314 / 346
第20章~転生王子と後期授業
8巻発売日記念 特別編 ハニーベアとお礼
しおりを挟む
ある日の放課後。俺はカイルとコクヨウ、ヒスイとランドウと一緒に、ステアの南の森を訪れた。
この森には、ハニーベアが棲んでいる。
ハニーベアにもらったマームはちみつのおかげで、商学の販売が大好評だったので、そのお礼にやって来たのだ。
巣が見えてくると、はちみつを食べているハニーベアの姿があった。
相変わらず、その姿は小熊のぬいぐるみみたいに可愛い。
すると、はちみつに目がないランドウが、ハニーベア目がけて嬉しそうに走り出した。
【わぁい!俺にもはっちみつくれーっ!】
「あ、ランドウちょっと!」
慌てた俺の横をカイルとコクヨウが駆け抜け、素早い動きでランドウを押さえつける。
「その突撃癖は直らないのか」
カイルが呆れた口調で言い、コクヨウは鼻を鳴らす。
【我より先にはちみつを食そうなど、百年早いわ】
【あとちょっとだったのにぃ】
ジタバタするランドウを、ヒスイが困り顔で見下ろしてクスクスと笑う。
【ランドウったら。毎回コクヨウたちに阻止されるのに、全然懲りませんのね】
【次は成功させる!】
押さえつけられた状態で、地面をタンタンと前足で叩く。
「うーん。突撃訪問でなければ、そのチャレンジ精神は大いに褒めたいんだけどな」
俺はカイルからランドウを受け取って、体の土を払う。
ハニーベアはそんな俺たちを見て、体を揺らして笑った。
【ふふふ。相変わらず君たちは賑やかだねぇ。それにしても……、今日ってはちみつを取りに来る日だったっけ?もう足りなくなっちゃったの?】
小首を傾げて尋ねられた俺は、首をゆるく振った。
「違うよ。今日は商学に使うはちみつを貰いに来たんじゃないんだ。君のおかげで商学が大成功だったから、そのお礼に来たんだよ」
そう説明すると、ハニーベアは目をパチクリとさせる。
【お礼?お礼はもらってるよ。来るたびに、巣の周りをお掃除してもらってるもの】
確かに夏になって鬱蒼とし始めた巣の周りを整えてあげ、過ごしやすいようにしてあげてはいた。
「でも、美味しいマームはちみつの対価としては、全然足りない気がするんだ」
ハニーベアのブレンドするマームはちみつは、最高級品だ。草むしり程度では、お返しとして申し訳ない。
「ヒスイ、お願い」
俺が合図すると、ヒスイは頷いて蔦を操る。蔦はクネクネと生き物のように動き、それが止まると一つの籠が編み上がった。
俺は肩掛けバッグから、クッションを取り出し、その籠に取り付ける。
【これなぁに?】
「君の寝床だよ」
ハニーベアは巣穴の中に、植物のふわふわした穂を敷いて寝床にする。だが、穂はすぐへたってしまうので、定期的に交換する必要があった。
さらに、雪の降る季節にはその植物から穂が取れなくなってしまうので、春までぺしゃんこの寝床で寝なくてはならないそうだ。
「汚れにくくて丈夫な繊維を編んでクッションを作ったから、土で汚れても払えばいいよ」
俺が微笑んで地面に籠を置くと、ハニーベアはさっそくそこに寝転んで目を煌めかせる。
【ふわふわだ!すごーい】
ゴロゴロと寝返りを打って、寝心地を存分に楽しむと、勢いをつけてムクッと起き上がった。
【本当にありがとう!こんなにいい物もらっていいのかなぁ】
前足を口に当てて、ハニーベアは唸る。
「君のはちみつの対価としては、全然足りないくらいだよ」
俺がそう言っても、ハニーベアはまだ唸ったままだ。
だがふと何かを思いついたのか、嬉しそうな顔で俺たちを見上げた。
【そうだ!籠のお礼にはちみつ持って行ってよ】
名案だとばかりに、巣の近くにおいてあったはちみつの容器を掲げる。
「えぇ!?いやいや、これはお礼なんだから、お礼のお礼はいらないよ。足りないくらいだって言ったでしょ。貰っちゃったんじゃ、物々交換になっちゃう」
「フィル様の言う通りだ。気を遣わずに受け取ってくれ」
俺とカイルはそう言ったが、ハニーベアはそれでも俺たちにはちみつ容器を渡そうとする。
【くれるというのだから、遠慮なくもらえばいい。お礼という気持ちなら尚更な】
【そうだ。遠慮したら失礼だぞ】
コクヨウとランドウは、真面目な口調で頷く。
尻尾が揺れている時点で、その内心はバレバレなんだけど……。
コクヨウもランドウも、マームはちみつ好きだもんな。
こういう時だけ意見が合うんだから、困ったものだ。
【僕ももらってくれた方が嬉しいよ】
ハニーベアにも強くそう言われ、俺は躊躇いながらも受け取ることにした。
「じゃ、これのお礼を持って、また遊びに来るね」
俺が微笑むと、ハニーベアは嬉しそうに大きく頷いた。
【待ってるね!】
この森には、ハニーベアが棲んでいる。
ハニーベアにもらったマームはちみつのおかげで、商学の販売が大好評だったので、そのお礼にやって来たのだ。
巣が見えてくると、はちみつを食べているハニーベアの姿があった。
相変わらず、その姿は小熊のぬいぐるみみたいに可愛い。
すると、はちみつに目がないランドウが、ハニーベア目がけて嬉しそうに走り出した。
【わぁい!俺にもはっちみつくれーっ!】
「あ、ランドウちょっと!」
慌てた俺の横をカイルとコクヨウが駆け抜け、素早い動きでランドウを押さえつける。
「その突撃癖は直らないのか」
カイルが呆れた口調で言い、コクヨウは鼻を鳴らす。
【我より先にはちみつを食そうなど、百年早いわ】
