【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら

文字の大きさ
上 下
65 / 307
第三章 総候参朝

58.ホーム *アイカ視点

しおりを挟む
 ロマナさんとの狩りでヘトヘトになった翌日、予定通り王都に向けて出発した。


「アイカ。ロマナ様との狩りは内緒ね」


 と、昨晩のお風呂でクレイアさんに口止めされた。


 ――はい。なんとなく察してました。


 内緒が多いのも、だんだん慣れてきました。むしろ、王宮の一員になってきた実感が湧きます。


「戻られてすぐに、殿下がロマナ様に礼状を出されたから、いただた弓矢は持ち歩いても大丈夫だから」


 クレイアさんが私の頭を洗いながら、付け加えてくれた。


 ――さすが、仕事が速いです。


 ロマナさんの『筋書き』に沿うよう、侍女への贈り物にお礼状を出したってことなんだと思う。

 聖山を背に、タロウとジロウの背に乗って、王都に向けてひた走る。

 背中で、ロマナさんにいただいた弓と矢筒が揺れた。


 ――むふっ。


 いただきモノって、嬉しい。こんなに心が弾むものなんだ。

 野営を繰り返し、イリアスさんとも――相変わらず顔は怖いけど――少し仲良くなった。イリアスさんの守護聖霊は『養蜂神リタイスア』というらしい。


 ――養蜂?


 まだまだ、謎が多い異世界こっちことわり

 さらに言うと、クレイアさんの守護聖霊だと聞いてた『ポトネ』は『殺戮神』らしい。

 クールビューティに殺戮神の取り合わせは、一気にサイコパス感が……。ただ、どちらもとても稀な神様ではあるらしい。

 侍女長のアイシェさんにも、ゼルフィアさんにも、愛で友のアイラさんにも、守護聖霊はないらしい。守護聖霊があること自体、とても珍しくて尊ばれることなんだと改めて教わる。


 ――まあ……、そういうものなんだと受け入れておくしかない。


 そういえば、王都でお留守番のドーラさんの替わりに、今回の旅で指揮してた百騎兵長のネビさん。

 どこかで見たことあると思ってたんだけど、


 ――あの時の、眉毛が薄い男の人だ!


 最初の最初の土間で救けてくれた騎士さんの一人にいたことを、ようやく思い出した。

 元は、エメーウさんの護衛として、ルーファから一緒に来た『砂漠の民』の戦士だったのだそう。

 ところが、信仰する一神教の『聖人マツラフ』が守護聖霊にあることを審神みわけられて、百騎兵長に取り立てられた、第六騎士団の中でも変わり種なんだとか。

 王太后さまに会う前、旧都を散策中に入った武具店で、ネビさんは暗器のことを熱心に質問してた。

 暗器――短剣や手裏剣――に、造詣が深い、砂漠の戦士。眉毛薄い。


 ――なんか、いいと思います。


 美形ではありませんが、なんかいいです。頭に着けてる色鮮やかな羽根飾りも、なんかステキです。知らずに街で会ったらビビりそうですけど、味方って分かってたら心強い、強面さんです。

 往きと同じく4晩野営して、5日目に王都に聳える王宮と大神殿のとんがり屋根が見えてきた。

 由緒ありそうな商店が静かに営業してた旧都とは対照的な、毎日がバザールのような賑わいの王都ヴィアナに帰り着いた。

 旧都に出かける前、たった1週間ほどいただけの王都、リティア宮殿。

 なのに、もう、帰ってきた――! って、気持ちになる。

 ここが、今の私の『ホーム』なんだって、じんわり温かい気持ちになった――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

公爵令嬢の私に騎士も誰も敵わないのですか?

海野幻創
ファンタジー
公爵令嬢であるエマ・ヴァロワは、最高の結婚をするために幼いころから努力を続けてきた。 そんなエマの婚約者となったのは、多くの人から尊敬を集め、立派な方だと口々に評される名門貴族の跡取り息子、コンティ公爵だった。 夢が叶いそうだと期待に胸を膨らませ、結婚準備をしていたのだが── 「おそろしい女……」 助けてあげたのにも関わらず、お礼をして抱きしめてくれるどころか、コンティ公爵は化け物を見るような目つきで逃げ去っていった。 なんて男! 最高の結婚相手だなんて間違いだったわ! 自国でも隣国でも結婚相手に恵まれず、結婚相手を探すだけの社交界から離れたくなった私は、遠い北の地に住む母の元へ行くことに決めた。 遠い2000キロの旅路を執事のシュヴァリエと共に行く。 仕える者に対する態度がなっていない最低の執事だけど、必死になって私を守るし、どうやらとても強いらしい── しかし、シュヴァリエは私の方がもっと強いのだという。まさかとは思ったが、それには理由があったのだ。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

離婚したので冒険者に復帰しようと思います。

黒蜜きな粉
ファンタジー
元冒険者のアラサー女のライラが、離婚をして冒険者に復帰する話。 ライラはかつてはそれなりに高い評価を受けていた冒険者。 というのも、この世界ではレアな能力である精霊術を扱える精霊術師なのだ。 そんなものだから復職なんて余裕だと自信満々に思っていたら、休職期間が長すぎて冒険者登録試験を受けなおし。 周囲から過去の人、BBA扱いの前途多難なライラの新生活が始まる。 2022/10/31 第15回ファンタジー小説大賞、奨励賞をいただきました。 応援ありがとうございました!

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...