13 / 307
第一章 王都絢爛
11.白い楽園(1) *アイカ視点
しおりを挟む
白い泡に覆われていく、黒狼のジロウ。
一緒に洗ってくれてるクレイアさんのがブルンブルン揺れて、隣では、白狼のタロウを洗うアイシェさんとゼルフィアさんのが……。大きいおっぱいにも「種類」があるんですね。知らなかったです。心の中で手を合わせる。
一緒にお風呂って、まさか全員だなんて思わなかったです。
リティアさんは黒髪の衛騎士クロエさんに背中を流してもらってるし、どっちを見ても、眼福とはこのこと。ただ、隙あらば愛でたい私だけど、いきなりお風呂だなんて想定外。目のやり場に困りながら……、チラチラ見ちゃう。
「このくらいでどう?」
タロウの背中越しに、紫ボブの侍女長アイシェさんがやり切った! という笑顔を向けてくれた。
この笑顔は、アレだ。
夏休みにみんなでプール掃除したときに『部長』が向けてくれる笑顔だ。何部か分からないけど、とにかく『部長』の笑顔だ。キラリと光る白い歯と、お顔にちょっと付いてる泡がまぶしいです。
「よし! みんなで流してやろう」
と、リティアさんがいそいそと手桶でタロウの背中を流してくれる。王女さま、前も隠さずあけっぴろげですね。
リティアさんの両脇は、クロエさんと第六騎士団の千騎兵長だというドーラさんって女の人が護衛してる。ドーラさんは赤黒く無造作な髪に同じ色の瞳で、陸上選手のような体つきでシンプルにスタイルがいい。
大浴場は、やっぱり広かった。侍女の自室があの広さだもの、そりゃこうなりますよね。
「嫌がらないなら、タロウとジロウを先に湯に浸けてやれ」
と、興味津々の笑顔で、リティアさんが言った。
どうかな? と思いながら大きな浴槽に向かわせると、気持ち良さそうに浸かるな、お前たち。ビバノンノンか? だらしない顔をして、山奥からの道中、熊と格闘してた凛々しいお前たちは幻だったのか?
そういえば、私も温かいお湯なんて日本にいたとき以来、7年浸かってない。
――私も早く身体を洗ってお湯に浸かろう!
と、思った途端に、頭から温かいお湯が落ちてきた。
「よし! 次はアイカだ」
ぷはっとなって振り返ると、リティアさんが何度も見せてくれた悪戯っぽい笑顔で手桶を構えて立っていた。されるがまま、王女様自ら海綿のスポンジで背中を流してもらってドギマギしていると、急に合点がいった。
――そうか……。私、子供扱いされてるんだ。
そりゃそうですよね。あてがわれた自室の鏡台の大きな鏡に映った自分の姿を思い返す。子供だ。私、子供だった。心の中の『よこしまな気持ち』を、全部反省するよ。
13歳ってことは中学校に入りたて。ほぼ小学生のお子様が、高校生か大学生のお姉さま方と一緒にお風呂に入ってる感じ……。可愛がられて当然、とまでは思えないほど、ぼっち生活で染み着いた卑屈な気持ちもあるけど、子供らしく無邪気でいるべき――。
「殿下、ひどいじゃないですかぁ! 私だけのけ者にするなんてぇ!」
と、湯煙で反対側の壁が見えない広さの大浴場に声を響かせたのは、仁王立ちする審神者のメラニアさんだった。
素っ裸で仁王立ちは……、けしからんですよ。
無邪気、即、リタイア。
淡褐色の肌にスラリと伸びた脚が長くて、シルエットが美しいですね。
私の背中を流す手を止めたリティアさんは、苦笑いの美少女フェイスを上げた。
「すまんすまん。メラニアは正確には父上の配下だ。 無理を言ってはいかんと思って……」
「それは悲しいです。同じ第六騎士団の仲間だと思ってますのに」
「悪かった! 一緒に入ろう。こっちに来てアイカの横に並んでくれ。お詫びに背中を流させてもらおう」
「いいんですかぁ?」
いそいそと私の横に腰を降ろすメラニアさん。お昼間に会ったときは、落ち着いた雰囲気のお姉さんだと思ってたのだけど、なんだか可愛い。
「アイカは、私が」
と、まだ泡まみれのクレイアさんが後ろに回って、私の背中を海綿で泡だらけにしていく。
真横には肌が触れそうな距離でメラニアさん。淡褐色でスベスベの肌が、笑顔のリティアさんの手で白い泡に覆われていく。
広い大浴場では、皆さんがとりとめない会話で笑ってる。
入りたくても入れず、近くても遠くから愛でることしか出来なかった「にぎやかさ」の輪の中に、私がいる。
「かゆい所はない?」
私のよこしまな心の内なんて知らないクレイアさんが、優しく声をかけくれる。
「な、ないです……。へへっ」
白い泡と白い肌と白い湯煙とに視界が埋め尽くされる。輝く白い靄に包まれるよう。
通算24年間の人生一番の『楽園』で、妄想と緊張と多幸感がギュウギュウに詰め込まれた頭も真っ白になった――。
一緒に洗ってくれてるクレイアさんのがブルンブルン揺れて、隣では、白狼のタロウを洗うアイシェさんとゼルフィアさんのが……。大きいおっぱいにも「種類」があるんですね。知らなかったです。心の中で手を合わせる。
一緒にお風呂って、まさか全員だなんて思わなかったです。
