君は僕だけの

アラレ

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14時25分

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あの伊央だ、って思いつつ



私の知ってる彼との違いに違和感を覚える







「おいで、結希」


穏やかに、ただひたすらに、優しく微笑む





大人になったということだろうか


その笑顔の裏に何かを秘めているように感じて、少し戸惑う





「…おいしい」


彼が入れてくれたそれを一口飲む


その熱が体を温め、ガンガンと痛む頭を少し癒す


それと同時にどこかなつかしいような気持ちがあふれる

高校以来の相手が目の前にいるからか

その人の入れたコーヒーが久しぶりだからか







「結希?…」


自分でもよく分からずに零れた涙に、目に見えて動揺する彼を見て、夢見心地だった頭が一瞬で覚めたのを感じた






「あ、ごめ…」


いやいや、私は何を呑気にコーヒーなんて飲んでるの!


図々しいにも程があるでしょ!






荷物を持って彼に声をかける





本当に、会えてよかった


少し名残惜しいほど






不意に腕を掴まれて、彼に向き直る




「伊央…?」




「…家、どこ?車で送っていくから」






この人に家を教えることは一瞬も躊躇わなかった

ただ、そこまでしてもらうのは申し訳ないと思った





でも、その瞬間に思い出した





私、家無いんだった…





そのまま告げてしまい、困らせたかと思ったが、

彼は一瞬何かを考えるような顔をしたあと、少しだけ嬉しそうに微笑んだ







「…?」

それは何の顔なのか、よく分からない






「じゃあ、ここにいてよ」



駄々をこねるかのように、お願い、と付け加えられた、その言葉の真意が掴めないでいると、 


「いつまで居ても大丈夫だから」


どうして、そこまで

私なんかに




「いやいや!それは申し訳ないなさすぎ…いっ」

咄嗟にそう返したのと同時に頭痛がぶり返し、激しく痛む




「結希、大丈夫?今日は横になってた方がいいよ」


そう言って促されるまま布団に横になった





こんな年になって、これほど人に迷惑をかけることになるなんて


「ほんとにごめん…」


恥ずかしすぎる






「全然。何かあったら言ってね」



彼が部屋を出ていったあと、なんとなく部屋を見渡す


シンプルだけど、少し女の子仕様にも見える



彼にも彼の生活があるんだ

邪魔しちゃいけない

早く出ないと





でも…





家がないことと同時に、いろいろ思い出した



自分に何も無いこと








そんな姿を彼に見せてしまったことが悔しい



その優しさに甘えてしまっている自分が情けない







また溢れてきた涙を隠すようにと、閉められたドアに背を向け、声を殺した




私は、どこで間違えた?















空が暗がり始めた頃、ふと目が覚めて、また涙が溢れた



一度彼が来て、晩ご飯を進めたが、食べる気になれず、首だけで返事をした






















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