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ブランカ再来
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「ブランカ!」
ラフィは目の前に現れたブランカに驚き、何度も左右に首を振った。
「これは…夢…なのか?」
「夢じゃないわ。ラフィ…本当に久し振り…」
ブランカはラフィの目の前に移動し、彼を愛しむように見つめた。
「どうして…?君は僕の目の前で…」
ブランカはフッと笑うと、人差し指をラフィの唇にそっと押し当てた。
「私の実体はないの。でも、ちゃんと存在しているのよ。」
「君は…今までどこにいたんだ…」
ラフィはブランカの頬に手を伸ばしたが、彼の手はブランカの頬を突き抜けてしまい、触れる事はできなかった。
「ラフィ…驚かせてごめんなさい…私が命を落とした時に1人の天使が現れ言ったの。光となり天使の国に残るか、白練の世界で更なる学びの道を歩むのか選びなさい…ってね。」
「#白練__しろねり_#の世界…?初めて耳にしたよ。それは、一体どんな世界なんだい?」
「とにかく真っ白な世界なの。そう…例えるなら、絹のような光沢のある白い世界。」
「君は、そこでどんな学びを…?」
「そうね…自分と向き合ったり、時には私やハーニーのように命を落とした天使を導いたりしてるの。とても静かな世界よ。」
「その世界に君の他に天使は?」
「他に天使はいるはずだけど…会う事はないわ。私1人よ。」
「君1人だなんて…寂しすぎる…」
ラフィは、悲しげに眉根を寄せブランカを見つめた。
「ラフィ…私は寂しくなんてないわ。#白練__しろねり_#の世界からは、他のたくさんの世界が見られるの。天使の国も地球も、他の世界や惑星もね。だから、私はいつもラフィや他の天使達に会えるの。とても静かで心穏やかな世界よ。私にとって、#白練__しろねり_#の世界は学びの場所でもあり、癒しの場所でもあるのよ。」
ブランカは、ラフィの頬にソッと手を当てた。
不思議な事に彼は、触れる事ができなかったブランカの手の温かさを感じていた。
「実はね…正直言うと悩んだの…光となって、あなたの側にいる事も考えた。でも…あえて私は#白練__しろねり_#の世界に身を置く道を選んだ。」
「それは…一体どうして?」
ラフィの瞳は、疑問と戸惑いを映し揺れている。
「私が光となり側にいる事で、あなたはずっと自分を責め続け苦しむかもしれない…と考えたから。でも…私が離れても、あなたはずっと苦しんでいたわ。ラフィ…もう、自分を責める事はやめて。私は天使長となった時に決心したの。何があっても天使の国を守り抜こう…と。でも、守りきれなかった。私がガーリオンに倒された後、あなたは天使の国を守り抜いてくれたのよ。ラフィ…天使の国を守ってくれてありがとう。この言葉をずっと伝えたかったの…」
ラフィはフーッと深く溜め息を吐くと、ニコッと笑った。
「全く…君は相変わらずだね。いつも自分の事より僕や他の天使達の事を考えている。本当に君には敵わない…僕は、そんな君を愛していたし、今も変わらず愛している。」
「ラフィ…」
ブランカは一瞬瞳を切なげに揺らし、ジッとラフィを見つめた。
「私も…あなたを愛していたし、今も愛しているわ…あなたの笑顔が大好きよ。」
2人は暫く見つめ合いフッと微笑み合った。
そしてブランカは、ラフィが抱き抱えているハーニーを見た。
「さぁ、ハーニー…あなたは、どちらを選ぶのかしら?光となりシャイニーの側にいるか…それとも#白練__しろねり_#の世界で学ぶか…」
ブランカが、ラフィの腕の中のハーニーを見つめると、突然彼女の体が輝き始め、少しずつ光が強くなっていった。
そして一際激しく光を放つと、その体は見る見る間に小さい光の球体となりフワフワと宙に浮いた。
「ハーニーは、シャイニーの側にいる道を選んだのね。」
ブランカは、小さな光の姿に変わったハーニーにニッコリと笑い掛けた。
「はい。私はシャイニーの成長を見届けたい…そう思っています。」
小さなハーニーはフルフルと揺れながら答えた。
「ハーニー…僕のせいで…本当にごめんね…」
俯いたシャイニーの声は涙声で震えていた。
「シャイニー、あなたのせいじゃないわ。私があなたを守りたいと思ったのよ。サビィ様やラフィ様に止められたのにね。」
ハーニーは、シャイニーの周りをフワフワと飛びながら優しく言った。
「でも…ハーニーは、もうハープを弾けないんだよ…ハープは弓矢になっちゃったし…」
シャイニーは弓矢をギュッと握り締めた。
「その事なら大丈夫よ。ちょっと見ていて。」
ハーニーは宙に舞い上がると、ゆっくりユラユラと揺れ始めた。
すると、その動きに合わせるようにハープの音色が聞こえてきた。
とても温かで優しく、希望と勇気が溢れ出てくる不思議な音色だった。
「ハーニー…何だか音色が変わった気がするよ。元気になる…というより心の底から希望や勇気が溢れ出てくる感じ…」
「ありがとう、シャイニー。ね、だから私は大丈夫よ。これからもあなたの側にいるわ。」
ハーニーは、シャイニーの周りをクルクルと回っている。
「ハーニー…」
シャイニーは、グッと手を握り締めブランカを見た。
「ブランカさん…ハーニーを元の姿に戻す事はできませんか?」
「残念だけど…ハーニーを元の姿に戻す事はできないの。ただ…彼なら知っているかも…」
「彼…?ハーニーを戻せるかもしれない天使がいるんですか?」
シャイニーは身を乗り出し、ブランカの次の言葉を待った。
「私が命を落とした時に現れた天使なの。彼は、死と再生を司る天使だと言っていたわ。私は彼に聞かれたの。光となり天使の国に戻るか、#白練__しろねり_#の世界で学ぶか…」
「その天使には、どうしたら会えますか?」
「ごめんなさい…それは、私にも分からないの。彼がハーニーを元の姿に戻せるかも分からない。天使が命を落とした時の選択肢は2つしかないから…でも、彼が何かを知っている可能性はあるわ。シャイニー、強い願いや思いは必ず叶うの。決して諦めず努力を重ねる事も大切よ。」
「そっか…」
シャイニーは、ブランカの話しを反芻し考えた。
(その天使に会えたとしてもハーニーを元の姿に戻す事はできないかもしれないんだ…でも、可能性は0ではないみたい…)
「シャイニー、私はこのままで平気よ。」
ハーニーは、考え込むシャイニーを励ますように目の前でピョンピョンと跳ねて見せた。
「彼の名前はリュシエル。彼と会ったのは、その時が最初で最後。私は、彼に命を落とした天使に道を示すように頼まれたの。彼は、これから別の役目があると言っていたわ。」
ブランカは、その時の記憶を辿るように少し遠くを見つめながら言った。
「分かりました。リュシエルさんを探してみます。もしかしたら、ハーニーを元の姿に戻せるかもしれませんから…」
「そうね…シャイニー、諦めず希望を持ち続けるのよ。」
ブランカは、優しい笑顔でシャイニーの頭をソッと撫でた。
「さぁ、私はそろそろ戻らないといけないわ。シャイニー、他に私に聞きたい事はあるかしら?」
「もう一つだけ聞きたい事があります。琴ちゃんに、亡くなったお父さんとお母さんを会わせてあげる事はできますか?」
シャイニーは、琴に気付かれないように小声でブランカに聞いた。
目の端で琴を見ると、ポカンと口を開けキョロキョロとラフィやブランカ、光になったハーニーを見ている。
(琴ちゃん、ビックリしている…急に他の天使が現れたし、目の前でハーニーが光になったから驚くのも仕方ないよね…)
ブランカは、首を傾げ少し考えるとシャイニーに優しい笑顔を見せた。
「そうね…直接会わせる事はできないけど…」
ブランカは前置きをすると、シャイニーの耳元に唇を寄せ囁いた。
シャイニーは彼女の言葉に頷くと笑顔を見せた。
「ブランカさん、分かりました。ありがとうございます。」
ブランカもニッコリと笑うと、ラフィに目を向けた。
「ラフィ…天使の国をお願い。サビィと一緒に守って…それから、あなたは何でも1人で背負い込みすぎるわ。自分で全てを解決しようとする…もっと周りを見て。サビィもシャイニーも、あなたに頼ってほしいと思っているの。」
「分かったよ。ブランカ…確かに僕は自責の念から、何もかも自分で解決しようとしていたのかもしれないよ。ブランカ…天使の国は僕達に任せて。サビィと一緒に守っていくよ。それに、成長したシャイニーは頼もしい補佐になってくれるだろうしね。」
ラフィは、シャイニーにウィンクをして見せた。
「え!ラフィ先生の補佐ですか?僕に務まるでしょうか…?」
「シャイニー、君はこの修業で随分と成長したんだ。イガレスとの対峙は予想外だったけどね。自分の体を良く見てごらん。」
「自分の体…?」
シャイニーは自分の手を見ると、ひとまわり大きくなっている事に気付いた。
「あれ?手が大きくなってる…」
そして足を見ると、いつの間にか長く伸びている。
「え!どうして?」
ラフィはクスクス笑いながら指をパチンと鳴らすと、大きな姿見が現れた。
「これで、しっかり見てごらん。」
シャイニーが恐る恐る姿見を覗くと、15歳程の美しい少年の天使が映っていた。
手足はスラリと伸び雪のように白く、髪は緩やかなカーブを描き肩まで伸びていた。
美しい金色の髪は光が当たるとキラキラと虹色に輝き、背中に生えた純白の翼はふたまわりほど大きくなっていた。
そして、翼も光が当たると虹色に輝いた。
イガレスとの対峙で負った怪我も綺麗に治っていた。
「これが、僕…?怪我も治ってる…あれ?声も違う?」
シャイニーの声は少し低くなり、凛々しくもあり澄んだものへと変わっていた。
「そうだよ、シャイニー。君は、この修業で大きく成長したんだ。怪我も成長と共に完治したようだね。」
成長を喜ぶラフィの瞳には、美しい少年天使シャイニーが映っていた。
「シャイニー、良く頑張ったわね。これから、ラフィやサビィと共に天使の国を守ってね。」
ブランカは、目を細め眩しそうにシャイニーを見つめた。
「ラフィ…私…もう行かなくちゃ…これで本当にさよならになるわ…」
「ブランカ…」
「ラフィ…私を愛してくれてありがとう…そして…ずっとあなたを苦しめてしまってごめんなさい…」
「ブランカ…君は悪くない。」
ブランカは左右に首を振ると、切なげにラフィを見つめた。
「ブランカ…君はいつも自分の事より、周りの事ばかり考えていたね。それは、今も変わってなかった…僕は、そんな君だからこそ愛したんだ。僕は今…とても幸せだよ。だって、こうしてまた君に会えたから… 」
ラフィは優しく微笑んだ。
その瞳は、もう悲しみに彩られていなかった。
ブランカは強く頷くと空高く舞い上がり、ラフィとシャイニーに大きく手を振りながら、上へ上へと飛んでいった。
ブランカの姿がどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
「ブランカ…さよなら…」
ラフィは小さな声で呟き、風と共にその声は消えていった。
ラフィは目の前に現れたブランカに驚き、何度も左右に首を振った。
「これは…夢…なのか?」
「夢じゃないわ。ラフィ…本当に久し振り…」
ブランカはラフィの目の前に移動し、彼を愛しむように見つめた。
「どうして…?君は僕の目の前で…」
ブランカはフッと笑うと、人差し指をラフィの唇にそっと押し当てた。
「私の実体はないの。でも、ちゃんと存在しているのよ。」
「君は…今までどこにいたんだ…」
ラフィはブランカの頬に手を伸ばしたが、彼の手はブランカの頬を突き抜けてしまい、触れる事はできなかった。
「ラフィ…驚かせてごめんなさい…私が命を落とした時に1人の天使が現れ言ったの。光となり天使の国に残るか、白練の世界で更なる学びの道を歩むのか選びなさい…ってね。」
「#白練__しろねり_#の世界…?初めて耳にしたよ。それは、一体どんな世界なんだい?」
「とにかく真っ白な世界なの。そう…例えるなら、絹のような光沢のある白い世界。」
「君は、そこでどんな学びを…?」
「そうね…自分と向き合ったり、時には私やハーニーのように命を落とした天使を導いたりしてるの。とても静かな世界よ。」
「その世界に君の他に天使は?」
「他に天使はいるはずだけど…会う事はないわ。私1人よ。」
「君1人だなんて…寂しすぎる…」
ラフィは、悲しげに眉根を寄せブランカを見つめた。
「ラフィ…私は寂しくなんてないわ。#白練__しろねり_#の世界からは、他のたくさんの世界が見られるの。天使の国も地球も、他の世界や惑星もね。だから、私はいつもラフィや他の天使達に会えるの。とても静かで心穏やかな世界よ。私にとって、#白練__しろねり_#の世界は学びの場所でもあり、癒しの場所でもあるのよ。」
ブランカは、ラフィの頬にソッと手を当てた。
不思議な事に彼は、触れる事ができなかったブランカの手の温かさを感じていた。
「実はね…正直言うと悩んだの…光となって、あなたの側にいる事も考えた。でも…あえて私は#白練__しろねり_#の世界に身を置く道を選んだ。」
「それは…一体どうして?」
ラフィの瞳は、疑問と戸惑いを映し揺れている。
「私が光となり側にいる事で、あなたはずっと自分を責め続け苦しむかもしれない…と考えたから。でも…私が離れても、あなたはずっと苦しんでいたわ。ラフィ…もう、自分を責める事はやめて。私は天使長となった時に決心したの。何があっても天使の国を守り抜こう…と。でも、守りきれなかった。私がガーリオンに倒された後、あなたは天使の国を守り抜いてくれたのよ。ラフィ…天使の国を守ってくれてありがとう。この言葉をずっと伝えたかったの…」
ラフィはフーッと深く溜め息を吐くと、ニコッと笑った。
「全く…君は相変わらずだね。いつも自分の事より僕や他の天使達の事を考えている。本当に君には敵わない…僕は、そんな君を愛していたし、今も変わらず愛している。」
「ラフィ…」
ブランカは一瞬瞳を切なげに揺らし、ジッとラフィを見つめた。
「私も…あなたを愛していたし、今も愛しているわ…あなたの笑顔が大好きよ。」
2人は暫く見つめ合いフッと微笑み合った。
そしてブランカは、ラフィが抱き抱えているハーニーを見た。
「さぁ、ハーニー…あなたは、どちらを選ぶのかしら?光となりシャイニーの側にいるか…それとも#白練__しろねり_#の世界で学ぶか…」
ブランカが、ラフィの腕の中のハーニーを見つめると、突然彼女の体が輝き始め、少しずつ光が強くなっていった。
そして一際激しく光を放つと、その体は見る見る間に小さい光の球体となりフワフワと宙に浮いた。
「ハーニーは、シャイニーの側にいる道を選んだのね。」
ブランカは、小さな光の姿に変わったハーニーにニッコリと笑い掛けた。
「はい。私はシャイニーの成長を見届けたい…そう思っています。」
小さなハーニーはフルフルと揺れながら答えた。
「ハーニー…僕のせいで…本当にごめんね…」
俯いたシャイニーの声は涙声で震えていた。
「シャイニー、あなたのせいじゃないわ。私があなたを守りたいと思ったのよ。サビィ様やラフィ様に止められたのにね。」
ハーニーは、シャイニーの周りをフワフワと飛びながら優しく言った。
「でも…ハーニーは、もうハープを弾けないんだよ…ハープは弓矢になっちゃったし…」
シャイニーは弓矢をギュッと握り締めた。
「その事なら大丈夫よ。ちょっと見ていて。」
ハーニーは宙に舞い上がると、ゆっくりユラユラと揺れ始めた。
すると、その動きに合わせるようにハープの音色が聞こえてきた。
とても温かで優しく、希望と勇気が溢れ出てくる不思議な音色だった。
「ハーニー…何だか音色が変わった気がするよ。元気になる…というより心の底から希望や勇気が溢れ出てくる感じ…」
「ありがとう、シャイニー。ね、だから私は大丈夫よ。これからもあなたの側にいるわ。」
ハーニーは、シャイニーの周りをクルクルと回っている。
「ハーニー…」
シャイニーは、グッと手を握り締めブランカを見た。
「ブランカさん…ハーニーを元の姿に戻す事はできませんか?」
「残念だけど…ハーニーを元の姿に戻す事はできないの。ただ…彼なら知っているかも…」
「彼…?ハーニーを戻せるかもしれない天使がいるんですか?」
シャイニーは身を乗り出し、ブランカの次の言葉を待った。
「私が命を落とした時に現れた天使なの。彼は、死と再生を司る天使だと言っていたわ。私は彼に聞かれたの。光となり天使の国に戻るか、#白練__しろねり_#の世界で学ぶか…」
「その天使には、どうしたら会えますか?」
「ごめんなさい…それは、私にも分からないの。彼がハーニーを元の姿に戻せるかも分からない。天使が命を落とした時の選択肢は2つしかないから…でも、彼が何かを知っている可能性はあるわ。シャイニー、強い願いや思いは必ず叶うの。決して諦めず努力を重ねる事も大切よ。」
「そっか…」
シャイニーは、ブランカの話しを反芻し考えた。
(その天使に会えたとしてもハーニーを元の姿に戻す事はできないかもしれないんだ…でも、可能性は0ではないみたい…)
「シャイニー、私はこのままで平気よ。」
ハーニーは、考え込むシャイニーを励ますように目の前でピョンピョンと跳ねて見せた。
「彼の名前はリュシエル。彼と会ったのは、その時が最初で最後。私は、彼に命を落とした天使に道を示すように頼まれたの。彼は、これから別の役目があると言っていたわ。」
ブランカは、その時の記憶を辿るように少し遠くを見つめながら言った。
「分かりました。リュシエルさんを探してみます。もしかしたら、ハーニーを元の姿に戻せるかもしれませんから…」
「そうね…シャイニー、諦めず希望を持ち続けるのよ。」
ブランカは、優しい笑顔でシャイニーの頭をソッと撫でた。
「さぁ、私はそろそろ戻らないといけないわ。シャイニー、他に私に聞きたい事はあるかしら?」
「もう一つだけ聞きたい事があります。琴ちゃんに、亡くなったお父さんとお母さんを会わせてあげる事はできますか?」
シャイニーは、琴に気付かれないように小声でブランカに聞いた。
目の端で琴を見ると、ポカンと口を開けキョロキョロとラフィやブランカ、光になったハーニーを見ている。
(琴ちゃん、ビックリしている…急に他の天使が現れたし、目の前でハーニーが光になったから驚くのも仕方ないよね…)
ブランカは、首を傾げ少し考えるとシャイニーに優しい笑顔を見せた。
「そうね…直接会わせる事はできないけど…」
ブランカは前置きをすると、シャイニーの耳元に唇を寄せ囁いた。
シャイニーは彼女の言葉に頷くと笑顔を見せた。
「ブランカさん、分かりました。ありがとうございます。」
ブランカもニッコリと笑うと、ラフィに目を向けた。
「ラフィ…天使の国をお願い。サビィと一緒に守って…それから、あなたは何でも1人で背負い込みすぎるわ。自分で全てを解決しようとする…もっと周りを見て。サビィもシャイニーも、あなたに頼ってほしいと思っているの。」
「分かったよ。ブランカ…確かに僕は自責の念から、何もかも自分で解決しようとしていたのかもしれないよ。ブランカ…天使の国は僕達に任せて。サビィと一緒に守っていくよ。それに、成長したシャイニーは頼もしい補佐になってくれるだろうしね。」
ラフィは、シャイニーにウィンクをして見せた。
「え!ラフィ先生の補佐ですか?僕に務まるでしょうか…?」
「シャイニー、君はこの修業で随分と成長したんだ。イガレスとの対峙は予想外だったけどね。自分の体を良く見てごらん。」
「自分の体…?」
シャイニーは自分の手を見ると、ひとまわり大きくなっている事に気付いた。
「あれ?手が大きくなってる…」
そして足を見ると、いつの間にか長く伸びている。
「え!どうして?」
ラフィはクスクス笑いながら指をパチンと鳴らすと、大きな姿見が現れた。
「これで、しっかり見てごらん。」
シャイニーが恐る恐る姿見を覗くと、15歳程の美しい少年の天使が映っていた。
手足はスラリと伸び雪のように白く、髪は緩やかなカーブを描き肩まで伸びていた。
美しい金色の髪は光が当たるとキラキラと虹色に輝き、背中に生えた純白の翼はふたまわりほど大きくなっていた。
そして、翼も光が当たると虹色に輝いた。
イガレスとの対峙で負った怪我も綺麗に治っていた。
「これが、僕…?怪我も治ってる…あれ?声も違う?」
シャイニーの声は少し低くなり、凛々しくもあり澄んだものへと変わっていた。
「そうだよ、シャイニー。君は、この修業で大きく成長したんだ。怪我も成長と共に完治したようだね。」
成長を喜ぶラフィの瞳には、美しい少年天使シャイニーが映っていた。
「シャイニー、良く頑張ったわね。これから、ラフィやサビィと共に天使の国を守ってね。」
ブランカは、目を細め眩しそうにシャイニーを見つめた。
「ラフィ…私…もう行かなくちゃ…これで本当にさよならになるわ…」
「ブランカ…」
「ラフィ…私を愛してくれてありがとう…そして…ずっとあなたを苦しめてしまってごめんなさい…」
「ブランカ…君は悪くない。」
ブランカは左右に首を振ると、切なげにラフィを見つめた。
「ブランカ…君はいつも自分の事より、周りの事ばかり考えていたね。それは、今も変わってなかった…僕は、そんな君だからこそ愛したんだ。僕は今…とても幸せだよ。だって、こうしてまた君に会えたから… 」
ラフィは優しく微笑んだ。
その瞳は、もう悲しみに彩られていなかった。
ブランカは強く頷くと空高く舞い上がり、ラフィとシャイニーに大きく手を振りながら、上へ上へと飛んでいった。
ブランカの姿がどんどん小さくなり、やがて見えなくなった。
「ブランカ…さよなら…」
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