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紅茶嫌いのアリス 1
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紅茶っていうのは、失敗から生まれた食品らしい。その昔、イギリスがインドから紅茶の葉を輸入していた時に、茶葉が発酵してあの味になったそうだ。……というのは嘘らしい。
思えば、私は子供の頃から紅茶が苦手だった。なぜかって、不可思議な味がするから。
いや、もう一つ理由があった。紅茶を飲むと、手のひらに痛みが走るのだ。実際手を見下ろしてみても何にもなっていないのに、嫌な痛みを感じてしまう。
その理由を、18歳になった今も、私は見つけられていないのだ。
★
京都にはラーメン屋とパン屋が多い。前者の理由は、学生が多いから。後者の理由は、日本で初めてパン屋を開いたのが京都だったから。……だったかな?
私はどうも、記憶力に難があるのだ。
だから、家の中でも今何をしようとしてたとか、すぐに忘れてしまうし、人の名前も忘れがちなのである。
「ねーねー八嶋さん、これから暇?」
声をかけられて、私はハッとした。目の前にいるのは、たしか……。彼女は私の表情を見て、にやにや笑った。
「あ、その顔。誰かわかんないと思ってるでしょ」
「そんなことないよ」
私は、彼女の名前を思い出そうと必死に頑張った。真剣な私の顔を見て、彼女があはは、と笑い出す。
「やだー、おかしー。八嶋さんって不思議ちゃん?」
よく知らない人に不思議ちゃんと言われるのはなんか嫌だな。
「ごめん、同じクラスの……」
「仙田。仙田みらん」
そちらの名前がまさに不思議ではなかろうか。なんて言うんだっけ、こういう名前。キラキラネーム……?
みらんさんはにやにやしながら、
「ねえねえ、八嶋さん、日本人じゃないでしょ」
「え?」
「すっごい綺麗だもん。肌とか真っ白だし」
「ああ……祖父が、イギリス人で」
「マジで! クォーターだ。すごーい、初めて見た。やばーい」
珍獣を見つけたかのような反応だ。私はパンダか何か……? みらんさんは私の肩を抱き、
「あのさ、八嶋さんと仲良くなりたい、って子がいるの」
講義室の出入り口を指差した。男子が一人立っている。背が高くて
、シルエットが靴べらみたいだ。
「結構よくない?」
「う、ん」
「リアクションうすっ! 美人は違うなー」
取り敢えず行こうよ。みらんさんはそう言って、私を立たせた。靴べらくんがいるほうへと連れて行く。
「お待たせ、ゆっしー」
靴べらくんは私に向かって会釈をした。
「じゃ、行こっか」
みらんさんはそう言って歩き出そうとする。
「え、行こっかって?」
「そりゃあ、大学生が三人が集まったらすることは一つでしょ」
彼女はあっけらかんと言う。
「お茶だよ!」
みらんさんの意見により、私たち四人はお茶をしに行くこととなった。私たちが通うS大学は、叡山電鉄のS大前駅を降りたすぐそばにある。
叡山電鉄とは、出町柳から比叡山までを結ぶ鉄道のことで、二両編成のレトロなワンマン車両である。その叡山電鉄に乗り込んだ私たちは、みらんさん行きつけのお店へと向かっていた。
「すっごい雰囲気のいい店なんだよね」
みらんさんは浮き浮きと言う。
「あの、八嶋さんって、名前アリスっていうんだよね」
ゆっしーがおずおずと声をかけてくる。
「うん、そうだけど」
「すごい、おしゃれな名前だよね。外国っぽいっていうか」
「クォーターらしいよ」
みらんさんが口を挟む。ちなみに、私、みらんさん、ゆっしーの順番で並んで座っているため、ゆっしーは若干前のめりになっていた。
「妖精とか天使っぽいよねー」
みらんさんが感心したように私を見つめる。人間だからリアクションが難しい。
「アリスって、やっぱり不思議の国のアリス?」
とゆっしー。私が答える前に、みらんさんが口を開いた。
「イギリスだもんね、お祖父さんが」
「いや、イギリス人」
「そうだよ、お祖父さんがイギリスってグレートすぎるよ」
グレート・ブリテン・お祖父さん。
「どういうお祖父さんなの? 貴族とか?」
「たぶん、普通のお祖父さんだと思うけど」
もっとも、私には祖父の記憶はまったくないのだが。
そうこう言っているうちに、電車は出町柳の駅のホームへと滑り込んだ。
★
出町柳駅を降りる際、リュックを背負った何人かの外国人とすれ違った。これから比叡山にでも行くのだろうか。私とゆっしーは、みらんさんのあとについて歩く。思えば、出町柳って初めてきたな。私が住んでいるのは、大学にほど近い三軒茶屋という駅なのだ。
「っていうかさ、ここにいるのみんな京都出身じゃないんだ?」
みらんさんが口を開く。
「俺、山口」
「私は愛知」
ゆっしーと私の言葉に、みらんさんがなぜか感心する。
「私、千葉。バラバラだねえ」
それから、なぜわざわざ京都の大学に来たのかという話になった。
「正直、京都に住んでみたかったんだよねー」
みらんさん曰くそうらしい。やっしーはお姉さんが京都にいるため、部屋を間借りできるから、らしい。
みらんさんはレンタルサイクルショップ前を通り過ぎ(借りている人がいた)路地裏に入っていく。
「はい、ここでーす」
みらんさんが指差したの店は、パッと見ではわからないくらい、路地裏に埋没していた。木目調のドア枠には、磨りガラスがはめ込まれていて、carolという字が書かれている。中々洒落た店だが、表にはメニューも看板もない。
「だいぶ入りにくいね」
ゆっしーが浮かない顔で言う。
「一見さん御断りって書いてある気がする。たかそうだし」
つまり、実に京都らしい趣だと言えるのだろう。
「大丈夫大丈夫。そんなこと書いてないよーん」
みらんさんは、常連らしくドアを押し開けた。
その瞬間、ふわり、と紅茶の匂いが漂った。
その匂いを嗅いだ瞬間、私の目の前に、赤い線がばっ、と走る。これは……なに?
「こんにちはー」
みらんさんの声で、私はハッとした。店内には、クラシックが流れている。この曲はなんだったっけ……。
考えこんでいたら、ドア枠と同じく木目調のカウンターから、男がぬっ、と顔を出した。まさかカウンターの下で寝ていたのか、髪が寝乱れている。彼はぼんやりした顔でこちらをみて、ぺこりと頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
かすかに低い声は、喫茶店のマスターという感じだ。すらっとしていて、その辺の雑誌の表紙にでもなりそうである。
みらんさんはにこっと笑い、
「初めましてー。三名いいですか?」
マスターは気だるそうに、
「お好きな席にどうぞ」
「えっ、初めまして?」
やっしーは驚き顔でみらんさんを見た。みらんさんはふふっと笑う。
「あのマスターがゴミ出ししてるの見かけてさーこの店来たかったのよね」
つまり、常連でもなんでもないのか。
カウンターの下から現れたマスターは、ごそごそエプロンをつけ、注文を取りにやってきた。
「紅茶専門店キャロルにようこそ。ご注文は?」
機械的なマスターの台詞に、みらんさんが感心する。
「へー、紅茶専門店なのね」
「それも知らなかったの!?」
とゆっしー。私はといえば、冷や汗をかいていた。どうりでさっきから、紅茶の匂いがするわけだ。それに、壁の棚には紅茶の缶がたくさん置かれている。
みらんさんはメニューを吟味し、結構高い、と呟いた。
「私、アールグレイ。二人は?」
「俺わかんないや……同じので」
ゆっしーは、私に視線をやる。
「あの、紅茶以外はないんですか?」
マスターはペンで髪を梳いて、
「ない」
「じゃあ……水で」
マスターの目がこちらを向いた。無理もないが、ちょっと睨まれている。1人だけ頼まないのはまずいだろうな。
「オススメで」
「少々お待ちください」
マスターはさっさとカウンターへ戻る。なんだか、餌をもらったらさっさといなくなる猫みたい。
私が紅茶の缶を眺めていたら、みらんさんが顔を近づけてきた。
「ね、ね、どう思う」
「え? いい店だね」
「違う違う、マスターよ! 超イケメン★でしょう」
「たしかに……紅茶プリンスって感じ」
ゆっしーが頷いている。紅茶プリンスってなんだろう。
マスターはお湯を沸かして、紅茶を淹れ始めた。彼がお盆を手にカウンターを出ると、匂いが濃くなる。大丈夫、匂いくらいは平気だ。目の前に運ばれてくると、赤い線が目の前をちらちらし始める。マスターが、低い声で言う。
「ダージリンと、アールグレイです」
みらんさんが、きらきら輝く瞳でマスターを見つめる。
「お名前は何て言うんですかあ?」
「五百旗頭。下の名前は秘密や」
マスターはぶっきらぼうに言い、シャッター街のような素っ気なさでカウンターへと戻った。
「接客が雑! でもなんか猫みたいで萌え! 寝癖なおしてあげたい!」
みらんさんが小声で叫んだ。ゆっしーは呆れた顔で彼女をみている。
「紅茶を飲もうよ、そのために来たんだし」
「いや、私はイケメンを見に来たのよ」
「潔いね、君は」
みらんさんは紅茶を一口飲み、
「あ、でもおいしーい」
ゆっしーも倣って、驚いている。
「あ、本当だ。いい匂いだし」
「あれ、飲まないの? 八嶋さん」
「うん……」
「えー、飲んで見なよ、すっごい美味しいから」
もしかしたら、治っているかもしれない。大体、この場で飲まないのは不自然だ。
私は、カップに口をつけた。手のひらに、ピリッと痛みが走る。
「大丈夫?」
「うん……」
ずきん、と頭が痛んで、私は頭を押さえた。やっぱり、治っていなかった。というか、悪化している。頭痛までしてきた……。
「八嶋さん?」
みらんさんが、私を呼ぶ声が聞こえる。私はそのまま、意識を失った。
思えば、私は子供の頃から紅茶が苦手だった。なぜかって、不可思議な味がするから。
いや、もう一つ理由があった。紅茶を飲むと、手のひらに痛みが走るのだ。実際手を見下ろしてみても何にもなっていないのに、嫌な痛みを感じてしまう。
その理由を、18歳になった今も、私は見つけられていないのだ。
★
京都にはラーメン屋とパン屋が多い。前者の理由は、学生が多いから。後者の理由は、日本で初めてパン屋を開いたのが京都だったから。……だったかな?
私はどうも、記憶力に難があるのだ。
だから、家の中でも今何をしようとしてたとか、すぐに忘れてしまうし、人の名前も忘れがちなのである。
「ねーねー八嶋さん、これから暇?」
声をかけられて、私はハッとした。目の前にいるのは、たしか……。彼女は私の表情を見て、にやにや笑った。
「あ、その顔。誰かわかんないと思ってるでしょ」
「そんなことないよ」
私は、彼女の名前を思い出そうと必死に頑張った。真剣な私の顔を見て、彼女があはは、と笑い出す。
「やだー、おかしー。八嶋さんって不思議ちゃん?」
よく知らない人に不思議ちゃんと言われるのはなんか嫌だな。
「ごめん、同じクラスの……」
「仙田。仙田みらん」
そちらの名前がまさに不思議ではなかろうか。なんて言うんだっけ、こういう名前。キラキラネーム……?
みらんさんはにやにやしながら、
「ねえねえ、八嶋さん、日本人じゃないでしょ」
「え?」
「すっごい綺麗だもん。肌とか真っ白だし」
「ああ……祖父が、イギリス人で」
「マジで! クォーターだ。すごーい、初めて見た。やばーい」
珍獣を見つけたかのような反応だ。私はパンダか何か……? みらんさんは私の肩を抱き、
「あのさ、八嶋さんと仲良くなりたい、って子がいるの」
講義室の出入り口を指差した。男子が一人立っている。背が高くて
、シルエットが靴べらみたいだ。
「結構よくない?」
「う、ん」
「リアクションうすっ! 美人は違うなー」
取り敢えず行こうよ。みらんさんはそう言って、私を立たせた。靴べらくんがいるほうへと連れて行く。
「お待たせ、ゆっしー」
靴べらくんは私に向かって会釈をした。
「じゃ、行こっか」
みらんさんはそう言って歩き出そうとする。
「え、行こっかって?」
「そりゃあ、大学生が三人が集まったらすることは一つでしょ」
彼女はあっけらかんと言う。
「お茶だよ!」
みらんさんの意見により、私たち四人はお茶をしに行くこととなった。私たちが通うS大学は、叡山電鉄のS大前駅を降りたすぐそばにある。
叡山電鉄とは、出町柳から比叡山までを結ぶ鉄道のことで、二両編成のレトロなワンマン車両である。その叡山電鉄に乗り込んだ私たちは、みらんさん行きつけのお店へと向かっていた。
「すっごい雰囲気のいい店なんだよね」
みらんさんは浮き浮きと言う。
「あの、八嶋さんって、名前アリスっていうんだよね」
ゆっしーがおずおずと声をかけてくる。
「うん、そうだけど」
「すごい、おしゃれな名前だよね。外国っぽいっていうか」
「クォーターらしいよ」
みらんさんが口を挟む。ちなみに、私、みらんさん、ゆっしーの順番で並んで座っているため、ゆっしーは若干前のめりになっていた。
「妖精とか天使っぽいよねー」
みらんさんが感心したように私を見つめる。人間だからリアクションが難しい。
「アリスって、やっぱり不思議の国のアリス?」
とゆっしー。私が答える前に、みらんさんが口を開いた。
「イギリスだもんね、お祖父さんが」
「いや、イギリス人」
「そうだよ、お祖父さんがイギリスってグレートすぎるよ」
グレート・ブリテン・お祖父さん。
「どういうお祖父さんなの? 貴族とか?」
「たぶん、普通のお祖父さんだと思うけど」
もっとも、私には祖父の記憶はまったくないのだが。
そうこう言っているうちに、電車は出町柳の駅のホームへと滑り込んだ。
★
出町柳駅を降りる際、リュックを背負った何人かの外国人とすれ違った。これから比叡山にでも行くのだろうか。私とゆっしーは、みらんさんのあとについて歩く。思えば、出町柳って初めてきたな。私が住んでいるのは、大学にほど近い三軒茶屋という駅なのだ。
「っていうかさ、ここにいるのみんな京都出身じゃないんだ?」
みらんさんが口を開く。
「俺、山口」
「私は愛知」
ゆっしーと私の言葉に、みらんさんがなぜか感心する。
「私、千葉。バラバラだねえ」
それから、なぜわざわざ京都の大学に来たのかという話になった。
「正直、京都に住んでみたかったんだよねー」
みらんさん曰くそうらしい。やっしーはお姉さんが京都にいるため、部屋を間借りできるから、らしい。
みらんさんはレンタルサイクルショップ前を通り過ぎ(借りている人がいた)路地裏に入っていく。
「はい、ここでーす」
みらんさんが指差したの店は、パッと見ではわからないくらい、路地裏に埋没していた。木目調のドア枠には、磨りガラスがはめ込まれていて、carolという字が書かれている。中々洒落た店だが、表にはメニューも看板もない。
「だいぶ入りにくいね」
ゆっしーが浮かない顔で言う。
「一見さん御断りって書いてある気がする。たかそうだし」
つまり、実に京都らしい趣だと言えるのだろう。
「大丈夫大丈夫。そんなこと書いてないよーん」
みらんさんは、常連らしくドアを押し開けた。
その瞬間、ふわり、と紅茶の匂いが漂った。
その匂いを嗅いだ瞬間、私の目の前に、赤い線がばっ、と走る。これは……なに?
