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雑用
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なんだかんだと学院に残れるようになった明日香だったが、生活は一変した。
まず、住んでいた部屋は追い出された。で、どこに住むようになったかというと。
「うわあ……」
明日香はぼうぜんと室内を見回した。なんて……ぼろぼろの部屋。っていうかこんな部屋が学院内にあったことが驚きだ。理事長はあっけらかんと言う。
「元物置。いいだろ? 小公女セーラみたいでさ」
「しょうこうじょせーらってなんですか?」
「知らないの!? やだねー、最近の若者は無知で。世界名作劇場だよ! DVD貸してあげるから今度見なよ」
「は、はあ」
理事長っていくつなんだ、と明日香は改めて思う。
「で、制服を着てるわけにもいかないだろうから、あげる」
差し出された服に、明日香は目を瞬いた。ひらひらしたエプロンが、黒いワンピースに付属している。
「これ、なんですか?」
「メイド服」
明日香はびしりと固まった。ついでに押し付けられたタイツに顔を引きつらせる。
「じゃあ、着替えたら理事長室来てね」
ばたんとドアが閉まる。ノアが青い瞳で見上げてきた。
「着替えねーのか?」
「……班目さんってほんとに理事長なのかな。すごく若いし」
「でなきゃ、全員の反対を押し切ってお前を残すなんて力技できねえだろ。言うこと聞いといたほうがいいんじゃねえの?」
「……」
明日香は、無言でメイド服を見つめた。
☆
「す、すごく見られてる……」
明日香はメイド服姿で、真っ赤になりながら廊下を歩いていた。噂されているのがわかって、帽子のつばをくい、と下げる。ひそひそと話す声が聞こえてきた。
「千秋さん、落第したのに残ってるわけ?」
「ありえないんだけど」
「大した実力もないのにさ」
全部事実なので反論のしようもない。背負ったリュックに入っているノアが、ぼそりと言った。
「いやだねえ。どいつもこいつも狭量で」
「仕方ないよ。私だって同じこと思うし」
「はん、ピアノを弾いて思い知らせてやればいいさ」
廊下の向こうに滝沢が見えて、明日香はどきりとした。すれ違いざま、彼はいつもと変わらぬ笑顔を見せる。
「おはよう」
「お、おはよう」
「残れたんだね」
「生徒じゃなくて雑用係なんだけど……」
「だからその恰好なんだ」
明日香は、滝沢の視線を避けるように身をよじった。
「これはその、理事長が着ろっていうから」
「変わった人だよね。落第した人間を復活させるなんて」
「う、うん」
「何をしたの?」
「え」
「『革命』の演奏。一日であんなに演奏法が変わるなんてありえない」
「え、えっと」
明日香が答える前に、彼が口を開く。
「まあいいか。偶然かもしれないしね」
「え」
「俺は君の実力をよく知ってるから。いつか必ずここを出てくことになるよ」
笑顔で言われ、明日香は顔を引きつらせる。
「う……で、出てかないように頑張ります」
明日香はそそくさと滝沢の横を通り過ぎた。ノアがぐるる、とうなる。
「なんだあのすかしたやろーは」
「滝沢君だよ。成績トップの」
「どうせクソつまんねえ演奏しやがるんだろうな。てめえのつまんねえピアノよか、私のが何万倍もましだ、って言ってやれよ」
「そんなこと言えないくらいうまいんだって……」
明日香は理事長室の前で立ち止まり、ドアをノックした。
「失礼します……」
「納得できません!」
ドアを開けると、いきなり女生徒の声が聞こえてきた。明日香はびくりとする。そっと中を覗くと、見知った少女が見えた。
「あ、吉野さん……」
理事長は爪を磨きながら、面倒そうな口調で言う。
「だから、もう雑用係はいるし、君を残す枠がないんだって、ヨシノサツキ」
吉野はきつい口調で、
「千秋さんより私のほうが劣ってるなんて思いません」
「へー、こんなこと言ってるよ、どう、チアキアスカ」
「え?」
いきなり話を振られ、明日香は目を瞬いた。吉野がこちらを振り向く。敵意を露わにした鋭い視線に、思わず息を飲んだ。
「弾いてみればわかります!」
吉野がずかずかとピアノに近づいていく。
「ああちょっと待ってよ、今から会議があるんだよね。あ、いいこと思いついた」
理事長がぱちん、と指を鳴らした。
「一週間後にテストをしよう。で、勝ったほうを残す。どう?」
明日香は素っ頓狂な声を上げる。
「へっ」
吉野は明日香をにらみつけて言う。
「そんなの、理事長は千秋さんを贔屓する気なんでしょう?」
「そんなつもりないけど。もちろんほかの先生にも参加してもらうし、あ、タキザワシューイチにも審査員になってもらおうかなー」
それを聞いて、明日香はどきりとした。不服そうな顔をしたヨシノに、理事長がひらひらと爪やすりを振る。
「いやならいいけど? はい、サヨナラ~」
吉野は眉をぎゅっと寄せ、
「わかりました。課題曲は」
「えーっと……この曲にしよっか」
理事長が本棚から楽譜を抜き出した。ベートーベンの「月光」だ。
「第三楽章にしよう」
なぜだろう。そう思っていたら、彼はあっさりとこう言った。
「僕が一番好きだから。あ、ヨシノサツキ、君にも雑用係やってもらうからね。チアキアスカはここで練習するから、君は第三音楽室のピアノ使って。話は通しとくからさ」
押し付けられたメイド服に、吉野は眉をしかめた。不服気にカチューシャヘッドをぐいぐい引っ張っている。気持ちはわかるよ、と言おうとしたら、きっ、とにらみつけられた。
ドアが開いて、教師の森屋が顔を出す。
「理事長、そろそろ」
「じゃあ、頑張ってねー」
ひらひら手を振って出ていく理事長とすれ違いに、静乃が入ってくる。
「静乃さん」
静乃は女神のように優しく微笑みながら、
「お掃除の仕方とか私が教えるから。まずは外の掃き掃除ね。大変よー、ここのお庭広いから」
「はい」
「私は嫌です」
きっぱりと言った吉野に、明日香はぽかんとした。
「へ」
「掃除するためにリード学院に入ったんじゃないわ」
静乃が笑顔のまま吉野を見る。
「掃除もできない人に、素敵なピアノが弾けるのかしら?」
その言葉に、吉野がかっとなった。
「なんですって」
「あの、早くしないと時間がなくなるような」
明日香はおろおろと二人を見くらべた。静乃がにこりと笑い返す。
「まあ、そうね。がんばったらクッキーを焼いてあげるから。ね? 吉野さん」
吉野は舌打ちして、制服のボタンをはずし始めた。
☆
「広いってレベルじゃないよね……」
明日香は掃いても掃いても続く敷地内に辟易していた。ノアがリュックから顔をのぞかせる。
「ちんたらしてたら、練習する時間なくなるぞ」
「そんなこと言われても」
「ま、あちらさんはそもそも掃除をする気がないみたいだがな」
明日香はノアが顎をしゃくったほうを見た。メイド服姿の吉野が木にもたれて、楽譜を見ていた。明日香の視線に気づいたのか、顔を上げ、睨み返してくる。
「なによ」
「え、えーと、できれば手伝ってほしいなあって」
吉野が切れ長の瞳をすがめて、明日香を見る。
「あんたはいいわよね」
「え」
「おばあさんが死んだから、同情されて残れたんでしょ」
明日香は息をのんだ。
「どういう、意味」
「うらやましいって意味。うちの親ぴんぴんしてるもの。何も成果あげずに帰ったら不平タラタラだわ。それに比べて、あんたは文句を言ってくる相手もいないわけでしょ」
明日香はぐ、とほうきを握りしめた。きっ、と吉野をにらむ。
「何よ、その眼」
「……本気で言ってるの」
「なにが」
「私はおばあちゃんが生きててくれたら、学院になんか残れなくたってよかった!」
「なに言って、ちょっとやめなさいよ」
明日香はほうきを地面に放り、吉野につかみかかった。吉野が帽子をつかんだせいで、猫耳があらわになった。
「取り消して!」
「いやよ!」
もみ合う二人をみて、ノアは興奮気味に鳴く。
「おいおいおい、キャットファイトだぜ! しびれるう! ……あ」
木陰から出てきた人影が明日香と吉野の襟首をがっ、とつかむ。明日香は慌てて帽子を拾い上げ、かぶった。
「なにやってるのかしら?」
二人を見下ろし、静乃が黒い微笑みを浮かべた。
十分後、二人はロビーのソファに正座させられていた。静乃は優しげな笑みをたたえ、あえて穏やかに言う。
「争いは何も生まないわよね、そうでしょう?」
「……はい」
「でも静乃さん、千秋さんが先に」
口をはさんだ吉野を、静乃は笑顔で黙らす。
「どっちが先かは関係ないのよ。喧嘩両成敗っていうでしょう?」
明日香はしびれてきた足をもぞもぞ動かしてうなずく。
「はい」
「罰として、夕飯は二人だけで作りなさい」
「え」
「返事は?」
「「はい……」」
ノアが小声で、静乃すげえ、と言った。
明日香と吉野は二人きりでキッチンにいた。静乃は用事があるといって出て行ってしまったのだ。不機嫌にそっぽを向く吉野に、明日香は話しかけた。
「えーと、何を作るか相談を……」
「私、味噌汁とごはんと副菜を担当するわ。千秋さん、メイン作って」
吉野はさっさと決めてまな板をとり出す。明日香は、肩をすくめ、冷蔵庫を覗いた。
業務用なのか、冷蔵庫は大きい。中には、バットに入れられた鶏もも肉があった。たぶんからあげを作るつもりだったのだろう。
「ねえ、から揚げメインにしようと思うんだけど、副菜は何作るの?」
明日香の問いを、吉野は無視する。
明日香は、ため息をついてボウルを出した。
「まあいっか……」
ノアが背後からけしかけてくる。
「おい明日香、何ふわふわしてやがる。さっきのファイトはどこ行ったよ!」
「だって、さっきはおばあちゃんのこと言われたから腹立って」
「なに一人でしゃべってんの?」
吉野が不審げにこちらを見たので、明日香は慌てて首を振る。
「な、なんでもない」
ああ、そうか。ほかの人から見たら、ノアはただの猫なんだ。明日香がから揚げ粉に肉をまぶしていると、吉野が声を上げた。
「いたっ」
明日香は驚いて、吉野に駆け寄る。
「大丈夫?」
包丁で切ったのか、指先から血が出ている。
「いたーい」
「保健室行って来たら? 私がやっておくから」
吉野は明日香をちら、と見て、口元を緩めた。
「そう? じゃあ残り全部、お願いね」
「うん」
明日香は吉野を見送り、はっとした。──全部? 時計を見ると、食事時間まであと三十分しかない。ノアがあきれたように言う。
「明日香、うんじゃねえだろ」
「ど、どうしよう。静乃さんは出かけちゃったし」
おろおろしていると、ノアがふっ、と笑う。
「仕方ねえな」
「え、ノア、手伝ってくれるの?」
猫の手も借りたいというのはこういう時に使うのだろう。ノアが尻尾を振りながら、
「俺様が指示してやる。コンダクターのようにな! その通りにやれば完璧だ!」
明日香はがくりと肩を落とした。
「おい、鍋が吹いてるぞ! 止めろ!」
「焦げる! 肉が焦げる!」
「サラダしなびちまうだろうがラップかけろ!」
ノアは指揮棒のように尻尾を振って指示を飛ばしてくる。明日香は半泣きになりながら、揚げ終わったからあげをトレーに移す。
「ひいい……助けておばあちゃあん」
「死んじまった人間に助け求めてどうすんだ!」
ノアの言葉に、余計に悲しくなる明日香。
「おばあちゃん……」
「今感傷に浸るなア!」
「大丈夫?」
突然声が聞こえて、明日香はくるりと振り返った。厨房の入り口に、滝沢が立っている。
「た、滝沢君」
「一人でやってるの? 声が二人分聞こえたけど」
滝沢の茶色い瞳がリュックに向かう。急いでノアをリュックに押し込むと、ふぎゃ、という声がした。ごめん、と内心で謝っておく。
「え、えーと、みんなもう食堂に来てる?」
そう尋ねると、滝沢がうなずいた。
「うん。手伝おうか」
「え、いいの?」
「あんまり待たせると暴動が起きそうだしね」
い、いい人だ……明日香が感動していると、滝沢がサラダを器に盛りながら言う。
「理事長に聞いたけど、吉野さんと勝負するんだって?」
「あ、うん、勝てるかわかんないけど、頑張るよ」
「そんなんじゃ絶対に勝てないね」
「え」
明日香は滝沢のほうを振り向いた。滝沢は相変わらず笑顔だ。
「吉野さんも君も負け犬気質だけど、吉野さんはプライドが高い。君に負けるなんて彼女は絶対に認められない。だから吉野さんに分があると俺は思う」
「まけいぬ……」
明日香は帽子の下、猫耳が生えている頭を押さえた。
「焦げるよ」
「わ」
明日香は慌ててからあげに向き直る。サラダを盛り終えた滝沢は、今度はご飯を盛る。
「相手を蹴落としてでも勝つって気持ちが、君にはない」
「だって、音楽ってそういうものなのかなって……」
「じゃあ、君はどうやって学院に入ったの?」
「どうやって、って」
「君の代わりに落ちた人間がいるんだよ。君はもうだれかを蹴落としてここにいるんだ」
「滝沢君はいつもそんなこと考えてるの?」
滝沢がほほ笑んだ。
「考えてないほうが馬鹿なんだと思うよ」
「う」
なんだか胃が痛くなってきた。そして、かねてから思っていた疑問が首をもたげる。
「……あの」
「ん?」
「滝沢君って、もしかして私のこと嫌い?」
「どうして?」
「なんとなく」
「まさか」
その言葉にほっとした明日香に、彼は言う。
「俺は、大した覚悟もないくせに学院にいる人間が嫌いなんだよ」
つまり私のことじゃないんだろうか。明日香が凍り付いていると、滝沢が味噌汁のお玉をとった。
「焦げるよ」
「うん……」
大変気まずい思いで用意をし終え、明日香はぎくしゃくと頭を下げた。
「アリガトウゴザイマシタ」
思わず片言になる。
「気にしないで。もたもたされるのが嫌いなだけだから」
「モウシワケゴザイマセン」
そこに静乃が現れた。用意された食事に、目を輝かせる。
「あらすごいわね! 滝沢くん、手伝ってくれたの?」
その問いに、滝沢は笑顔を浮かべる。
「いいえ、千秋さんが一人で作っていたので見学に来たんです。運んでもいいですか?」
「ええ、もちろん。あら? 吉野さんは?」
「えーと、トイレです」
明日香は滝沢に大きな借金を作った気がして、顔をひきつらせた。
「ああ、疲れた……もう無理」
夕食の後片付けを終え、明日香は学院の廊下を歩いていた。大量の皿を洗ったせいで指がふやけている。ノアがぐわ、と前足を上げた。
「無理じゃねーよ、練習すんだよロックによお!」
「いた、いたい、たたかないで」
猫パンチから頭をかばいながら階段に向かっていると、ピアノの音が聞こえてきた。
「あれ……?」
明日香は、階段わきの第三音楽室に目をやる。中から聞こえるのは、「月光」の第三楽章。そっと覗くと、吉野が演奏していた。
指は大丈夫だったのだろうか、と明日香が思っていると、ノアが呆れ気味に言った。
「飯の準備はできないのにピアノの練習はできんのかい」
「でもこんな時間まで、すごいね」
「すごいじゃねーよ、お前もやれよ」
「いたた」
明日香はノアに小突かれながら理事長室に向かった。
まず、住んでいた部屋は追い出された。で、どこに住むようになったかというと。
「うわあ……」
明日香はぼうぜんと室内を見回した。なんて……ぼろぼろの部屋。っていうかこんな部屋が学院内にあったことが驚きだ。理事長はあっけらかんと言う。
「元物置。いいだろ? 小公女セーラみたいでさ」
「しょうこうじょせーらってなんですか?」
「知らないの!? やだねー、最近の若者は無知で。世界名作劇場だよ! DVD貸してあげるから今度見なよ」
「は、はあ」
理事長っていくつなんだ、と明日香は改めて思う。
「で、制服を着てるわけにもいかないだろうから、あげる」
差し出された服に、明日香は目を瞬いた。ひらひらしたエプロンが、黒いワンピースに付属している。
「これ、なんですか?」
「メイド服」
明日香はびしりと固まった。ついでに押し付けられたタイツに顔を引きつらせる。
「じゃあ、着替えたら理事長室来てね」
ばたんとドアが閉まる。ノアが青い瞳で見上げてきた。
「着替えねーのか?」
「……班目さんってほんとに理事長なのかな。すごく若いし」
「でなきゃ、全員の反対を押し切ってお前を残すなんて力技できねえだろ。言うこと聞いといたほうがいいんじゃねえの?」
「……」
明日香は、無言でメイド服を見つめた。
☆
「す、すごく見られてる……」
明日香はメイド服姿で、真っ赤になりながら廊下を歩いていた。噂されているのがわかって、帽子のつばをくい、と下げる。ひそひそと話す声が聞こえてきた。
「千秋さん、落第したのに残ってるわけ?」
「ありえないんだけど」
「大した実力もないのにさ」
全部事実なので反論のしようもない。背負ったリュックに入っているノアが、ぼそりと言った。
「いやだねえ。どいつもこいつも狭量で」
「仕方ないよ。私だって同じこと思うし」
「はん、ピアノを弾いて思い知らせてやればいいさ」
廊下の向こうに滝沢が見えて、明日香はどきりとした。すれ違いざま、彼はいつもと変わらぬ笑顔を見せる。
「おはよう」
「お、おはよう」
「残れたんだね」
「生徒じゃなくて雑用係なんだけど……」
「だからその恰好なんだ」
明日香は、滝沢の視線を避けるように身をよじった。
「これはその、理事長が着ろっていうから」
「変わった人だよね。落第した人間を復活させるなんて」
「う、うん」
「何をしたの?」
「え」
「『革命』の演奏。一日であんなに演奏法が変わるなんてありえない」
「え、えっと」
明日香が答える前に、彼が口を開く。
「まあいいか。偶然かもしれないしね」
「え」
「俺は君の実力をよく知ってるから。いつか必ずここを出てくことになるよ」
笑顔で言われ、明日香は顔を引きつらせる。
「う……で、出てかないように頑張ります」
明日香はそそくさと滝沢の横を通り過ぎた。ノアがぐるる、とうなる。
「なんだあのすかしたやろーは」
「滝沢君だよ。成績トップの」
「どうせクソつまんねえ演奏しやがるんだろうな。てめえのつまんねえピアノよか、私のが何万倍もましだ、って言ってやれよ」
「そんなこと言えないくらいうまいんだって……」
明日香は理事長室の前で立ち止まり、ドアをノックした。
「失礼します……」
「納得できません!」
ドアを開けると、いきなり女生徒の声が聞こえてきた。明日香はびくりとする。そっと中を覗くと、見知った少女が見えた。
「あ、吉野さん……」
理事長は爪を磨きながら、面倒そうな口調で言う。
「だから、もう雑用係はいるし、君を残す枠がないんだって、ヨシノサツキ」
吉野はきつい口調で、
「千秋さんより私のほうが劣ってるなんて思いません」
「へー、こんなこと言ってるよ、どう、チアキアスカ」
「え?」
いきなり話を振られ、明日香は目を瞬いた。吉野がこちらを振り向く。敵意を露わにした鋭い視線に、思わず息を飲んだ。
「弾いてみればわかります!」
吉野がずかずかとピアノに近づいていく。
「ああちょっと待ってよ、今から会議があるんだよね。あ、いいこと思いついた」
理事長がぱちん、と指を鳴らした。
「一週間後にテストをしよう。で、勝ったほうを残す。どう?」
明日香は素っ頓狂な声を上げる。
「へっ」
吉野は明日香をにらみつけて言う。
「そんなの、理事長は千秋さんを贔屓する気なんでしょう?」
「そんなつもりないけど。もちろんほかの先生にも参加してもらうし、あ、タキザワシューイチにも審査員になってもらおうかなー」
それを聞いて、明日香はどきりとした。不服そうな顔をしたヨシノに、理事長がひらひらと爪やすりを振る。
「いやならいいけど? はい、サヨナラ~」
吉野は眉をぎゅっと寄せ、
「わかりました。課題曲は」
「えーっと……この曲にしよっか」
理事長が本棚から楽譜を抜き出した。ベートーベンの「月光」だ。
「第三楽章にしよう」
なぜだろう。そう思っていたら、彼はあっさりとこう言った。
「僕が一番好きだから。あ、ヨシノサツキ、君にも雑用係やってもらうからね。チアキアスカはここで練習するから、君は第三音楽室のピアノ使って。話は通しとくからさ」
押し付けられたメイド服に、吉野は眉をしかめた。不服気にカチューシャヘッドをぐいぐい引っ張っている。気持ちはわかるよ、と言おうとしたら、きっ、とにらみつけられた。
ドアが開いて、教師の森屋が顔を出す。
「理事長、そろそろ」
「じゃあ、頑張ってねー」
ひらひら手を振って出ていく理事長とすれ違いに、静乃が入ってくる。
「静乃さん」
静乃は女神のように優しく微笑みながら、
「お掃除の仕方とか私が教えるから。まずは外の掃き掃除ね。大変よー、ここのお庭広いから」
「はい」
「私は嫌です」
きっぱりと言った吉野に、明日香はぽかんとした。
「へ」
「掃除するためにリード学院に入ったんじゃないわ」
静乃が笑顔のまま吉野を見る。
「掃除もできない人に、素敵なピアノが弾けるのかしら?」
その言葉に、吉野がかっとなった。
「なんですって」
「あの、早くしないと時間がなくなるような」
明日香はおろおろと二人を見くらべた。静乃がにこりと笑い返す。
「まあ、そうね。がんばったらクッキーを焼いてあげるから。ね? 吉野さん」
吉野は舌打ちして、制服のボタンをはずし始めた。
☆
「広いってレベルじゃないよね……」
明日香は掃いても掃いても続く敷地内に辟易していた。ノアがリュックから顔をのぞかせる。
「ちんたらしてたら、練習する時間なくなるぞ」
「そんなこと言われても」
「ま、あちらさんはそもそも掃除をする気がないみたいだがな」
明日香はノアが顎をしゃくったほうを見た。メイド服姿の吉野が木にもたれて、楽譜を見ていた。明日香の視線に気づいたのか、顔を上げ、睨み返してくる。
「なによ」
「え、えーと、できれば手伝ってほしいなあって」
吉野が切れ長の瞳をすがめて、明日香を見る。
「あんたはいいわよね」
「え」
「おばあさんが死んだから、同情されて残れたんでしょ」
明日香は息をのんだ。
「どういう、意味」
「うらやましいって意味。うちの親ぴんぴんしてるもの。何も成果あげずに帰ったら不平タラタラだわ。それに比べて、あんたは文句を言ってくる相手もいないわけでしょ」
明日香はぐ、とほうきを握りしめた。きっ、と吉野をにらむ。
「何よ、その眼」
「……本気で言ってるの」
「なにが」
「私はおばあちゃんが生きててくれたら、学院になんか残れなくたってよかった!」
「なに言って、ちょっとやめなさいよ」
明日香はほうきを地面に放り、吉野につかみかかった。吉野が帽子をつかんだせいで、猫耳があらわになった。
「取り消して!」
「いやよ!」
もみ合う二人をみて、ノアは興奮気味に鳴く。
「おいおいおい、キャットファイトだぜ! しびれるう! ……あ」
木陰から出てきた人影が明日香と吉野の襟首をがっ、とつかむ。明日香は慌てて帽子を拾い上げ、かぶった。
「なにやってるのかしら?」
二人を見下ろし、静乃が黒い微笑みを浮かべた。
十分後、二人はロビーのソファに正座させられていた。静乃は優しげな笑みをたたえ、あえて穏やかに言う。
「争いは何も生まないわよね、そうでしょう?」
「……はい」
「でも静乃さん、千秋さんが先に」
口をはさんだ吉野を、静乃は笑顔で黙らす。
「どっちが先かは関係ないのよ。喧嘩両成敗っていうでしょう?」
明日香はしびれてきた足をもぞもぞ動かしてうなずく。
「はい」
「罰として、夕飯は二人だけで作りなさい」
「え」
「返事は?」
「「はい……」」
ノアが小声で、静乃すげえ、と言った。
明日香と吉野は二人きりでキッチンにいた。静乃は用事があるといって出て行ってしまったのだ。不機嫌にそっぽを向く吉野に、明日香は話しかけた。
「えーと、何を作るか相談を……」
「私、味噌汁とごはんと副菜を担当するわ。千秋さん、メイン作って」
吉野はさっさと決めてまな板をとり出す。明日香は、肩をすくめ、冷蔵庫を覗いた。
業務用なのか、冷蔵庫は大きい。中には、バットに入れられた鶏もも肉があった。たぶんからあげを作るつもりだったのだろう。
「ねえ、から揚げメインにしようと思うんだけど、副菜は何作るの?」
明日香の問いを、吉野は無視する。
明日香は、ため息をついてボウルを出した。
「まあいっか……」
ノアが背後からけしかけてくる。
「おい明日香、何ふわふわしてやがる。さっきのファイトはどこ行ったよ!」
「だって、さっきはおばあちゃんのこと言われたから腹立って」
「なに一人でしゃべってんの?」
吉野が不審げにこちらを見たので、明日香は慌てて首を振る。
「な、なんでもない」
ああ、そうか。ほかの人から見たら、ノアはただの猫なんだ。明日香がから揚げ粉に肉をまぶしていると、吉野が声を上げた。
「いたっ」
明日香は驚いて、吉野に駆け寄る。
「大丈夫?」
包丁で切ったのか、指先から血が出ている。
「いたーい」
「保健室行って来たら? 私がやっておくから」
吉野は明日香をちら、と見て、口元を緩めた。
「そう? じゃあ残り全部、お願いね」
「うん」
明日香は吉野を見送り、はっとした。──全部? 時計を見ると、食事時間まであと三十分しかない。ノアがあきれたように言う。
「明日香、うんじゃねえだろ」
「ど、どうしよう。静乃さんは出かけちゃったし」
おろおろしていると、ノアがふっ、と笑う。
「仕方ねえな」
「え、ノア、手伝ってくれるの?」
猫の手も借りたいというのはこういう時に使うのだろう。ノアが尻尾を振りながら、
「俺様が指示してやる。コンダクターのようにな! その通りにやれば完璧だ!」
明日香はがくりと肩を落とした。
「おい、鍋が吹いてるぞ! 止めろ!」
「焦げる! 肉が焦げる!」
「サラダしなびちまうだろうがラップかけろ!」
ノアは指揮棒のように尻尾を振って指示を飛ばしてくる。明日香は半泣きになりながら、揚げ終わったからあげをトレーに移す。
「ひいい……助けておばあちゃあん」
「死んじまった人間に助け求めてどうすんだ!」
ノアの言葉に、余計に悲しくなる明日香。
「おばあちゃん……」
「今感傷に浸るなア!」
「大丈夫?」
突然声が聞こえて、明日香はくるりと振り返った。厨房の入り口に、滝沢が立っている。
「た、滝沢君」
「一人でやってるの? 声が二人分聞こえたけど」
滝沢の茶色い瞳がリュックに向かう。急いでノアをリュックに押し込むと、ふぎゃ、という声がした。ごめん、と内心で謝っておく。
「え、えーと、みんなもう食堂に来てる?」
そう尋ねると、滝沢がうなずいた。
「うん。手伝おうか」
「え、いいの?」
「あんまり待たせると暴動が起きそうだしね」
い、いい人だ……明日香が感動していると、滝沢がサラダを器に盛りながら言う。
「理事長に聞いたけど、吉野さんと勝負するんだって?」
「あ、うん、勝てるかわかんないけど、頑張るよ」
「そんなんじゃ絶対に勝てないね」
「え」
明日香は滝沢のほうを振り向いた。滝沢は相変わらず笑顔だ。
「吉野さんも君も負け犬気質だけど、吉野さんはプライドが高い。君に負けるなんて彼女は絶対に認められない。だから吉野さんに分があると俺は思う」
「まけいぬ……」
明日香は帽子の下、猫耳が生えている頭を押さえた。
「焦げるよ」
「わ」
明日香は慌ててからあげに向き直る。サラダを盛り終えた滝沢は、今度はご飯を盛る。
「相手を蹴落としてでも勝つって気持ちが、君にはない」
「だって、音楽ってそういうものなのかなって……」
「じゃあ、君はどうやって学院に入ったの?」
「どうやって、って」
「君の代わりに落ちた人間がいるんだよ。君はもうだれかを蹴落としてここにいるんだ」
「滝沢君はいつもそんなこと考えてるの?」
滝沢がほほ笑んだ。
「考えてないほうが馬鹿なんだと思うよ」
「う」
なんだか胃が痛くなってきた。そして、かねてから思っていた疑問が首をもたげる。
「……あの」
「ん?」
「滝沢君って、もしかして私のこと嫌い?」
「どうして?」
「なんとなく」
「まさか」
その言葉にほっとした明日香に、彼は言う。
「俺は、大した覚悟もないくせに学院にいる人間が嫌いなんだよ」
つまり私のことじゃないんだろうか。明日香が凍り付いていると、滝沢が味噌汁のお玉をとった。
「焦げるよ」
「うん……」
大変気まずい思いで用意をし終え、明日香はぎくしゃくと頭を下げた。
「アリガトウゴザイマシタ」
思わず片言になる。
「気にしないで。もたもたされるのが嫌いなだけだから」
「モウシワケゴザイマセン」
そこに静乃が現れた。用意された食事に、目を輝かせる。
「あらすごいわね! 滝沢くん、手伝ってくれたの?」
その問いに、滝沢は笑顔を浮かべる。
「いいえ、千秋さんが一人で作っていたので見学に来たんです。運んでもいいですか?」
「ええ、もちろん。あら? 吉野さんは?」
「えーと、トイレです」
明日香は滝沢に大きな借金を作った気がして、顔をひきつらせた。
「ああ、疲れた……もう無理」
夕食の後片付けを終え、明日香は学院の廊下を歩いていた。大量の皿を洗ったせいで指がふやけている。ノアがぐわ、と前足を上げた。
「無理じゃねーよ、練習すんだよロックによお!」
「いた、いたい、たたかないで」
猫パンチから頭をかばいながら階段に向かっていると、ピアノの音が聞こえてきた。
「あれ……?」
明日香は、階段わきの第三音楽室に目をやる。中から聞こえるのは、「月光」の第三楽章。そっと覗くと、吉野が演奏していた。
指は大丈夫だったのだろうか、と明日香が思っていると、ノアが呆れ気味に言った。
「飯の準備はできないのにピアノの練習はできんのかい」
「でもこんな時間まで、すごいね」
「すごいじゃねーよ、お前もやれよ」
「いたた」
明日香はノアに小突かれながら理事長室に向かった。
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