1 / 12
【あらすじ動画あり】1話
しおりを挟む○●----------------------------------------------------●○
↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓
週末に動画のビュー数を見て、
増加数の多い方の作品をメインに更新したいと思いますmm
◆『不惑の森』(本作品:ミステリーBL)
https://youtube.com/shorts/uVqBID0eGdU
◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(死神×人間BL)
https://youtube.com/shorts/GBWun-Q9xOs
○●----------------------------------------------------●○ "
「ここは、どこだ……?」
辺りを見回すと、見慣れた景色が広がっていた。長いリノリウムの廊下。校庭に面したガラス窓。西日に染まった空の教室。
(どうして、俺は高校の校舎にいるんだ……?)
亘(わたり)は足を進める。どこに向かうかわからないまま、勝手に足だけが進んでいく。
ある方向に向かって。
(ダメだ……!)
反対の方向に向かおうとするが、身体のコントロールがきかない。
まるで蜘蛛の糸に引っ張られているように、ある方向へとじりじりと進んでいく。
廊下の先には非常階段に繋がる、小さな踊り場があった。
階段の下にあるそのスペースには、掃除道具を入れるロッカーやら、古くなった机や椅子などが積みあがって置かれていた。
非常階段に出るドアは、スチール製で錆だらけ。小さな小窓がついていて、そこから夕日が入り込み、室内をぼんやりとした橙色で照らし出していた。
わあああ。
文化祭で盛り上がっている生徒の歓声が、どこからともなく響いてきた。
「好きです……」
非常ドアの目の前には、二人の男子生徒が立っていた。
小窓から漏れる夕日が、彼らの黒い学生服に一筋の光を投影している。
向かい合った二人は、まるで世界には二人だけしかいないかのように見つめ合っていた。
「ずっと好きでした……」
背の低い生徒の方が、すっと動いた。背伸びをして、相手に顔を近づけ、小さなキスをする。
突然のキスに、相手の方は息を呑んだように聞こえた。が、逆行で暗くなっているため、その表情は見えない。もう一人の生徒の方も、亘に背を向けているため顔は見えない。
「先輩、ずっと好きでした……俺の気持ち、知っていたでしょう?」
不思議に落ち着いた蠱惑的な声に魅了されたのか、次に動いたのは背の高い生徒の方だった。
「……っ」
抑えきれなくなったような、怒りをまけているような荒々しいキスが始まった。
あがった息使いが、物陰の狭く暗いスペースに響く。
二人がキスの角度を変えた瞬間、その輪郭が夕日に映し出された。
悠輝(ゆうき)。
何か言う前に、亘は一目散に逃げ出していた。荒い息を吐きながら、手に持った携帯を握り絞める。
夕日に染まった廊下は、地獄にまで続いているように感じられた。
「……ただいま」
ガチャリとドアを開け、慣れ親しんだアパートに入る。狭い玄関先で脱いだ靴を揃える。
靴の先はドア側に向けてきっちり90度。鍵は靴箱の上に置いてあるカゴの中へ。
身についた習慣からどんなに疲れていても、欠かさないルーティン。亘にとっては、心を安定させるための儀式みたいなものだ。
「ふう……」
立ち上がり、眉間を揉む。ここのところ身体が重くて仕方がない。
大学四年生の夏。本来ならば就活に追われる時期だが、亘は院を希望しているため、今はもっぱら卒業論文の執筆に集中していた。
院への進学にはこの論文の評価が影響してくるので、手を抜くわけにはいかない。
「それにしても……何でこんなに身体が重いんだ……寒気も止まらないし……」
思い返してみれば、ここ数日、寝不足が重なっていた。たぶん、それが祟ったのだろう。
(それに……)
先日、高校時代の友人から一本の電話があった。
「悠輝が死んだよ……」
数秒間、何も声がでなかった。頭の中が真っ白で、自分がどんな感情なのかもわからなかった。
「なんで?」
ようやく出た言葉はかすれていた。
「刺されたそうだ。働いていたキャバクラの駐車場で。通り魔の犯行と言われているけど、あの界隈だからヤクザからみだろうな」
まるで責めているような口調だった。
悠輝と疎遠になってからもう5年も経っているのに、未だに彼の全ての不幸の原因は全て亘のせいだといわんばかりだ。
(まぁ、間違ってはないんだけど……)
そんなことを考えている間に、いつの間にか電話は切れていた。
亘はしばらくの間、その電子音にぼんやりと耳を傾けていた。
プープーという電子音が、まるで遠く彼方にある世界から響いているように鼓膜に木霊する。
「だいぶ、参っているみたいだ……」
そのあとからだ。夜もよく眠れず、寝れても悪夢を見て飛び起きる。
毎日、毎日、悪夢を見るのだ。起きた時には覚えていないのだが、悪夢を見てうなされていたことだけはわかる。
「ストレスだな……こんなの高三の時以来かも……」
呟きながらキッチンを抜けた先にあるリビングのドアを開く。
ガラリ。
「あ、おかえりー」
ドアを開けてまず目に飛び込んできたのは、テレビ画面だった。そこでは、銃を抱えた屈強な外国人の男がお決まりの台詞を言っていた。
『I'll be back.』
(あれ、俺、テレビ付けっぱなしにしてたっけ……?)
いや、そんなはずはない。なぜなら、今日は家を出る前にガスの元栓の確認と各家電の電源を5回も確認したのだから。
「いやー何だかんだ言って『ターミネーター』はいいよね。この音楽聴くと、生き返った気分になるよ」
呑気な声が、横から聞こえてきた。
テレビの向かいにはシングルベッドが壁沿いに置いてある。そこに一人の男が長い足を伸ばして座っていた。
だらりと足を投げ出し、足首でクロスさせている。黒のジャケットの前はだらしなく開けられ、ウェーブのかかった髪はほつれ、幾筋か額にはらりと落ちている。よく通った鼻筋。シャープな顎。シャツの上からでもわかる、引き締まった均整のとれた身体。
あの頃そのまま……の悠輝の姿だった。いや、少し大人っぽくなっている。
『亘……許さないから……一生恨んでやる……』
一瞬、夢の中から残像のように高校時代の記憶が飛び出してきた。誰もいない物陰。寄り添った二人の学生。橙色の淡い光。
「亘ーおい、そんな幽霊を見るみたいな目で見るなよー」
あの時と変わらない呑気な声。
亘は自分が見ているものが信じられなくて、後ろの引き戸にガタンとぶつかってしまう。わなわなと震える手で目の前の男を指差した。
「なっ、何でお前がここにいるんだ! お前は……死んだはずだ!」
すると悠輝──数日前に死んだと聞かされていた友人は、満面の笑みを浮かべて両手を広げた。
「アイム・バック!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
出産は一番の快楽
及川雨音
BL
出産するのが快感の出産フェチな両性具有総受け話。
とにかく出産が好きすぎて出産出産言いまくってます。出産がゲシュタルト崩壊気味。
【注意事項】
*受けは出産したいだけなので、相手や産まれた子どもに興味はないです。
*寝取られ(NTR)属性持ち攻め有りの複数ヤンデレ攻め
*倫理観・道徳観・貞操観が皆無、不謹慎注意
*軽く出産シーン有り
*ボテ腹、母乳、アクメ、授乳、女性器、おっぱい描写有り
続編)
*近親相姦・母子相姦要素有り
*奇形発言注意
*カニバリズム発言有り
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる