1 / 5
紅茶嫌いのアリス 1
しおりを挟む
紅茶っていうのは、失敗から生まれた食品らしい。その昔、イギリスがインドから紅茶の葉を輸入していた時に、茶葉が発酵してあの味になったそうだ。……というのは嘘らしい。
思えば、私は子供の頃から紅茶が苦手だった。なぜかって、不可思議な味がするから。
いや、もう一つ理由があった。紅茶を飲むと、手のひらに痛みが走るのだ。実際手を見下ろしてみても何にもなっていないのに、嫌な痛みを感じてしまう。
その理由を、18歳になった今も、私は見つけられていないのだ。
★
京都にはラーメン屋とパン屋が多い。前者の理由は、学生が多いから。後者の理由は、日本で初めてパン屋を開いたのが京都だったから。……だったかな?
私はどうも、記憶力に難があるのだ。
だから、家の中でも今何をしようとしてたとか、すぐに忘れてしまうし、人の名前も忘れがちなのである。
「ねーねー八嶋さん、これから暇?」
声をかけられて、私はハッとした。目の前にいるのは、たしか……。彼女は私の表情を見て、にやにや笑った。
「あ、その顔。誰かわかんないと思ってるでしょ」
「そんなことないよ」
私は、彼女の名前を思い出そうと必死に頑張った。真剣な私の顔を見て、彼女があはは、と笑い出す。
「やだー、おかしー。八嶋さんって不思議ちゃん?」
よく知らない人に不思議ちゃんと言われるのはなんか嫌だな。
「ごめん、同じクラスの……」
「仙田。仙田みらん」
そちらの名前がまさに不思議ではなかろうか。なんて言うんだっけ、こういう名前。キラキラネーム……?
みらんさんはにやにやしながら、
「ねえねえ、八嶋さん、日本人じゃないでしょ」
「え?」
「すっごい綺麗だもん。肌とか真っ白だし」
「ああ……祖父が、イギリス人で」
「マジで! クォーターだ。すごーい、初めて見た。やばーい」
珍獣を見つけたかのような反応だ。私はパンダか何か……? みらんさんは私の肩を抱き、
「あのさ、八嶋さんと仲良くなりたい、って子がいるの」
講義室の出入り口を指差した。男子が一人立っている。背が高くて
、シルエットが靴べらみたいだ。
「結構よくない?」
「う、ん」
「リアクションうすっ! 美人は違うなー」
取り敢えず行こうよ。みらんさんはそう言って、私を立たせた。靴べらくんがいるほうへと連れて行く。
「お待たせ、ゆっしー」
靴べらくんは私に向かって会釈をした。
「じゃ、行こっか」
みらんさんはそう言って歩き出そうとする。
「え、行こっかって?」
「そりゃあ、大学生が三人が集まったらすることは一つでしょ」
彼女はあっけらかんと言う。
「お茶だよ!」
みらんさんの意見により、私たち四人はお茶をしに行くこととなった。私たちが通うS大学は、叡山電鉄のS大前駅を降りたすぐそばにある。
叡山電鉄とは、出町柳から比叡山までを結ぶ鉄道のことで、二両編成のレトロなワンマン車両である。その叡山電鉄に乗り込んだ私たちは、みらんさん行きつけのお店へと向かっていた。
「すっごい雰囲気のいい店なんだよね」
みらんさんは浮き浮きと言う。
「あの、八嶋さんって、名前アリスっていうんだよね」
ゆっしーがおずおずと声をかけてくる。
「うん、そうだけど」
「すごい、おしゃれな名前だよね。外国っぽいっていうか」
「クォーターらしいよ」
みらんさんが口を挟む。ちなみに、私、みらんさん、ゆっしーの順番で並んで座っているため、ゆっしーは若干前のめりになっていた。
「妖精とか天使っぽいよねー」
みらんさんが感心したように私を見つめる。人間だからリアクションが難しい。
「アリスって、やっぱり不思議の国のアリス?」
