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第九章 山湫哀華
201.言いたい放題
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ラドラム城の出迎えは盛大であった。
東侯エドゥアルドをはじめ、家臣一同が左右にズラリと並ぶ中、アイカたち一行が進む。
予想外の歓迎に怯んだアイカに、カリュがささやいた。
「背筋をお伸ばしください」
「あ……、は、はいっ」
「ゆっくり歩かれたので大丈夫です。……みなさんのお顔をご覧ください」
「えっ……?」
と、立ち並ぶおじさんたちの顔をみると、どれも感無量といった趣きであった。
よく見ると、うしろには下男下女といった風情の者たちも並んでおり、目には涙さえうかべている。
――西侯さんのお城とは全然ちがう。
なにより隠そうという気配がない。皆でイエリナ姫の帰還――すなわち、内戦終結を寿ごうという雰囲気で充満している。
アイカは、胸に沁みるものを感じながら奥へと進んだ。
クリストフの先導で本殿に進むと、上座への着座を求められた。
「応えてあげなされ」
と、ナーシャにささやかれ、居心地の悪さを感じながら御座に腰をおろした。
眼前には出迎えていた東侯エドゥアルドほか、すべての家臣がならび、片膝をついた。
「イエリナ姫。よくぞザノクリフの地にお戻りくださいました。東侯エドゥアルドにございます」
「あ……、ありがとうございます……」
つづいて東侯の重臣たちが挨拶してゆくが、オズオズとしか返答できない。
――い、いきなりハイテンションに歓迎されても、どう応えたら……。
嬉しくも恥ずかしくもあったが、皆の感激をどう受け止めたらよいのか定まらない。
重臣をひとりずつ紹介していく東侯エドゥアルド。短く整えた顎ひげが印象的で、スリムな体型ながら筋肉質にみえる。歳の頃はバシリオスとおなじ50代くらいであろうか。
――精悍な細マッチョおやじ。
というのが、アイカの印象であった。
ひと通りの挨拶が終わり、家臣たちの先頭で膝を突くエドゥアルドが、アイカに顔を向けた。
「イエリナ姫様の、これまでのご苦難……。簡単にではございますが、クリストフよりうかがっております」
「あ……、ども……」
「我らの内戦を鎮めんがため、お戻りいただきましたこと、まことに感謝しております」
アイカの傍らに控える女官ナーシャはその光景を見て、まぶしそうに目を細めた。
国の《正統》を見失ったテノリア王国に対して、明確な《正統》が戻ったザノクリフ王国。東候エドゥアルドはじめ、皆の胸中をおもえば、羨ましくさえある。
大きく息を吸い込んだエドゥアルドが、アイカに頭をさげた。
「我らがいかなる道を進むべきか。イエリナ姫のお考えをお聞かせください」
「けっ……、喧嘩をやめられる方法を、……みんなで考えてください」
本殿に居並ぶ家臣たちに、ちいさな動揺がおきた。
顔をあげたエドゥアルドにも表情に困惑の色がうかんでいる。
「みんなで……?」
「はい。……皆さんの国でしょ?」
ザノクリフ王国に生きる者にとって、国とは国王のモノであり、領土は太守のモノであった。みんなの国、国民の国という観念はほとんどない。
皆さんの国――、
アイカの言葉に、ポカンと口をあけている者もいたし、なんと無責任なと眉をしかめる者もいた。
エドゥアルドのすぐうしろに控えていたクリストフが、アイカの気持ちを代弁するように立ち上がった。
バルドル城を脱出してからラドラム城にむかう途中、問答を重ねていたクリストフは、すこしだけアイカの『感覚』を理解しはじめていた。
「イエリナ姫は、我らに『喧嘩をやめよ』と命じられるお立場には、まだ立たれていない」
「ふむ……」
エドゥアルドが眉を寄せた顔を、クリストフに向けた。
「お立場については、俺たちで押し上げるほかない」
「……なるほど」
「だがそれ以前に……、西候セルジュは、自らの野心のためにイエリナ姫のお命をねらった。お戻りいただいて、めでたし、めでたしとはならないことが、明らかになったではないか」
「うむ……」
「それは、イエリナ姫の問題ではなく、我らザノクリフ臣民の問題ではないのか? 我らが《我が事》として考えねばならないのではないか?」
居心地のわるさが限界に達していたアイカが、御座から立ち上がった。
「……みなさん」
「「「ははっ」」」
ふたたび膝をついたクリストフも含めて、皆がザッと頭をさげてアイカの言葉を待つ。
屈強な男たちの一糸乱れぬ振る舞いに、一瞬、ひるんだアイカであったが、
――意を明らかにせねばならぬ。
というナーシャの言葉を思い出し、勇気を奮い立たせた。
「円く座りましょう!」
「ん……?」
「皆さんの顔がよく見えるように、車座になってお話しさせてください」
と言いながら、すでに御座のおかれた台座から降り始めている。
アイカ――イエリナ姫の「直臣」として紹介されていたアイラとナーシャが皆をうながしてまわり、エドゥアルドの家臣たちが戸惑いながらも円形になって腰をおろしてゆく。
序列があいまいになり、ひらたい場となった本殿を見渡したアイカは、
――すこし、話しやすくなりました。
と、ちいさなため息をついた。
そして、自分の顔を見つめるおじさんたちの顔をひとつひとつ眺めながら、口を開いた。
「私は……、みなさんがご存知の事情で、ザノクリフ王国のことを、ほとんど知りません」
皆、いたましげな表情でうなずいた。
イエリナ姫の魂が別人のものとなっていることは、実はザノクリフ王国の者たちにとって重大事ではない。信仰する精霊が運んだ魂であるのだから、むしろ尊いものであると考える。
そして、亡き王太子妃ミレーナが自らの命と引き換えに《反魂の秘法》を用いざるを得なかった、その悲劇にこそ、いたましさを覚えるのだ。
アイカが続けた。
「なのに、私がザノクリフ王国に……戻ろうと思ったのは、クリストフさんの『喧嘩を止めたい』『悲惨な内戦を終わらせたい』という、強い気持ちに打たれたからです」
クリストフが照れ隠しをするように、渋い顔をして鼻をかいた。
――むう。相変わらず、態度わるいな。
と思ったアイカだったが、話をつづける。
「みなさんも、おなじ気持ちだと思っているんですけど……、それでいいですよね?」
「その通りです」
と、エドゥアルドが言うと、家臣たちもうなずいた。
それに「ありがとうございます」と返したアイカがだったが、エドゥアルドだけではなく、家臣たちの言葉も求めた。
――いかにも。
――まちがいありません。
――おなじ気持です。
主君をまえに戸惑いながらも、彼らは自らの言葉で応えてゆく。
そのひとつひとつに、アイカはうなずきを返す。
そして、その場にすわる全員の意思を確認してから、話しをつづけた。
「みなさんが『喧嘩を止めたい』という気持ちで、ひとつになっていることを知って安心しました。……だから、なにも知らない私より、ずっとずーっと長い間、苦しまれてきた皆さんに考えてもらいたいんです。どうしたら、この喧嘩が終わるか。喧嘩をやめて、どんな国をつくりたいのか」
家臣のひとりが口を開いた。
「どんな国もなにも、領土を安堵していただけるのであれば、それで文句はありません」
「なるほどぉ~」
腕組みしたアイカが、なんども首を縦にふってみせる。
「……いや、なるほどではなくて……、イエリナ姫は、安堵してくださるのですか? 我らの領土を?」
「私が言えば、それで決めようとするでしょ? みなさん」
「それは、もちろん……」
