【1分あらすじ動画あり】君がいる光

郁雨いくううう!

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22話

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※R-18



「え……? わっ、悠紀ひさのり!? どこへっ!?」
赤ちゃんをだっこされるように持ち上げられ、春海は思わず相手の首にしがみつく。運ばれている間も、悠紀の唇と舌が春海の首筋と鎖骨を弄び、時にやんわりと噛んでくるせいで、抵抗しようとする気がすぐに無くなった。

「……っ」
どさりとどこかに下ろされたかと思うと、背中に柔らかい布団の感触を感じた。感触と匂いからして春海が普段使っている布団だろう。今日はいい天気だったため庭で干したものを、寝室の隅に畳んで置いてあったのだ。日中の日差しを十分に浴びたそれからは、陽だまりと緑の匂いがした。

「悠紀、っ、んっ……」
起き上がろうと前に、悠紀が乗り上げてきてキスをしてきた。角度を変える毎にさらに深くなっていくそれに、春海はくらくらとした酩酊感を覚える。

「……春海」
悠紀の唇が、顎、首、鎖骨へとそっと下りてくる。気づかない間にシャツのボタンが開け放され、外気に触れた胸が一度、ぶるりと震える。しかし、すぐに下りてきた悠紀の唇によって、数秒と立たない間に、春海の身体は火をつけたように熱くなってしまった。

「んあっ……!」
胸の突起を舌先でいじられ、びくりと腰が浮く。今まで感じたことのない快楽に春海は翻弄され、せめて声は上げないようにと身を縮ませる。

だがそれ悠紀が許す訳もなく、彼は春海の乳首を軽く歯で噛むと、もう片方を手でいじりながら、切羽つまった吐息をもらす。

「なぁ、今度、奥の座敷にベッド置かないか? 俺、布団とか慣れてないしさ……それに、こうゆうことするならやっぱりベッドの方がすぐできていいし──」
「え? 君、ここに越してくるつもりなのかい?」

相手が言い終わる前に、春海は顔を上げた。見えないが、悠紀と視線がかち合っているのがわかる。

「まぁ、すぐって訳じゃないけど、いつかはな」
軽いキスが唇をかすめたと思ったら、電流のような強烈な刺激が下腹部から上がってきた。

「なっ——あぁっ……!」
未知の感覚に春海は思わず、後ろの布団の布をぎゅっと握り締める。
「な、なにっ、これ……っ」
「何って、見てみる?」

悠紀の片手が布団を握り締める春海の手にかかる。瞬間、春海の目の奥で悠紀の視界を通した映像がスパークした。

悠紀の視界の中で、彼は春海の両足の間に顔を埋め、春海の猛ったものを口に含んでいた。ふと彼が視線をあげる。すると戸惑ったような呆けた顔をしている春海じぶんの顔が映し出された。その頬は上気し、視点のあっていない瞳は欲情で濡れ、キスで真っ赤に染まった唇はだらしなく半開かれている。まるで、もっと欲しいと乞うように。

(嘘だ……これが自分なはずない……)
ふるふると首を振ると、春海の心を読み取ったように悠紀が片手を離した。

「嘘じゃないよ。でもこれ以上はダメ。たとえ本人にも、今の春海は刺激が多すぎて見せられない。これは俺だけのものだから」
「なっ、あぁっ……!」

悠紀が再び春海のものを口に含み、出し入れを繰り返す。奔流のように迫ってくる刺激に、春海の視界に映っていた映像は、一気に霧散する。残ったのは、自分のものを包み込む熱い悠紀の口内の温度と、ズブズブと耳を犯す卑猥な音だけだった。

「久っ……もうダメっ、離し——ああぁっ……!」
悠紀の髪をやんわりと掴んだ瞬間、視界が真っ白な閃光に包まれた。

「……ッ」
短い吐息が聞こえ、続いてごくりと喉が隆起する音が聞こえた。それが何を意味するか遅れて気がついた春海は、達した余韻もほおって慌てて身を起す。

「悠紀!? まさか、君……君——」
手探りで相手の口元に手をかけると、悠紀はべろりとその掌に舌を這わせた。夏の青草のような匂いが広がり、春海は言葉を失った。

「き、君、まさか、本当に……一体、何をやっているんだ!? すぐ吐き出しなさいっ!」
「え、何で、気持ち良くなかった?」
「そ、そりゃ、気持ち良かったけど。でもこんなこと普通——」
「普通だよ。みんなやってる」

果たして、悠紀の言葉が本当かどうか、経験も知識も乏しい春海には判断できなかった。それでも疑うような目で見ていると、悠紀は軽い調子で肩を叩いてきた。

「本当だから。大丈夫。春海がこうゆうことに無関心なのは一緒に住んでて知っているし、これから俺が色々と教えてあげるよ。伊達に遊んできた訳じゃないしね」
「ちょっ……」

くるりと身体を反転され、頬に柔らかな布団の布地が当たる。
そうこうしている間に、下着ごとジーンズを剥がされてしまった。腰骨に悠紀の両手がかかり、尻を高く上げられる。何もかもさらした無防備な格好に、恥ずかしさと恐怖が身体を駆け抜ける。

「ちょ、ちょっと待って……!」
片手を伸ばし、悠紀の腕を掴む。そして相手がいるであろう方向に視線を彷徨わせた。
「君にとって、これは慣れたことかもしれない。でも、僕にとっては違うんだ。君みたいに軽いノリでできることじゃないっ!」

悠紀がはたと黙ってしまったことに気づき、春海は慌てて付け加えた。
「そりゃ、僕だって男だし、身持ちが堅いとかそうゆう訳じゃないんだけど……」
「どうしてお前は、そうやって……」

悠紀が身体を曲げ、春海の上に覆い被さってきた。
「もちろん、俺だって軽いノリじゃないさ……当たり前だろう」

かすれた悠紀の声が耳元にかかる。
「今までの俺にとって、セックスも恋愛もただの、ゲームみたいなものだった。でも今は違う。違うけど、どうしたらいいのかわからないんだ。本気になったら、お前を手放したくなくなりそうで……怖いんだ。リハビリに専念している間、いや、違う。幽霊の頃からずっと、お前に触れたいと思い続けていた。その本人が今、目の前にいて、こうして触れられるんだ。カッコ悪いけど、こっちは我慢するのに必死なんだよ……」
「悠紀……」

手を伸ばすと、悠紀が掌に頬を寄せてきた。初めて会った時にしたように。
「ごめん。絶対に春海を傷つけないと約束するから……お前が欲しい。こんなに誰かを欲しいと思ったことはない」

真っ直ぐすぎる言葉に、春海は何と言っていいかわからなかった。
でも気持ちは同じだった。常に色んなことを諦めてきた自分にとって、何かを欲することはタブーだった。しかし、そのタブーを犯してまで欲しいものがあるとすれば——悠紀しかいない。これから先も、ずっと。

春海は相手の首裏に手をかけて引き、唇を重ねた。
「僕も、欲しい。悠紀が」

悠紀が、ごくりと息を飲んだのがわかった。
「……ありがとう」

悠紀は春海の首の付け根に軽いキスを落とすと上体を起し、するりと春海の後ろの入口に指を這わせた。
「……っあ!」

後ろで何か物音がしていたと思ったら、ひたりとローションで濡れた指が押し当てられた。息を呑む間もなく、悠紀の指がゆっくりと中に入ってくる。
「んんっ……!」

長い悠紀の指が内側をこすり度、熱いのか冷たいのかわからない電流が春海の背筋を這い上る。耐えきれなくなった春海は、布団に顔を埋めた。
「今、何本かわかる?」

耳元で悠紀が聞いてくる。熱っぽいかすれた声に、春海はぶるりと身体を震わせた。
「……に、二本っ……? たぶん、んっ、ひとさし指と中指……」
「さすがだな」

悠紀は優秀な生徒を誉めるかのように、春海の髪を撫でまさぐった。そんなささいな刺激すら、今の春海にとっては火に油を注ぐようなものだった。

普段は生きていくための助けとなっている感覚神経の良さが、まさかここまで仇となるとは。
今の春海は、悠紀のどの指が爪が、自分のどの部分をこすり、撫でているのか、見えなくてもよくわかった。宥めるように腰をさする掌。時折、首筋をかすめる荒い吐息と小さな呻き。背筋に押し当てられた固い胸と上下する鼓動まで全部。