「こんにちはー」
みらんさんの声で、私はハッとした。店内には、クラシックが流れている。この曲はなんだったっけ……。
考えこんでいたら、ドア枠と同じく木目調のカウンターから、男がぬっ、と顔を出した。まさかカウンターの下で寝ていたのか、髪が寝乱れている。彼はぼんやりした顔でこちらをみて、ぺこりと頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
かすかに低い声は、喫茶店のマスターという感じだ。すらっとしていて、その辺の雑誌の表紙にでもなりそうである。
みらんさんはにこっと笑い、
「初めましてー。三名いいですか?」
マスターは気だるそうに、
「お好きな席にどうぞ」
「えっ、初めまして?」
やっしーは驚き顔でみらんさんを見た。みらんさんはふふっと笑う。
「あのマスターがゴミ出ししてるの見かけてさーこの店来たかったのよね」
つまり、常連でもなんでもないのか。
カウンターの下から現れたマスターは、ごそごそエプロンをつけ、注文を取りにやってきた。
「紅茶専門店キャロルにようこそ。ご注文は?」
機械的なマスターの台詞に、みらんさんが感心する。
「へー、紅茶専門店なのね」
「それも知らなかったの!?」
とゆっしー。私はといえば、冷や汗をかいていた。どうりでさっきから、紅茶の匂いがするわけだ。それに、壁の棚には紅茶の缶がたくさん置かれている。
みらんさんはメニューを吟味し、結構高い、と呟いた。
「私、アールグレイ。二人は?」
「俺わかんないや……同じので」
ゆっしーは、私に視線をやる。
「あの、紅茶以外はないんですか?」
マスターはペンで髪を梳いて、
「ない」
「じゃあ……水で」
マスターの目がこちらを向いた。無理もないが、ちょっと睨まれている。1人だけ頼まないのはまずいだろうな。
「オススメで」
「少々お待ちください」
マスターはさっさとカウンターへ戻る。なんだか、餌をもらったらさっさといなくなる猫みたい。
私が紅茶の缶を眺めていたら、みらんさんが顔を近づけてきた。
「ね、ね、どう思う」
「え? いい店だね」
「違う違う、マスターよ! 超イケメン★でしょう」
「たしかに……紅茶プリンスって感じ」
ゆっしーが頷いている。紅茶プリンスってなんだろう。
マスターはお湯を沸かして、紅茶を淹れ始めた。彼がお盆を手にカウンターを出ると、匂いが濃くなる。大丈夫、匂いくらいは平気だ。目の前に運ばれてくると、赤い線が目の前をちらちらし始める。マスターが、低い声で言う。
「ダージリンと、アールグレイです」
みらんさんが、きらきら輝く瞳でマスターを見つめる。
「お名前は何て言うんですかあ?」
「五百旗頭。下の名前は秘密や」
マスターはぶっきらぼうに言い、シャッター街のような素っ気なさでカウンターへと戻った。
「接客が雑! でもなんか猫みたいで萌え! 寝癖なおしてあげたい!」
みらんさんが小声で叫んだ。ゆっしーは呆れた顔で彼女をみている。
「紅茶を飲もうよ、そのために来たんだし」
「いや、私はイケメンを見に来たのよ」
「潔いね、君は」
みらんさんは紅茶を一口飲み、
「あ、でもおいしーい」
ゆっしーも倣って、驚いている。
「あ、本当だ。いい匂いだし」
「あれ、飲まないの? 八嶋さん」
「うん……」
「えー、飲んで見なよ、すっごい美味しいから」
もしかしたら、治っているかもしれない。大体、この場で飲まないのは不自然だ。
私は、カップに口をつけた。手のひらに、ピリッと痛みが走る。
「大丈夫?」
「うん……」
ずきん、と頭が痛んで、私は頭を押さえた。やっぱり、治っていなかった。というか、悪化している。頭痛までしてきた……。
「八嶋さん?」
みらんさんが、私を呼ぶ声が聞こえる。私はそのまま、意識を失った。
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