17 / 87
17.妹に最後まで耐え切った
しおりを挟む
第3皇女ロレーナ殿下から統治を任されたエンカンターダスは、
帝国東端の丘陵地帯に位置し、ネヴィス王国との国境にも一部接している。
大陸の戦乱期に、山肌に張り付くような城塞として築かれた主城には、
太陽の光を浴びて黄金色に輝く、威厳ある城壁がそびえる。
一歩足を踏み入れた庭園には、鏡のように方形をした広い人工池があり、
水面には伝統を感じさせる主殿の、重厚な姿を映し出す。
池を取り囲む噴水が涼やかな水音を鳴らし、その周りで色とりどりの春の花が咲き誇って、
わたしの入城を、出迎えてくれた。
アルフォンソ殿下から贈られたコーラルピンクのドレスを身にまとい、新たな家臣たちからの拝礼を受ける。
着せてくれるベアトリスには、
「あらぁ~、すっかり〈珊瑚〉色に染まっちゃってぇ~」
と、からかわれた。
「む、無理もないでしょっ!?」
鏡のなかのわたしが、みるみる頬を赤くしてしまう。
時間が経ち、冷静になれば冷静になるほど、
《金糸のように美しいハニーゴールドの髪をした美形で長身の皇子様が、遠く離れた華の都で、わたしに恋焦がれてため息を吐いている》
という事実が、わたしの胸に沁みていった。
――そ、そんなの、こちらだって〈その気〉になって、胸をトキめかさない訳が、ないではないか……、な、ないではないか!
そして、わたしたちの〈カワイイ〉の師匠、侯爵令嬢パウラ様から免許皆伝を許されたベアトリスが、
わたしの凛々しい銀髪を、編み込みのハーフアップに仕上げてくれた。
「うん。可愛くて凛々しいわね」
と、鏡越しのベアトリスは、満足気に微笑んでくれる。
そして、師匠パウラ様から〈家元〉の名乗りを許された最強美少女侍女フリアが、わたしに完璧なメイクを施す。
「はぁ~~~、私のしたメイクですけど、マダレナ閣下、お美しいですぅ~~~」
フリアの吐いたため息に、はにかみ笑いを隠せず、わたしは化粧台の前から立ち上がった。
「マダレナも帝国貴族として、そろそろ歳の近い者たちと交流しないとな。……だが、男ではアルフォンソ兄上をヤキモキさせてしまうだろうしなぁ……」
との、ロレーナ殿下のご配慮で、わたしとほぼ同時に赴任してきた代官は、女性。
クールで知的な印象を与えるアッシュブロンドの髪に、物憂げな表情がかえって有能さを示している女性文官、
ナディア・イバニェス。
歳が近いといってもお母様より年上で、お子様もいる46歳。
騎士団長には、
「あいつは、女嫌いで有名だから大丈夫」
と、ロレーナ殿下が言い切った、超絶美形騎士、フェデリコ・エスコバル。
端正な顔立ちに、ながく伸ばした紺色の髪が映える28歳。
とにかく不愛想。
サビアで騎士団長を務めてくれている、王太后陛下と恋仲だった偉丈夫ホルヘとは対照的な、
シュッとした細身の〈庭園の騎士〉様。
フリアの目がハートマークになっているのは仕方ないけど、女嫌いらしいわよ?
帝国の東を守る、城塞都市のひとつとしての性格もあるエンカンターダス。
入城後、正式に開かれた代理侯爵への就任式は、閲兵式も兼ねたもので、ロレーナ殿下から贈られた、煌びやかな鎧を身に着けさせられた。
ピーチピンクの金属光沢を放つ儀礼用の鎧は、優美な曲線を描く女性らしいシルエットを強調するデザイン。
滑らかな曲線が美しい、艶やかな鎧だ。
細部にまで施された精巧な装飾は、第3皇女殿下の代理人としての威厳を象徴している。
――さ、さすがに気恥ずかしいわね。
と、生まれて初めての鎧姿だけど、ロレーナ殿下の権威を傷付けるような振る舞いはできない。
国境を接したネヴィス王国からの来賓に、妹パトリシアの姿を見付けても、
表情を変えることなく、厳粛な式典を終えた――。
Ψ
主殿に場を移し、あらためて来賓から祝賀の拝礼を受ける。
巨大な柱が何本も立ち並ぶ、豪壮なつくりをした謁見の間。
境を接する帝国貴族領の代人や、属国属領の祝賀使が、次々にわたしの前で片膝を突いていく。
わたしは飽くまでも、
――第3皇女殿下の代理人。
だ。
自身の持つ帝国伯爵位はおろか、帝国貴族である代理侯爵以上の扱いで、みなが恭しく頭をさげた。
そして――、
ネヴィス王国からの祝賀使である、第2王子リカルド殿下と、パトリシア妃のご夫妻が、わたしの前に膝を突いた。
帝国貴族より序列の下がる、属国ネヴィス王国の王子夫妻。
わたしに拝礼できる順番も、遅い。
さすがに礼容に叶う微笑を浮かべるパトリシアだけど、こめかみがピクついていた。
第2王子との婚約で継承権を奪い、わたしを出し抜いたパトリシア。
しかも、わたしの結婚を壊すタイミングを見計らって決行された、はかりごと。
ずっと猫をかぶって、気が強く可愛げのない姉マダレナを欺いて生きてきた甲斐があったと、高笑いしたことだろう。
それが、いまや逆転どころか、圧倒的な立場の差を生じさせた。
――たぶん、王太后陛下の差し金だろうけど、さすがに趣味悪いな……。
と、淡々とリカルド殿下からの祝辞を受けた。
だけど、
――いや……、徹底的に屈服させるのが、帝国の流儀なのか……。
と、気が付いて、空恐ろしい思いに身を震わせ、ふと視線を逸らすと、見覚えのある顔があった。
ハネっ毛の金髪に、オドオドした表情。
ジョアンだった。
わたしの幼馴染で元婚約者。
パトリシアの従者として随従しているようだった。
わたしに手酷い婚約破棄を突きつけたジョアン。
そのわたしが、帝国伯爵に叙爵されたことで立場を失い、
いき場をなくしていたところを、おそらくパトリシアが拾ったのだろう。
視線をパトリシア夫妻に戻すと、
――貴女のモノを奪ってやったわよ?
とでも言わんばかりに、パトリシアが鼻をスンと鳴らした。
――ア……、アホですか?
と、吹き出しそうになったのを、最後まで耐え切った自分を褒めたい。
要するにわたしは、パトリシアのことを何も知らなかったのだな、と改めて納得がいった。
印象を重ねてしまった師匠で帝国侯爵令嬢のパウラ様に、申し訳ない思いがするほどだ。
そして、来賓からの拝礼をすべて受け終えて開かれた園遊会で、事件は起きた――。
帝国東端の丘陵地帯に位置し、ネヴィス王国との国境にも一部接している。
大陸の戦乱期に、山肌に張り付くような城塞として築かれた主城には、
太陽の光を浴びて黄金色に輝く、威厳ある城壁がそびえる。
一歩足を踏み入れた庭園には、鏡のように方形をした広い人工池があり、
水面には伝統を感じさせる主殿の、重厚な姿を映し出す。
池を取り囲む噴水が涼やかな水音を鳴らし、その周りで色とりどりの春の花が咲き誇って、
わたしの入城を、出迎えてくれた。
アルフォンソ殿下から贈られたコーラルピンクのドレスを身にまとい、新たな家臣たちからの拝礼を受ける。
着せてくれるベアトリスには、
「あらぁ~、すっかり〈珊瑚〉色に染まっちゃってぇ~」
と、からかわれた。
「む、無理もないでしょっ!?」
鏡のなかのわたしが、みるみる頬を赤くしてしまう。
時間が経ち、冷静になれば冷静になるほど、
《金糸のように美しいハニーゴールドの髪をした美形で長身の皇子様が、遠く離れた華の都で、わたしに恋焦がれてため息を吐いている》
という事実が、わたしの胸に沁みていった。
――そ、そんなの、こちらだって〈その気〉になって、胸をトキめかさない訳が、ないではないか……、な、ないではないか!
そして、わたしたちの〈カワイイ〉の師匠、侯爵令嬢パウラ様から免許皆伝を許されたベアトリスが、
わたしの凛々しい銀髪を、編み込みのハーフアップに仕上げてくれた。
「うん。可愛くて凛々しいわね」
と、鏡越しのベアトリスは、満足気に微笑んでくれる。
そして、師匠パウラ様から〈家元〉の名乗りを許された最強美少女侍女フリアが、わたしに完璧なメイクを施す。
「はぁ~~~、私のしたメイクですけど、マダレナ閣下、お美しいですぅ~~~」
フリアの吐いたため息に、はにかみ笑いを隠せず、わたしは化粧台の前から立ち上がった。
「マダレナも帝国貴族として、そろそろ歳の近い者たちと交流しないとな。……だが、男ではアルフォンソ兄上をヤキモキさせてしまうだろうしなぁ……」
との、ロレーナ殿下のご配慮で、わたしとほぼ同時に赴任してきた代官は、女性。
クールで知的な印象を与えるアッシュブロンドの髪に、物憂げな表情がかえって有能さを示している女性文官、
ナディア・イバニェス。
歳が近いといってもお母様より年上で、お子様もいる46歳。
騎士団長には、
「あいつは、女嫌いで有名だから大丈夫」
と、ロレーナ殿下が言い切った、超絶美形騎士、フェデリコ・エスコバル。
端正な顔立ちに、ながく伸ばした紺色の髪が映える28歳。
とにかく不愛想。
サビアで騎士団長を務めてくれている、王太后陛下と恋仲だった偉丈夫ホルヘとは対照的な、
シュッとした細身の〈庭園の騎士〉様。
フリアの目がハートマークになっているのは仕方ないけど、女嫌いらしいわよ?
帝国の東を守る、城塞都市のひとつとしての性格もあるエンカンターダス。
入城後、正式に開かれた代理侯爵への就任式は、閲兵式も兼ねたもので、ロレーナ殿下から贈られた、煌びやかな鎧を身に着けさせられた。
ピーチピンクの金属光沢を放つ儀礼用の鎧は、優美な曲線を描く女性らしいシルエットを強調するデザイン。
滑らかな曲線が美しい、艶やかな鎧だ。
細部にまで施された精巧な装飾は、第3皇女殿下の代理人としての威厳を象徴している。
――さ、さすがに気恥ずかしいわね。
と、生まれて初めての鎧姿だけど、ロレーナ殿下の権威を傷付けるような振る舞いはできない。
国境を接したネヴィス王国からの来賓に、妹パトリシアの姿を見付けても、
表情を変えることなく、厳粛な式典を終えた――。
Ψ
主殿に場を移し、あらためて来賓から祝賀の拝礼を受ける。
巨大な柱が何本も立ち並ぶ、豪壮なつくりをした謁見の間。
境を接する帝国貴族領の代人や、属国属領の祝賀使が、次々にわたしの前で片膝を突いていく。
わたしは飽くまでも、
――第3皇女殿下の代理人。
だ。
自身の持つ帝国伯爵位はおろか、帝国貴族である代理侯爵以上の扱いで、みなが恭しく頭をさげた。
そして――、
ネヴィス王国からの祝賀使である、第2王子リカルド殿下と、パトリシア妃のご夫妻が、わたしの前に膝を突いた。
帝国貴族より序列の下がる、属国ネヴィス王国の王子夫妻。
わたしに拝礼できる順番も、遅い。
さすがに礼容に叶う微笑を浮かべるパトリシアだけど、こめかみがピクついていた。
第2王子との婚約で継承権を奪い、わたしを出し抜いたパトリシア。
しかも、わたしの結婚を壊すタイミングを見計らって決行された、はかりごと。
ずっと猫をかぶって、気が強く可愛げのない姉マダレナを欺いて生きてきた甲斐があったと、高笑いしたことだろう。
それが、いまや逆転どころか、圧倒的な立場の差を生じさせた。
――たぶん、王太后陛下の差し金だろうけど、さすがに趣味悪いな……。
と、淡々とリカルド殿下からの祝辞を受けた。
だけど、
――いや……、徹底的に屈服させるのが、帝国の流儀なのか……。
と、気が付いて、空恐ろしい思いに身を震わせ、ふと視線を逸らすと、見覚えのある顔があった。
ハネっ毛の金髪に、オドオドした表情。
ジョアンだった。
わたしの幼馴染で元婚約者。
パトリシアの従者として随従しているようだった。
わたしに手酷い婚約破棄を突きつけたジョアン。
そのわたしが、帝国伯爵に叙爵されたことで立場を失い、
いき場をなくしていたところを、おそらくパトリシアが拾ったのだろう。
視線をパトリシア夫妻に戻すと、
――貴女のモノを奪ってやったわよ?