とゆっしー。私が答える前に、みらんさんが口を開いた。
「イギリスだもんね、お祖父さんが」
「いや、イギリス人」
「そうだよ、お祖父さんがイギリスってグレートすぎるよ」
グレート・ブリテン・お祖父さん。
「どういうお祖父さんなの? 貴族とか?」
「たぶん、普通のお祖父さんだと思うけど」
もっとも、私には祖父の記憶はまったくないのだが。
そうこう言っているうちに、電車は出町柳の駅のホームへと滑り込んだ。
★
出町柳駅を降りる際、リュックを背負った何人かの外国人とすれ違った。これから比叡山にでも行くのだろうか。私とゆっしーは、みらんさんのあとについて歩く。思えば、出町柳って初めてきたな。私が住んでいるのは、大学にほど近い三軒茶屋という駅なのだ。
「っていうかさ、ここにいるのみんな京都出身じゃないんだ?」
みらんさんが口を開く。
「俺、山口」
「私は愛知」
ゆっしーと私の言葉に、みらんさんがなぜか感心する。
「私、千葉。バラバラだねえ」
それから、なぜわざわざ京都の大学に来たのかという話になった。
「正直、京都に住んでみたかったんだよねー」
みらんさん曰くそうらしい。やっしーはお姉さんが京都にいるため、部屋を間借りできるから、らしい。
みらんさんはレンタルサイクルショップ前を通り過ぎ(借りている人がいた)路地裏に入っていく。
「はい、ここでーす」
みらんさんが指差したの店は、パッと見ではわからないくらい、路地裏に埋没していた。木目調のドア枠には、磨りガラスがはめ込まれていて、carolという字が書かれている。中々洒落た店だが、表にはメニューも看板もない。
「だいぶ入りにくいね」
ゆっしーが浮かない顔で言う。
「一見さん御断りって書いてある気がする。たかそうだし」
つまり、実に京都らしい趣だと言えるのだろう。
「大丈夫大丈夫。そんなこと書いてないよーん」
みらんさんは、常連らしくドアを押し開けた。
その瞬間、ふわり、と紅茶の匂いが漂った。
その匂いを嗅いだ瞬間、私の目の前に、赤い線がばっ、と走る。これは……なに?
「こんにちはー」
みらんさんの声で、私はハッとした。店内には、クラシックが流れている。この曲はなんだったっけ……。
考えこんでいたら、ドア枠と同じく木目調のカウンターから、男がぬっ、と顔を出した。まさかカウンターの下で寝ていたのか、髪が寝乱れている。彼はぼんやりした顔でこちらをみて、ぺこりと頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
かすかに低い声は、喫茶店のマスターという感じだ。すらっとしていて、その辺の雑誌の表紙にでもなりそうである。
みらんさんはにこっと笑い、
「初めましてー。三名いいですか?」
マスターは気だるそうに、
「お好きな席にどうぞ」
「えっ、初めまして?」
やっしーは驚き顔でみらんさんを見た。みらんさんはふふっと笑う。
「あのマスターがゴミ出ししてるの見かけてさーこの店来たかったのよね」
つまり、常連でもなんでもないのか。
カウンターの下から現れたマスターは、ごそごそエプロンをつけ、注文を取りにやってきた。
「紅茶専門店キャロルにようこそ。ご注文は?」
機械的なマスターの台詞に、みらんさんが感心する。
「へー、紅茶専門店なのね」
「それも知らなかったの!?」
とゆっしー。私はといえば、冷や汗をかいていた。どうりでさっきから、紅茶の匂いがするわけだ。それに、壁の棚には紅茶の缶がたくさん置かれている。
みらんさんはメニューを吟味し、結構高い、と呟いた。
「私、アールグレイ。二人は?」
