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第一章 復讐する方向性の決定
信頼できる住職への相談と、初めての他者を交えた復讐 2
しおりを挟む(ど、どうしよう……住職にはいつもお世話になってるし、この馬鹿も多大な迷惑をかけちゃったし……)
幼少期から世話になる老人たっての願い。あるいは、莉奈の身体で復讐をかねてなら、下着位は見せてもと考え始める。
『ーーざっけーー何考え……こんな、エロ親父ーー』
身体の中から莉奈の抵抗の声が聞こえる。
病院での時もそうであったが、莉奈が抵抗感を感じる状況になると、莉奈の意識が浮上して言葉となって聞こえるようだ。
(莉奈が嫌がってる……なら、むしろここは喜んで……!? いっそ、抱かせるとかーー)
「ざっけんなーー奈は、処女ーーなのーー」
三日月猫が、昨晩の莉奈の記憶を消していたという話を思い出す。
重圧に身体の主導権を奪われてる認識はあるが、処女を既に喪失したことは忘れているようだ。
そのことに安堵すると共に残念にも思う。
(おっと、莉奈に聞かれないように考える時は、え~と、意識しないようにして……)
莉奈の存在を意識しないようにしながら。誰にも聞かせまいと考えながら思考すれば、莉奈には聞かれないという話だ。
莉奈は重圧が処女喪失の件を強く思い出しても、そのことには気づかぬ様子で愚痴と抵抗の罵声を吐き出し続ける。
「た、頼む!! 少し、チラッと少しだけでも良いのだーー」
そして、眼下では住職が必死に頼み込んで居る。
『大体、このエロ親ーー前に、お茶を出してーー時も、莉奈のーーエロい目でーー』
何にしても住職の頭を上げさせようと声かけしようとした言葉は、莉奈の言葉で制止される。
(コイツ、住職と会ったことが……おっと、莉奈のことは考えないようにーー)
「……はっ?」
莉奈の愚痴は続き、その際に住職とどのような過ごし方をしたのかが、断片的に語られる。
その、あまりに衝撃的な内容に、その際の出来事を検索にかけるように強く念じれば。情景が、ストロボのフラッシュバックのように一気に流れた。
膨大な量だったが、その情報はまるで自身が体験した記憶のように。瞬間的に一連の詳細までハッキリと解像できてしまう。
重圧の背筋が凍り、冷や汗が流れると共に身体が震える。
『……やはり、性悪よな~』
三日月猫は、事態を察したように深々と呟いた。
「そ、そんなに嫌だったか? いや、その、すまなかった……今の言葉は、忘れてーー」
「住職!!」
重圧の異変を嫌悪感と勘違いした住職が発言を取り消そうとした時。
重圧はそれを遮った。
「莉奈のやつを……賽銭泥棒に住職が気づく前……この部屋の通して、お茶とお菓子……ショートケーキを出しませんでしたか?」
「うん? 確かに、そんなこともあったが……ケーキなど……ああ!! そうじゃった!! 確かに、頂いたショートケーキを出したぞ!!」
「……あああああああぁぁぁああァァ~~!!」
突然叫んで崩れ落ちた重圧に住職は驚く。
「……そ、その時……来客がありませんでしたか?」
「……? ああ、そういえば、あったな……ほんの5分ほどだったと思うがが、それがどうーー」
「すいませんでした!!」
住職が質問に答え切る前に、居た堪れなくなった重圧が土下座をする。
「ど、どうしーー」
「すいません、ごめんなさい!! この馬鹿が!! 大馬鹿が!!」
「何……か、思い出したのか?」
住職は動揺しながらも、重圧の豹変理由を察したようだ。
「……この客間の横の寝室……タンスの、下から2番目の、玉手箱っぽい箱ーー」
今度は住職が、重圧の言葉を聞き終わる前に行動を起こした。
「ない、なくなっとる!! ワシのお宝の……ビニ本……が」
重圧はビニ本という単語を知らぬが、莉奈の記憶からソレが古臭い年代物のアダルト雑誌ーーエロ本であることは理解できた。
内容は、女性の裸は写っているが、男性の姿は殆どない、おそらくは控えめな内容だった。
ネットでコッソリアダルトなモノを見たことがある少年から見ても、物足りない代物。
「わ、ワシの……青春の……」
しかし、住職のショックは予想を上回るモノで。チラリと様子を伺えば、魂が抜けたように崩れ落ちていた。
(うわ~!! 言いたくないよ!! こんなもんじゃないんだから、この大馬鹿のやったことは!!)
「そうじゃ!! どこ、どこに!!」
「……近くのコンビニの、ゴミ箱に……」
「もう、二、三週間は前……」
「そ、それと!! 畳の下……ヘソクリ!!」
灰になりかけている住職に、トドメになりかねない情報を口にする重圧。
とても、時間を空けて言える内容ではない。
住職がふらつきながら、少し離れた箇所の畳を外せば、そこにはペラペラな巾着袋が。
「そ、その中にあった三十万……莉奈が盗みました!!」
重圧になんの責任もないが、必死に地面に頭を擦り付け反省の意思を示す。
「そのお金も……ゴミ箱か?」
動揺が酷いのか、住職はまともではない消費方法を聞いてきた。
「が、ガチャに……」
「ガチャ? もしかして、玩具屋にあるガチャガチャか?」
「いえ、アプリゲームの方の……コンビニで、POSAカードを買って……」
住職は無言になった。
話を聞いているのか、アプリ課金のシステムを理解できないのかも分からない。
(うわ!? しかも、この馬鹿……そのコンビニで、万引きまで……いや、今はコッチの方から)
脳内では莉奈が悪びれることなく『何が悪いのよ』だの『寺の金のクセに、ご利益なくて、完凸に28万もかかった』だのと、のたまっていた。
(盗んだ金で、ご利益もあるか!! ああ、それより、今は住職の方!!)
「つ、つまりですね、スマホゲームでほぼ使い切ってーー」
住職は完全に放心していた。
「すいません!! お金は、必ず……どんなことをしてもお返ししますから!!」
「ビニ本は? アレは、もう何十年も前の……ワシの学生時代のモノじゃぞ? 返せるのか?」
「えっと、それは……難しいかもしれませんが、お金と合わせて……何か、別のモノで……」
「金なんぞどうでもいい!! アレは!! アレは!! 出版社ももう潰れとるんじゃぞ!! 手に入らんーーゲホッ!? ゲホ!!」
猛ダッシュで飛び込むように掴みかかってきた住職は、あまりの興奮にむせた。
「ね、ネット通販とか、フリマとかで探してーー」
「中古? まさか、中古かぁ~!! 人様が抜いたアバズレなビニ本で抜けと!?」
(あ、コレ……無理だ……この馬鹿の身体……差し出すしかないや)
散々文句を言っていた莉奈の声が止む。
重圧の意識が緩み、莉奈に心の声が聞かれたのだろう。
次の瞬間からは、昨晩病室で処女を奪う直前に聞いたようなおべっかが続く。
『ふむ、ようやく覚悟を決めたようだな?』
すっかり和菓子を平げた三日月猫が、やれやれと言った調子で茶を啜っていた。
一瞬猫舌は? とも思ったが、この騒動の間にスッカリ冷めているだろう。
(いやだって無理でしょう? 住職泣いてるし……)
住職は涙を流しながら、重圧の肩を掴み上げガクガクと揺すりながら思い出を説いてくる。
莉奈の身体の乳房が盛大に揺れているが、重圧も住職も完全に思考の外だった。
(正直嫌だけど……莉奈が嫌がって、住職の溜飲が少しでも下がるのなら……)
『ふむ、まあ、楽しめばよかろう? 人間の女体は、数度交われば快楽を強く感じるようになると聞く……』
三日月猫の額の痣が鈍く光った気がした。
『それに、昨晩の記憶は消したが……逆に、強く刻みつけることも可能』
(刻みつける?)
莉奈には会話が聞こえていないようで、相変わらず必死に形だけの謝罪と許しを求めていた。
『深層心理という部分に……そうさな、分かりやすく例をあげるなら……悪夢、としてお主の体験した行為を……更に『酷い』モノとして見せたり』
『現実でもその記憶が認識できぬ形で滲み出……この後住職に何かされたなら、畏怖や畏敬の念を抱き……まあ『分からせられたり』と、いったところか?』
『重要なのは、その性悪が嫌がることゆえ、お主は楽しめば良い、男では味わえぬ、女子の肉体を』
『そして、最終的にはーー』
三日月猫の年話と同時に響く鳴き声も、顔も、可愛らしいものだが……表情は不気味にニヤけたような気がする。
『その性悪を、お主に従順な牝猫にでもしてやるがよい』
病室での行為は、夢ゆえの勢いによるもの。
しかし、善良ながら未だ復讐心が燻る重圧は、その言葉に喉を鳴らした。
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