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第九章 山湫哀華
198.感謝して忘れぬ
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・【04 お見舞い】
・
遅い。
そんなことを思った。
そのせいで落語の本もちょっと読んじゃった。
落語は話し手によって全然違うみたいなことを書いてあったが本当にそんなことがあるのか、とか考えていた。
その後、CDは全部聞いたし、話としての面白さも理解したけども、やっぱり笑うという感じではなくて。
感覚としては「意表をついたオチだなぁ」と思うだけだった。
1つだけ、あたま山という落語だけは何かすごかったけども。
あたま山の落語だけはずっと聞いてしまっている。
でもまあそれも話としての面白さで、笑うという感じではない。まあ笑えないオチでもあるんだけども。
お母さんやお父さんはそれぞれ毎日代わる代わる来てくれるし、同級生が来て、学校であった面白い話もしてくれるんだけども、今は正直、すぐに京子へ落語の話がしたかった。
やっぱりあたま山のすごさを共感したいし、感想も忘れる前に言いたいから。
訪問者が来て、カーテンを開けると、やっと京子でまずはホッとした。ちゃんと来てくれたから。
「京子、やってくるの遅いよ」
と俺が言うと、京子がハッとした表情を浮かべてからすぐに、
「そんなに落語のグッズ、邪魔だった……? さすがにシュンとさせて頂きます」
「いやいや、そういうことじゃなくて。というか落語のCDは一通り聞いたよ」
と俺が答えると、京子は「えっ」という声を漏らしてから、
「本当に? 落語、どうだった……?」
とおそるおそる聞いてきたので、まあとりあえずは、
「面白かったよ」
と答えておくと、京子は胸をなで下ろすように、
「良かったぁ、落語って面白いよねぇ」
と笑った。
さて、ここから話として、物語としては、と言うにはどうしようか少し考えていると、
「初心者用として、入門編として、物語の筋は大体理解できたってことだよね?」
何だその言い方、と、ちょっと思ってしまった。
何かバカでも物語の筋は理解できたよね? みたいな感じに聞こえてしまった。全然理解くらいできるし。
だから、
「理解はできたよ、というか話としては面白いけども、あんまり笑うモノじゃないよな」
と、ちょっとキツめでも、そう言うと、京子はうんうん頷きながら、
「まあ古典に忠実な落語家さんを選んだからねぇ」
と、別に”喰らってる”ような感じは無い。
むしろ予想通りみたいな感じ。
「ちょっと京子、落語って爆笑するようなモノじゃないのか?」
「それは人によるよ、今回由宇に貸したCDは全部基本に忠実な噺だったでしょ?」
「だったでしょ、と言われても、何が基本かどうかも分からないから」
と答えると、間髪入れずに京子が、
「じゃあそれが基本なの。それが基本で大胆にアレンジする落語家もいるんだよ」
と何だか自慢げにそう言った。
「確かに落語の本にもアレンジするって書いてあったけども、そんなに違う人もいるのか?」
「いるよ! あと古典落語じゃない新作落語もあるから全然大笑いできる落語家さんもいるよ!」
そう熱弁し始めた京子。
いやクールに行クールはどうしたんだよ、と思っていると、
「でね! でね! 明日ここの病院に輪郭亭秋芳(りんかくていしゅうほう)さんが来るんだって! 一緒に見ようよ!」
病院に落語、そう言えば何か看護師からチラシを渡されていたな。
月に1回、お楽しみ会があるみたいな説明もされたような。
でも大体こういうのって年寄り向けだと思って、チラシを読むこともしていなかったけども、そうか、落語なのか。
京子の熱い喋りは続く。
「輪郭亭秋芳さんはすごいんだよ! このあたりの地元出身の落語家さんなんだけども、古典のアレンジには定評があって! きっと基礎知識を持った由宇ならすごく楽しめるはずだよ!」
「その人は、ちゃんと笑える落語家なのか?」
「勿論! 大爆笑間違いなしだよ!」
どんなハードルの上げ方だよ、と思った。
でも見てみたいとも確かに思った。
輪郭亭秋芳という人が来るのは、どうやら次の日の土曜日らしい。
せっかくだから行ってみることにしよう。
「楽しみだね! 楽しみだね!」
と大興奮の京子に何だか笑ってしまった。
こんな楽しそうな顔する京子を見たのは、幼稚園の時、一緒に砂場で遊んでいる以来だったから。
この後は、あたま山の話をして盛り上がった。
・【04 お見舞い】
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遅い。
そんなことを思った。
そのせいで落語の本もちょっと読んじゃった。
落語は話し手によって全然違うみたいなことを書いてあったが本当にそんなことがあるのか、とか考えていた。
その後、CDは全部聞いたし、話としての面白さも理解したけども、やっぱり笑うという感じではなくて。
感覚としては「意表をついたオチだなぁ」と思うだけだった。
1つだけ、あたま山という落語だけは何かすごかったけども。
あたま山の落語だけはずっと聞いてしまっている。
でもまあそれも話としての面白さで、笑うという感じではない。まあ笑えないオチでもあるんだけども。
お母さんやお父さんはそれぞれ毎日代わる代わる来てくれるし、同級生が来て、学校であった面白い話もしてくれるんだけども、今は正直、すぐに京子へ落語の話がしたかった。
やっぱりあたま山のすごさを共感したいし、感想も忘れる前に言いたいから。
訪問者が来て、カーテンを開けると、やっと京子でまずはホッとした。ちゃんと来てくれたから。
「京子、やってくるの遅いよ」
と俺が言うと、京子がハッとした表情を浮かべてからすぐに、
「そんなに落語のグッズ、邪魔だった……? さすがにシュンとさせて頂きます」
「いやいや、そういうことじゃなくて。というか落語のCDは一通り聞いたよ」
と俺が答えると、京子は「えっ」という声を漏らしてから、
「本当に? 落語、どうだった……?」
とおそるおそる聞いてきたので、まあとりあえずは、
「面白かったよ」
と答えておくと、京子は胸をなで下ろすように、
「良かったぁ、落語って面白いよねぇ」
と笑った。
さて、ここから話として、物語としては、と言うにはどうしようか少し考えていると、
「初心者用として、入門編として、物語の筋は大体理解できたってことだよね?」
何だその言い方、と、ちょっと思ってしまった。
何かバカでも物語の筋は理解できたよね? みたいな感じに聞こえてしまった。全然理解くらいできるし。
だから、
「理解はできたよ、というか話としては面白いけども、あんまり笑うモノじゃないよな」
と、ちょっとキツめでも、そう言うと、京子はうんうん頷きながら、
「まあ古典に忠実な落語家さんを選んだからねぇ」
と、別に”喰らってる”ような感じは無い。
むしろ予想通りみたいな感じ。
「ちょっと京子、落語って爆笑するようなモノじゃないのか?」
「それは人によるよ、今回由宇に貸したCDは全部基本に忠実な噺だったでしょ?」
「だったでしょ、と言われても、何が基本かどうかも分からないから」
と答えると、間髪入れずに京子が、
「じゃあそれが基本なの。それが基本で大胆にアレンジする落語家もいるんだよ」
と何だか自慢げにそう言った。
「確かに落語の本にもアレンジするって書いてあったけども、そんなに違う人もいるのか?」
「いるよ! あと古典落語じゃない新作落語もあるから全然大笑いできる落語家さんもいるよ!」
そう熱弁し始めた京子。
いやクールに行クールはどうしたんだよ、と思っていると、
「でね! でね! 明日ここの病院に輪郭亭秋芳(りんかくていしゅうほう)さんが来るんだって! 一緒に見ようよ!」
病院に落語、そう言えば何か看護師からチラシを渡されていたな。
月に1回、お楽しみ会があるみたいな説明もされたような。
でも大体こういうのって年寄り向けだと思って、チラシを読むこともしていなかったけども、そうか、落語なのか。
京子の熱い喋りは続く。
「輪郭亭秋芳さんはすごいんだよ! このあたりの地元出身の落語家さんなんだけども、古典のアレンジには定評があって! きっと基礎知識を持った由宇ならすごく楽しめるはずだよ!」
「その人は、ちゃんと笑える落語家なのか?」
「勿論! 大爆笑間違いなしだよ!」
どんなハードルの上げ方だよ、と思った。
でも見てみたいとも確かに思った。
輪郭亭秋芳という人が来るのは、どうやら次の日の土曜日らしい。
せっかくだから行ってみることにしよう。
「楽しみだね! 楽しみだね!」
と大興奮の京子に何だか笑ってしまった。
こんな楽しそうな顔する京子を見たのは、幼稚園の時、一緒に砂場で遊んでいる以来だったから。
この後は、あたま山の話をして盛り上がった。
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