「俺わかんないや……同じので」
ゆっしーは、私に視線をやる。
「あの、紅茶以外はないんですか?」
マスターはペンで髪を梳いて、
「ない」
「じゃあ……水で」
マスターの目がこちらを向いた。無理もないが、ちょっと睨まれている。1人だけ頼まないのはまずいだろうな。
「オススメで」
「少々お待ちください」
マスターはさっさとカウンターへ戻る。なんだか、餌をもらったらさっさといなくなる猫みたい。
私が紅茶の缶を眺めていたら、みらんさんが顔を近づけてきた。
「ね、ね、どう思う」
「え? いい店だね」
「違う違う、マスターよ! 超イケメン★でしょう」
「たしかに……紅茶プリンスって感じ」
ゆっしーが頷いている。紅茶プリンスってなんだろう。
マスターはお湯を沸かして、紅茶を淹れ始めた。彼がお盆を手にカウンターを出ると、匂いが濃くなる。大丈夫、匂いくらいは平気だ。目の前に運ばれてくると、赤い線が目の前をちらちらし始める。マスターが、低い声で言う。
「ダージリンと、アールグレイです」
みらんさんが、きらきら輝く瞳でマスターを見つめる。
「お名前は何て言うんですかあ?」
「五百旗頭。下の名前は秘密や」
マスターはぶっきらぼうに言い、シャッター街のような素っ気なさでカウンターへと戻った。
「接客が雑! でもなんか猫みたいで萌え! 寝癖なおしてあげたい!」
みらんさんが小声で叫んだ。ゆっしーは呆れた顔で彼女をみている。
「紅茶を飲もうよ、そのために来たんだし」
「いや、私はイケメンを見に来たのよ」
「潔いね、君は」
みらんさんは紅茶を一口飲み、
「あ、でもおいしーい」
ゆっしーも倣って、驚いている。
「あ、本当だ。いい匂いだし」
「あれ、飲まないの? 八嶋さん」
「うん……」
「えー、飲んで見なよ、すっごい美味しいから」
もしかしたら、治っているかもしれない。大体、この場で飲まないのは不自然だ。
私は、カップに口をつけた。手のひらに、ピリッと痛みが走る。
「大丈夫?」
「うん……」
ずきん、と頭が痛んで、私は頭を押さえた。やっぱり、治っていなかった。というか、悪化している。頭痛までしてきた……。
「八嶋さん?」
みらんさんが、私を呼ぶ声が聞こえる。私はそのまま、意識を失った。
思えば、私は子供の頃から紅茶が苦手だった。なぜかって、不可思議な味がするから。
いや、もう一つ理由があった。紅茶を飲むと、手のひらに痛みが走るのだ。実際手を見下ろしてみても何にもなっていないのに、嫌な痛みを感じてしまう。
その理由を、18歳になった今も、私は見つけられていないのだ。
★
京都にはラーメン屋とパン屋が多い。前者の理由は、学生が多いから。後者の理由は、日本で初めてパン屋を開いたのが京都だったから。……だったかな?
私はどうも、記憶力に難があるのだ。
だから、家の中でも今何をしようとしてたとか、すぐに忘れてしまうし、人の名前も忘れがちなのである。
「ねーねー八嶋さん、これから暇?」
声をかけられて、私はハッとした。目の前にいるのは、たしか……。彼女は私の表情を見て、にやにや笑った。
「あ、その顔。誰かわかんないと思ってるでしょ」
「そんなことないよ」
私は、彼女の名前を思い出そうと必死に頑張った。真剣な私の顔を見て、彼女があはは、と笑い出す。
「やだー、おかしー。八嶋さんって不思議ちゃん?」
よく知らない人に不思議ちゃんと言われるのはなんか嫌だな。
「ごめん、同じクラスの……」
「仙田。仙田みらん」
そちらの名前がまさに不思議ではなかろうか。なんて言うんだっけ、こういう名前。キラキラネーム……?
みらんさんはにやにやしながら、
「ねえねえ、八嶋さん、日本人じゃないでしょ」
「え?」
「すっごい綺麗だもん。肌とか真っ白だし」
「ああ……祖父が、イギリス人で」
「マジで! クォーターだ。すごーい、初めて見た。やばーい」
珍獣を見つけたかのような反応だ。私はパンダか何か……? みらんさんは私の肩を抱き、
「あのさ、八嶋さんと仲良くなりたい、って子がいるの」
講義室の出入り口を指差した。男子が一人立っている。背が高くて
、シルエットが靴べらみたいだ。
「結構よくない?」
「う、ん」
「リアクションうすっ! 美人は違うなー」
取り敢えず行こうよ。みらんさんはそう言って、私を立たせた。靴べらくんがいるほうへと連れて行く。
「お待たせ、ゆっしー」
靴べらくんは私に向かって会釈をした。
「じゃ、行こっか」
みらんさんはそう言って歩き出そうとする。
「え、行こっかって?」
「そりゃあ、大学生が三人が集まったらすることは一つでしょ」
彼女はあっけらかんと言う。
「お茶だよ!」
みらんさんの意見により、私たち四人はお茶をしに行くこととなった。私たちが通うS大学は、叡山電鉄のS大前駅を降りたすぐそばにある。
叡山電鉄とは、出町柳から比叡山までを結ぶ鉄道のことで、二両編成のレトロなワンマン車両である。その叡山電鉄に乗り込んだ私たちは、みらんさん行きつけのお店へと向かっていた。
「すっごい雰囲気のいい店なんだよね」
みらんさんは浮き浮きと言う。
「あの、八嶋さんって、名前アリスっていうんだよね」
ゆっしーがおずおずと声をかけてくる。
「うん、そうだけど」
「すごい、おしゃれな名前だよね。外国っぽいっていうか」
「クォーターらしいよ」
みらんさんが口を挟む。ちなみに、私、みらんさん、ゆっしーの順番で並んで座っているため、ゆっしーは若干前のめりになっていた。
「妖精とか天使っぽいよねー」
みらんさんが感心したように私を見つめる。人間だからリアクションが難しい。
「アリスって、やっぱり不思議の国のアリス?」
とゆっしー。私が答える前に、みらんさんが口を開いた。
「イギリスだもんね、お祖父さんが」
「いや、イギリス人」
「そうだよ、お祖父さんがイギリスってグレートすぎるよ」
グレート・ブリテン・お祖父さん。
「どういうお祖父さんなの? 貴族とか?」
「たぶん、普通のお祖父さんだと思うけど」
もっとも、私には祖父の記憶はまったくないのだが。
そうこう言っているうちに、電車は出町柳の駅のホームへと滑り込んだ。
★
出町柳駅を降りる際、リュックを背負った何人かの外国人とすれ違った。これから比叡山にでも行くのだろうか。私とゆっしーは、みらんさんのあとについて歩く。思えば、出町柳って初めてきたな。私が住んでいるのは、大学にほど近い三軒茶屋という駅なのだ。
「っていうかさ、ここにいるのみんな京都出身じゃないんだ?」
みらんさんが口を開く。
「俺、山口」
「私は愛知」
ゆっしーと私の言葉に、みらんさんがなぜか感心する。
「私、千葉。バラバラだねえ」
それから、なぜわざわざ京都の大学に来たのかという話になった。
「正直、京都に住んでみたかったんだよねー」
みらんさん曰くそうらしい。やっしーはお姉さんが京都にいるため、部屋を間借りできるから、らしい。
みらんさんはレンタルサイクルショップ前を通り過ぎ(借りている人がいた)路地裏に入っていく。
「はい、ここでーす」
みらんさんが指差したの店は、パッと見ではわからないくらい、路地裏に埋没していた。木目調のドア枠には、磨りガラスがはめ込まれていて、carolという字が書かれている。中々洒落た店だが、表にはメニューも看板もない。
「だいぶ入りにくいね」
ゆっしーが浮かない顔で言う。
「一見さん御断りって書いてある気がする。たかそうだし」
つまり、実に京都らしい趣だと言えるのだろう。
「大丈夫大丈夫。そんなこと書いてないよーん」
みらんさんは、常連らしくドアを押し開けた。
その瞬間、ふわり、と紅茶の匂いが漂った。
その匂いを嗅いだ瞬間、私の目の前に、赤い線がばっ、と走る。これは……なに?
