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虚貌
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美月。
学校でそう呼ぶと美月は振り向く。
誠司を認めて嫌な顔をする。
誘うように手をひくと嫌がるように身をよじる。
誠司は構わず彼女の手を引く。
非難をこめた瞳を無視して空き教室に連れ込む。
鍵を閉めて、カーテンを閉めて抱き締めると彼女の身体は弛緩する。好きにすれば、とでもいうように誠司を見る。だけど知っている。本当は震えている。
本意でないのに快感を感じるのも、それを誠司に見られるのも、誰かに見つかるのも、彼女は怖いのだ。
だからわざと学校でする。
美月はますます誠司を嫌う。
それでいい、どうせ今さら好かれようとは思っていないのだから。
身体さえ手に入れたら、心なんてあとからついてくる。
美月が完全に落ちる日がいつかくる。
その日を、誠司は待ちわびていた。
ある日の放課後、誠司は図書室で本を見ていた。
本は嫌いではない。役にたつものは。
数学関係の棚を見ていたら、げ、という声がした。
振り向くと美月。
「あんたなにやってんのよ」
「見ればわかるだろ、本をさがしてる。おまえこそ何してるんだ?」
「何って、当番だから」
そう言う美月の腕には腕章。
図書委員か。似合わない。
「お前は体育委員って感じだがな」
「どういう意味よ」
美月がむっとしたように誠司を睨む。健康的だと褒めたつもりだった。
視線を受け流して美月がもっている大量の本を見た。
細い腕には余るようで、半分ずり落ちている。
「棚に返すのか、貸せ」
「いいわよ、あんたに借りなんか作らない」
誠司は鼻で笑う。
「届かないくせに」
「届くわよ!」
「へえ?」
美月は背伸びして腕を伸ばす。
「う……」
誠司はぷるぷる震える靴先を愉快な気持ちで見た。
馬鹿だな、踏み台にのれば一発なのに。
だが言ってやらない。
自分より小さい頭を見ていると意地の悪い気持ちになる。
「なにみてんのよ」
「別に?届きそうにないが大丈夫か?」
「ん……あとちょっと」
美月の手に誰かの手が触れた。とん、と押されたそれが本棚に収まる。
誠司は美月の背後に立った男を見た。
妙に鋭い目付きだが、それ以外さしたる特徴のない、背ばかり妙に高い男だった。
美月がはっとしたように振り向いて笑顔になった。
「ありがとう、影山くん」
「お前カウンターやって」
影山、とかいう男が低い声で言う。
美月がけげんそうな顔をする。
「ええ? さっき、棚に返すのが面倒だって言ってたじゃない」
「うん、カウンターのがめんどかったわ」
「ったく……」
美月が踵を返す。
影山とやらが、ちら、と誠司を見た。
「藍川センパイっすよね、あいつの兄貴……あ、でも義理でしたっけ?」
「一応ね、君は──美月のクラスメイト?」
「ええ、同じ図書委員です」
「背が高いね、スポーツはやってる?」
「ああ、中学んときバスケやってたけどやめました、めんどかったんで」
めんどいという言葉が好きなようだ。
「もったいない、いい体格してるのに」
誠司はにこやかに言う。
影山が怪訝な顔をする。
「えーと、いっこ聞いていいすか」
「なに」
「なんで楽しくもないのに笑ってるんすか」
その言葉に、誠司は一瞬笑みを消した。
影山が淡々と言う。
「あんた本当はつまんないと思ってるでしょ、俺なんかと話すの」
誠司は笑顔を取り戻す。
「まさか。しかし君、変わってるね、そんなにはっきり思ってることを言う人には初めてあったよ」
「そうすか?うーん、あんたのが変わってる。すげー複雑だ、あんたの顔は」
なにを言っているんだ? この男。
影山がちらと誠司を見る。
「うそばっかついてきた顔」
──この男……。
誠司は彼に対する警戒を覚え、断ち切った。
「そんな風に見えてるんなら、気を付けなきゃね。じゃあ、僕はこれで」
誠司を睨み付ける美月を横目に図書館から出た。
廊下を歩いていたら、副会長の白鳥が前からやってくるのが見えた。
「誠司くん」
「やあ」
そう言って通りすがろうとしたら、袖を捕まれた。黒目がちの、潤んだ瞳で見上げてくる。
「待って。こないだは、ごめんなさい」
「こないだ?」
誠司が聞き返すと、白鳥が目を伏せる。
「キスの、こと」
「気にしなくていい、全然気にしてない」
誠司が穏やかに全然、を強調したら白鳥の瞳がますます潤む。
「藍川くん、私……本当に藍川くんのことが好きなの」
ああそう。だから?そう尋ねたい気持ちを押さえる。
「僕も、白鳥さんのことは好きだよ」
「本当に?」
「ああ、友人として」
そう言ったら、白鳥が首をふる。
「違う、そういうことじゃない」
ああ、めんどい。
さっきの男の言葉がよみがえった。
白鳥が誠司のブレザーを掴み、そっと背伸びをして、唇を合わせてきた。
誠司は無表情でそれを受け入れる。ああ、いらいらする。
こんなにうっとうしい女だとは思わなかった。
白鳥は、なんの反応も示さない誠司を見て瞳を潤ませた。
「どうして……? 藍川くん」
「ごめん、白鳥さん」
白鳥が顔を覆った。
(泣くのか? 本当にうっとおしい)
このまま立ち去ってしまおうか。誠司はそんな風に思う。
都合良く誰もいないし──。
「ちょっと!なにやってんのよ」
誠司が歩き出そうとしたとき、声が響いた。美月がパタパタとかけてきて、白鳥をかばうようにたつ。
三角の瞳をとがらせて怒った。
「白鳥先輩になにしたの!」
「別になにも?」
「泣いてるじゃない!」
「いいの、なんでもないのよ……」
白鳥がちらと指の隙間から誠司を見た。
盛大に苛立つ。
ああ、もうだめだ。口を開こうとしたら──。
「そのヒト嘘泣きっすよ」
低い声。
影山なんとかがペタペタ白鳥に近づく。
ずい、と彼女の顔に近づいた。
「化粧とれそうですよ副会長」
「うそ、あ」
白鳥がば、と手をのけてはっとしたように誠司を見た。
誠司は精々とっておきの笑顔で言ってやる。
「ごめんね、君は僕にはもったいないから、できれば二度と好きだなんて言わないでほしいな」
その言葉に、白鳥が顔を強張らせた。走り去った白鳥を見て、影山がつぶやく。
「ひっでえ」
誠司はしれっと返す。
「そうかな?」
むしろやさしくしてやったほうだ。
「大丈夫かな、白鳥先輩」
そうして、一人だけ的外れな心配をする美月にあきれた。
「美月、お前本当に馬鹿だな」
そういうと憤慨する。
「はあ!? あんたでしょ馬鹿は!女の子泣かすなんて最低! クズ!」
「は、最低で結構」
影山が誠司を見てふーん、と言う。
「なるほど、誠司先輩ってこーゆーひとなんすか、なるほどねえ」
誠司はちらと影山を見た。そういえばこいつがいた。
「君、なんで彼女が嘘泣きとわかった?」
「ああ、俺、ひとがうそつくとわかるんすよ」
なんだそれは。
影山がぴ、と美月を指差す。
「ちなみにそいつは嘘ついてもみんなにばれてますが」
誠司は頷く。
「まあ、馬鹿だからな。嘘をつけるほどの知能がないんだ」
「馬鹿じゃないわよ! 行こう、影山くん」
美月が影山の手を引く。
誠司はぴく、と眉を上げた。影山がちらとこちらを見たので、爽やかに笑ってやったら、気味悪げにそらされた。
その夜、洗面所でドライヤーを使っている美月と鉢合わせた。髪はしっとり濡れていて、細い身体は、薄い地のパジャマに包まれている。入り口に立って眺めていたら、美月がこちらを睨んできた。
「なによ」
「歯を磨きたいんだが」
彼女は身体をずらし、洗面台を空ける。誠司は歯ブラシを手に取り、歯を磨いた。口元をタオルで拭いながら口を開く。
「──あの影山っていうのはどういう男だ?」
「どういうって、そんなに目立たないけどなぜか一目おかれてる、みたいな? 言うことが結構的確っていうか」
「ふうん。バスケをやってたそうだな」
「ああ、そのことはなんかあんまり喋りたくないみたい。なんで?」
こちらを見上げてくる丸い瞳に目を細めた。
「いや、彼は随分お前と懇意なようだったから、釘をさそうと思って」
ぎり、と手首をつかむと、美月が怯えた目をした。引き寄せて、彼女の耳元に囁く。
「お前は僕のものだって」
濡れた髪に指を滑らし、パジャマの上から腰を撫でたら、びくりと震えた。
「私は、あんたのものじゃない」
「ふうん……まだそんなことが言えるのか?あんなにしてやっても足りない?」
誠司は、美月を壁に押し付け、パジャマの下に手を滑らせた。乳首を撫でたら、美月はぎゅうと目をつむって、ふるふる首をふった。
「だめ」
「ああ、そうだな、部屋に行こう」
手首を引くとまたいやいやと首をふる。
懇願するような瞳。
「やだ、あした、日直」
「起こしてやるから心配するな」
そう言って美月の肩を抱いた。
二階に上がり、誠司は部屋に美月を連れ込む。
ドアを閉めて後ろから抱き締めたら、細い身体が震えた。
「やだ……」
「まだ言ってるのか? 家でするのは久しぶりだな」
美月の白い首筋に唇を寄せて舐める。
「んっ」
美月が身をよじる。
誠司は美月のパジャマのボタンを外しながら指を白い身体に這わした。
「あ、や」
やわやわ胸の飾りをなでながらズボンを引き下ろして、下着だけになった美月の下腹部をなぞる。
「や、あ」
下着を指でなぞると、じわりと濡れた。
「もう濡れてる。期待してたのか?」
「ちが、ひあ」
指を下着の中に差し入れたら美月が呻く。
「や、あ、あ」
なんどか花芯を押し潰すと、立っていられないのかずるずる身体を曲げた。
誠司は美月の身体を支えてベッドへと連れていく。
シーツの上に押し倒したら、潤んだ瞳で睨んできた。
そんな目でにらんだって、逆効果だということが分からないのだろうか。
膣内に埋めた指を動かしながら、首筋をなめた。
そのまま唇を下に滑らせ、乳首を食んだら、嬌声が漏れる。
美月の膣内から引き抜いた指を、わざとらしく彼女の太ももにすりつけた。
「や」
ベッドサイドに置いてある小さな引き出しから避妊具を取り出し、つける。美月の蜜口はいやらしく光っていた。自身を擦り付けながら言う。
「耐え性のない身体だな、この程度でこんなに濡らして」
美月が息も絶え絶えに言う。
「あんた、こんなこと、ばっか、してたら地獄に落ちるわよ」
「お前は天国にいけるとでも?15歳で純潔を失った女を神様は許すかな?」
「すきで、なくしたわけじゃないわ」
美月の瞳が潤む。
「私だって、最初は好きなひととしたかった」
その言葉を聞いて、急速に心が冷えた。
「そうか……それは御愁傷様」
「ひあっ」
誠司がいきなり性器をつき入れたので、美月は小さく悲鳴をあげた。濡れそぼったなかを容赦なく突き上げたら、美月が顔を真っ赤にしてしがみついてくる。
「や、あ、やあっ、だめ、あ、あ、ああっ」
口を塞ぐ間もなく美月は声を漏らす。
誠司はクスクス笑いながら囁いた。
「すごい声だな。そんなに気持ちいいか?」
その言葉に震え、美月が真っ赤な頬を震えさせながら涙目を向けた。
「ばか、ばか……きらい、だいきらい」
そう言いながら誠司の髪をぐいぐい引っ張る。
幼稚な罵倒と行動に、いとしさがこみ上げた。
「子供みたいだな……かわいいよ、美月」
思わず甘言を吐いたら、美月がびくりと手を止めて目を伏せた。
「嘘つき」
「こんな時に嘘をつく余裕なんてない」
「あんたはいつも余裕じゃない」
「余裕?そう見えるなら、お前はやっぱり馬鹿だな」
「な、あっ」
誠司が激しく律動する。グチュグチュいう音をたてる結合部に理性を焼ききられたように美月が喘ぐ。
「や、いっちゃう、いっちゃうからぬいて」
「ああ、イけ、美月」
奥をごり、とえぐってわざとらしく囁いてやる。
「愛してるよ」
「っあ、だめ、あああああ」
美月がぎゅう、と締め付けてくる。
「っ」
誠司は美月を抱きしめ、低い声で呻いた。しばらく室内に息を吐く音が響く。
誠司は彼女から身体を離し、避妊具を外した。ティッシュで丸め、ベットから立ち上がろうとする。
美月が袖をひいてきたので振り向くと、大きな瞳がこちらを見つめていた。
「ねえ、本当?」
「なにが?」
「すきって、愛してるって」
誠司は微笑んだ。彼女の髪を撫でて囁く。
「ああ、愛してるよ美月」
美月がまた嘘つき、と呟いて目を閉じた。
学校でそう呼ぶと美月は振り向く。
誠司を認めて嫌な顔をする。
誘うように手をひくと嫌がるように身をよじる。
誠司は構わず彼女の手を引く。
非難をこめた瞳を無視して空き教室に連れ込む。
鍵を閉めて、カーテンを閉めて抱き締めると彼女の身体は弛緩する。好きにすれば、とでもいうように誠司を見る。だけど知っている。本当は震えている。
本意でないのに快感を感じるのも、それを誠司に見られるのも、誰かに見つかるのも、彼女は怖いのだ。
だからわざと学校でする。
美月はますます誠司を嫌う。
それでいい、どうせ今さら好かれようとは思っていないのだから。
身体さえ手に入れたら、心なんてあとからついてくる。
美月が完全に落ちる日がいつかくる。
その日を、誠司は待ちわびていた。
ある日の放課後、誠司は図書室で本を見ていた。
本は嫌いではない。役にたつものは。
数学関係の棚を見ていたら、げ、という声がした。
振り向くと美月。
「あんたなにやってんのよ」
「見ればわかるだろ、本をさがしてる。おまえこそ何してるんだ?」
「何って、当番だから」
そう言う美月の腕には腕章。
図書委員か。似合わない。
「お前は体育委員って感じだがな」
「どういう意味よ」
美月がむっとしたように誠司を睨む。健康的だと褒めたつもりだった。
視線を受け流して美月がもっている大量の本を見た。
細い腕には余るようで、半分ずり落ちている。
「棚に返すのか、貸せ」
「いいわよ、あんたに借りなんか作らない」
誠司は鼻で笑う。
「届かないくせに」
「届くわよ!」
「へえ?」
美月は背伸びして腕を伸ばす。
「う……」
誠司はぷるぷる震える靴先を愉快な気持ちで見た。
馬鹿だな、踏み台にのれば一発なのに。
だが言ってやらない。
自分より小さい頭を見ていると意地の悪い気持ちになる。
「なにみてんのよ」
「別に?届きそうにないが大丈夫か?」
「ん……あとちょっと」
美月の手に誰かの手が触れた。とん、と押されたそれが本棚に収まる。
誠司は美月の背後に立った男を見た。
妙に鋭い目付きだが、それ以外さしたる特徴のない、背ばかり妙に高い男だった。
美月がはっとしたように振り向いて笑顔になった。
「ありがとう、影山くん」
「お前カウンターやって」
影山、とかいう男が低い声で言う。
美月がけげんそうな顔をする。
「ええ? さっき、棚に返すのが面倒だって言ってたじゃない」
「うん、カウンターのがめんどかったわ」
「ったく……」
美月が踵を返す。
影山とやらが、ちら、と誠司を見た。
「藍川センパイっすよね、あいつの兄貴……あ、でも義理でしたっけ?」
「一応ね、君は──美月のクラスメイト?」
「ええ、同じ図書委員です」
「背が高いね、スポーツはやってる?」
「ああ、中学んときバスケやってたけどやめました、めんどかったんで」
めんどいという言葉が好きなようだ。
「もったいない、いい体格してるのに」
誠司はにこやかに言う。
影山が怪訝な顔をする。
「えーと、いっこ聞いていいすか」
「なに」
「なんで楽しくもないのに笑ってるんすか」
その言葉に、誠司は一瞬笑みを消した。
影山が淡々と言う。
「あんた本当はつまんないと思ってるでしょ、俺なんかと話すの」
誠司は笑顔を取り戻す。
「まさか。しかし君、変わってるね、そんなにはっきり思ってることを言う人には初めてあったよ」
「そうすか?うーん、あんたのが変わってる。すげー複雑だ、あんたの顔は」
なにを言っているんだ? この男。
影山がちらと誠司を見る。
「うそばっかついてきた顔」
──この男……。
誠司は彼に対する警戒を覚え、断ち切った。
「そんな風に見えてるんなら、気を付けなきゃね。じゃあ、僕はこれで」
誠司を睨み付ける美月を横目に図書館から出た。
廊下を歩いていたら、副会長の白鳥が前からやってくるのが見えた。
「誠司くん」
「やあ」
そう言って通りすがろうとしたら、袖を捕まれた。黒目がちの、潤んだ瞳で見上げてくる。
「待って。こないだは、ごめんなさい」
「こないだ?」
誠司が聞き返すと、白鳥が目を伏せる。
「キスの、こと」
「気にしなくていい、全然気にしてない」
誠司が穏やかに全然、を強調したら白鳥の瞳がますます潤む。
「藍川くん、私……本当に藍川くんのことが好きなの」
ああそう。だから?そう尋ねたい気持ちを押さえる。
「僕も、白鳥さんのことは好きだよ」
「本当に?」
「ああ、友人として」
そう言ったら、白鳥が首をふる。
「違う、そういうことじゃない」
ああ、めんどい。
さっきの男の言葉がよみがえった。
白鳥が誠司のブレザーを掴み、そっと背伸びをして、唇を合わせてきた。
誠司は無表情でそれを受け入れる。ああ、いらいらする。
こんなにうっとうしい女だとは思わなかった。
白鳥は、なんの反応も示さない誠司を見て瞳を潤ませた。
「どうして……? 藍川くん」
「ごめん、白鳥さん」
白鳥が顔を覆った。
(泣くのか? 本当にうっとおしい)
このまま立ち去ってしまおうか。誠司はそんな風に思う。
都合良く誰もいないし──。
「ちょっと!なにやってんのよ」
誠司が歩き出そうとしたとき、声が響いた。美月がパタパタとかけてきて、白鳥をかばうようにたつ。
三角の瞳をとがらせて怒った。
「白鳥先輩になにしたの!」
「別になにも?」
「泣いてるじゃない!」
「いいの、なんでもないのよ……」
白鳥がちらと指の隙間から誠司を見た。
盛大に苛立つ。
ああ、もうだめだ。口を開こうとしたら──。
「そのヒト嘘泣きっすよ」
低い声。
影山なんとかがペタペタ白鳥に近づく。
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「化粧とれそうですよ副会長」
「うそ、あ」
白鳥がば、と手をのけてはっとしたように誠司を見た。
誠司は精々とっておきの笑顔で言ってやる。
「ごめんね、君は僕にはもったいないから、できれば二度と好きだなんて言わないでほしいな」
その言葉に、白鳥が顔を強張らせた。走り去った白鳥を見て、影山がつぶやく。
「ひっでえ」
誠司はしれっと返す。
「そうかな?」
むしろやさしくしてやったほうだ。
「大丈夫かな、白鳥先輩」
そうして、一人だけ的外れな心配をする美月にあきれた。
「美月、お前本当に馬鹿だな」
そういうと憤慨する。
「はあ!? あんたでしょ馬鹿は!女の子泣かすなんて最低! クズ!」
「は、最低で結構」
影山が誠司を見てふーん、と言う。
「なるほど、誠司先輩ってこーゆーひとなんすか、なるほどねえ」
誠司はちらと影山を見た。そういえばこいつがいた。
「君、なんで彼女が嘘泣きとわかった?」
「ああ、俺、ひとがうそつくとわかるんすよ」
なんだそれは。
影山がぴ、と美月を指差す。
「ちなみにそいつは嘘ついてもみんなにばれてますが」
誠司は頷く。
「まあ、馬鹿だからな。嘘をつけるほどの知能がないんだ」
「馬鹿じゃないわよ! 行こう、影山くん」
美月が影山の手を引く。
誠司はぴく、と眉を上げた。影山がちらとこちらを見たので、爽やかに笑ってやったら、気味悪げにそらされた。
その夜、洗面所でドライヤーを使っている美月と鉢合わせた。髪はしっとり濡れていて、細い身体は、薄い地のパジャマに包まれている。入り口に立って眺めていたら、美月がこちらを睨んできた。
「なによ」
「歯を磨きたいんだが」
彼女は身体をずらし、洗面台を空ける。誠司は歯ブラシを手に取り、歯を磨いた。口元をタオルで拭いながら口を開く。
「──あの影山っていうのはどういう男だ?」
「どういうって、そんなに目立たないけどなぜか一目おかれてる、みたいな? 言うことが結構的確っていうか」
「ふうん。バスケをやってたそうだな」
「ああ、そのことはなんかあんまり喋りたくないみたい。なんで?」
こちらを見上げてくる丸い瞳に目を細めた。
「いや、彼は随分お前と懇意なようだったから、釘をさそうと思って」
ぎり、と手首をつかむと、美月が怯えた目をした。引き寄せて、彼女の耳元に囁く。
「お前は僕のものだって」
濡れた髪に指を滑らし、パジャマの上から腰を撫でたら、びくりと震えた。
「私は、あんたのものじゃない」
「ふうん……まだそんなことが言えるのか?あんなにしてやっても足りない?」
誠司は、美月を壁に押し付け、パジャマの下に手を滑らせた。乳首を撫でたら、美月はぎゅうと目をつむって、ふるふる首をふった。
「だめ」
「ああ、そうだな、部屋に行こう」
手首を引くとまたいやいやと首をふる。
懇願するような瞳。
「やだ、あした、日直」
「起こしてやるから心配するな」
そう言って美月の肩を抱いた。
二階に上がり、誠司は部屋に美月を連れ込む。
ドアを閉めて後ろから抱き締めたら、細い身体が震えた。
「やだ……」
「まだ言ってるのか? 家でするのは久しぶりだな」
美月の白い首筋に唇を寄せて舐める。
「んっ」
美月が身をよじる。
誠司は美月のパジャマのボタンを外しながら指を白い身体に這わした。
「あ、や」
やわやわ胸の飾りをなでながらズボンを引き下ろして、下着だけになった美月の下腹部をなぞる。
「や、あ」
下着を指でなぞると、じわりと濡れた。
「もう濡れてる。期待してたのか?」
「ちが、ひあ」
指を下着の中に差し入れたら美月が呻く。
「や、あ、あ」
なんどか花芯を押し潰すと、立っていられないのかずるずる身体を曲げた。
誠司は美月の身体を支えてベッドへと連れていく。
シーツの上に押し倒したら、潤んだ瞳で睨んできた。
そんな目でにらんだって、逆効果だということが分からないのだろうか。
膣内に埋めた指を動かしながら、首筋をなめた。
そのまま唇を下に滑らせ、乳首を食んだら、嬌声が漏れる。
美月の膣内から引き抜いた指を、わざとらしく彼女の太ももにすりつけた。
「や」
ベッドサイドに置いてある小さな引き出しから避妊具を取り出し、つける。美月の蜜口はいやらしく光っていた。自身を擦り付けながら言う。
「耐え性のない身体だな、この程度でこんなに濡らして」
美月が息も絶え絶えに言う。
「あんた、こんなこと、ばっか、してたら地獄に落ちるわよ」
「お前は天国にいけるとでも?15歳で純潔を失った女を神様は許すかな?」
「すきで、なくしたわけじゃないわ」
美月の瞳が潤む。
「私だって、最初は好きなひととしたかった」
その言葉を聞いて、急速に心が冷えた。
「そうか……それは御愁傷様」
「ひあっ」
誠司がいきなり性器をつき入れたので、美月は小さく悲鳴をあげた。濡れそぼったなかを容赦なく突き上げたら、美月が顔を真っ赤にしてしがみついてくる。
「や、あ、やあっ、だめ、あ、あ、ああっ」
口を塞ぐ間もなく美月は声を漏らす。
誠司はクスクス笑いながら囁いた。
「すごい声だな。そんなに気持ちいいか?」
その言葉に震え、美月が真っ赤な頬を震えさせながら涙目を向けた。
「ばか、ばか……きらい、だいきらい」
そう言いながら誠司の髪をぐいぐい引っ張る。
幼稚な罵倒と行動に、いとしさがこみ上げた。
「子供みたいだな……かわいいよ、美月」
思わず甘言を吐いたら、美月がびくりと手を止めて目を伏せた。
「嘘つき」
「こんな時に嘘をつく余裕なんてない」
「あんたはいつも余裕じゃない」
「余裕?そう見えるなら、お前はやっぱり馬鹿だな」
「な、あっ」
誠司が激しく律動する。グチュグチュいう音をたてる結合部に理性を焼ききられたように美月が喘ぐ。
「や、いっちゃう、いっちゃうからぬいて」
「ああ、イけ、美月」
奥をごり、とえぐってわざとらしく囁いてやる。
「愛してるよ」
「っあ、だめ、あああああ」
美月がぎゅう、と締め付けてくる。
「っ」
誠司は美月を抱きしめ、低い声で呻いた。しばらく室内に息を吐く音が響く。
誠司は彼女から身体を離し、避妊具を外した。ティッシュで丸め、ベットから立ち上がろうとする。
美月が袖をひいてきたので振り向くと、大きな瞳がこちらを見つめていた。
「ねえ、本当?」
「なにが?」
「すきって、愛してるって」
誠司は微笑んだ。彼女の髪を撫でて囁く。
「ああ、愛してるよ美月」
美月がまた嘘つき、と呟いて目を閉じた。
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