【あとちょっとだったのにぃ】
ジタバタするランドウを、ヒスイが困り顔で見下ろしてクスクスと笑う。
【ランドウったら。毎回コクヨウたちに阻止されるのに、全然懲りませんのね】
【次は成功させる!】
押さえつけられた状態で、地面をタンタンと前足で叩く。
「うーん。突撃訪問でなければ、そのチャレンジ精神は大いに褒めたいんだけどな」
俺はカイルからランドウを受け取って、体の土を払う。
ハニーベアはそんな俺たちを見て、体を揺らして笑った。
【ふふふ。相変わらず君たちは賑やかだねぇ。それにしても……、今日ってはちみつを取りに来る日だったっけ?もう足りなくなっちゃったの?】
小首を傾げて尋ねられた俺は、首をゆるく振った。
「違うよ。今日は商学に使うはちみつを貰いに来たんじゃないんだ。君のおかげで商学が大成功だったから、そのお礼に来たんだよ」
そう説明すると、ハニーベアは目をパチクリとさせる。
【お礼?お礼はもらってるよ。来るたびに、巣の周りをお掃除してもらってるもの】
確かに夏になって鬱蒼とし始めた巣の周りを整えてあげ、過ごしやすいようにしてあげてはいた。
「でも、美味しいマームはちみつの対価としては、全然足りない気がするんだ」
ハニーベアのブレンドするマームはちみつは、最高級品だ。草むしり程度では、お返しとして申し訳ない。
「ヒスイ、お願い」
俺が合図すると、ヒスイは頷いて蔦を操る。蔦はクネクネと生き物のように動き、それが止まると一つの籠が編み上がった。
俺は肩掛けバッグから、クッションを取り出し、その籠に取り付ける。
【これなぁに?】
「君の寝床だよ」
ハニーベアは巣穴の中に、植物のふわふわした穂を敷いて寝床にする。だが、穂はすぐへたってしまうので、定期的に交換する必要があった。
さらに、雪の降る季節にはその植物から穂が取れなくなってしまうので、春までぺしゃんこの寝床で寝なくてはならないそうだ。
「汚れにくくて丈夫な繊維を編んでクッションを作ったから、土で汚れても払えばいいよ」
俺が微笑んで地面に籠を置くと、ハニーベアはさっそくそこに寝転んで目を煌めかせる。
【ふわふわだ!すごーい】
ゴロゴロと寝返りを打って、寝心地を存分に楽しむと、勢いをつけてムクッと起き上がった。
【本当にありがとう!こんなにいい物もらっていいのかなぁ】
前足を口に当てて、ハニーベアは唸る。
「君のはちみつの対価としては、全然足りないくらいだよ」
俺がそう言っても、ハニーベアはまだ唸ったままだ。
だがふと何かを思いついたのか、嬉しそうな顔で俺たちを見上げた。
【そうだ!籠のお礼にはちみつ持って行ってよ】
名案だとばかりに、巣の近くにおいてあったはちみつの容器を掲げる。
「えぇ!?いやいや、これはお礼なんだから、お礼のお礼はいらないよ。足りないくらいだって言ったでしょ。貰っちゃったんじゃ、物々交換になっちゃう」
「フィル様の言う通りだ。気を遣わずに受け取ってくれ」
俺とカイルはそう言ったが、ハニーベアはそれでも俺たちにはちみつ容器を渡そうとする。
【くれるというのだから、遠慮なくもらえばいい。お礼という気持ちなら尚更な】
【そうだ。遠慮したら失礼だぞ】
コクヨウとランドウは、真面目な口調で頷く。
尻尾が揺れている時点で、その内心はバレバレなんだけど……。
コクヨウもランドウも、マームはちみつ好きだもんな。
こういう時だけ意見が合うんだから、困ったものだ。
【僕ももらってくれた方が嬉しいよ】
ハニーベアにも強くそう言われ、俺は躊躇いながらも受け取ることにした。
「じゃ、これのお礼を持って、また遊びに来るね」
俺が微笑むと、ハニーベアは嬉しそうに大きく頷いた。
【待ってるね!】
176
お気に入りに追加
29,385
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
あなた方はよく「平民のくせに」とおっしゃいますが…誰がいつ平民だと言ったのですか?
水姫
ファンタジー
頭の足りない王子とその婚約者はよく「これだから平民は…」「平民のくせに…」とおっしゃられるのですが…
私が平民だとどこで知ったのですか?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉
陣ノ内猫子
ファンタジー
神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。
お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。
チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO!
ーーーーーーーーー
これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。
ご都合主義、あるかもしれません。
一話一話が短いです。
週一回を目標に投稿したと思います。
面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。
誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。
感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。