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【あらすじ動画あり】2話

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↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓
週末に動画のビュー数を見て、
増加数の多い方の作品をメインに更新したいと思いますmm

◆『不惑の森』(ミステリーBL)
https://youtube.com/shorts/uVqBID0eGdU

◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(本作品:死神×人間BL)
https://youtube.com/shorts/GBWun-Q9xOs
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「おいおい、いい加減、無視はやめようよ。幽霊だって傷つく心はあるんだぞ」

背後から聞こえてくる声を無視して、亘はいつもの作業にとりかかった。

携帯、ペン、ハンカチ、スケジュール帳。鞄に入っていた小物を取り出し、デスクの上に等間隔に並べていく。儀式のように厳かにゆっくりと。1ミリだってズレは許されない。
こうすれば神経が落ち着くはず……だった。

「はぁ。相変わらず、亘は几帳面だな。生前のことはあんまり覚えていないけど、お前、高校の時も鞄の中身が少しでも乱れているとキーキー言ってた気がする」

小物を定規を使ってミリ単位で正確に並べていく。が、耳元でぺちゃくちゃとくっちゃべる声は、どんなに精神統一をしても聞こえ続けていた。

(一体、何が起こっているんだ、これは?)
ちらりと横を見る。

悠輝――いや、悠輝の姿をした透明な何かはベッドの足下であぐらをかき、今度は『ポルターガイスト』のDVDを見始めていた。

亘はデスクに向き直り、やがて頭を抱える。
きっと、これは何かの間違いなのだ。そうに違いない。
脳が見せている幻に過ぎないのだ。

「幻……? そうか!」
勢い良く立ち上がると、悠輝が「どうしたの?」と不思議そうに見てきた。その横を亘はブツブツ言いながら通り過ぎる。

「そうだ……俺は疲れているんだ。考えてみれば三日寝ていない! つまりはそうゆうことだ!」
「そうゆうことって?」

亘はベッドの前でくるりと振り向くと、床であぐらを組む男を指差した。

「お前は、寝不足が見せている幻覚に過ぎない。その証拠に、お前の身体は透けている。俺の意識が混濁している証だ」
すると「悠輝、の姿をした何か」は、自分の透けた身体を見下ろし、不満げに眉を寄せる。

「亘。これは――」
だが、彼が何か言い出す前に、亘はおもむろに服を脱ぎ始めた。

「あわわっ、亘っ。 そんな大胆な」
「悠輝(以下略)」は両手で顔をふさぎながらも、指の隙間から亘のストリップショーをガン見していた。

亘は構わずシャツと下着一枚になると、ベッドへもぐり込む。いくら参っているとはいえ、スーツのままベッドに入る愚行だけは犯さない常識くらいは残っていた。

「……おやすみ」
布団に入ってしばらくした時、悠輝そっくりの柔らかい声がかかった。

亘は何か言おうとしたが、とろとろと落ちてきた瞼に勝てず、そのまま意識を手放した。




気がついたら、真っ暗闇の中にいた。
少し先でチカチカと赤いランプが点滅している。よく見ると救急車のサイレンだった。

亘は無意識にそちらに近づいていった。まるで、火の中に飛び込む羽虫のように。
途中で足を止める。暗闇の中に止まった救急車の側に誰かが寝そべっていた。俯せで、顔だけをこちらに向けている。

血に半分覆われた顔。虚ろに濁った瞳。
――悠輝だった。
彼は死んでいた。それだけは明かだった。

「……亘……」
カラカラに乾き、ひび割れた悠輝の唇がゆっくりと開く。まるで操り人形かなにかのように、何の意志の力も感じさせず、ただ機械的に。

「どうして……?」
陥穽(かんせい)から聞こえてくるような虚ろな声。その口端から、ごぼりと血が伝い落ちる。
「どうして……どうしてあんなことをしたんだ……!」


ひゅっと喉元から空気がせり上がってきて、盛大に咽せる。そうして始めて、亘は自分が眠りから覚めたことに気がついた。

胸元のシャツを掴み、ただじっと咳の嵐が過ぎ去るのを待つ。だが何度呼吸を繰り返しても、まるで水中にいるかのように息苦しさが消えない。こめかみから汗が伝い、目じりに涙がたまる。

(……また、あの夢だ)
三日前——悠輝の死の知らせを受けてからずっと見る夢。
悠輝が死ぬ──いや、死んでいる夢。

「うっ……」
布団の中で縮こまり、自分自身を抱き締めるように両腕を回す。

「亘——」
夢の中と同じ懐かしい声がして、ふっと頬に何かが触れた。

誰かが、ベッドの端に腰をかけ、亘の頬を撫でていた。
部屋の中は薄暗く、相手の輪郭さえもはっきりしない。

「……っ」
相手の手は頬をすべり、次第に首元まで落ちる。
氷のように冷たい手が、咳で熱くほてった喉を冷やす。

「大丈夫。俺は帰ってきたよ」
首元にかかる手に力が入った。氷のように冷たい手が気道を凍らせる。

亘は不思議と安心した気持ちになった。
目を閉じ、冷たい相手の手に自分の手を重ねる。


寒気で目が覚めた。すっかりと明るくなり始めた日の光が、カーテンから漏れる。
「くそ」
上半身だけ起き上がる。薄手のTシャツが汗でびっしょりと濡れていた。

夢の中の内容が蘇ってくる。
救急車。横たわる身体。血。

悠輝が高校を中退して以来の消息は、人づてからなんとなくは聞いていた。

悠輝はコンサル会社を経営する資産家の生まれだ。何の不自由もなく育ったお坊っちゃま。だが高校中退後、繁華街に入り浸って、良くない連中とつるみ始めたらしい。その後は両親から家を追い出され、今回事件に巻き込まれたキャバクラでボーイとして働いていた、というところまでは風の噂で聞いていた。

(あいつが死んだのは……俺のせいだ)
自分があの時、あんな馬鹿なことをしなければ、悠輝はきっと無事に大学を卒業して、それなりの大学にでもいって、暴力とは無縁の幸せな人生を歩いていたに違いない。

夏の太陽のような笑顔と同じ、燦爛とした人生を全うしたのだ。
グッと胃の底が握り絞められたようになり、思わず口元に手を持ってくる。
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