「そうじゃなくて、……うーん。……どうしたら安堵? できるのか、みんなで考えてみましょうよ」
それでもなお躊躇いがちではあったが、すこしずつ意見が出始める。
「……西候方の者たちに頭をさげ……」
「あやらに頭をさげるなど、とんでもない! 嵩にかかって、どんな要求をしてくるか分からんぞ!」
「しかし、和平のためであれば……」
「わしはあやつらに、息子を斬られたのだ! こちらから頭をさげるなど」
「いや、こんな評定をしておっても埒があかぬ! イエリナ姫を旗印にヤツらを制圧するべきだ!」
「それでは内戦は終わらぬ!」
場の議論は次第にヒートアップしてゆく。
東候エドゥアルドにしても、公子クリストフにしても、見たことのない風景であった。
ザノクリフの気風として、特定の家臣に下問することはあっても、重要事項を家臣全体の諮問にかけるようなことはしない。
高まる熱気に、ややもすれば怖気を誘われる。
――皆が、好き勝手なことを言い出して、イエリナ姫はどのようにこの場を収めるつもりか……。
チラと表情をうかがうが、アイカはすべての話しに、興味深そうにうなずいてみせているだけである。ときには「それで、それで?」と、もっと話すように促しさえする。
とはいえ、白熱した議論を交わしているのは、戦時中の武将たちである。
互いに剣を抜くようなことになるのではと、ヒヤヒヤするエドゥアルドであったが、小柄な少女であるイエリナ姫を前に、そこは自制できているようであった。
そして、みなが言いたい放題に言い合うこと、実に5時間――、
東候エドゥアルドは、奇跡を目の当たりにするような思いであった。
みなの意見がひとつに収束しはじめたのだ。
ツラい思い、敵への憎悪、そもそも不甲斐ない王家への不満、たまりにたまっていた憤懣を吐き出し、みなで怒り、涙し――、
やがて、建設的な意見に、皆がうなずきはじめた。
その間、うんうんと、首を縦にふるだけであったアイカ。
エドゥアルドは、信じられないものを見るような目でその小さな体躯を眺めた――。
東侯エドゥアルドをはじめ、家臣一同が左右にズラリと並ぶ中、アイカたち一行が進む。
予想外の歓迎に怯んだアイカに、カリュがささやいた。
「背筋をお伸ばしください」
「あ……、は、はいっ」
「ゆっくり歩かれたので大丈夫です。……みなさんのお顔をご覧ください」
「えっ……?」
と、立ち並ぶおじさんたちの顔をみると、どれも感無量といった趣きであった。
よく見ると、うしろには下男下女といった風情の者たちも並んでおり、目には涙さえうかべている。
――西侯さんのお城とは全然ちがう。
なにより隠そうという気配がない。皆でイエリナ姫の帰還――すなわち、内戦終結を寿ごうという雰囲気で充満している。
アイカは、胸に沁みるものを感じながら奥へと進んだ。
クリストフの先導で本殿に進むと、上座への着座を求められた。
「応えてあげなされ」
と、ナーシャにささやかれ、居心地の悪さを感じながら御座に腰をおろした。
眼前には出迎えていた東侯エドゥアルドほか、すべての家臣がならび、片膝をついた。
「イエリナ姫。よくぞザノクリフの地にお戻りくださいました。東侯エドゥアルドにございます」
「あ……、ありがとうございます……」
つづいて東侯の重臣たちが挨拶してゆくが、オズオズとしか返答できない。
――い、いきなりハイテンションに歓迎されても、どう応えたら……。
嬉しくも恥ずかしくもあったが、皆の感激をどう受け止めたらよいのか定まらない。
重臣をひとりずつ紹介していく東侯エドゥアルド。短く整えた顎ひげが印象的で、スリムな体型ながら筋肉質にみえる。歳の頃はバシリオスとおなじ50代くらいであろうか。
――精悍な細マッチョおやじ。
というのが、アイカの印象であった。
ひと通りの挨拶が終わり、家臣たちの先頭で膝を突くエドゥアルドが、アイカに顔を向けた。
「イエリナ姫様の、これまでのご苦難……。簡単にではございますが、クリストフよりうかがっております」
「あ……、ども……」
「我らの内戦を鎮めんがため、お戻りいただきましたこと、まことに感謝しております」
アイカの傍らに控える女官ナーシャはその光景を見て、まぶしそうに目を細めた。
国の《正統》を見失ったテノリア王国に対して、明確な《正統》が戻ったザノクリフ王国。東候エドゥアルドはじめ、皆の胸中をおもえば、羨ましくさえある。
大きく息を吸い込んだエドゥアルドが、アイカに頭をさげた。
「我らがいかなる道を進むべきか。イエリナ姫のお考えをお聞かせください」
「けっ……、喧嘩をやめられる方法を、……みんなで考えてください」
本殿に居並ぶ家臣たちに、ちいさな動揺がおきた。
顔をあげたエドゥアルドにも表情に困惑の色がうかんでいる。
「みんなで……?」
「はい。……皆さんの国でしょ?」
ザノクリフ王国に生きる者にとって、国とは国王のモノであり、領土は太守のモノであった。みんなの国、国民の国という観念はほとんどない。
皆さんの国――、
アイカの言葉に、ポカンと口をあけている者もいたし、なんと無責任なと眉をしかめる者もいた。
エドゥアルドのすぐうしろに控えていたクリストフが、アイカの気持ちを代弁するように立ち上がった。
バルドル城を脱出してからラドラム城にむかう途中、問答を重ねていたクリストフは、すこしだけアイカの『感覚』を理解しはじめていた。
「イエリナ姫は、我らに『喧嘩をやめよ』と命じられるお立場には、まだ立たれていない」
「ふむ……」
エドゥアルドが眉を寄せた顔を、クリストフに向けた。
「お立場については、俺たちで押し上げるほかない」
「……なるほど」
「だがそれ以前に……、西候セルジュは、自らの野心のためにイエリナ姫のお命をねらった。お戻りいただいて、めでたし、めでたしとはならないことが、明らかになったではないか」
「うむ……」
「それは、イエリナ姫の問題ではなく、我らザノクリフ臣民の問題ではないのか? 我らが《我が事》として考えねばならないのではないか?」
居心地のわるさが限界に達していたアイカが、御座から立ち上がった。
「……みなさん」
「「「ははっ」」」
ふたたび膝をついたクリストフも含めて、皆がザッと頭をさげてアイカの言葉を待つ。
屈強な男たちの一糸乱れぬ振る舞いに、一瞬、ひるんだアイカであったが、
――意を明らかにせねばならぬ。
というナーシャの言葉を思い出し、勇気を奮い立たせた。
「円く座りましょう!」
「ん……?」
「皆さんの顔がよく見えるように、車座になってお話しさせてください」
と言いながら、すでに御座のおかれた台座から降り始めている。
アイカ――イエリナ姫の「直臣」として紹介されていたアイラとナーシャが皆をうながしてまわり、エドゥアルドの家臣たちが戸惑いながらも円形になって腰をおろしてゆく。
序列があいまいになり、ひらたい場となった本殿を見渡したアイカは、
――すこし、話しやすくなりました。
と、ちいさなため息をついた。
そして、自分の顔を見つめるおじさんたちの顔をひとつひとつ眺めながら、口を開いた。
「私は……、みなさんがご存知の事情で、ザノクリフ王国のことを、ほとんど知りません」
皆、いたましげな表情でうなずいた。
イエリナ姫の魂が別人のものとなっていることは、実はザノクリフ王国の者たちにとって重大事ではない。信仰する精霊が運んだ魂であるのだから、むしろ尊いものであると考える。
そして、亡き王太子妃ミレーナが自らの命と引き換えに《反魂の秘法》を用いざるを得なかった、その悲劇にこそ、いたましさを覚えるのだ。
アイカが続けた。
