vamp"D"

物書未満

文字の大きさ
上 下
37 / 37
第八章

アラフォー、決勝に出る

しおりを挟む

「ついにここまで来たのう」
「ああ。とは言っても」
「観てるだけだった……」
 貰った特別シード権。それは決勝への特急券だったのだ。要約すると「1000のターゲットを破壊できる三人をトーナメントに出したら大荒れするから決勝だけにしてくれ」と、大会組織委員会の会長……つまるところアスラフィル国王に言われたわけである。
 当然大ブーイング……と思ったが観客はむしろ喜んでる。観客席にいる時に聞いたが特別シード権が発行されるのは500年ぶりらしくその存在は伝説とも言われていた様だ。

……で、私たちがその伝説の体現者、という事になる。

「さて、決勝は大賑わいじゃなぁ」
「凄い熱気……」
「こっちが飲まれそうだ」

 緊張はするが大丈夫だろう。行くか。

——

「さぁ始まりました! アスラフィル闘技大会決勝! 両チーム、先鋒前へ!」
——ワアアアアア!!
「我が一番槍じゃな」
「よろしくお願い申し上げる」
 ヴィルベルと対峙するのはいかにも老師と名のつきそうな武人。ただならぬ雰囲気だ。
「スタート!」
——シュン!
「なかなか良い動きじゃのう」
「ほうほう、これは見切られましたな」
 あまりに早い二人の動き。100発が一瞬に込められている様な錯覚に陥る。これは達人……いや、それを凌駕する動きだ。リヴェラによる視覚補助とダークエンハンスを目に集めていなければ追えない。
「はあっ!」
「ぬっ! お主、龍闘気を?」
「ほんの少しですがな。長年修行してこれだけですわい」
「いやいや、人の身にしてここまで清みやかな龍闘気はすごいのじゃ! 嬉しいのう。我も龍闘気、使うとするかの」
 ヴィルベルの言う龍闘気。それは龍が纏う武術の気。人がそれを会得するにはとんでもない経験と修行が必要らしい。だが身につければ地を割り、天を裂く力を得るとも言われている。
 そして、その龍闘気はヴィルベルも当然使える。
「この姿を拝めること、誉れに思うがよいぞ! 武人よ!」
 闇からヴィルベルが姿を再度現す。その姿は普段のヴィルベルとはまるで違う。
 細くしなやかで滑らかな無駄の一切ない体。178cmはあろうかという長身に膝まである長い金髪。最低限の布面積。そして……
「ふぅ……久々に龍闘気が身体に駆け巡るのう!」
 素人目にも分かる並々ならぬ気。それは当然相手にも伝わった様で。
「おお……なんという……! この目でその様に美しい龍闘気を拝めるとは……!」
 武人は涙を流し、一礼する。
「お主、今までその龍闘気、十分に発揮できていなかったであろう? 我に撃つがよい。お主のありったけを」
「おお……おお……! なんとありがたい事か! ではいきまする」
 武人は静かに構え直す。その身体には龍闘気が巡っている。丹念に練り込まれたそれは徐々に大きくなり……

「いきますぞ……『龍気閃光波』!」

——カッ!

 凄まじい閃光の波動……まるで龍を象った様なそれがヴィルベルに直撃する。
 長い長い気の放出。武人は大丈夫なのだろうか?
——シュウウウウ……
「……見事であるぞ、武人よ! この我の肌を焦がすとは!」
 ヴィルベルの脇腹が少し焦げている。あの気を以ってしてヴィルベルにこれだけしかダメージは通らないのか。
「はぁ……はぁ……感無量ですじゃ……」
「お主、生命力も龍闘気に変換したのか!?」
「はい……ああ、人生無駄にはならず……」
「むぅ……惜しいのう。『龍気棘刺』!」
「ぬぁっ!? 引導を渡して下さるのか」
 ヴィルベルの放つ貫手。それは心臓を貫き、武人を闇に包んだ。そして、闇が晴れると……
「……ん? 儂は何故生きて……?」
「お主を死なすには惜しいのでな。若返りのオマケ付きで復活させたのじゃ」
「なんという……」
「人間にとっての龍闘気の極意、若返りを会得せよ。それが我からの宿題じゃ」
「は、ははっ!」
「それとのう。若返ったんじゃから自称は改めるがよい。後は女子おなごを抱け。お主は修行に明け暮れすぎじゃ。龍闘気極意への道にはおなごを抱くというのもあるのじゃよ」
「心得ました……! 儂……いや、俺は必ず……!」
「うむ。待っておるぞ。武人よ」

——ワアアアアア!!
  二人のやりとりに観客が沸く。ヴィルベルの勝ちとなったが素晴らしいものだった。きっとヴィルベルも使い手を求めていたのだろう。

「ふぅ。久々に滾ったのう」
「お疲れ様。ヴィルベル」
 いつもの小さい姿に戻ったヴィルベルはドサッとベンチに座る。多少疲れたか。
「次はリヴェラの番じゃな。頑張れ~」
「うん……行ってくる……」

 さぁ、次だ。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

俺の彼女が黒人デカチンポ専用肉便器に堕ちるまで    (R18禁 NTR胸糞注意)

リュウガ
恋愛
俺、見立優斗には同い年の彼女高木千咲という彼女がいる。 彼女とは同じ塾で知り合い、彼女のあまりの美しさに俺が一目惚れして付き合ったのだ。 しかし、中学三年生の夏、俺の通っている塾にマイケルという外国人が入塾してきた。 俺達は受験勉強が重なってなかなか一緒にいることが出来なくなっていき、彼女は‥‥‥

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

バスト105cm巨乳チアガール”妙子” 地獄の学園生活

アダルト小説家 迎夕紀
青春
 バスト105cmの美少女、妙子はチアリーディング部に所属する女の子。  彼女の通う聖マリエンヌ女学院では女の子達に売春を強要することで多額の利益を得ていた。  ダイエットのために部活でシゴかれ、いやらしい衣装を着てコンパニオンをさせられ、そしてボロボロの身体に鞭打って下半身接待もさせられる妙子の地獄の学園生活。  ---  主人公の女の子  名前:妙子  職業:女子学生  身長:163cm  体重:56kg  パスト:105cm  ウェスト:60cm  ヒップ:95cm  ---  ----  *こちらは表現を抑えた少ない話数の一般公開版です。大幅に加筆し、より過激な表現を含む全編32話(プロローグ1話、本編31話)を読みたい方は以下のURLをご参照下さい。  https://note.com/adult_mukaiyuki/m/m05341b80803d  ---

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R18】淫魔の道具〈開発される女子大生〉

ちゅー
ファンタジー
現代の都市部に潜み、淫魔は探していた。 餌食とするヒトを。 まず狙われたのは男性経験が無い清楚な女子大生だった。 淫魔は超常的な力を用い彼女らを堕落させていく…

オークションで競り落とされた巨乳エルフは少年の玩具となる。【完結】

ちゃむにい
恋愛
リリアナは奴隷商人に高く売られて、闇オークションで競りにかけられることになった。まるで踊り子のような露出の高い下着を身に着けたリリアナは手錠をされ、首輪をした。 ※ムーンライトノベルにも掲載しています。

処理中です...