天使の国のシャイニー

悠月かな(ゆづきかな)

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親友との出会い

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……コン、コン、コン……

小さな白い翼が描かれている扉をノックすると、大きな瞳と大きな口が印象深い天使が現れた。

「あら、ハーニー…その子なのね…?」

その天使は目配せしながらハーニーとシャイニーを交互に見た。

「エイミー、そうなのよ。くれぐれもお願いね。」
「任せて!ハーニー」

エイミーが優しく手を伸ばすと、シャイニーはハーニーにしがみついた。

「やっぱり、ぼく…怖い…」

エイミーに背を向けたシャイニーの瞳には不安の色が彩られている。

「驚いた…この子もう話すのね。それに、あなたにこんなにも懐いてるわ。」

エイミーは、信じられないというように首を左右に振りながら、大きな瞳を更に見開いた。

「そうなのよ。私も驚いたわ。生まれてすぐに話し始めたの。私から離れるのが寂しいみたいで…」

シャイニーとハーニーを代わる代わる見ていたエイミーは深く頷いた。

「大丈夫よ。すぐに慣れるわ。生まれてすぐに話したり、ハープ奏者から離れたがらない子は初めてだけど…」

エイミーはウィンクしながら、ハーニーの腕の中で背を向けているシャイニーをソッと抱き上げた。

「とても可愛らしくて綺麗な子ね…この子の名前は?」
「シャイニーよ。翼と髪が虹色に輝いているから。」
「まぁ…素敵な名前ね…シャイニー、私はエイミーよ。あなたがこれから暮らす "夢見の部屋" の世話係よ。よろしくね。」

エイミーは、シャイニーにニッコリと笑い掛けた。

「よろしく…エイミー…」

シャイニーは、不安そうに小さな声で呟いた。

「ハーニー大丈夫よ。心配しないで。ライル様から話しは聞いてるわ。この子の様子はあなたに報告するし、いつでも会いに来てね。シャイニーもあなたに会いに行くと思うしね。」

心配そうなハーニーを気遣うように、エイミーは優しく言った。

「ありがとう、エイミー。それじゃ…シャイニー、後でまた来るわね。」

ハーニーが優しくシャイニーの頭を撫でると、その瞳には涙が浮かんでいた。

「それじゃ、シャイニーを預かるわね。」

エイミーは、シャイニーを抱いたまま部屋の中に入って行った。
パタンと扉が閉まると、シンとした静けさが広がっ
た。

「さてと…仕事に戻らなくちゃ…」

静けさに耐えられなくなったハーニーは、自分を励ますように呟くと、誕生の部屋へと戻って行った。



「ずっと扉を見て泣いているのよ…」

エイミーは、もう1人の世話係のルイーズに溜息混じりに言った。

「あらあら、シャイニーが真珠に埋れてしまいそうよ。」

シャイニーは扉を見つめシクシクと泣いていた。
涙が床に落ちる度に真珠に変わり、山のようになっていた。

……ツンツン……

ハーニーの名前を呟きながら涙を流すシャイニーの背中を誰かがつついた。
シャイニーが振り向くと、炎のように赤い髪をした同じ年くらいの男の子の天使が立っていた。
その子は、雲で作られた粘土を持っていた。

「ねぇ、見て…フレームが…」

ルイーズが指差す方にエイミーが目を向けると、フレームと呼ばれる赤い髪の男の子は、シャイニーの目の前で粘土で何かを作り始めた。
フレームは器用に手先を動かし、あっという間にペガサスを作った。
フッと息を吹きかけると、ペガサスは2、3回首を振りヒヒーンと鳴いた。

「わぁ…」

泣いていたシャイニーの顔がパーッと明るくなった。
シャイニーがペガサスにそっと手を差し出すと、その手にゆっくりと乗りスリスリと頭を擦り付けてきた。

……パンッ!……

フレームが手を叩くとペガサスは翼を広げ飛び立ち、シャイニーの頭の上をクルクルと飛んだ。

「すご~い!」

シャイニーはパチパチと拍手をしながら、目を輝かせ叫んだ。

……パンッ!……

フレームがもう一度、手を叩くとペガサスはゆっくりとシャイニーの手に降り立った。
そして、再び息を吹き掛けると動きが止まり、粘土のペガサスに戻った。
驚いたシャイニーがフレームを見ると、彼はニカっと笑った。

「俺、フレーム。よろしくな。そのペガサスあげるから、もう泣くなよ。」
「ありがとう。ぼくはシャイニー。君は凄い事が出来るんだね。」

キラキラとした瞳でフレームを見つめると、彼は照れ臭そうに笑いながら頭を掻いた。
 
「ヘヘッ。これくらい簡単さ。あっちで一緒に遊ぼうぜ。」
「うん!」

この2人のやり取りを見ていたエイミーとルイーズは、信じられないといった面持ちで、お互いの顔を見合わせた。

「ねぇ…今の見た?」
「ええ…見たわ。本当に驚いた…フレームに、あんな事が出来るなんて…しかも、昨日生まれたばかりよ…いつの間にか話せるようになってるし…」
「と…とにかく、シャイニーは大丈夫そうね。私、ハーニーに報告してくるわ。」

エイミーは、深呼吸をして気持ちを落ち着かせると、誕生の部屋に向かったのだった。


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