「こんにちはー」
みらんさんの声で、私はハッとした。店内には、クラシックが流れている。この曲はなんだったっけ……。
考えこんでいたら、ドア枠と同じく木目調のカウンターから、男がぬっ、と顔を出した。まさかカウンターの下で寝ていたのか、髪が寝乱れている。彼はぼんやりした顔でこちらをみて、ぺこりと頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
かすかに低い声は、喫茶店のマスターという感じだ。すらっとしていて、その辺の雑誌の表紙にでもなりそうである。
みらんさんはにこっと笑い、
「初めましてー。三名いいですか?」
マスターは気だるそうに、
「お好きな席にどうぞ」
「えっ、初めまして?」
やっしーは驚き顔でみらんさんを見た。みらんさんはふふっと笑う。
「あのマスターがゴミ出ししてるの見かけてさーこの店来たかったのよね」
つまり、常連でもなんでもないのか。
カウンターの下から現れたマスターは、ごそごそエプロンをつけ、注文を取りにやってきた。
「紅茶専門店キャロルにようこそ。ご注文は?」
機械的なマスターの台詞に、みらんさんが感心する。
「へー、紅茶専門店なのね」
「それも知らなかったの!?」
とゆっしー。私はといえば、冷や汗をかいていた。どうりでさっきから、紅茶の匂いがするわけだ。それに、壁の棚には紅茶の缶がたくさん置かれている。
みらんさんはメニューを吟味し、結構高い、と呟いた。
「私、アールグレイ。二人は?」
「俺わかんないや……同じので」
ゆっしーは、私に視線をやる。
「あの、紅茶以外はないんですか?」
マスターはペンで髪を梳いて、
「ない」
「じゃあ……水で」
マスターの目がこちらを向いた。無理もないが、ちょっと睨まれている。1人だけ頼まないのはまずいだろうな。
「オススメで」
「少々お待ちください」
マスターはさっさとカウンターへ戻る。なんだか、餌をもらったらさっさといなくなる猫みたい。
私が紅茶の缶を眺めていたら、みらんさんが顔を近づけてきた。
「ね、ね、どう思う」
「え? いい店だね」
「違う違う、マスターよ! 超イケメン★でしょう」
「たしかに……紅茶プリンスって感じ」
ゆっしーが頷いている。紅茶プリンスってなんだろう。
マスターはお湯を沸かして、紅茶を淹れ始めた。彼がお盆を手にカウンターを出ると、匂いが濃くなる。大丈夫、匂いくらいは平気だ。目の前に運ばれてくると、赤い線が目の前をちらちらし始める。マスターが、低い声で言う。
「ダージリンと、アールグレイです」
みらんさんが、きらきら輝く瞳でマスターを見つめる。
「お名前は何て言うんですかあ?」
「五百旗頭。下の名前は秘密や」
マスターはぶっきらぼうに言い、シャッター街のような素っ気なさでカウンターへと戻った。
「接客が雑! でもなんか猫みたいで萌え! 寝癖なおしてあげたい!」
みらんさんが小声で叫んだ。ゆっしーは呆れた顔で彼女をみている。
「紅茶を飲もうよ、そのために来たんだし」
「いや、私はイケメンを見に来たのよ」
「潔いね、君は」
みらんさんは紅茶を一口飲み、
「あ、でもおいしーい」
ゆっしーも倣って、驚いている。
「あ、本当だ。いい匂いだし」
「あれ、飲まないの? 八嶋さん」
「うん……」
「えー、飲んで見なよ、すっごい美味しいから」
もしかしたら、治っているかもしれない。大体、この場で飲まないのは不自然だ。
私は、カップに口をつけた。手のひらに、ピリッと痛みが走る。
「大丈夫?」
「うん……」
ずきん、と頭が痛んで、私は頭を押さえた。やっぱり、治っていなかった。というか、悪化している。頭痛までしてきた……。
「八嶋さん?」
みらんさんが、私を呼ぶ声が聞こえる。私はそのまま、意識を失った。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ま性戦隊シマパンダー
九情承太郎
キャラ文芸
魔性のオーパーツ「中二病プリンター」により、ノベルワナビー(小説家志望)の作品から次々に現れるアホ…個性的な敵キャラたちが、現実世界(特に関東地方)に被害を与えていた。
警察や軍隊で相手にしきれないアホ…個性的な敵キャラに対処するために、多くの民間戦隊が立ち上がった!