リティアさんは黒髪の衛騎士クロエさんに背中を流してもらってるし、どっちを見ても、眼福とはこのこと。ただ、隙あらば愛でたい私だけど、いきなりお風呂だなんて想定外。目のやり場に困りながら……、チラチラ見ちゃう。
「このくらいでどう?」
タロウの背中越しに、紫ボブの侍女長アイシェさんがやり切った! という笑顔を向けてくれた。
この笑顔は、アレだ。
夏休みにみんなでプール掃除したときに『部長』が向けてくれる笑顔だ。何部か分からないけど、とにかく『部長』の笑顔だ。キラリと光る白い歯と、お顔にちょっと付いてる泡がまぶしいです。
「よし! みんなで流してやろう」
と、リティアさんがいそいそと手桶でタロウの背中を流してくれる。王女さま、前も隠さずあけっぴろげですね。
リティアさんの両脇は、クロエさんと第六騎士団の千騎兵長だというドーラさんって女の人が護衛してる。ドーラさんは赤黒く無造作な髪に同じ色の瞳で、陸上選手のような体つきでシンプルにスタイルがいい。
大浴場は、やっぱり広かった。侍女の自室があの広さだもの、そりゃこうなりますよね。
「嫌がらないなら、タロウとジロウを先に湯に浸けてやれ」
と、興味津々の笑顔で、リティアさんが言った。
どうかな? と思いながら大きな浴槽に向かわせると、気持ち良さそうに浸かるな、お前たち。ビバノンノンか? だらしない顔をして、山奥からの道中、熊と格闘してた凛々しいお前たちは幻だったのか?
そういえば、私も温かいお湯なんて日本にいたとき以来、7年浸かってない。
――私も早く身体を洗ってお湯に浸かろう!
と、思った途端に、頭から温かいお湯が落ちてきた。
「よし! 次はアイカだ」
ぷはっとなって振り返ると、リティアさんが何度も見せてくれた悪戯っぽい笑顔で手桶を構えて立っていた。されるがまま、王女様自ら海綿のスポンジで背中を流してもらってドギマギしていると、急に合点がいった。
――そうか……。私、子供扱いされてるんだ。
そりゃそうですよね。あてがわれた自室の鏡台の大きな鏡に映った自分の姿を思い返す。子供だ。私、子供だった。心の中の『よこしまな気持ち』を、全部反省するよ。
13歳ってことは中学校に入りたて。ほぼ小学生のお子様が、高校生か大学生のお姉さま方と一緒にお風呂に入ってる感じ……。可愛がられて当然、とまでは思えないほど、ぼっち生活で染み着いた卑屈な気持ちもあるけど、子供らしく無邪気でいるべき――。
「殿下、ひどいじゃないですかぁ! 私だけのけ者にするなんてぇ!」
と、湯煙で反対側の壁が見えない広さの大浴場に声を響かせたのは、仁王立ちする審神者のメラニアさんだった。
素っ裸で仁王立ちは……、けしからんですよ。
無邪気、即、リタイア。
淡褐色の肌にスラリと伸びた脚が長くて、シルエットが美しいですね。
私の背中を流す手を止めたリティアさんは、苦笑いの美少女フェイスを上げた。
「すまんすまん。メラニアは正確には父上の配下だ。 無理を言ってはいかんと思って……」
「それは悲しいです。同じ第六騎士団の仲間だと思ってますのに」
「悪かった! 一緒に入ろう。こっちに来てアイカの横に並んでくれ。お詫びに背中を流させてもらおう」
「いいんですかぁ?」
いそいそと私の横に腰を降ろすメラニアさん。お昼間に会ったときは、落ち着いた雰囲気のお姉さんだと思ってたのだけど、なんだか可愛い。
「アイカは、私が」
と、まだ泡まみれのクレイアさんが後ろに回って、私の背中を海綿で泡だらけにしていく。
真横には肌が触れそうな距離でメラニアさん。淡褐色でスベスベの肌が、笑顔のリティアさんの手で白い泡に覆われていく。
広い大浴場では、皆さんがとりとめない会話で笑ってる。
入りたくても入れず、近くても遠くから愛でることしか出来なかった「にぎやかさ」の輪の中に、私がいる。
「かゆい所はない?」
私のよこしまな心の内なんて知らないクレイアさんが、優しく声をかけくれる。
「な、ないです……。へへっ」
白い泡と白い肌と白い湯煙とに視界が埋め尽くされる。輝く白い靄に包まれるよう。
通算24年間の人生一番の『楽園』で、妄想と緊張と多幸感がギュウギュウに詰め込まれた頭も真っ白になった――。
121
お気に入りに追加
520
あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
神様 なかなか転生が成功しないのですが大丈夫ですか
佐藤醤油
ファンタジー
主人公を神様が転生させたが上手くいかない。
最初は生まれる前に死亡。次は生まれた直後に親に捨てられ死亡。ネズミにかじられ死亡。毒キノコを食べて死亡。何度も何度も転生を繰り返すのだが成功しない。
「神様、もう少し暮らしぶりの良いところに転生できないのですか」
そうして転生を続け、ようやく王家に生まれる事ができた。
さあ、この転生は成功するのか?
注:ギャグ小説ではありません。
最後まで投稿して公開設定もしたので、完結にしたら公開前に完結になった。
なんで?
坊、投稿サイトは公開まで完結にならないのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる