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2巻
2-1
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高校に入学したての十六歳の春。俺――小日向蒼真の非日常は、父親の海外赴任により両親が渡米し、俺一人日本に取り残されたことから始まった。
一人暮らしを許されなかった俺は、今は亡き母方の祖母の古くからの知り合いである結月清人という小説家の下で、居候生活をすることになった。
人見知りの激しい性格ゆえ不安でしょうがなかったが、会ってみれば結月さんはとても優しい人だった。しかし、ホッとしたのもつかの間、俺は引っ越し先の屋敷で一匹の小鬼と出会うことになる。
結月邸内の庭には『あやかし蔵』と呼ばれる建物があった。その蔵の扉が人間界とあやかしの世界をつなぐ出入り口になっていて、なんと結月さんはその扉を守る管理人だったのだ。
それをきっかけに、俺は結月さんから真実を知らされた。
俺は生来、妖怪を見ることの出来る能力と、妖怪に好かれ引き寄せる能力を持っていたこと。俺と同じく妖怪が見えた祖母の希望で、幼少の頃にその力を封印したこと。その封印の後に、妖怪と過ごした幼少時の記憶を失くしたことを……。
再度力を封印することも考えたが、記憶に支障をきたす可能性があるため断念し、俺は結月さんの下であやかし達との付き合い方を学ぶことになった。
そうして始まった新生活は、家でも学校でも妖怪尽くしだ。
屋敷内には猫又が棲んでいるし、あやかし蔵を通って河童の兄弟や烏小天狗などの妖怪達が訪れる。さらに最近知ったばかりだが、結月さんの正体は九尾の狐という大妖怪だった。
またそんな結月さんが理事長を務めている俺の高校にも、雪女の血を引く幼馴染の兵藤紗雪や、鬼神の半妖の貴島慧がいた。全ては把握していないが、先生や生徒の中にも妖怪や半妖の人達がいるらしい。
今まで平凡に暮らし、これからもそうだろうと思っていた俺にとって、妖怪達との生活は驚きに満ちたものだった。
可愛い妖怪や気のいい妖怪も多いから楽しいし、この生活自体に不満はない。
だが、結月さんが、妖怪に好かれる俺を管理人向きだと判断しているあたりが気にかかっている。ばあちゃんの家の古井戸もあやかしの出入り口になっていて、ばあちゃんがそこの管理人をしていたから、というのもあるかもしれない。
居候生活が無事に終わるのか、今からちょっと心配だなぁ。
九重高校から結月邸への帰り道、俺はいつになく足取りが軽かった。
散々な結果に終わった中間テストに比べ、期末テストの点数が思いのほか良かったからだ。
それも、紗雪や慧のおかげだろう。覚えの悪い俺に根気強く教えてくれ、教科ごとにテスト対策も立ててくれた。自分達の勉強もあっただろうに、本当にありがたい。
ただ、その勉強会にちゃっかりと加わっていた早瀬智樹が、俺より点数が良かったのは悔しかった。
智樹は中学の頃からの俺の友人だ。妖怪とは無縁の一般人で、クラスは違うが今でも仲良くしている。大事な友達の一人だが、俺のための勉強会なのに智樹に良い点を取られては、俺の立つ瀬がない。
お礼と言えば、結月さんにも言わなきゃな。テスト期間中は家事を免除してもらったし、昔のことも色々話してくれた。その殆どは妖怪にまつわる話でテストに関係はなかったけれど、歴史や偉人に興味を持つのには大変役立った。
長い年月を生きてきた妖狐だけあって話題は豊富で面白かったし、結月さんが忙しくない時にまた聞いてみようかな。
そんなことを考えていると、制服の胸ポケットからこそりと小鬼の火焔が顔を出した。火焔は俺と式神の契約をした妖怪で、いつも俺を守ってくれる存在だ。
期待のこもった顔で、俺をじっと見上げている。
テスト結果がわかるまで、火焔や河童の河太達との遊びは控えていた。
「わかってるって。家に帰ったら遊んであげるからさ」
俺が苦笑して言うと、火焔は興奮が抑えきれないのかポケットの中で屈伸する。相当嬉しいらしい。
かく言う俺も、これからのことを考えると楽しみだ。何せもうすぐ夏休みが始まる。
レポート等の宿題はあるが、智樹の発案で、慧の家に集まって夏休み前半に片付けてしまおうという話が出ていた。
河太と池で泳ぐ約束もしているし、今年の夏はなかなか楽しそうだ。
鼻歌交じりで結月邸に入り、その足で真っ直ぐ居間へ向かう。
「ただいま帰りました」
そう声をかけて居間の障子を開けると、結月さんと猫又の朝霧がこちらに顔を向けた。
「おや、蒼真。随分ご機嫌そうだねぇ」
朝霧は二本の尻尾を揺らし、結月さんは微笑む。
「お帰り。その表情からすると、結果は良かったみたいだね」
俺は向かい側に正座をして、深く頭を下げた。
「結月さんや紗雪や慧の協力のおかげで、今回は全教科平均点より上でした。ありがとうございます。テスト期間中に免除していただいた分、より一層家事を頑張ります!」
そう力強く言った時、自分の隣からふっと笑う声が聞こえた。誰もいないはずなのに……と横を見ると、着物姿の五十代の男性が胡座をかいて腕組みしている。
「え……」
だ、誰っ!? 入って来た時には、結月さんと朝霧しかいなかったよな。俺の後から部屋に入ったとしても、隣に座られたら流石に気付くはずだ。
俺は目を瞬かせ、隣の男性をマジマジと見る。
その人は白髪交じりの無造作ヘアで、矢絣の着物を緩く着崩していた。無精髭が妙に色気のある、ダンディな人だ。彼は口角を上げ、結月さんに視線を向ける。
「健気でいい子だな、結月。今時、珍しいくらいの純粋さじゃないか」
「蒼真君はいい子だよ。それより、急に出てきて蒼真君を驚かさないでくれ」
結月さんがやや呆れ気味に言い、その人はようやく固まったままの俺に気が付く。
「おや、驚かせてしまったか。いやいや、すまん。俺は陽鷺だ。よろしくな」
にっこりと微笑む陽鷺さんに、俺は慌てて頭を下げた。
「小日向蒼真って言います。俺こそ、いらっしゃったことに気が付かなくて……」
結月さんは眉を下げ、俺に向かって微笑む。
「蒼真君が気付かなかったのも無理はないよ。陽鷺はぬらりひょんだからね」
「……ぬらり……ひょん? ぬらりひょんって、あの?」
俺は目を丸くして、隣でくつろぐ陽鷺さんを見つめる。
最近、あやかし関連の書籍を読んでいるので、妖怪ぬらりひょんのことは知っている。
捉えどころがなく、どこからともなく家の中に入って、自分の家のようにふるまう妖怪だとか。
なるほど。この人がぬらりひょんなら、突然現れたことにも納得出来る。出来るのだが、この見た目からはとてもそうだとは思えなかった。何せ本に書いてあったぬらりひょんは、タコのように頭の大きいおじいさんの姿だったからだ。
陽鷺さんは、どちらかと言えばお洒落なちょい悪オヤジといった風体である。俺の知っている姿とは大分違った。
本当にこの人がぬらりひょん?
「何だ。俺の見た目が、思っていたのと違って驚いたか?」
疑わしげな視線に気付いたのか、陽鷺さんは髭をなぞって言った。
「……はい。書物にあった姿と大分違ったので」
俺が正直に答えると、陽鷺さんはニヤリと笑う。
「書物に書いてあることが正しいとは限らんさ。現に一部の人間には妖怪の総大将なんぞと思われているが、実質はそんな大層なものではなくてな。あやかしどもの相談に乗ったり、仲裁ばかりさせられている損な役回りだ」
肩を竦める陽鷺さんに、俺は相槌を打つ。
「でも、相談されるってことは、頼りにされているってことですよね?」
そうであれば、やはり妖怪達にとって陽鷺さんは凄い人なのだと思う。
すると陽鷺さんは少し驚いた顔をして、それから艶やかに微笑んだ。
「本当に素直でいい子だな。結月が可愛がるのもわかる」
結月さんは俺と陽鷺さんの前にお茶を置いて、静かな声で尋ねる。
「それで、今日は何の用で来たんだい?」
「ん? 暇だったから、この子を見に来たんだよ」
陽鷺さんは軽い口調でそう言って、出されたお茶を啜る。俺は驚いて目を瞬かせた。
「俺を? 何でですか?」
「お前さんが妖怪を引き寄せる霊力持ちで、結月が目をかけている子だからさ。俺を含め、妖怪達は皆お前さんのことが気になっている」
妖怪が……俺のことを……?
「妖怪達に注目されているんですか?」
俺が自分を指さして尋ねると、陽鷺さんは愉快そうな顔で頷いた。
「そう。だから、気を付けた方がいい。俺以外にも、気になって見に来る妖怪がいるかもしれんぞ」
予言めいたその言葉に、俺の顔が強張る。陽鷺さんが言うと、本当に起こりそうだ。
「陽鷺。蒼真君をあまり怖がらせるな」
結月さんに軽く睨まれ、陽鷺さんはくすくすと笑って俺の頭を撫でる。
「お前さん、随分大事にされてるんだなぁ。だが結月、子供ってぇのはな、危険から遠ざけて大事に守るだけじゃ駄目だぜ。自衛本能が鈍っちまう」
そう言って、陽鷺さんは少し真面目な顔で俺を見据えた。
「いいか。その素直さはお前さんの長所だが、妖怪の中には狡い奴や人間を困らせることを生きがいにしている奴もいる。良い妖怪ばかりでないことを知った方が良い。また犬神みたいなのに襲われたら嫌だろう?」
少し前、結月さんの留守中に邸内の結界を破って犬神が入り、俺が襲われるという事件があった。すんでのところで結月さんに助けてもらったが、間に合わなかったらきっと俺は命を落としていたに違いない。
人生で最も恐怖し、自分の無力さを感じた出来事だ。
結月さんは陽鷺さんを見つめ、声のトーンを落として言う。
「犬神が蒼真君を襲ったのは、瘴気が原因だよ。瘴気を取り込まなければ、凶暴化することも襲うこともなかっただろう」
瘴気とは、妖怪の憎悪や負の感情が凝り固まった念のようなもののことで、時折人間界へと噴き出す。その瘴気を取り込むと、妖怪や人間は凶暴化してしまうのだという。
俺を襲った犬神は、生来真面目な性格だった。しかし、心の奥底にある人間への恨みを瘴気によって増幅させられ、妖怪と人間の架け橋となり得る俺を襲って来たのだ。
「だがな、数百年に一度の周期で噴き出していた瘴気が、最近あちこちで漏れている。また同じ事態にならないという保証はない。俺はこの子に、ちゃんと自分を守る術を教えた方が良いと思うね。この小鬼程度の守護でなく」
陽鷺さんはからかうように、俺の肩に乗っていた火焔を指でつついた。つつかれた勢いで火焔が肩から転げ落ちたので、俺は咄嗟に両手で受け止める。
手の平に転がった火焔は、何が起きたのかわからず目をパチクリとさせていたが、眉を寄せて起き上がる。そして、俺の指の間から顔だけを出し、陽鷺さんに向かって「あっかんベー」と舌を出した。
「おや、その可愛い形で、俺に歯向かうのかい?」
楽しげな口調で言う陽鷺さんに、火焔は慌てて俺の手の内に隠れた。
カラカラと笑っている陽鷺さんを見て、結月さんは少し眉を顰める。
「陽鷺の危惧は、私も充分わかっているよ。蒼真君には、これから身を守る術を教えていくつもりだ。ちょうど夏休みもあるしね。少しずつ修業させようと思っている」
「え……夏休みに修業?」
初めて聞いた話だったので、思わず聞き返す。
俺の楽しい夏休み計画に、修業の二文字は組み込まれていなかった。
「蒼真。遊びたい気持ちもわかるけど、夏休みが終わるまでにはちゃんと自分の身くらい守れるようにおなりよ。それに、あんたが修業すれば式神である火焔も強くなる。一石二鳥ってもんさ」
朝霧にしっかり釘を刺されて、俺は肩をすぼめる。
犬神襲撃の際、朝霧は身を挺して俺を守ってくれた。その忠告はとても重い。
落胆しつつ頷くと、結月さんは穏やかな口調で慰める。
「修業と言っても、蒼真君はもともと霊力があるし、そこまで大変ではないよ。日課として少しずつやればいい程度だから、そんなに心配しないで」
そんな結月さんに、陽鷺さんは腕組みしてしみじみと呟いた。
「いやぁ、それにしても、あの結月が随分優しくなったなぁ」
〝あの〟ってどういうことだろう。結月さんは誰に対しても温和で優しいが……?
「……陽鷺、そろそろ帰ったらどうだい?」
結月さんはにっこり微笑み、廊下を指さした。
「来たばかりだろう。もう少しこの子と話をさせてくれてもいいじゃないか。なぁ、蒼真も俺に聞きたい話があるだろう?」
「聞きたいことですか? ……えっと、結月さんと知り合ってどのくらいなんですか?」
誰に対しても親切な結月さんだが、陽鷺さんへの対応は砕けたものだ。
俺の質問に、陽鷺さんは天井を見上げて少し首を捻った。
「そうだなぁ。六百年か七百年か……? まぁ、付き合いが長い方かもな」
六百年と七百年では百年も差があるが、長い時を生きているとそれも些末なことなのだろうか。どちらにしても俺には遥か昔のことすぎて、想像も出来ない。
「出会った時の結月は溢れる妖力を抑えもしなかったから、小者の妖怪が恐れて近寄れないほどだったな」
「え、そうなんですか?」
俺の知る限り、小鬼や河童など、結月さんを尊敬して慕っている小さな妖怪達は多い。
では、今はその強い妖力を抑えているということか。
「陽鷺、昔の話はもういいだろう」
結月さんが話を切り上げようとしたが、陽鷺さんは聞こえない素振りで手を叩く。
「ああ! そういや、昔の結月はひどく無愛想だったよなぁ。俺でさえ、はじめは話しかけるのに躊躇したもんだ」
当時のことを思い出したのか、陽鷺さんは可笑しそうに肩を震わせる。それから慣れた仕草で、帯に挿してあった革のケースから、煙管と刻み煙草を取り出した。だが煙草を詰める前に、結月さんが低い声で言う。
「陽鷺、屋敷内は禁煙だ」
結月さんの制止に、陽鷺さんはピタリと動きを止めた。
「は? 禁煙? 前までそんなこと言わなかっただろう」
楽しげな顔から一転、眉を顰める陽鷺さんに、結月さんは穏やかな笑みを浮かべた。
「少し前からそうなったんだよ。蒼真君は成長期だからね。出来れば有害な煙を吸わせたくはないんだ」
「……仕返しか?」
「まさか。ただ、ここに出入りするなら守ってもらわないとね」
口元を引きつらせる陽鷺さんに対して、結月さんは悠然と微笑んだままだ。
やり取りを聞いていた朝霧は、陽鷺さんの顔を見て「くくく」と笑った。
「陽鷺の旦那、諦めなよ。この屋敷の中は、結月の結界によって支配されている。いくらアンタだって、敵いっこないよ」
陽鷺さんは舌打ちをして、煙草の入っていない煙管を咥え立ち上がった。
「今日はこの辺で帰る。だけど、また来るからな」
そして俺が瞬きをした間に、陽鷺さんの姿はなくなっていた。
「消えた」
俺が驚くと、朝霧が欠伸をして言う。
「消えたんじゃない、気配を消したのさ。気付かぬ間にいて、気付かぬ間にいなくなる。それが、ぬらりひょんなんだよ」
陽鷺さん。ひょうひょうとして捉えどころのない、不思議な妖怪だったな。
陽鷺さんの訪問から数日経った土曜日。俺は裏屋敷にいた。
結月邸は表屋敷と裏屋敷の二つに分かれていて、それを渡り廊下がつないでいる。俺が普段生活する所は表屋敷、あやかし蔵があり妖怪達に開放しているのが裏屋敷だ。
そんな裏屋敷の庭にゴザを敷き、俺はその上に胡坐をかいて瞑想していた。
強い霊力があっても、それを上手く解放出来なければ自分を守るための術も使えない。そんなわけで、まずはじめに霊力の解放を習得しようとしているのだ。
しかし、教えてくれると言っていた結月さんは、今ここにはいない。小説の締切を忘れ、担当編集者に見張られながら部屋で缶詰になっている。
終わったら来るそうなので、それまで慧や紗雪、朝霧や河太と河次郎に付き合ってもらい、瞑想による霊力の解放を行っていた。
俺は片目を開けて、目の前にいる皆の顔を窺いつつ尋ねる。
「俺の霊力に何か異変ある?」
河次郎は困り顔で視線を落とし、慧と紗雪、朝霧と河太は大きく首を横に振った。
「いいや」
「ないわね」
「ないね」
「全然ないな!」
畳み掛けるように言われ、俺は後ろに引っくり返ってゴザに寝転んだ。
胸ポケットから出て来た火焔が、心配そうに俺を見つめる。俺のため息が、火焔の髪を揺らした。
「駄目だ。結月さんは簡単だって言ってたのに、全然出来ない……」
一時間くらいずっと瞑想しているが、一向に霊力が解放される気配がない。
すると、朝霧が寝転んだ俺の額をポンポンと叩いた。
「弱音吐くんじゃないよ。まだ始めたばかりだろう。それに、結月は簡単だなんて言ってなかったよ。それほど大変じゃないって言ったんだ」
「似たようなものじゃないの?」
猫の肉球は気持ちいいなぁと思いつつ尋ねると、朝霧はやれやれと首を振る。
「全然意味が違う。蒼真には修業の第一段階が必要ないから、その分大変ではないってことを結月は言っていたんだよ」
「修業の第一段階?」
「霊力を高める修業のことよ。蒼真君のように生まれつき霊力の高い人もいるんだけど、普通の人はもともと霊力そのものが少ないから」
紗雪は零れ落ちる髪を耳にかけ、寝転んだままの俺を微笑みながら見下ろす。背景に木漏れ日を置いたその姿に見惚れていたが、紗雪の隣に慧の強面が並んで現実に引き戻された。平常時の顔でも、慧に見下ろされると妙に威圧感がある。
慧は俺の手を引いて、上半身を起き上がらせてくれた。
一人暮らしを許されなかった俺は、今は亡き母方の祖母の古くからの知り合いである結月清人という小説家の下で、居候生活をすることになった。
人見知りの激しい性格ゆえ不安でしょうがなかったが、会ってみれば結月さんはとても優しい人だった。しかし、ホッとしたのもつかの間、俺は引っ越し先の屋敷で一匹の小鬼と出会うことになる。
結月邸内の庭には『あやかし蔵』と呼ばれる建物があった。その蔵の扉が人間界とあやかしの世界をつなぐ出入り口になっていて、なんと結月さんはその扉を守る管理人だったのだ。
それをきっかけに、俺は結月さんから真実を知らされた。
俺は生来、妖怪を見ることの出来る能力と、妖怪に好かれ引き寄せる能力を持っていたこと。俺と同じく妖怪が見えた祖母の希望で、幼少の頃にその力を封印したこと。その封印の後に、妖怪と過ごした幼少時の記憶を失くしたことを……。
再度力を封印することも考えたが、記憶に支障をきたす可能性があるため断念し、俺は結月さんの下であやかし達との付き合い方を学ぶことになった。
そうして始まった新生活は、家でも学校でも妖怪尽くしだ。
屋敷内には猫又が棲んでいるし、あやかし蔵を通って河童の兄弟や烏小天狗などの妖怪達が訪れる。さらに最近知ったばかりだが、結月さんの正体は九尾の狐という大妖怪だった。
またそんな結月さんが理事長を務めている俺の高校にも、雪女の血を引く幼馴染の兵藤紗雪や、鬼神の半妖の貴島慧がいた。全ては把握していないが、先生や生徒の中にも妖怪や半妖の人達がいるらしい。
今まで平凡に暮らし、これからもそうだろうと思っていた俺にとって、妖怪達との生活は驚きに満ちたものだった。
可愛い妖怪や気のいい妖怪も多いから楽しいし、この生活自体に不満はない。
だが、結月さんが、妖怪に好かれる俺を管理人向きだと判断しているあたりが気にかかっている。ばあちゃんの家の古井戸もあやかしの出入り口になっていて、ばあちゃんがそこの管理人をしていたから、というのもあるかもしれない。
居候生活が無事に終わるのか、今からちょっと心配だなぁ。
九重高校から結月邸への帰り道、俺はいつになく足取りが軽かった。
散々な結果に終わった中間テストに比べ、期末テストの点数が思いのほか良かったからだ。
それも、紗雪や慧のおかげだろう。覚えの悪い俺に根気強く教えてくれ、教科ごとにテスト対策も立ててくれた。自分達の勉強もあっただろうに、本当にありがたい。
ただ、その勉強会にちゃっかりと加わっていた早瀬智樹が、俺より点数が良かったのは悔しかった。
智樹は中学の頃からの俺の友人だ。妖怪とは無縁の一般人で、クラスは違うが今でも仲良くしている。大事な友達の一人だが、俺のための勉強会なのに智樹に良い点を取られては、俺の立つ瀬がない。
お礼と言えば、結月さんにも言わなきゃな。テスト期間中は家事を免除してもらったし、昔のことも色々話してくれた。その殆どは妖怪にまつわる話でテストに関係はなかったけれど、歴史や偉人に興味を持つのには大変役立った。
長い年月を生きてきた妖狐だけあって話題は豊富で面白かったし、結月さんが忙しくない時にまた聞いてみようかな。
そんなことを考えていると、制服の胸ポケットからこそりと小鬼の火焔が顔を出した。火焔は俺と式神の契約をした妖怪で、いつも俺を守ってくれる存在だ。
期待のこもった顔で、俺をじっと見上げている。
テスト結果がわかるまで、火焔や河童の河太達との遊びは控えていた。
「わかってるって。家に帰ったら遊んであげるからさ」
俺が苦笑して言うと、火焔は興奮が抑えきれないのかポケットの中で屈伸する。相当嬉しいらしい。
かく言う俺も、これからのことを考えると楽しみだ。何せもうすぐ夏休みが始まる。
レポート等の宿題はあるが、智樹の発案で、慧の家に集まって夏休み前半に片付けてしまおうという話が出ていた。
河太と池で泳ぐ約束もしているし、今年の夏はなかなか楽しそうだ。
鼻歌交じりで結月邸に入り、その足で真っ直ぐ居間へ向かう。
「ただいま帰りました」
そう声をかけて居間の障子を開けると、結月さんと猫又の朝霧がこちらに顔を向けた。
「おや、蒼真。随分ご機嫌そうだねぇ」
朝霧は二本の尻尾を揺らし、結月さんは微笑む。
「お帰り。その表情からすると、結果は良かったみたいだね」
俺は向かい側に正座をして、深く頭を下げた。
「結月さんや紗雪や慧の協力のおかげで、今回は全教科平均点より上でした。ありがとうございます。テスト期間中に免除していただいた分、より一層家事を頑張ります!」
そう力強く言った時、自分の隣からふっと笑う声が聞こえた。誰もいないはずなのに……と横を見ると、着物姿の五十代の男性が胡座をかいて腕組みしている。
「え……」
だ、誰っ!? 入って来た時には、結月さんと朝霧しかいなかったよな。俺の後から部屋に入ったとしても、隣に座られたら流石に気付くはずだ。
俺は目を瞬かせ、隣の男性をマジマジと見る。
その人は白髪交じりの無造作ヘアで、矢絣の着物を緩く着崩していた。無精髭が妙に色気のある、ダンディな人だ。彼は口角を上げ、結月さんに視線を向ける。
「健気でいい子だな、結月。今時、珍しいくらいの純粋さじゃないか」
「蒼真君はいい子だよ。それより、急に出てきて蒼真君を驚かさないでくれ」
結月さんがやや呆れ気味に言い、その人はようやく固まったままの俺に気が付く。
「おや、驚かせてしまったか。いやいや、すまん。俺は陽鷺だ。よろしくな」
にっこりと微笑む陽鷺さんに、俺は慌てて頭を下げた。
「小日向蒼真って言います。俺こそ、いらっしゃったことに気が付かなくて……」
結月さんは眉を下げ、俺に向かって微笑む。
「蒼真君が気付かなかったのも無理はないよ。陽鷺はぬらりひょんだからね」
「……ぬらり……ひょん? ぬらりひょんって、あの?」
俺は目を丸くして、隣でくつろぐ陽鷺さんを見つめる。
最近、あやかし関連の書籍を読んでいるので、妖怪ぬらりひょんのことは知っている。
捉えどころがなく、どこからともなく家の中に入って、自分の家のようにふるまう妖怪だとか。
なるほど。この人がぬらりひょんなら、突然現れたことにも納得出来る。出来るのだが、この見た目からはとてもそうだとは思えなかった。何せ本に書いてあったぬらりひょんは、タコのように頭の大きいおじいさんの姿だったからだ。
陽鷺さんは、どちらかと言えばお洒落なちょい悪オヤジといった風体である。俺の知っている姿とは大分違った。
本当にこの人がぬらりひょん?
「何だ。俺の見た目が、思っていたのと違って驚いたか?」
疑わしげな視線に気付いたのか、陽鷺さんは髭をなぞって言った。
「……はい。書物にあった姿と大分違ったので」
俺が正直に答えると、陽鷺さんはニヤリと笑う。
「書物に書いてあることが正しいとは限らんさ。現に一部の人間には妖怪の総大将なんぞと思われているが、実質はそんな大層なものではなくてな。あやかしどもの相談に乗ったり、仲裁ばかりさせられている損な役回りだ」
肩を竦める陽鷺さんに、俺は相槌を打つ。
「でも、相談されるってことは、頼りにされているってことですよね?」
そうであれば、やはり妖怪達にとって陽鷺さんは凄い人なのだと思う。
すると陽鷺さんは少し驚いた顔をして、それから艶やかに微笑んだ。
「本当に素直でいい子だな。結月が可愛がるのもわかる」
結月さんは俺と陽鷺さんの前にお茶を置いて、静かな声で尋ねる。
「それで、今日は何の用で来たんだい?」
「ん? 暇だったから、この子を見に来たんだよ」
陽鷺さんは軽い口調でそう言って、出されたお茶を啜る。俺は驚いて目を瞬かせた。
「俺を? 何でですか?」
「お前さんが妖怪を引き寄せる霊力持ちで、結月が目をかけている子だからさ。俺を含め、妖怪達は皆お前さんのことが気になっている」
妖怪が……俺のことを……?
「妖怪達に注目されているんですか?」
俺が自分を指さして尋ねると、陽鷺さんは愉快そうな顔で頷いた。
「そう。だから、気を付けた方がいい。俺以外にも、気になって見に来る妖怪がいるかもしれんぞ」
予言めいたその言葉に、俺の顔が強張る。陽鷺さんが言うと、本当に起こりそうだ。
「陽鷺。蒼真君をあまり怖がらせるな」
結月さんに軽く睨まれ、陽鷺さんはくすくすと笑って俺の頭を撫でる。
「お前さん、随分大事にされてるんだなぁ。だが結月、子供ってぇのはな、危険から遠ざけて大事に守るだけじゃ駄目だぜ。自衛本能が鈍っちまう」
そう言って、陽鷺さんは少し真面目な顔で俺を見据えた。
「いいか。その素直さはお前さんの長所だが、妖怪の中には狡い奴や人間を困らせることを生きがいにしている奴もいる。良い妖怪ばかりでないことを知った方が良い。また犬神みたいなのに襲われたら嫌だろう?」
少し前、結月さんの留守中に邸内の結界を破って犬神が入り、俺が襲われるという事件があった。すんでのところで結月さんに助けてもらったが、間に合わなかったらきっと俺は命を落としていたに違いない。
人生で最も恐怖し、自分の無力さを感じた出来事だ。
結月さんは陽鷺さんを見つめ、声のトーンを落として言う。
「犬神が蒼真君を襲ったのは、瘴気が原因だよ。瘴気を取り込まなければ、凶暴化することも襲うこともなかっただろう」
瘴気とは、妖怪の憎悪や負の感情が凝り固まった念のようなもののことで、時折人間界へと噴き出す。その瘴気を取り込むと、妖怪や人間は凶暴化してしまうのだという。
俺を襲った犬神は、生来真面目な性格だった。しかし、心の奥底にある人間への恨みを瘴気によって増幅させられ、妖怪と人間の架け橋となり得る俺を襲って来たのだ。
「だがな、数百年に一度の周期で噴き出していた瘴気が、最近あちこちで漏れている。また同じ事態にならないという保証はない。俺はこの子に、ちゃんと自分を守る術を教えた方が良いと思うね。この小鬼程度の守護でなく」
陽鷺さんはからかうように、俺の肩に乗っていた火焔を指でつついた。つつかれた勢いで火焔が肩から転げ落ちたので、俺は咄嗟に両手で受け止める。
手の平に転がった火焔は、何が起きたのかわからず目をパチクリとさせていたが、眉を寄せて起き上がる。そして、俺の指の間から顔だけを出し、陽鷺さんに向かって「あっかんベー」と舌を出した。
「おや、その可愛い形で、俺に歯向かうのかい?」
楽しげな口調で言う陽鷺さんに、火焔は慌てて俺の手の内に隠れた。
カラカラと笑っている陽鷺さんを見て、結月さんは少し眉を顰める。
「陽鷺の危惧は、私も充分わかっているよ。蒼真君には、これから身を守る術を教えていくつもりだ。ちょうど夏休みもあるしね。少しずつ修業させようと思っている」
「え……夏休みに修業?」
初めて聞いた話だったので、思わず聞き返す。
俺の楽しい夏休み計画に、修業の二文字は組み込まれていなかった。
「蒼真。遊びたい気持ちもわかるけど、夏休みが終わるまでにはちゃんと自分の身くらい守れるようにおなりよ。それに、あんたが修業すれば式神である火焔も強くなる。一石二鳥ってもんさ」
朝霧にしっかり釘を刺されて、俺は肩をすぼめる。
犬神襲撃の際、朝霧は身を挺して俺を守ってくれた。その忠告はとても重い。
落胆しつつ頷くと、結月さんは穏やかな口調で慰める。
「修業と言っても、蒼真君はもともと霊力があるし、そこまで大変ではないよ。日課として少しずつやればいい程度だから、そんなに心配しないで」
そんな結月さんに、陽鷺さんは腕組みしてしみじみと呟いた。
「いやぁ、それにしても、あの結月が随分優しくなったなぁ」
〝あの〟ってどういうことだろう。結月さんは誰に対しても温和で優しいが……?
「……陽鷺、そろそろ帰ったらどうだい?」
結月さんはにっこり微笑み、廊下を指さした。
「来たばかりだろう。もう少しこの子と話をさせてくれてもいいじゃないか。なぁ、蒼真も俺に聞きたい話があるだろう?」
「聞きたいことですか? ……えっと、結月さんと知り合ってどのくらいなんですか?」
誰に対しても親切な結月さんだが、陽鷺さんへの対応は砕けたものだ。
俺の質問に、陽鷺さんは天井を見上げて少し首を捻った。
「そうだなぁ。六百年か七百年か……? まぁ、付き合いが長い方かもな」
六百年と七百年では百年も差があるが、長い時を生きているとそれも些末なことなのだろうか。どちらにしても俺には遥か昔のことすぎて、想像も出来ない。
「出会った時の結月は溢れる妖力を抑えもしなかったから、小者の妖怪が恐れて近寄れないほどだったな」
「え、そうなんですか?」
俺の知る限り、小鬼や河童など、結月さんを尊敬して慕っている小さな妖怪達は多い。
では、今はその強い妖力を抑えているということか。
「陽鷺、昔の話はもういいだろう」
結月さんが話を切り上げようとしたが、陽鷺さんは聞こえない素振りで手を叩く。
「ああ! そういや、昔の結月はひどく無愛想だったよなぁ。俺でさえ、はじめは話しかけるのに躊躇したもんだ」
当時のことを思い出したのか、陽鷺さんは可笑しそうに肩を震わせる。それから慣れた仕草で、帯に挿してあった革のケースから、煙管と刻み煙草を取り出した。だが煙草を詰める前に、結月さんが低い声で言う。
「陽鷺、屋敷内は禁煙だ」
結月さんの制止に、陽鷺さんはピタリと動きを止めた。
「は? 禁煙? 前までそんなこと言わなかっただろう」
楽しげな顔から一転、眉を顰める陽鷺さんに、結月さんは穏やかな笑みを浮かべた。
「少し前からそうなったんだよ。蒼真君は成長期だからね。出来れば有害な煙を吸わせたくはないんだ」
「……仕返しか?」
「まさか。ただ、ここに出入りするなら守ってもらわないとね」
口元を引きつらせる陽鷺さんに対して、結月さんは悠然と微笑んだままだ。
やり取りを聞いていた朝霧は、陽鷺さんの顔を見て「くくく」と笑った。
「陽鷺の旦那、諦めなよ。この屋敷の中は、結月の結界によって支配されている。いくらアンタだって、敵いっこないよ」
陽鷺さんは舌打ちをして、煙草の入っていない煙管を咥え立ち上がった。
「今日はこの辺で帰る。だけど、また来るからな」
そして俺が瞬きをした間に、陽鷺さんの姿はなくなっていた。
「消えた」
俺が驚くと、朝霧が欠伸をして言う。
「消えたんじゃない、気配を消したのさ。気付かぬ間にいて、気付かぬ間にいなくなる。それが、ぬらりひょんなんだよ」
陽鷺さん。ひょうひょうとして捉えどころのない、不思議な妖怪だったな。
陽鷺さんの訪問から数日経った土曜日。俺は裏屋敷にいた。
結月邸は表屋敷と裏屋敷の二つに分かれていて、それを渡り廊下がつないでいる。俺が普段生活する所は表屋敷、あやかし蔵があり妖怪達に開放しているのが裏屋敷だ。
そんな裏屋敷の庭にゴザを敷き、俺はその上に胡坐をかいて瞑想していた。
強い霊力があっても、それを上手く解放出来なければ自分を守るための術も使えない。そんなわけで、まずはじめに霊力の解放を習得しようとしているのだ。
しかし、教えてくれると言っていた結月さんは、今ここにはいない。小説の締切を忘れ、担当編集者に見張られながら部屋で缶詰になっている。
終わったら来るそうなので、それまで慧や紗雪、朝霧や河太と河次郎に付き合ってもらい、瞑想による霊力の解放を行っていた。
俺は片目を開けて、目の前にいる皆の顔を窺いつつ尋ねる。
「俺の霊力に何か異変ある?」
河次郎は困り顔で視線を落とし、慧と紗雪、朝霧と河太は大きく首を横に振った。
「いいや」
「ないわね」
「ないね」
「全然ないな!」
畳み掛けるように言われ、俺は後ろに引っくり返ってゴザに寝転んだ。
胸ポケットから出て来た火焔が、心配そうに俺を見つめる。俺のため息が、火焔の髪を揺らした。
「駄目だ。結月さんは簡単だって言ってたのに、全然出来ない……」
一時間くらいずっと瞑想しているが、一向に霊力が解放される気配がない。
すると、朝霧が寝転んだ俺の額をポンポンと叩いた。
「弱音吐くんじゃないよ。まだ始めたばかりだろう。それに、結月は簡単だなんて言ってなかったよ。それほど大変じゃないって言ったんだ」
「似たようなものじゃないの?」
猫の肉球は気持ちいいなぁと思いつつ尋ねると、朝霧はやれやれと首を振る。
「全然意味が違う。蒼真には修業の第一段階が必要ないから、その分大変ではないってことを結月は言っていたんだよ」
「修業の第一段階?」
「霊力を高める修業のことよ。蒼真君のように生まれつき霊力の高い人もいるんだけど、普通の人はもともと霊力そのものが少ないから」
紗雪は零れ落ちる髪を耳にかけ、寝転んだままの俺を微笑みながら見下ろす。背景に木漏れ日を置いたその姿に見惚れていたが、紗雪の隣に慧の強面が並んで現実に引き戻された。平常時の顔でも、慧に見下ろされると妙に威圧感がある。
慧は俺の手を引いて、上半身を起き上がらせてくれた。
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