずに、魔王の前にたどり着いたのは、なんのためだったのか…………。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
――魔王……。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
――ゲタゲタ嗤うな……。
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
「聖女様!」
折り重なる聖騎士10万人の死体の上で、魔王の不快な嗤い声がゲタゲタと響く。
その中央……、
仲間の死体に囲まれて、聖騎士団長マルティン・ヴァイスが、私を見上げていた。
「聖女アリエラ。世界を救うのです」
私はひとりになった。
それでも、魔王は嗤うのをやめない。
「なにが、そんなにおかしい――ッ!」
私が聖女となって初めての怒声。
けれど、魔王の嗤いは止まらない。
《ゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタ》
湧き上がる憤怒のままに、聖騎士10万人分の魔力が収まった宝玉を、私は魔王に向けた。
そして、愕然とした。
――足りない……。
大きく開かれた赤い口から放たれようとしている魔王の魔力には、到底及ばない。
絶望。
眼下には、私に希望を託して死んでいった聖騎士10万人の死体。
眼前には不快な嗤い顔で、最後の一撃を放とうとしている魔王。
手には、託された魔力。
私が斃れれば国を守る者は、もう、誰もいない――。
どうする?
どうすれば、守れる?
聖騎士10万人が託してくれた魔力を、命を、どうすれば無駄にせずに済む?
魔王の口から、赤い光が膨らみ始めた時――、
私は、禁忌魔法《回帰》を使うことにした。
もう一度、生まれ直す。
10万人が託してくれた魔力があれば、禁忌の魔法も使える。
そして、生まれたその日から魔王に対峙する瞬間まで、魔力を蓄え続ける。宝玉がなくとも身体の外にも蓄える。やってやる。私の人生のすべてを魔王にぶつけてやる。
――だけど……。
【目の前のひとりにも全力の慈悲を注ぐ】
それが、聖女である私が避けられぬ、性だ。
この魔王討伐にしても、私が魔力を使わなければ、ここに来るまでに5万人は死んでいただろう。
私は救けてしまう。
もう一度、人生をやり直したところで、聖女修行を経た私は、死にゆく人を見捨てたりできない。絶対に魔力を使って救けてしまう。
それでは、同じことの繰り返しになるだけだ。
やり直しの私が聖女修行に送り込まれないよう、強固な擬態魔法をかけた。魔力をその内側に蓄えれば絶対に解けない。
そして、記憶を封印した。
記憶と魔力の解放条件は《聖女の宝玉》に触れること。聖女の力を再発現させると同時に、記憶と魔力も戻す。
そうすれば、ギリギリまで魔力を蓄えて、魔王に対峙できるハズだ。
そのために、魔王が復活したら、どうしてもそこに行かずにはいられない暗示もかけた。
雑すぎる条件だけど、魔王の光線がこの身に届くまでの短い時間で考え付くには、これが精一杯。
どうか、届いて。
次は魔王に届いて――。
*
これが、私の最初の人生、アリエラ・グリュンバウワーが見た、最後の記憶だ。
だけど……、
まさか、アリエラ・ヴァイスになってるとはなぁ――っ!!!
あの不愛想で女嫌いのヴァイス団長が、私の夫になぁ……。
2つの記憶が重なる私は、苦笑いを禁じ得ない。
だけど2度目の私も、私だ。
マルティン様への愛で満たされている私も、"本当の私"なのだ。
そこに、マルティン様の声が響き渡った。
「聖女出現――――ッ! 総員、全力で聖女様をお守りせよ!!」
「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」」
生き残った聖騎士6万人が呼応し、雄叫びがリエナベルクの盆地を満たす。
前の人生の私が思ってたより1万人多く生き残ってる。
それは、マルティン様の聖騎士団長としての優れた手腕のなせる業なのです。
私の擬態が宝玉に収められていくに従って、魔王の表情が激しい憎悪に染まっていく。
魔王。
やっと、嗤うのをやめたな――。
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