悠紀の存在全てが春海の全身を繭のように包み込んでいた。初めは痛みをともなっていた後腔も、悠紀の慎重でゆっくりとした動きによって、徐々に快楽の波へとすり変わっていく。

春海は自分でも意識しないうちに、悠紀の指の動きに合わせて腰を動かしていた。
今まで経験したどんなこととも違う、まったく未知の感覚だった。快楽が、欲情が自らの思考や身体をここまで軽く凌駕してしまうなんて。

まるで自由だ。目のことから、いや、全てのしがらみからも解き放たれて、ただ相手を想う、欲する純粋な気持ちだけで身体が動いている。

「悠紀っ……早く、欲しいっ……」
「わかってるよ。俺も同じだから」

溶けきった入口から、指が抜かれた。ふいに襲ってきた喪失感に、春海は切なげな息をもらす。が、すぐに圧倒的なものが後ろにあてがわれ、ひっと息を呑む。

緊張で身体をこわばらせた春海の背筋の骨を、悠紀の指が一つ一つ丁寧になぞっていく。
「息を吐いて。大丈夫だから」

耳元で囁かれた深い吐息に、春海は布団に顔を押しつけたまま小さく頷く。次の瞬間、グッと腰を引かれ、悠紀の猛ったものが入口の皮膚をこじ開けていく。
「あ、ああっ……!」

五感全てを超越するような感覚が、徐々に春海の中に入ってくる。それは恐ろしくもあり、また美しい感覚でもあった。
「……っ」

全ておさまったのか、悠紀が小さな呻きをもらした。
春海は自分の皮膚を通して、悠紀のものの熱さと脈が鮮やかに伝わってくるのを感じた。まるで悠紀の感覚が自分のものになったかのように、自分の感覚が悠紀のものになったかのように同化している。
「あっ、ん、んんっ……!」

悠紀が揺さぶり始めると、二人の感覚はぐちゃぐちゃに混ざり合い、もはやもうどちらのものかわからなくなった。

湿った水音、皮膚と皮膚がぶつかり合う音、互いの荒い息が座敷の中に籠もる。そのうち、バラバラだった二人の身体のリズムが、溶け合うように一つになった。
「くっ、春海……」

悠紀が完全に勃ち上がっている春海の前のものを握り、しごく。腰の動きに合わせるようなその巧みなリズムに、春海はぎゅっと目を閉じた。

前と後ろを同時に犯され、もう何が何だかわからない。暗闇しか写していない視界の中で、白く迸る大きな波が次第に押し寄せてくるのを感じる。
「悠紀っ……あ、ダメ、もうっ……ああぁっ!」

強く奥を貫かれた瞬間、目の前が真っ白い波に浚われた。瞬間、グッと身体に力が入り、背後で悠紀が切羽つまった呻きをもらす。
「っ、しまって……」

春海は相手の熱い迸りを感じながら、布団の上に崩れ落ちた。




ざあざあと波の音がする。頭上では、カモメが鳴きながら海上にあがってきた餌を求めて、何度も旋回していく。足の指の間をすり抜ける鳶色の砂は、さらさらとして心地よく、砂の中に隠れた生物たちが時折、皮膚をかすめていく。

向かいからやってくる通りすがりのカップルが春海たちを見て、ギョッと目を丸くした。しかし春海の持つ白杖とセナを見て「なんだ、そういうことか」と納得したように去っていく。

