私のキライな上司

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はじめて編(下)

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 かわいいな。それだけならまあ、わかる。上司が部下にいう台詞ではないけど。だが、あのキスはなんなのだ。

 私は悶々としながら、手にした雑誌越しに、ちらりと三澤を見た。何やらスマを操作していた三澤が、切れ長の瞳をこちらに向けてくる。

 どきりとして目をそらしたら、彼がこちらへやってきた。
「なあ、おまえついったーやってんだろ」
「や、やってますけど」
「どうやんの。教えて」
「お金払ったら教えてもいいですよ」
「はあ? 生意気だな、貧乳のくせに」

 貧乳は関係ないだろう。私はむっとしつつ、スマホに指を滑らせる。
「これでツイートできて……」
「写真は?」
「これを押すと載せられます」
 三澤は私の方に顔を寄せ、画面を覗き込んでいる。まつげ長いな……。手が触れ合い、どきっと心臓が鳴った。私は誤魔化すように口を開く。

「ツイッター、始めるんですか? 嫌いとか言ってたのに」
 飯を撮るやつが嫌いなのだ、と三澤が言った。
「グラビアアイドルフォローするためにな」
「……へえ、DMで口説くんですか」
「しねえよ、仕事。口説くなら直でやる」

 この人でも女の子を口説いたりするんだ。想像しようとしたが、無理だった。だってセクハラしかされたことないし。
どんな店に行くんだろう。少なくとも、大衆居酒屋へは行かないだろう。バーとか行っちゃったりするんだろうか。

 酔っぱらってキスしたりとか。先日の、唇の感触を思い出しかけ、私はぶんぶん首を振った。

 あれは事故だ。三澤は絶対覚えてないし、慰謝料を請求したいところだけど無理だろう。べつに、気にしてなんかいないし。あんなものは粘膜と粘膜の接触だし。

「ああ、そうだ。またエロ記事書いて。こないだのよかったから、あんな感じで」
 三澤の言葉に、眉を寄せる。
「またですか?」
「明後日までな」
「ハイ」
 私はしぶしぶ頷いた。三澤は私の頭をくしゃっと撫で、自分のデスクへと戻った。私は乱された髪をなおしつつ、パソコンに向かった。 


 こないだの記事は、会社のトイレでオナニーしてたら、上司にバレて……みたいな話だった。仕事中にオナニーとか、あり得ないし。上司も盛ってないでまず注意しろよっていう。
 私はネットサーフィンをして、めぼしい話を探した。

「……全然書けない」
 私はパソコンの前で固まっていた。三澤と自分をモデルにして考えていたら、なんだか恥ずかしくて、途中で全部消してしまうのだ。書いては消し、書いては消していると、だんだん外が暗くなってくる。焦りを覚えていたら、三澤が背後からひょい、と覗きこんできた。

「なんだよ、一行も書けてないじゃん」
 私は距離の近さにどぎまぎしながら、
「ちょっと、スランプで」
「なんだスランプって。スランプになるほど書いてないだろ」
 ぐうの音もでない。よく見たら、三澤はすでに帰り支度をしていた。橋本がからかう。
「こんなに早く帰るなんて珍しいな。デートか?」
「違う。仕事。グラビアアイドルと飯食うんだよ。今度の巻頭に写真載せるから」

 私は、キーボードをたたく指を止めた。
「いいですね、おっぱい揉み放題で」
 橋本が原稿を眺めながら言う。もちろん冗談だろうけど、でも三澤だったら食事のあとホテルへなだれ込むことも十分想像できた。

「まあ、職場に全然おっぱいないからな」

 三澤が笑いながらこっちを見る。いつもは全然平気なのに、なんだかもやっとした。私が反応しないので、彼は拍子抜けしたように目を瞬いている。
 私は席を立ち、手洗いへと向かった。

 うちの手洗いは男女共有で、個室がひとつしかない。便器に座り込んで、ため息をつく。三澤が会うという、グラビアアイドルの写真を検索してみた。彼女の胸は、ちいさいメロン並みに大きい。

 自分の胸に手を当てて、そっと揉んでみた。まあ、なんて慎ましい……。

「べつに、胸が小さくてもいきてけるし」
 個室を出て、手を洗っていたら、トイレのドアが開いた。三澤が入ってくる。
「!」
 私はギョッとして、
「ちょっ、勝手に入ってこないでください」

 三澤はその言葉をするっと無視した。
「なあ、おまえなんか変じゃない?」
「変って、なにがですか」
「ノリ悪いっていうか。具合でも悪いわけ」
 彼は私の肩に顎を載せ、鏡ごしに見つめてくる。その体勢に、昨夜のことを思い出し、心臓が早鐘を打ち始めた。

「べ、べべつに、なんでもないです」
 思わずどもってしまう。
「もしかして、おっぱいが小さすぎて悩んでんの?」
「関係ないでしょ、っ」
「大きくしてやろっか」
 三澤がそう囁いて、私の胸に手を這わした。私はびくりとして、彼の腕を掴んだ。

「な、セクハラですよ!」
「ほんとちいさいな。パットとか入れてないの?」
「そんなの入れても、小さいから、おんなじだし」
「たしかになあ」
 のんびり言った三澤の手が、するりとシャツの中に入ってきた。

「な、にして、叫びますよ!」
「揉むと、なんとかホルモンが出てでかくなるんだって。知ってた?」
「だからなんなんですか、ふ」
 ブラをのけて、指先が素肌に触れた。乳首に爪がかすって、身体が震える。
「ほんと全然ないのな。これじゃおっさんナンパしても釣られねえな」
 やんわりと揉まれて、身体が熱くなっていく。うそ、なに。

「う、やめ、ろ!」
 私は三澤の腹めがけ、思いきりよく肘打ちをかました。彼はげほげほ咳き込んでいる。
「すげえ威力」
「訴えますよ、このセクハラクソ上司!」
 自分の身体を抱きしめながらそう叫んだら、三澤が笑った。
「元気ならいい」
「っ」
 なんなんだ、その笑顔は。セクハラってレベルじゃないぞ。私が訴えたら刑務所だぞ。
 手洗いを出て行った三澤を見送り、私は鏡を見た。鏡に映った自分の顔は、このうえなく真っ赤だった。

 なんとか元どおりの顔色になるまで待ち、手洗いを出たら、三澤はすでにいなかった。もう出かけたのだろう。デスクにいた河原さんが、小声で尋ねてくる。
「ねえ、なにかあった? 声が聞こえたけど……」
「全然なにもありません」
 私はきっぱりと言い、再びパソコンに向かった。


 コーヒーを飲もうと席を立ったら、同じくパソコンに向かっていた橋本が寄ってきた。
「俺のも淹れて」
「はい」
 備え付けの台所へ向かい、コーヒーサーバーを手に取った。各々のカップにコーヒーを注ぎ、差し出す。橋本はコーヒーをひとくち飲んで、
「三澤となんかあったの?」
「……いえ、べつに」
「なんかされたんだ」

 橋本は愉快そうににやにや笑っている。私はムキになって言った。
「されてません」
「ほんと? 怪しいなあ」
 話題を変えようと、私は別の話を持ち出した。

「なんで、三澤さんは大手の出版社をやめてまで、こんなちっさなとこでエロ雑誌つくってるんでしょうか」
「三澤はそれこそ、独立する前は鬼みたいなやつだったからな」
 橋本はシンクにもたれて言う。

「スクープを抜くためにはどんな手でも使った。実際それで手柄をあげてたから、周りから非難されることもなかった。──だけど、三澤が書いた記事が元で、ある女の子が自殺したんだ」
 私は息を飲んだ。橋本は「三澤が直接の原因ってわけじゃないんだけどな」と前置きし、

「その頃、とある新興宗教団体のやり口が問題になっててさ。三澤は信者の女の子を説得して、暴露話をとった。当時は大スクープだってもてはやされたよ」

 その団体には警察の調査が入り、ほぼ壊滅に追い込まれたのだそうだ。
「元々精神的に不安定だったんだろうな。女の子は自責の念にかられて、手首を切った」
 橋本はいつもより声のトーンを低くし、淡々と話した。

「で、三澤のやり方が槍玉に上がった。さんざんあいつのあげた記事で儲けてきたくせに、出版社は三澤を切り捨てた」
 三澤はそこを辞め、職を失った。
「あいつは出版社をやめてから、しばらくなんにもせずにいた。放っといたら死んじまうと思ってさ。出版社でも作れ、って言ったんだ」

「……それで、エロ雑誌を?」

 私は、見本誌に踊るアガリクスだのセックスだの人妻がなんだのいう文字を見下ろした。とても世の中に必要な雑誌とは思えないのだが。

「馬鹿馬鹿しいものを作りたいって三澤は言ってた。社会問題を取り上げたら偉いわけじゃない、芸能人のスキャンダルをすっぱぬけば凄いわけじゃない。読んで楽しい記事を作りたいんだってさ」
「……それが、エロ雑誌……」
「まあ、そう言いつつほとんど趣味だろうけど」

 私は三澤のデスクを見つめてつぶやいた。
「怖いですね、記事を書くって」
「そうだな。たまに書くのが怖くなるよ。言葉が人を死に追いやることもあるんだ」
 橋本が私の肩に手を置いた。
「貧乳って言われたくらいで気に病んだらだめだよ」
「心配してくれるなら、そもそも言わないでください」
 彼は笑って、デスクへ戻って行った。



 河原と橋本が帰っていき、しん、とした部屋の中、私はパソコンに向かっていた。画面に羅列されているのは、世の中に全く必要ないだろう、小さなエロ記事のネタ。こんなの読んだって、全然興奮しないのに。
 さっき三澤に触れられたことを思い出すと、身体が勝手に火照ってくる。

 三澤の手は大きくて、指が長かった。ほとんどない胸を包み込まれたとき、身体がびりっと痺れた。

 火照りを抑えるように、息を吐く。その吐息が、やけに大きく聞こえた。

 なんで、こんなことで興奮してるんだろ。あんなの、ただのセクハラで。三澤は嫌いな上司で。ここは狭苦しい仕事場なのに。興奮することなんか、ひとつもないのに。

 私はそっと、自分の胸に手を這わした。服の上から撫でて、その下に手を潜り込ませる。

「ふ」
 シャツを口にくわえて引っ張ると、ブラをつけた自分の胸が露わになった。そっとブラをずらし、胸元をまさぐる。かすかに乳首がたっていた。吐息を漏らしながら乳首を撫でて、ズボンに手を入れる。ショーツの上から柔らかくなでたら、少し湿っていた。

「ん、う」
 しばらくいじっていたら、いやらしい音が聞こえてきて、頭の奥が熱くなる。ファンタジーみたいな記事と、同じことしてる。

 そのとき、ビルの階段をあがる足音が聞こえてきた。

 私はびくりと震え、慌ててシャツを引きおろす。どくどく心臓を鳴らしていたら、ドアがガチャリと開いた。姿を現したのは、三澤だった。彼はこちらに視線を向け、不思議そうに目を瞬いた。

「おまえ、まだいたの?」
「み、三澤さんこそ、なんで」
「いや、ビルの前通りかかったら、明かりついてるのが見えたから。まだ誰かいんのかな、と思って」

 私は内心ドキドキしながら、シャツを握りしめた。頼むから近づいてこないでくれ。そのまま帰ってくれ。私は切に願った。神よ……! 三澤はぶらぶらこっちに歩いてきて、ひょい、と私の顔を覗きこんできた。

「なんか、顔赤くない?」
「っ」
 私はばっ、と目をそらした。神さまなんていないのだ。三澤がふっ、と目を細める。──あ、やばい。

「乳首たってるし」
 三澤は私の背後に立って、胸に手を這わした。服越しにつん、とたった乳首をつつく。

「ふ」
「エロ記事書いて興奮したとか?」
「ちが、あ」
 彼は私の耳介に舌を這わせた。ぬるりとした感触に、身体が震える。

「三澤、さ」
「やっぱ変だな。大人しいし」
 三澤に身体をいじられるたびに、身体がひどく熱くなって、下半身にしびれが走った。くりくり乳首を摘まれて、喉を震わせる。

「胸、触らないでください」
「大きくしてやろうと思って」
「いり、ません」
「大きくしなきゃ、どっちが背中かわかんないじゃん」
「そんなこと、ない、です」

 私が声を詰まらせたら、三澤が手を止めた。彼は困ったような顔でこちらを見ている。

「泣くなよ。悪かったって。冗談だろ」
 わしわし髪を撫でられて、抱き寄せられる。私はぎゅっと三澤のシャツを握りしめた。あたりが静かだから、どくどくという心臓の音だけが鼓膜に響いていた。

「三澤、さん」
「ん?」
「グラビアアイドルのおっぱい、揉まなかったんですか」
「うん、彼氏いるらしいし」
 三澤は私の背中を優しく撫でて、
「今日はおまえの揉んだからいいかな、って」
「背中みたいな胸ですけど」
「拗ねるなよ。おっきくしてやるから」

 彼は背中からシャツをめくりあげ、するりと手を入れた。そのまま胸を柔らかく揉まれて、私は喉を鳴らす。彼は私の様子を見ながら、意地悪く尋ねてくる。

「なあ、ブラ外してなにしてたの」
「なんにも、してない。苦しかったから、緩めただけです」
「苦しくなるような胸ないのに」
 私は彼の肩を叩いた。
「いたい」
「ばか」

 三澤は口元を緩め、私に唇を近づけた。ちゅ、と唇が合わさって、胸がきゅんと鳴った。なんで、セクハラクソ上司にドキドキしてるんだろう。エロ記事に毒されてるんだろうか。

 彼は私の手を引いて、ソファに連れていった。経験はないけど、三澤がなにをしようとしてるかは、なんとなくわかった。ソファにゆっくり倒された私は、ぎこちなく三澤を見上げる。

 こちらを見下ろす切れ長の瞳が、いつもより色が濃いように見えた。なんだか違う人みたいに見えて、ドキドキする。

「あ、の」
「なに?」
「するんですか」
「そりゃ、なんとかホルモン出さなきゃなんないしな」
「でも、職場、だし」
「俺の会社だから問題ない」
 彼はそう言って、私の頰を撫でた。

「嫌か?」
 手のひらの温度と、こちらを見つめる瞳に身体が疼いた。
「……したいなら、してあげてもいいです」
「なんだそのうえから目線」

 三澤は笑いながら、私のシャツを脱がした。完全に露わになった胸を、じっと見てくる。

「ちっさい」
「いちいち言わなくて、いい、ふ」
 三澤の髪が、私の胸に埋まる。ぴちゃ、ぬる、と、舌が這う生暖かい感触に、身体がひどく熱くなった。

「ふ、あ」
「すごいたってる」
「あ、あ」
 私は三澤のシャツを握りしめ、息をはくはく吐いた。彼は私の様子を見つめながら、乳首を舐める。内股を擦り合わせていたら、大きな手のひらがジーパンの上を這い出した。

「なあ、たまにはスカート履いたら」
「いや、です」
「なんで」
「めくる気でしょう」
 彼が苦笑した。
「めくらないって、ガキじゃないんだから」
「ふ」

 彼はジーンズのホックを外して、手のひらをするりと中に入れた。私の大事な部分を、下着のうえから柔らかく撫でる。びくびく震えていたら、ジーンズを引き抜かれ、足を持ち上げられた。

「あ」
「シミになってる」
「や」
 私はショーツを手で覆ったが、三澤はそれを防いで、足の間に顔を埋めた。
「ひ」
 ショーツのうえから舌でなぞられ、私は身体を震わせる。すぐにショーツがしっとりし始めたことに気づき、ひどく恥ずかしくて顔を覆った。彼は濡れたショーツをのけ、蜜口をあらわにする。長い指が濡れた部分を撫でると、糸が引いた。

「エロいな、貧乳のくせに」
 唇をなめる仕草に身体が震えた。そのまま舌での愛撫が再開される。静かな部屋に、ピチャピチャという音が響いていた。私はびくびく震えながら、三澤の頭を押さえる。
「舐めたら、だめ」

 彼はシャツを脱ぎ捨て、下半身を密着させてくる。見たことがない、熱っぽい瞳にドキドキした。
「なんか、あたってる」
「さわる?」
 三澤が私の手を掴んで、下半身に導いた。触れて見たら、かすかにぴく、と動く。

