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物書未満

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第三章

アラフォー、龍と契約する

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「なぁ、この光景はなんだ?」
「わ、私に聞かれても……」
「おおん! もっとキツく縛って欲しいのじゃあ~!」

 目の前にはデビルドラゴン……ではなく鎖に巻かれて悶える女の子。明らかに興奮状態だ。
「そこのお主かえ? この鎖がクセになってたまらんのじゃ!」
——グググッ
「おほぉっ! ああ~そこじゃあ~!」
——グイッ
「んはぁ! よいぞよいぞ……! 数百年ぶりの快感じゃあ~!」
……変態だ。変態ドラゴンがここにいる。さっき見た威厳盛り盛り威圧感丸出しドラゴンはどこへいった?
「あー、一応聞くがデビルドラゴンなんだな?」
「はぁはぁ……そうじゃ、我こそ闇のドラゴンの頂点デビルドラゴンの最頂点、デビルロードドラゴン、ヴィルベルじゃ! あっ、そこイイっ! 数百年ぶりに我を縛ってくれる者を探しに人間界にきたのじゃ。じゃがの、なかなかこの時代にはおらんようでムラムラしておった!」
 この変態はそんなことのために人間界を脅かしていたのか……ムラムラが戦闘力になるとは更に変態である。
「この鎖は上物じゃ! 光の鎖で縛られるのも悪くないが我と同じく闇の力でここまで縛られると……堪らぬ!」
「満足したのなら帰ってもらえると嬉しいんだが……」
「イヤじゃイヤじゃ! もっと縛って欲しいのじゃ! のうお主、我の主人にならんかえ?」
「なっ……!」
「ドラゴンとの契約はいいぞ~? 色んなところに顔が効く! それにお主の力も増し増しになるのじゃ! 後生じゃ~我を縛ってたもれ~」
 まさか自分から僕になることを申し出てくるとは……こんなのが闇のドラゴンの頂点でいいのか、ドラゴン界隈は。
「アイナ、どうする?」
「ま、まぁ強大な戦力ですし、問題も解決しますし」
「契約、するか」
 なぜかこう……いいことなのは分かっているが……考えても仕方あるまい。契約の方法は……
「してくれるか!? なら我にキスをするのじゃ! 唇にじゃぞ? はよ、はよ!」
 言われるがまま、キスをする。するとどうか、身体に力が流れ込んでくる。魔力とはまた違ったなにかだ。
「とりあえず一旦鎖を切るぞ」
——ガシャン!
「んわぷっ! 乱暴に落っことされるのも快感じゃあ~」
「……」
「……」
 この変態ドラゴンのMっぷりには言葉を失う。アイナも同感らしい。

——

「と、いうことでデビルドラゴンは私の僕になりました」
「「「はぁ……」」」
 野営していた三人にヴィルベルを見せる。ローブで隠れているが鎖で縛っている。帰り道に縛れ縛れとお願いされこの形に落ち着いた。
「おじさんの僕になったのはいいとして脅威が去ったことを証明する何かがいるわ」
「ん? ならこれを持ってゆけ」
 ヴィルベルが空間からドラゴンの爪らしき物を出す。確かにこれだけ大きな爪なら破壊して撃退したといっても問題ないだろう。
「では私たちは村に脅威が去ったことを伝え次第王都へ向かう。Dさんはどうする予定なんだ?」
「私はとりあえず夜になるまで待機だな。夜に王都へ向かう」
「……手柄をもらった形になるが本当にいいのか?」
「気にするな。君たちが倒したようにしておくのが一番楽なんだ」
 さて、朝が近い。早く村に戻って休もう。

——

 デビルドラゴン撃退の知らせを受け、村は大いに盛り上がっていた。そんな中に参加せず私とアイナはしっぽり致している。ヴィルベルがいようがお構いなし……というよりヴィルベルは鎖に縛られて蕩けているためあまり気にならない。
 アイリたちはすぐに出発するはずだ。まぁ私たちの方が先に王都へ着くだろうが。
「Dさん……何考えてるの?」
「ん、いや、なんでもない」
「んんっ、ならもっと……」
「ああ」
 いかんいかん、こっちに集中だ。この時間は大切な時間なのだ。
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