「ひひひ。ほんと便利だな。セナがいさえすれば、男同士で腕を組んでいても怪しまれない」
隣を歩く悠紀は、悪巧みが成功したいたずらっ子のように笑った。

「何なら手でも繋ぐか? さっきのカップルみたいに」
「あのね。そうゆう不謹慎なことを他の人たちの前で言っちゃダメだからね」
「当たり前だろう。春海にしか言わないよ。で、どうする、繋ぐか?」

悠紀は、自分の腕に絡んでいる春海の手の前に手を差し出した。
(この人、本当にわかっているのかなぁ……)
春海はため息をつきながらも、相手に自分の手を絡めた。

五月の晴れたある日。都内に住んでいる悠紀が急にやって来たかと思うと(と言っても、いつも週二ペースでやって来るのだが)、突然「行きたいところがある」と宣言した。そして行き先も告げず、春海をここまで連れ出したのだ。

「……で、どうだ?」
先ほどまでの自信はどこへやら、悠紀は緊張した不安げな声で聞いてくる。

春海は辺りを見回した。握った指を通して、悠紀の視界にうつる光景が春海の頭に直接、流れ込んでくる。

どこまでも広がる、青い海。
絶えることなく押しては寄せる波。水面に反射する七色のプリズム。白い砂の中に息づく、小さな生物たち。水平線の向こうに見える船のシルエット。

幼い頃からずっと夢見てきて、やがて諦めてしまった光景。それが今、目の前にあった。

信じられない。本当に、シンドバッドは、こんなところを探検したのか。
しかし考えてみれば、この半年間で自分に起こった出来事の方が信じられなかった。

家族や友人、与えられる加護の中を離れての一人暮らし。幽霊屋敷での幽霊との共同生活。危険に満ちた謎解きと冒険。そして、苦さと甘さがまじったロマンス。

まるで物語の中の話のようだ。

そして最後には、多くの冒険譚がそうであるように宝物を見つけることができた。

春海は、隣の悠紀に目を向ける。
「……何ていうか、言葉にならないよ」

そう言うだけで精一杯だった。悠紀は緊張が解けたように、ふっと笑う。
「わかるよ。春海の気持ちは伝わってきてるから」

悠紀はきゅっと指を握ると、ふいに海の彼方を見やった。
「この海は一度だけ、深影みかげが目の治療のために来たことがあるらしいんだ。久周——俺のじいちゃんと一緒に」
「……一つ、わからないことがあるんだ」

春海が立ち止まると、悠紀も立ち止まった。
「どうして、久周ひさのり——君のおじいさまは、僕を深影と間違えたんだ? いくら目が見えないのが同じだったからって」
「これはまだ推測の域だけど……」

悠紀は再び春海の腕を取ると、波打ち際をゆっくり歩き出した。ざあざあと寄せてくる波が、裸足の足をかすかに濡らす。
「春海の三田という名字が前々から引っかかっていて……何よりも蔵でアルバムを見た時、深影の顔があんまりにもお前にそっくりだったから、この前、調べてみたんだ。すると俺が二年前に調べた資料の中からあるものが見つかった。その家は小河内村の住人で、ダム建設による廃村後は、親戚を頼って近くの集落に移住したらしい。ダム建設前の調査によると、その夫婦には子どもがいなかった。しかし、移住先の記録では、成人間近の息子が一人いることになっていた。小河内村の村人は色んなところに散ったから、どこかで混同してしまったのかもしれないけど、もし……深影があの事件のあとに、助け出されていたとしたらどう思う……?」
「ちょ、ちょっと待って、それってつまり——」
「ちなみに聞くけど、春海の母親の出身地はどこ?」