「あ」
「どうした?」
「う、動いた」
「そりゃ、動くよ」
 三澤は私の手をつかんで動かしながら、唇を重ねてきた。もう片方の手をさ迷わせていたら、彼が指を絡めてくる。三澤のが、熱くなって、大きくなっているのがわかった。

 唇を離した三澤が、何かを取り出した。避妊具だ。それを反りたったものに被せ、押し付けてくる。予想以上に質量を感じ、私は身体を震わせた。

「三澤、さ」
「ん?」
「だ、め、おっきい」
「でかいのがいいって言ってたじゃん」
「言って、ない」

 三澤は私の身体を撫でながら、大丈夫だ、と囁いた。ゆっくり入ってきたものが、私のなかを押し広げる。
「っあ……」
「すげ、締まる」
 彼はしばらく動きを止めたあと、腰を揺らし始めた。
「ふ、あ、あ」
 ぱちゅ、ぱちゅ、と水音が響いている。恥ずかしい。熱い。身体が火照って、変になる。

「あつ、い、三澤、さ」
「汗、エロい」
 彼は、私のかすかな胸の谷間にたまった汗をなめあげた。そのまま乳首をちゅう、と吸われる。

「やあ、あ」
「なんかエロいこと言って」
「わかん、ない」
「わかるだろ、なか、どんな感じ」
 突かれていると、頭の奥がじわじわ熱くなり、ネットサーフィンで見た台詞がぐるぐる回った。自分が言っているとは思えない、バカみたいな言葉がこぼれだす。

「おちんちん、かたくておっき、い」
「あとは?」
「きもち、いい、あつい、とけちゃ、う」
「どこがとけちゃうの」
「おまんこ、とけちゃ、う、ひゃ」
 三澤がぐっ、と奥を突いてきた。

「エロい。それ、記事にちゃんと書けよ」
「だ、め」
「なんで」
「恥ずかしい、から」
「かわいい」

 きゅん、となかが締まった。すかさず律動が早くなる。
「はあ、あ、三澤、さ」
 三澤は腰を揺らしながら、私の乳首を舐め回して囁いた。
「貧乳エロ娘」
「へんたい、おやじ」
「俺はまだ30だ」
「おっさん、ふあ」

 長い指が、花芯をきゅっ、とつまんだ。
「生意気。泣かせたくなる」
 切なくて、鼻の奥がつんとするような感覚が湧き上がる。
「あ、あ、だめ」
「すげ、は、あ……」

 花芯をいじられながら、太いものでたくさん突き上げられて、変になってしまいそうだった。なかがとろとろになっている。

「三澤、さ」
 私は目を潤ませながら、手を伸ばした。
「ぎゅって、して」
 三澤が息を飲んで、私をぎゅ、と抱きしめた。
「なにおまえ、めっちゃ、かわいい」
 かわいいと言われると、切なくて熱いものが込み上げてきた。
「は……いく」
 激しく突き上げられ、私は高い声をあげながら、三澤にしがみついた。



 翌朝。私は、恥ずかしくてソファのほうを見れずにいた。一方、いつもとまるで変わらない三澤が、私が提出した原稿を投げ捨てる。
「おい、原田。なんだよこれ。全然エロくないじゃねーか」
「三澤さんはおっさんだから、私とは感性が合わないんだと思います」
「喧嘩売ってんの?」
「ほんとのことでしょう」
 三澤は舌打ちし、
「この貧乳」
「セクハラクソ上司」
 睨み合う私たちを見て、河原さんが笑った。
「はは、仲良しでいいなあ」
 橋本さんが首をひねる。
「どこが?」

 デスクに戻ると、スマホがメールの着信音をしらせて来た。
「おまえ生意気だぞ」
 三澤からだ。私はデスクでスマホを見ている三澤に視線をやり、
「本当のことでしょう」
 そう返信したら、「ばーか」と返ってきた。子供か。私が返信せずにいたら、
「おっぱいでかくなった?」
 そんなメールが来たので、顔がじわっと熱くなる。私はにやにやしている三澤をにらみ、
「セクハラです」
 と言った。
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