「なのに、私がザノクリフ王国に……戻ろうと思ったのは、クリストフさんの『喧嘩を止めたい』『悲惨な内戦を終わらせたい』という、強い気持ちに打たれたからです」
クリストフが照れ隠しをするように、渋い顔をして鼻をかいた。
――むう。相変わらず、態度わるいな。
と思ったアイカだったが、話をつづける。
「みなさんも、おなじ気持ちだと思っているんですけど……、それでいいですよね?」
「その通りです」
と、エドゥアルドが言うと、家臣たちもうなずいた。
それに「ありがとうございます」と返したアイカがだったが、エドゥアルドだけではなく、家臣たちの言葉も求めた。
――いかにも。
――まちがいありません。
――おなじ気持です。
主君をまえに戸惑いながらも、彼らは自らの言葉で応えてゆく。
そのひとつひとつに、アイカはうなずきを返す。
そして、その場にすわる全員の意思を確認してから、話しをつづけた。
「みなさんが『喧嘩を止めたい』という気持ちで、ひとつになっていることを知って安心しました。……だから、なにも知らない私より、ずっとずーっと長い間、苦しまれてきた皆さんに考えてもらいたいんです。どうしたら、この喧嘩が終わるか。喧嘩をやめて、どんな国をつくりたいのか」
家臣のひとりが口を開いた。
「どんな国もなにも、領土を安堵していただけるのであれば、それで文句はありません」
「なるほどぉ~」
腕組みしたアイカが、なんども首を縦にふってみせる。
「……いや、なるほどではなくて……、イエリナ姫は、安堵してくださるのですか? 我らの領土を?」
「私が言えば、それで決めようとするでしょ? みなさん」
「それは、もちろん……」
「そうじゃなくて、……うーん。……どうしたら安堵? できるのか、みんなで考えてみましょうよ」
それでもなお躊躇いがちではあったが、すこしずつ意見が出始める。
「……西候方の者たちに頭をさげ……」
「あやらに頭をさげるなど、とんでもない! 嵩にかかって、どんな要求をしてくるか分からんぞ!」
「しかし、和平のためであれば……」
「わしはあやつらに、息子を斬られたのだ! こちらから頭をさげるなど」
「いや、こんな評定をしておっても埒があかぬ! イエリナ姫を旗印にヤツらを制圧するべきだ!」
「それでは内戦は終わらぬ!」
場の議論は次第にヒートアップしてゆく。
東候エドゥアルドにしても、公子クリストフにしても、見たことのない風景であった。
ザノクリフの気風として、特定の家臣に下問することはあっても、重要事項を家臣全体の諮問にかけるようなことはしない。
高まる熱気に、ややもすれば怖気を誘われる。
――皆が、好き勝手なことを言い出して、イエリナ姫はどのようにこの場を収めるつもりか……。
チラと表情をうかがうが、アイカはすべての話しに、興味深そうにうなずいてみせているだけである。ときには「それで、それで?」と、もっと話すように促しさえする。
とはいえ、白熱した議論を交わしているのは、戦時中の武将たちである。
互いに剣を抜くようなことになるのではと、ヒヤヒヤするエドゥアルドであったが、小柄な少女であるイエリナ姫を前に、そこは自制できているようであった。
そして、みなが言いたい放題に言い合うこと、実に5時間――、
東候エドゥアルドは、奇跡を目の当たりにするような思いであった。
みなの意見がひとつに収束しはじめたのだ。
ツラい思い、敵への憎悪、そもそも不甲斐ない王家への不満、たまりにたまっていた憤懣を吐き出し、みなで怒り、涙し――、
やがて、建設的な意見に、皆がうなずきはじめた。
その間、うんうんと、首を縦にふるだけであったアイカ。
エドゥアルドは、信じられないものを見るような目でその小さな体躯を眺めた――。
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