10 / 307
第一章 王都絢爛
8.緋色の花園(1) *アイカ視点
しおりを挟む――私の髪の毛、ピンクだ!
鏡台の鏡に映る、異世界に来て初めて見た自分の姿に驚いてしまった。しかも、瞳の色は金色だ! そして心の年齢より、だいぶ幼い顔立ち……。
そりゃそうだ。17歳で召喚されて7年山奥でサバイバルして――、身体は13歳。心は24歳。
「子供だ。私……」
思わず、声に出して呟いてしまった。
王都に来てからずっと抱いてた違和感の正体が、やっと分かった。皆んなから子供扱いされてたんだ。こりゃ、どう見られてるのか、早目に慣れないといけないな。
――ていうか、私、まあまあ可愛いな。
頭を左右に振って、マジマジと自分の顔を眺める。思ったほど日焼けもしてない。自分が自分でないような感覚は仕方ないにしても、自分で自分を愛でてるような不思議な気持ちにもなった。
王様との謁見が終わって、応接室に案内されたのかと思ったら、私の個室だという。しかも、この寝室以外にも部屋が沢山ある。広いし。天井高いし。絨毯ふかふかだし。高級ホテルのスウィートルームみたいだ。
――侍女って、どんな待遇?
そもそも、この8階までエレベーターでしたよね。たぶん人力の。
世界というか地球でも、アリストテレスさんの作った人力エレベーターが古代ギリシアにあったとかなかったとか。
嗚呼――。日本の家で、父の本棚からとりとめなく乱読してた本をもうちょっと、もう少しちゃんと読んどけば良かった。きっと、異世界で役立つこといっぱいあったのに、知識がなにもかもつまみ食いで中途半端だ。チートってヤツは出来そうにない。
と、前の部屋から声が聞こえた。
「アイカ? ……殿下がお見えになりますよ?」
クレイアさんの声だ! 慌てて寝室を出ると、笑いながら部屋に入るリティアさんの姿が見えた。
「ははは。早速、冒険していたのか? アイカ」
「へへっ」
と、妙な笑いを返してしまった。無造作に選んだ椅子に腰かけるリティアさん。
さっきまでの薄手のマントを羽織った軍服っぽいお衣裳も素敵でしたけど、少し砕けた感じの部屋着も素敵ですね。
「まずは、アイカの同僚になる私の侍女たちを紹介しておこう」
「は、はいっ」
「侍女長のアイシェだ」
と、リティアさんが指したのは、ツヤのある鮮やかな紫色をしたショートボブのお姉さん。お姉さんといっても若い。
「よろしくねっ」
元気印のムードメーカーって感じ。やや丸顔で上司というよりは先輩って雰囲気。ただし美人。
「こっちが、ゼルフィア」
「ゼルフィアです。よろしく」
と、目を細めるように笑顔を向けてくれたのは、やや小柄で白銀に濃い水色が潜んだ髪色のお姉さん。もちろん美人。
「それに、クレイア。今日からアイカを加えて私の侍女は4人になる」
どなたも、いつまで愛でても飽きないような美人さんばかり。
窓の外では抜けるような青空がやや赤みを帯び始めて、雲の輪郭がオレンジ色になぞられている。カーテンも高級そう。3階建て? というほど高い天井には、神様っぽい人たちの絵が描かれてる。その下には緋色の絨毯が敷き詰められていて、優雅に微笑んでる美人に、美少女。
私。本当に、こんな絢爛豪華な女の花園の一員として迎えていただけるのですか――?
81
お気に入りに追加
417
あなたにおすすめの小説
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
異世界道中ゆめうつつ! 転生したら虚弱令嬢でした。チート能力なしでたのしい健康スローライフ!
マーニー
ファンタジー
※ほのぼの日常系です
病弱で閉鎖的な生活を送る、伯爵令嬢の美少女ニコル(10歳)。対して、亡くなった両親が残した借金地獄から抜け出すため、忙殺状態の限界社会人サラ(22歳)。
ある日、同日同時刻に、体力の限界で息を引き取った2人だったが、なんとサラはニコルの体に転生していたのだった。
「こういうときって、神様のチート能力とかあるんじゃないのぉ?涙」
異世界転生お約束の神様登場も特別スキルもなく、ただただ、不健康でひ弱な美少女に転生してしまったサラ。
「せっかく忙殺の日々から解放されたんだから…楽しむしかない。ぜっっったいにスローライフを満喫する!」
―――異世界と健康への不安が募りつつ
憧れのスローライフ実現のためまずは健康体になることを決意したが、果たしてどうなるのか?
魔法に魔物、お貴族様。
夢と現実の狭間のような日々の中で、
転生者サラが自身の夢を叶えるために
新ニコルとして我が道をつきすすむ!
『目指せ健康体!美味しいご飯と楽しい仲間たちと夢のスローライフを叶えていくお話』
※はじめは健康生活。そのうちお料理したり、旅に出たりもします。日常ほのぼの系です。
※非現実色強めな内容です。
※溺愛親バカと、あたおか要素があるのでご注意です。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる