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【あらすじ動画あり】1話
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↓現在、以下の2つのお話が連載中です。↓
週末に動画のビュー数を見て、
増加数の多い方の作品をメインに更新したいと思いますmm
◆『不惑の森』(本作品:ミステリーBL)
https://youtube.com/shorts/uVqBID0eGdU
◆『ハッピー・ホーンテッド・マンション』(死神×人間BL)
https://youtube.com/shorts/GBWun-Q9xOs
○●----------------------------------------------------●○ "
「ここは、どこだ……?」
辺りを見回すと、見慣れた景色が広がっていた。長いリノリウムの廊下。校庭に面したガラス窓。西日に染まった空の教室。
(どうして、俺は高校の校舎にいるんだ……?)
亘(わたり)は足を進める。どこに向かうかわからないまま、勝手に足だけが進んでいく。
ある方向に向かって。
(ダメだ……!)
反対の方向に向かおうとするが、身体のコントロールがきかない。
まるで蜘蛛の糸に引っ張られているように、ある方向へとじりじりと進んでいく。
廊下の先には非常階段に繋がる、小さな踊り場があった。
階段の下にあるそのスペースには、掃除道具を入れるロッカーやら、古くなった机や椅子などが積みあがって置かれていた。
非常階段に出るドアは、スチール製で錆だらけ。小さな小窓がついていて、そこから夕日が入り込み、室内をぼんやりとした橙色で照らし出していた。
わあああ。
文化祭で盛り上がっている生徒の歓声が、どこからともなく響いてきた。
「好きです……」
非常ドアの目の前には、二人の男子生徒が立っていた。
小窓から漏れる夕日が、彼らの黒い学生服に一筋の光を投影している。
向かい合った二人は、まるで世界には二人だけしかいないかのように見つめ合っていた。
「ずっと好きでした……」
背の低い生徒の方が、すっと動いた。背伸びをして、相手に顔を近づけ、小さなキスをする。
突然のキスに、相手の方は息を呑んだように聞こえた。が、逆行で暗くなっているため、その表情は見えない。もう一人の生徒の方も、亘に背を向けているため顔は見えない。
「先輩、ずっと好きでした……俺の気持ち、知っていたでしょう?」
不思議に落ち着いた蠱惑的な声に魅了されたのか、次に動いたのは背の高い生徒の方だった。
「……っ」
抑えきれなくなったような、怒りをまけているような荒々しいキスが始まった。
あがった息使いが、物陰の狭く暗いスペースに響く。
二人がキスの角度を変えた瞬間、その輪郭が夕日に映し出された。
悠輝(ゆうき)。
何か言う前に、亘は一目散に逃げ出していた。荒い息を吐きながら、手に持った携帯を握り絞める。
夕日に染まった廊下は、地獄にまで続いているように感じられた。
「……ただいま」
ガチャリとドアを開け、慣れ親しんだアパートに入る。狭い玄関先で脱いだ靴を揃える。
靴の先はドア側に向けてきっちり90度。鍵は靴箱の上に置いてあるカゴの中へ。
身についた習慣からどんなに疲れていても、欠かさないルーティン。亘にとっては、心を安定させるための儀式みたいなものだ。
「ふう……」
立ち上がり、眉間を揉む。ここのところ身体が重くて仕方がない。
大学四年生の夏。本来ならば就活に追われる時期だが、亘は院を希望しているため、今はもっぱら卒業論文の執筆に集中していた。
院への進学にはこの論文の評価が影響してくるので、手を抜くわけにはいかない。
「それにしても……何でこんなに身体が重いんだ……寒気も止まらないし……」
思い返してみれば、ここ数日、寝不足が重なっていた。たぶん、それが祟ったのだろう。
(それに……)
先日、高校時代の友人から一本の電話があった。
「悠輝が死んだよ……」
数秒間、何も声がでなかった。頭の中が真っ白で、自分がどんな感情なのかもわからなかった。
「なんで?」
ようやく出た言葉はかすれていた。
「刺されたそうだ。働いていたキャバクラの駐車場で。通り魔の犯行と言われているけど、あの界隈だからヤクザからみだろうな」
まるで責めているような口調だった。
悠輝と疎遠になってからもう5年も経っているのに、未だに彼の全ての不幸の原因は全て亘のせいだといわんばかりだ。
(まぁ、間違ってはないんだけど……)
そんなことを考えている間に、いつの間にか電話は切れていた。
亘はしばらくの間、その電子音にぼんやりと耳を傾けていた。
プープーという電子音が、まるで遠く彼方にある世界から響いているように鼓膜に木霊する。
「だいぶ、参っているみたいだ……」
そのあとからだ。夜もよく眠れず、寝れても悪夢を見て飛び起きる。
毎日、毎日、悪夢を見るのだ。起きた時には覚えていないのだが、悪夢を見てうなされていたことだけはわかる。
「ストレスだな……こんなの高三の時以来かも……」
呟きながらキッチンを抜けた先にあるリビングのドアを開く。
ガラリ。
「あ、おかえりー」
ドアを開けてまず目に飛び込んできたのは、テレビ画面だった。そこでは、銃を抱えた屈強な外国人の男がお決まりの台詞を言っていた。
『I'll be back.』
(あれ、俺、テレビ付けっぱなしにしてたっけ……?)
いや、そんなはずはない。なぜなら、今日は家を出る前にガスの元栓の確認と各家電の電源を5回も確認したのだから。
「いやー何だかんだ言って『ターミネーター』はいいよね。この音楽聴くと、生き返った気分になるよ」
呑気な声が、横から聞こえてきた。
テレビの向かいにはシングルベッドが壁沿いに置いてある。そこに一人の男が長い足を伸ばして座っていた。
だらりと足を投げ出し、足首でクロスさせている。黒のジャケットの前はだらしなく開けられ、ウェーブのかかった髪はほつれ、幾筋か額にはらりと落ちている。よく通った鼻筋。シャープな顎。シャツの上からでもわかる、引き締まった均整のとれた身体。
あの頃そのまま……の悠輝の姿だった。いや、少し大人っぽくなっている。
『亘……許さないから……一生恨んでやる……』
一瞬、夢の中から残像のように高校時代の記憶が飛び出してきた。誰もいない物陰。寄り添った二人の学生。橙色の淡い光。
「亘ーおい、そんな幽霊を見るみたいな目で見るなよー」
あの時と変わらない呑気な声。
亘は自分が見ているものが信じられなくて、後ろの引き戸にガタンとぶつかってしまう。わなわなと震える手で目の前の男を指差した。
「なっ、何でお前がここにいるんだ! お前は……死んだはずだ!」
すると悠輝──数日前に死んだと聞かされていた友人は、満面の笑みを浮かべて両手を広げた。
「アイム・バック!」
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