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選ばれた私達
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私が天使長室に着くと、ラフィが既に扉の前に立っていた。
彼に声を掛けようとした時、また視線を感じた。
振り返るが誰もいない。
(まただ…)
「サビィ?突然、振り返ってどうしたんだい?」
ラフィが不思議そうな表情で私を見ている。
「いや…何でもない…ラフィ、その本は?」
「これは図書室で突然床下から現れた。百科事典らしいけど…全部白紙なんだ」
ラフィはその本をパラパラとめくって見せたが、彼の言葉通り白紙だった。
彼は肩をすくめると、私が抱えている水盤に目を止めた。
「サビィ、君が抱えている物は何だい?」
「ああ…これは水盤だ。噴水から突然現れた」
「サビィもか…不思議な事があるものだね」
私達は、それぞれ不思議な水盤と百科事典を抱え、天使長室をノックした。
扉が開き、天使長補佐のアシエルが顔を覗かせる。
「ザキフェル様がお待ちだ。2人とも中に入ってくれ」
ラフィと共に中に入ると、ザキフェル様は美しく装飾された背もたれの高い椅子に座っていた。
その斜め後方にアシエルが控えている。
私とラフィが跪こうとすると、ザフィエル様は手で制した。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。楽にしてくれ」
私達がソファに座ると、ザキフェル様は優雅にゆっくりと立ち上がり目の前に腰掛ける。
「さて、君達が手にしている物についてだが…突然、目の前に現れて驚いただろう?」
「はい。一体何が起きたのか理解できませんでした」
「僕もです。まさか床下が割れるとは…」
ザフィエル様は柔らかく笑うと、私達を交互に見た。
「それはそうだろう。しかし君達は、その水盤や百科事典に選ばれたのだ」
「選ばれた…とは?」
私は理解できずザフィエル様に尋ねた。
「そう…君達は選ばれたのだ。この水盤や百科事典は主人を選び現れる。この天使の国に古くから伝えられている物だ。しかし…それらは、今まで現れる事はなかった」
私とラフィは驚き、お互い顔を見合わせた。
「だから、私も実物を目にするのは初めてだ。ただ…水盤も百科事典も、なかなか扱いにくい物だと伝えられている」
「扱いにくい…それは一体どのような意味でしょうか?」
ラフィが尋ねる。
「それは私にも分からない。何せ誰も見た事がない物だ。言い伝えられてはいたが、実在するのかも謎だった。しかし…水盤や百科事典は実在した上に、君達を選んだのだ。必ず使いこなせるだろう」
理解し難い話で戸惑ったが私は頷き答えた。
「一抹の不安は否めませんが…扱えるように努力します」
「僕も…子供達の学びに有意義に活用できるよう尽力します」
ラフィの表情にも戸惑いが見てとれたが、しっかりと頷いている。
「君達なら大丈夫だろう。頑張りなさい。私からは以上だ」
柔らかく微笑むザフィエル様に、私達は一礼し天使長室を後にしたのだった。
彼に声を掛けようとした時、また視線を感じた。
振り返るが誰もいない。
(まただ…)
「サビィ?突然、振り返ってどうしたんだい?」
ラフィが不思議そうな表情で私を見ている。
「いや…何でもない…ラフィ、その本は?」
「これは図書室で突然床下から現れた。百科事典らしいけど…全部白紙なんだ」
ラフィはその本をパラパラとめくって見せたが、彼の言葉通り白紙だった。
彼は肩をすくめると、私が抱えている水盤に目を止めた。
「サビィ、君が抱えている物は何だい?」
「ああ…これは水盤だ。噴水から突然現れた」
「サビィもか…不思議な事があるものだね」
私達は、それぞれ不思議な水盤と百科事典を抱え、天使長室をノックした。
扉が開き、天使長補佐のアシエルが顔を覗かせる。
「ザキフェル様がお待ちだ。2人とも中に入ってくれ」
ラフィと共に中に入ると、ザキフェル様は美しく装飾された背もたれの高い椅子に座っていた。
その斜め後方にアシエルが控えている。
私とラフィが跪こうとすると、ザフィエル様は手で制した。
「堅苦しい挨拶は抜きだ。楽にしてくれ」
私達がソファに座ると、ザキフェル様は優雅にゆっくりと立ち上がり目の前に腰掛ける。
「さて、君達が手にしている物についてだが…突然、目の前に現れて驚いただろう?」
「はい。一体何が起きたのか理解できませんでした」
「僕もです。まさか床下が割れるとは…」
ザフィエル様は柔らかく笑うと、私達を交互に見た。
「それはそうだろう。しかし君達は、その水盤や百科事典に選ばれたのだ」
「選ばれた…とは?」
私は理解できずザフィエル様に尋ねた。
「そう…君達は選ばれたのだ。この水盤や百科事典は主人を選び現れる。この天使の国に古くから伝えられている物だ。しかし…それらは、今まで現れる事はなかった」
私とラフィは驚き、お互い顔を見合わせた。
「だから、私も実物を目にするのは初めてだ。ただ…水盤も百科事典も、なかなか扱いにくい物だと伝えられている」
「扱いにくい…それは一体どのような意味でしょうか?」
ラフィが尋ねる。
「それは私にも分からない。何せ誰も見た事がない物だ。言い伝えられてはいたが、実在するのかも謎だった。しかし…水盤や百科事典は実在した上に、君達を選んだのだ。必ず使いこなせるだろう」
理解し難い話で戸惑ったが私は頷き答えた。
「一抹の不安は否めませんが…扱えるように努力します」
「僕も…子供達の学びに有意義に活用できるよう尽力します」
ラフィの表情にも戸惑いが見てとれたが、しっかりと頷いている。
「君達なら大丈夫だろう。頑張りなさい。私からは以上だ」
柔らかく微笑むザフィエル様に、私達は一礼し天使長室を後にしたのだった。
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