そんな戦隊の一つ、極秘戦隊スクリーマーズの一員ブルースクリーマー・入谷恐子は、迂闊な行動が重なり、シマパンの力で戦う戦士「シマパンダー」と勘違いされて悪目立ちしてしまう(笑)
誤解が解ける日は、果たして来るのであろうか?
たぶん、ない!
ま性(まぬけな性分)の戦士シマパンダーによるスーパー戦隊コメディの決定版。笑い死にを恐れぬならば、読むがいい!!
他の小説サイトでも公開しています。
表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。
【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!
雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。
しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。
婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。
ーーーーーーーーー
2024/01/13 ランキング→恋愛95位
ありがとうございます!
なろうでも掲載⇒完結済
170,000PVありがとうございましたっ!
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
推理小説家の今日の献立
東 万里央(あずま まりお)
キャラ文芸
永夢(えむ 24)は子どもっぽいことがコンプレックスの、出版社青雲館の小説編集者二年目。ある日大学時代から三年付き合った恋人・悠人に自然消滅を狙った形で振られてしまう。
その後悠人に新たな恋人ができたと知り、傷付いてバーで慣れない酒を飲んでいたのだが、途中質の悪い男にナンパされ絡まれた。危ういところを助けてくれたのは、なんと偶然同じバーで飲んでいた、担当の小説家・湊(みなと 34)。湊は嘔吐し、足取りの覚束ない永夢を連れ帰り、世話してくれた上にベッドに寝かせてくれた。
翌朝、永夢はいい香りで目が覚める。昨夜のことを思い出し、とんでもないことをしたと青ざめるのだが、香りに誘われそろそろとキッチンに向かう。そこでは湊が手作りの豚汁を温め、炊きたてのご飯をよそっていて?
「ちょうどよかった。朝食です。一度誰かに味見してもらいたかったんです」
ある理由から「普通に美味しいご飯」を作って食べたいイケメン小説家と、私生活ポンコツ女性編集者のほのぼのおうちご飯日記&時々恋愛。
.。*゚+.*.。 献立表 ゚+..。*゚+
第一話『豚汁』
第二話『小鮎の天ぷらと二種のかき揚げ』
第三話『みんな大好きなお弁当』
第四話『餡かけチャーハンと焼き餃子』
第五話『コンソメ仕立てのロールキャベツ』
金の滴
藤島紫
キャラ文芸
ティーミッシェルの新たな店舗では、オープン直後から問題が続いていた。
秘書の華子は、崇拝する上司、ミッシェルのため、奔走する。
SNSでの誹謗中傷、メニューの盗用、ドリンクのクオリティーの低下……など、困難が続く。
しかしそれは、ある人物によって仕組まれた出来事だった。
カフェ×ミステリ おいしい謎をお召し上がりください。
illustrator:クロ子さん
==注意==
こちらは、別作品「だがしかし、山田連太郎である」をベースに作り直し、さらに改稿しています。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる