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6.元聖女の弟

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ソフィアの弟のダヴィデが、ほっぺたを腫らして帰って来た。近所の悪ガキに虐められたらしい。

++大天使の癒し手アークエンジェル・ヒーリング++

と、治癒魔法で治してやるソフィアの目が血走っている。

「お姉ちゃんがやっつけて来るから!」

「やめてよ!」

と、ダヴィデが悲痛な声を上げた。

「そんなの……、カッコ悪いよ」

ふむ。なよっとした少年だと思っていたが、中々に男の子ではないか。

気持ちのやり場のなくなったソフィアが地団駄踏み始めた。それでは、ダヴィデの立場がますますなくなるぞ。

「ダヴィデ。強くなりたいか?」

と、私が尋ねると、少し頬を赤くして小さく頷いた。なよっとした仕草だ。

**土よ働けアース・ワーク**

ちょうどダヴィデの身長くらいのゴーレムを1体出してやった。

「ほら。ケンカの特訓相手だ。殴りかかってみろ」

と私が言うと、ソフィアが血相を変えてダヴィデを抱き締めた。

「そんなの、ダヴィデがケガしたらどうするのよ!?」

「既にケガして帰ってるではないか」

「それは、そうだけど……」

「ダヴィデはどうだ? 強くなりたいんだろ?」

と、私が尋ねると、ダヴィデは姉の手を静かに押しやって、ゴーレムに殴りかかった。

ぽす。

「ま……、まあ。初めはそんなもんだろ」

ソフィアは初めて見る男らしいダヴィデに、瞳をときめかせている。

「お姉ちゃん、応援しちゃう!」

  ◇

しばらくの間、時間を見つけてはゴーレム相手にぽすぽすやってたダヴィデだったが、牛乳の切れる日がやってきた。

この家でお遣いはダヴィデの仕事だ。

戦場に向かう兵士のような顔つきで、胸を張って出かけたダヴィデの後を、ソフィアがコソコソ付けて行く。

気にしている訳ではないのだが、ダヴィデの様子を伺うために指を鳴らした。

**千里眼クレアボヤンス**

お遣いに行くダヴィデの道を塞ぐ、3人の悪ガキの影。

「ダヴィデ!」

と、怒鳴りつけたのは女の子だった。というか、3人とも女の子だ。

「今日こそハッキリさせなさいよね!」

と、女の子3人に、ダヴィデが囲まれた。チラチラ見えてるのはソフィアの影か。

「結局、誰と結婚するのよ!?」

……はあ?

ダヴィデは頬を赤くして、なよなよしている。

「だから……、そんなの決められないよぉ……」

パァン! と、正面の女の子がビンタした。

「なによ! いくじなし!」

「で、でも……」

パァン!

ソフィアが駆けて行くのを見て、覗き見を打ち切った。

まあ……。姉に似て、顔はいいからな。

ただ、ゴーレム相手に練習してたのは、なんだったんだ?

ほどなくして、ソフィアが女の子3人を連れて帰ってきた。後ろから釈然としない表情のダヴィデが付いてくる。

「わあ! ここが、お姉様のおウチなんですねぇ!」

と、目を輝かせる女の子3人を見て、席を外すことにした。

**転移メタスタシス**

結局、女子も男子もソフィアのような女が好きなのか。

久しぶりに帝都のアイスクリーム屋に寄って、ダヴィデにお土産を買って帰った。

私とソフィアに頭を撫でられながら、ダヴィデは美味しそうに、チョコミントアイスを頬張った。

うん。ダヴィデに婚約はまだ早い。出来るかどうか分からない約束をしなかったダヴィデは偉いぞ。
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