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第八章
アラフォー、またしても足止め
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「うーん」
宿場町を経由しながら四日。アスラフィルとセレファニスタ国境の山付近で私たちは足止めを食らっていた。火山の噴火が相次ぎ道が封鎖されているのだ。
「他の道はないしのう……」
「困りましたね」
火山はここ最近急に活発となり観測隊も頭を抱えているという。確かにこの道が使えないとなると交通、経済の面からも厳しいものがあるのは間違いない。火山灰の問題も大きいだろう。農業は大打撃だ。
「……心当たり……ある……」
「リヴェラ、何か知って?」
「急に火山が活発化……大体は魔物のせい……ボルケーノドラゴンが怪しい……」
「ボルケーノドラゴン?」
「おお! 奴か! なら話は分かるのう」
リヴェラとヴィルベル曰く、ボルケーノドラゴンは魔界で炎の頂点に位置するドラゴンだそうだ。
「奴なら我の言う事を聞くであろう。観測隊に混じって火山にいってみるのはどうじゃ?」
「手っ取り早いのはそれだな。よし、私とヴィルベルで行ってくるとしよう」
「気をつけてね、お兄ちゃん」
アイナとリヴェラ、シンシアは留守番だ。流石に大所帯で行く事はできない。
——
「本当にあんたたち大丈夫なのか?」
合流した観測隊員に心配される。危険な火山というだけあって隊員数は少ない。そんな中におっさんと小さな女の子が入っていくのだから。
「むぅ、我を侮るな。これでもAランクじゃ!」
「いや、それは分かるんだが……まぁいい。足場が悪いから慎重に進むぞ」
隊員の案内で火山へ登る。確かに悪路だ。うっかりしていると踏み外してしまいそうなくらいには。
進むにつれ降ってくる火山灰や火山ガスが増えてくる。まだ危険域ではないが……
「くっ、やはりこの先には進み難い……!」
目の前には崩れた足場。確かに隊員がそう言うのも分かる。だが……
「なんじゃあこんなもの。更地と変わらぬな」
ヒョイヒョイっとヴィルベルは登っていく。流石だ。
「なんて身軽な……」
「あはは、あの子は特別でね」
かく言う私もダークエンハンスで身体能力を底上げしている。そうでなければヴィルベルや隊員にはついていけないかもしれない。
とにかく登ろう。
——
「ふむ。もうすぐ山頂じゃの」
「はぁ……ヴィルベル、早いよ」
「なっさけないのう。アレのスタミナはどこいったんじゃ」
「いやまぁ、アレは、ね」
山頂付近。隊員は途中でついてこれなくなりリタイア。ここまで来ると火山ガスも濃い。リヴェラの対汚染魔力のお守りがここでも有効とは思わなかった。
さて……
「おるのう。ボルケーノドラゴン」
「ああ。気配がする」
慎重に火口付近へ歩を進める。岩陰からそっと覗くと……
「アレか?」
「じゃな。しかし様子が変じゃ」
「と、言うと?」
「あやつらは火山に現れれば基本陽気に踊っておる。じゃが今は動く素振りすらみせん」
「異常事態と言うことか?」
「左様。とにかく近づくとしよう」
慎重に慎重に。だが接近してもこちらを見ようとしない。というより眠っている?
——バチィン!
「ぬあっ! これは……!」
「厄介じゃのう……『魔龍教団』の魔法結界じゃ」
くっ、こんなところで面倒な。恐らくあのボルケーノドラゴンは動力源にされている。なんとかしなければ。しかし結界を突破できる様な魔法は創造していない。リヴェラを相手に幾度か試したが結界への理解がないと解除はできないのだ。一般的な結界ならリヴェラからの教授で解除できる様にはなっているがこれは特殊結界。私では無理だ。
「ちと荒技じゃがの……!」
——ガッ!
腕を龍化させて開かない自動ドアを無理やりこじ開けるかの如くギリギリと開いていく。
「ぬぅん!」
——バリィン!
「はは、パワーで解決か」
「手っ取り早いじゃろ? さて……お目覚めのようじゃ」
ボルケーノドラゴンが目を開く。だが明らかに様子がおかしい。
「狂化、じゃな」
「! くるぞ、ヴィルベル!」
——ズガン!
強烈なストンプ。私は横に避けたがヴィルベルはまともに……
「ふん、我に牙を向けるとはの」
涼しい顔で受け止めていた。やはりデビルロードドラゴンか。
「せぇい!」
——ドシン!
そのまま前足を掴んで投げ飛ばした。パワフルもパワフルである。
「今じゃ! 鎖で縛れ!」
「! ダークチェーン!」
大きさ的に50本。全身を縛りつけたが。
「ぐっ、暴れる……!」
何というパワー。油断すれば引きちぎられる。更に50本追加だ。
「見つけたのじゃ! 正気に戻れ! ボルケーノドラゴン!」
——バキィン!
「かっ、くあっ……!」
「どうだ、ヴィルベル?」
「破壊成功じゃ!」
ヴィルベルが破壊したのは黒い魔石。ボルケーノドラゴンの胸元に埋め込まれていた様だ。
「はぁっ……はぁっ……お、俺は」
「目が覚めたようじゃの」
「はっ! ヴィルベル様!? 何故……」
「詳しい話は後じゃ。火山を鎮めよ」
「い、今すぐ!」
よし、話ができるぞ。
——
「なるほどのう……」
「全くお恥ずかしい話です」
ボルケーノドラゴンが言うによさげな火山を見つけ踊ろうとしたところ魔龍教団の罠にハマり異常な火山活性のコアにされてしまった様だ。
「お主がここへ来るのも魔龍教団に仕込まれた事かもしれぬな」
「ぐぅ……なんて情けないんだ、俺は……」
「気に病むでない。お主も被害者じゃ。どれ……」
ヴィルベルが紙を取り出し何かを書いている。龍族文字……私には読めない。
「お主の事、責めるなと書した。ボルケーノロードドラゴンが心配しておろう。早く帰るのじゃ」
「あ、ありがとうございます!」
ボルケーノドラゴンは闇の狭間に消え、魔界に帰っていった。
これにて一段落だ。
宿場町を経由しながら四日。アスラフィルとセレファニスタ国境の山付近で私たちは足止めを食らっていた。火山の噴火が相次ぎ道が封鎖されているのだ。
「他の道はないしのう……」
「困りましたね」
火山はここ最近急に活発となり観測隊も頭を抱えているという。確かにこの道が使えないとなると交通、経済の面からも厳しいものがあるのは間違いない。火山灰の問題も大きいだろう。農業は大打撃だ。
「……心当たり……ある……」
「リヴェラ、何か知って?」
「急に火山が活発化……大体は魔物のせい……ボルケーノドラゴンが怪しい……」
「ボルケーノドラゴン?」
「おお! 奴か! なら話は分かるのう」
リヴェラとヴィルベル曰く、ボルケーノドラゴンは魔界で炎の頂点に位置するドラゴンだそうだ。
「奴なら我の言う事を聞くであろう。観測隊に混じって火山にいってみるのはどうじゃ?」
「手っ取り早いのはそれだな。よし、私とヴィルベルで行ってくるとしよう」
「気をつけてね、お兄ちゃん」
アイナとリヴェラ、シンシアは留守番だ。流石に大所帯で行く事はできない。
——
「本当にあんたたち大丈夫なのか?」
合流した観測隊員に心配される。危険な火山というだけあって隊員数は少ない。そんな中におっさんと小さな女の子が入っていくのだから。
「むぅ、我を侮るな。これでもAランクじゃ!」
「いや、それは分かるんだが……まぁいい。足場が悪いから慎重に進むぞ」
隊員の案内で火山へ登る。確かに悪路だ。うっかりしていると踏み外してしまいそうなくらいには。
進むにつれ降ってくる火山灰や火山ガスが増えてくる。まだ危険域ではないが……
「くっ、やはりこの先には進み難い……!」
目の前には崩れた足場。確かに隊員がそう言うのも分かる。だが……
「なんじゃあこんなもの。更地と変わらぬな」
ヒョイヒョイっとヴィルベルは登っていく。流石だ。
「なんて身軽な……」
「あはは、あの子は特別でね」
かく言う私もダークエンハンスで身体能力を底上げしている。そうでなければヴィルベルや隊員にはついていけないかもしれない。
とにかく登ろう。
——
「ふむ。もうすぐ山頂じゃの」
「はぁ……ヴィルベル、早いよ」
「なっさけないのう。アレのスタミナはどこいったんじゃ」
「いやまぁ、アレは、ね」
山頂付近。隊員は途中でついてこれなくなりリタイア。ここまで来ると火山ガスも濃い。リヴェラの対汚染魔力のお守りがここでも有効とは思わなかった。
さて……
「おるのう。ボルケーノドラゴン」
「ああ。気配がする」
慎重に火口付近へ歩を進める。岩陰からそっと覗くと……
「アレか?」
「じゃな。しかし様子が変じゃ」
「と、言うと?」
「あやつらは火山に現れれば基本陽気に踊っておる。じゃが今は動く素振りすらみせん」
「異常事態と言うことか?」
「左様。とにかく近づくとしよう」
慎重に慎重に。だが接近してもこちらを見ようとしない。というより眠っている?
——バチィン!
「ぬあっ! これは……!」
「厄介じゃのう……『魔龍教団』の魔法結界じゃ」
くっ、こんなところで面倒な。恐らくあのボルケーノドラゴンは動力源にされている。なんとかしなければ。しかし結界を突破できる様な魔法は創造していない。リヴェラを相手に幾度か試したが結界への理解がないと解除はできないのだ。一般的な結界ならリヴェラからの教授で解除できる様にはなっているがこれは特殊結界。私では無理だ。
「ちと荒技じゃがの……!」
——ガッ!
腕を龍化させて開かない自動ドアを無理やりこじ開けるかの如くギリギリと開いていく。
「ぬぅん!」
——バリィン!
「はは、パワーで解決か」
「手っ取り早いじゃろ? さて……お目覚めのようじゃ」
ボルケーノドラゴンが目を開く。だが明らかに様子がおかしい。
「狂化、じゃな」
「! くるぞ、ヴィルベル!」
——ズガン!
強烈なストンプ。私は横に避けたがヴィルベルはまともに……
「ふん、我に牙を向けるとはの」
涼しい顔で受け止めていた。やはりデビルロードドラゴンか。
「せぇい!」
——ドシン!
そのまま前足を掴んで投げ飛ばした。パワフルもパワフルである。
「今じゃ! 鎖で縛れ!」
「! ダークチェーン!」
大きさ的に50本。全身を縛りつけたが。
「ぐっ、暴れる……!」
何というパワー。油断すれば引きちぎられる。更に50本追加だ。
「見つけたのじゃ! 正気に戻れ! ボルケーノドラゴン!」
——バキィン!
「かっ、くあっ……!」
「どうだ、ヴィルベル?」
「破壊成功じゃ!」
ヴィルベルが破壊したのは黒い魔石。ボルケーノドラゴンの胸元に埋め込まれていた様だ。
「はぁっ……はぁっ……お、俺は」
「目が覚めたようじゃの」
「はっ! ヴィルベル様!? 何故……」
「詳しい話は後じゃ。火山を鎮めよ」
「い、今すぐ!」
よし、話ができるぞ。
——
「なるほどのう……」
「全くお恥ずかしい話です」
ボルケーノドラゴンが言うによさげな火山を見つけ踊ろうとしたところ魔龍教団の罠にハマり異常な火山活性のコアにされてしまった様だ。
「お主がここへ来るのも魔龍教団に仕込まれた事かもしれぬな」
「ぐぅ……なんて情けないんだ、俺は……」
「気に病むでない。お主も被害者じゃ。どれ……」
ヴィルベルが紙を取り出し何かを書いている。龍族文字……私には読めない。
「お主の事、責めるなと書した。ボルケーノロードドラゴンが心配しておろう。早く帰るのじゃ」
「あ、ありがとうございます!」
ボルケーノドラゴンは闇の狭間に消え、魔界に帰っていった。
これにて一段落だ。
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