【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら

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第七章 姉妹契誓

160.狼の紋章

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 アイカとアイラが再び砂漠を渡って旧都に向かうにあたって、護衛には百騎兵長のネビと、賊の首領ジョルジュが付くことになった。

 フェティが懐き始めていたジョルジュであったが、アイカの砂漠行で別の賊に出くわさないとも限らない。

 大きな賊の一党を率いるジョルジュがいれば、交渉するのにも安心であった。


「わははは! 殿下の家臣の列に加えていただいて、初のご下命。このジョルジュ、必ずやまっとうして見せますぞ」


 豪快に笑うジョルジュに、リティアも微笑んだ。


「砂漠にジョルジュほど詳しい者はおるまい。よろしく頼む」

「はははっ! しかし、プシャンの狼も一緒ならば、儂が教わることの方が多いかもしれませぬわ」


 ジョルジュは、分厚く皺だらけの手で、タロウとジロウの背を撫でた。

 さらに、リティアは、カリュにも同行を命じた。

 侍女であるカリュを行かせるのなら、アイカはいらないのではないかと思わないでもなかったが、リティアのアイカへの愛情の現れと、皆が受け止めた。

 そして、ロマナのもとから送られていた弓の名手で眼帯美少女チーナにも同行を命じ、そのままヴールに戻るように言い渡した。


「西南伯公女ロマナ殿のご厚意により、第3王女リティア、無事にルーファに入ることができた。チーナ殿におかれては、ご主君の大命を見事に果たされた。心から礼を申し上げる」

「もったいないお言葉にございます」

「ロマナ殿にも、よしなにお伝えくださいませ」

「はっ。必ずや」


  *


 新リティア宮殿の隣に建つ天空神ラトゥパヌの拝殿で、送別の式典が開かれる。

 タロウとジロウ、二頭の狼とともに膝を突いて首を垂れるアイカに、リティアが言葉をかけた。


「アイカ。苦労をかけるが、よろしく頼む」

「はっ。殿下のお心を、王太后陛下、ステファノス殿下に必ずやお届けしてまいります」


 と、別れの言葉を述べたアイカは、


 ――すっかり、言葉づかいが出来るようになったなぁ。


 などと、変なところで自分に感心していた。

 リティアは、クレイアに命じてアイカへの餞別の品を持ってこさせた。

 それは、アイカの身体のサイズに合わせてつくらせた、肩にあてる防具であった。


「アイカ、そなたには我が防具を分け与えたい」


 父王ファウロスから賜った重装鎧の一部を取り外してつくらせた、肩あてであった。

 リティア自らが、アイカの肩に装着させてやる。


「……アイカ。そなたの手には既に、母より受け継いだという小刀、それにロマナからもらった西南伯の弓矢がある。優しいそなたに、これ以上の武器は似合うまい……」

「殿下…………」

「よし、着けられたぞ! うむ! よく似合っている!」


 笑顔のリティアに一瞬、見惚れた後、アイカは自分の肩に乗った防具を見た。

 離れていても、リティアとずっと一緒にいれるような気がして、ほんのりと嬉しい。

 そして、肩あてに描かれたに気が付く。


「殿下……、これは……?」


 リティアの紋章に似ていたが少し違う。両脇に描かれる動物が、二頭の狼になっている。

 それが、タロウとジロウを意味することは明らかであったが……、王族を意味する王冠も描かれている……。

 リティアが、にこりと微笑んだ。


「アイカよ。私と姉妹のちぎりを結ぼう!」

「えっ⁉」

「我が義妹いもうととして、堂々と旧都に乗り込み、王太后陛下にお目見えせよ!」


 狼狽えたアイカは、思わずクレイアの顔を見た。

 リティア宮殿に入って以来、こういう時に頼ってきたのはクールビューティな巨乳侍女クレイアであった。

 クレイアは、穏やかな微笑みを浮かべて頷きをひとつ、アイカに返した。

 それを見たアイカは、ゆっくりとリティアの顔に視線を移した。


「い……、いいんですか……?」

「ああ。もちろんだ」


 リティアは、真剣な眼差しでアイカの黄金色の瞳を見詰めた――。
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