唐突な質問に、春海は面をくらった。

「え……? ええっと、山梨県の清里だけど」
「そここそがダム建設決定後、小河内村の住人が多く移住したところなんだ。清里はここと同じく山に囲まれた緑豊かなところで、今では観光地としても有名だけど」
「待って! つまりそれって、僕が彼の子孫だっていうこと? でもそれはないよ。だって、僕の親戚の中に目の不自由な人は一人もいなかったし」
「今度、お前の母親に聞いてみるといいよ。でも俺が調べた限りで言うなら、春海の母親は幼い頃に遠い親戚に養子に出されたんだ。彼女の本当の母親は産後の日照りが悪くて既に亡くなっていて、父親の方も正常だった方の目まで徐々に衰え始め、彼女を育てることはできないと決断したらしい。それからの彼の行方は杳として知れない。ただ二年前——丁度、俺のじいちゃんが亡くなるその前の月まで、水原集落に毎年、無記名の寄付が続いていたんだ。障害者や老人、社会的弱者のために使うという条件つきで。もしそれが深影だったなら、たぶんそれが生き残ってしまった彼なりの新しい償いのやり方なのかもしれない、と。——全部、憶測の域を過ぎないけど」

怒濤のごとく迫ってくる情報に、春海の脳みそは対処しきれなかった。しかし一つだけ、どうしても聞かなければならないことがあった。

「じゃぁ、僕の目は、深影からの遺伝だってこと……?」
「可能性はある。可能性だけだけど」
「でも、僕の母は何ともないよ! 至って健康体だ。むしろ健康すぎるくらいに」
「遺伝病の中には、血友病や色覚障害のように男——Y染色体にしか伝わらないものがある。その場合、女性は因子の保有者で、もし彼女に男の子が産まれた場合のみ、その子に病が発現する可能性が高い。もしかすると、春海の母親はそのことを——自分が保有者であることを何らかの折りに知っていたんじゃないかな。たとえば妊娠した時とかに。でも彼女は、お前を生むことを決意した。それはお前がたとえ何でも、目が見えなくても、お前を愛していていることにかわりはなかったからだ。生まれる前から」

春海は息を飲み、ワナワナと震える口元に拳をあてた。

「……そんな……じゃぁ、母があんなにも過保護なのは……もしかして僕の目が見えないのは自分のせいだと思って……?」

『心配よ』と電話越しに訴えてくる声が甦ってきて、胸が切なくなった。

「わからない。でも、それはお前たちが二人で話すことだ。まだ遅くはない。二人とも生きているんだから」

肩をポンと叩かれ、春海は零れそうになるものを拭い、顔を上げた。

「そうだね……帰ったら電話——いや、久しぶりに家に行ってみることにするよ」
「それがいいかもな」

にかりと悠紀が笑った途端、背後から差す太陽が、さらにその輝きを増した。

「でも、悠紀。君、どうして、そんなことがわかったの? ダム建設前の住人調査とか」
「俺、もともと情報科学科専攻なんだよ。入学した時は親に勝手に入れられたようなものだったんだけど、あの屋敷で調べ物をしていくうちに、真実を解き明かすのって面白いって思うようになって、復学してからは、今までの分を取り戻すためにも必死になってやってるよ。で、将来はジャーナリストにでもなれたらなって」

照れ笑いを浮かべる悠紀を見て、春海は自分でも知らないうちに微笑んでいた。

「やっぱり悠紀は、青島少将の孫だね。彼の正義感は、君にもちゃんと流れているらしい」

春海は悠紀の前に回ると、その両手を取った。ハーネスから解き放たれたセナが我慢しきれず、波に向かって走り出す。

「今、僕は確信した。今までのこと全部に意味があったって。僕の目が見えないのも、あの屋敷で一人暮らしを始めたことも。君と僕が出会うための、神様からの贈り物だったんだ」

驚きの目で春海を見つめていた悠紀は、やがてふっと破顔した。
「まったく、お前はどこまで強いんだよ。——だけど」

悠紀は春海の腰を両手で包むと、こつんと額を合わせた。

「……もしそうだとしたら、俺たちは幸せにならないとな。じいちゃんと深影、そして水の中に消えた他の人たちの分まで」
「そうだね……」

春海は悠紀の首に顔を埋め、そっと目を閉じた。
瞬間、二人の足元を穏やかな波が浚い、全てが光に包まれた。
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