【完結】皇女なのに婚約破棄されること15回!最強魔力でほのぼのスローライフしてる場合でもないのですが?

三矢さくら

文字の大きさ
上 下
23 / 26

13.村と魔界の面倒事 前編

しおりを挟む
「祭り?」

「ええ。この村もすっかり人口が増えてしまって、親睦を兼ねて祭りを開こうということになりまして」

と、にこにこ顔で報告してくれたのは、雑貨屋の主人だ。皇女たちの宮殿が建って、盛大に金を落とすものだから商人たちが集まってきているらしい。

人が集まれば、それを相手にまた商売が始まるし、グングン経済成長しているらしい。流刑地なのに……。まあ、帝国の領土が栄えるのはいいことだ。

「良いことではないか。私も寄らせてもらうぞ」

「それでですね、この機会に村長も決めてしまおうということになりまして」

「おお、そうか。小さな村だった頃は村長なぞ必要なかったからな」

「出来ましたら皇女様にお願いできないかと……」

「断る」

私も西の帝国ウエスト・エンパイア皇女として領地のひとつやふたつは持っている。そこに行けば領主様として村長のような仕事もしているが、ここでは困る。

ソフィアがビールをあおりながら、ゲタゲタ笑った。

「そりゃ、ダメだよご主人。アルマは飽くまでも私に復讐するために、ここに来てるんだ。村長なんかに収まって、楽しげに見えたら、また愛のない求婚が殺到してしまうでしょ?」

あけすけに言い過ぎだがその通りだ。私が宮殿も建てず、ソフィアの小屋のリビングを借りて寝泊まりしているのも、そのためだ。

「そうですか……。困りましたねぇ」

と、雑貨屋の主人が腕組みをした。

「なにを困ることがある?」

「いや、元からいる住民と、新しい住民と、みんなが納得する村長なんて、なかなかいないもんですから」

ソフィアがニマっと笑って、雑貨屋の主人に言った。

「私がやってあげようか?」

「いや、流刑人はちょっと……」

「じゃあ、アルマが引っ越せばいいんだよ。そしたら、皇女シスターズも自然と解散になって村は元通りだ」

「いやいやいや、それはもっと困りますよ。せっかく村に活気が出て来たのに」

ソフィアが私を見てニタっと笑った。

むっ。私の責任だと言いたいのだな。しかし、ほとんど知らない連中から村長を選ぶことなど出来んぞ。困ったな。

ニタニタしたまま、ソフィアが私の顔を覗き込んだ。

「もういっそアルマが村長になって、どんどん愛のない婚約を受けて、どんどん破棄されて、どんどん出世させる宗教でも開いたらどうだ?」

「私の心がちぎれてしまうわ!」

違いねぇと、ソフィアはまたゲタゲタ笑った。他人事だと思ってヒドいことを言う。

「ヤミィもセイレーンの王配に収まりそうだもんなぁ。また伝説を増やしたな、アルマ」

むう。イザベラがいずれミカエラの跡を継いでセイレーンの女王になれば、ヤミィはその王配。確かに……。

「セイレーンの王配! いいですねぇ! その方を村長にお迎え出来ませんか?」

「ご主人、ヤケになってないか?」

「もう限界なんですぅ」と、雑貨屋の主人は泣き出してしまった。

「成り行きでみんなの面倒を見てたら、いつの間にか板挟みにされてて、あっちを立てればこっちが立たず、こっちを立てればあっちが立たず。誰でもいいから代わってほしいんですよぉ」

大の大人が声を上げて泣くほど追い詰められていたとは。これはなんとかしてやらんといかんな。皇女だし。

祭りまでにはどうにかするからと宥めて、雑貨屋の主人を帰した。が、新旧住民の確執など、面倒な情緒の最上級だ。あまり深入りしたくないのだが……。

  ◇

「私、やるやるぅ!」

と、手を挙げたのは海の皇女のオリヴィアだ。

「いや、ダメだろ。オリヴィア本人だと海の帝国に領土を奪われた形になってしまうだろ。下手したら戦争だぞ」

「ええー。じゃあ私、西の子になるよぉ?」

「そんな簡単に言うな」

「ちぇっ。領土増やしたら、お兄ちゃん褒めてくれると思ったのになぁ」

「奪う気マンマンじゃないか」

宮殿と小屋に囲まれた庭で相談を持ちかけたのだが、相手を間違えたか。レンファもラミアもスンとしているし。まあ内政干渉や領土紛争になりかねない相談を持ちかけた私も悪い。

その時、異次元から念話が届いた。

[……アルマちゃん!……]

「むっ。イザベラではないか。どうした? 痴話喧嘩でもしたか?」

[……ばか! そんなんじゃないわよ! すごい魔力が近付いてる! 気を付けて!……]

途端に青空の一部が黒く歪んだ。これは、いかん。

**魔法障壁マジックシールド**

ターンッと高い音がして『魅了チャーム』を弾いた。

「逃げてー!」

と、魔界四天王のレオタード女魔族が飛び込んで来た。『魅了チャーム』体質の面倒なヤツだ。

「どうした、何事だ?」

「育休とか産休をって交渉してたら、魔王様が本気で怒っちゃって!」

「なんと」

みるみるうちに空全体が真っ暗になっていくではないか。魔界の面倒事にまで巻き込まれてしまうとは。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。

ぽんぽこ狸
恋愛
 レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。  その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。  ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。  しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。  それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。  彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。

婚約破棄されたショックですっ転び記憶喪失になったので、第二の人生を歩みたいと思います

ととせ
恋愛
「本日この時をもってアリシア・レンホルムとの婚約を解消する」 公爵令嬢アリシアは反論する気力もなくその場を立ち去ろうとするが…見事にすっ転び、記憶喪失になってしまう。 本当に思い出せないのよね。貴方たち、誰ですか? 元婚約者の王子? 私、婚約してたんですか? 義理の妹に取られた? 別にいいです。知ったこっちゃないので。 不遇な立場も過去も忘れてしまったので、心機一転新しい人生を歩みます! この作品は小説家になろうでも掲載しています

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

婚約破棄してみたらー婚約者は蓋をあけたらクズだった件

青空一夏
恋愛
アリッサ・エバン公爵令嬢はイザヤ・ワイアット子爵の次男と婚約していた。 最近、隣国で婚約破棄ブームが起こっているから、冗談でイザヤに婚約破棄を申し渡した。 すると、意外なことに、あれもこれもと、婚約者の悪事が公になる。 アリッサは思いがけない展開にショックをうける。 婚約破棄からはじまる、アリッサの恋愛物語。

処理中です...