とでも言わんばかりに、パトリシアが鼻をスンと鳴らした。
――ア……、アホですか?
と、吹き出しそうになったのを、最後まで耐え切った自分を褒めたい。
要するにわたしは、パトリシアのことを何も知らなかったのだな、と改めて納得がいった。
印象を重ねてしまった師匠で帝国侯爵令嬢のパウラ様に、申し訳ない思いがするほどだ。
そして、来賓からの拝礼をすべて受け終えて開かれた園遊会で、事件は起きた――。
2,233
お気に入りに追加
4,166
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
聖女召喚に巻き込まれた挙句、ハズレの方と蔑まれていた私が隣国の過保護な王子に溺愛されている件
バナナマヨネーズ
恋愛
聖女召喚に巻き込まれた志乃は、召喚に巻き込まれたハズレの方と言われ、酷い扱いを受けることになる。
そんな中、隣国の第三王子であるジークリンデが志乃を保護することに。
志乃を保護したジークリンデは、地面が泥濘んでいると言っては、志乃を抱き上げ、用意した食事が熱ければ火傷をしないようにと息を吹きかけて冷ましてくれるほど過保護だった。
そんな過保護すぎるジークリンデの行動に志乃は戸惑うばかり。
「私は子供じゃないからそんなことしなくてもいいから!」
「いや、シノはこんなに小さいじゃないか。だから、俺は君を命を懸けて守るから」
「お…重い……」
「ん?ああ、ごめんな。その荷物は俺が持とう」
「これくらい大丈夫だし、重いってそういうことじゃ……。はぁ……」
過保護にされたくない志乃と過保護にしたいジークリンデ。
二人は共に過ごすうちに知ることになる。その人がお互いの運命の人なのだと。
全31話
家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―
望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」
【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。
そして、それに返したオリービアの一言は、
「あらあら、まぁ」
の六文字だった。
屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。
ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて……
※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。
婚約破棄され家を出た傷心令嬢は辺境伯に拾われ溺愛されるそうです 〜今更謝っても、もう遅いですよ?〜
八代奏多
恋愛
「フィーナ、すまないが貴女との婚約を破棄させてもらう」
侯爵令嬢のフィーナ・アストリアがパーティー中に婚約者のクラウス王太子から告げられたのはそんな言葉だった。
その王太子は隣に寄り添う公爵令嬢に愛おしげな視線を向けていて、フィーナが捨てられたのは明らかだった。
フィーナは失意してパーティー会場から逃げるように抜け出す。
そして、婚約破棄されてしまった自分のせいで家族に迷惑がかからないように侯爵家当主の父に勘当するようにお願いした。
そうして身分を捨てたフィーナは生活費を稼ぐために魔法技術が発達していない隣国に渡ろうとするも、道中で魔物に襲われて意識を失ってしまう。
死にたくないと思いながら目を開けると、若い男に助け出されていて……
※小説家になろう様・カクヨム様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる