63 / 114
五章◆日常◆
63
しおりを挟む
琴葉の想いとは裏腹に、雄大は申し訳なさそうに呟く。
「俺が早瀬設計事務所の副社長だから恨んでる?」
「え?」
「琴葉のご両親が亡くなった事故に関係しているから。だから…?」
思いもよらない言葉に、琴葉は一瞬言葉を失った。まさかそのことを雄大が知っているとは思わなかったからだ。
それに、琴葉が雄大を恨んでいるだなんてとんでもないことだ。
琴葉は思い切り首を横に振った。
「違いますよ。」
「じゃあ…。」
「早瀬さん、うちのパン屋どう思います?」
質問の意味がわからなくて、雄大は首を傾げる。
「どういうこと?」
「えっと、見た目とか印象とか。」
minamiの見た目や印象。
雄大は店内を改めてぐるりと見回した。
「暖かみがあってお客さんのことを考えて作られているデザインかな。段差がないとか、出っ張ったところもないし。店内の視覚効果も広く見えるようになっていて考えられているよね。それに、中の動線も無駄がなくて素晴らしいと思う。」
雄大が率直な意見を述べると、琴葉は満面の笑みになって飛び跳ねんばかりの勢いで言う。
「ですよね!私もそう思います。このお店、早瀬設計事務所さんがデザインしたんですよ。」
「え?だけどうちは個人物件は扱ってないんだけど。」
「綾菜さんもそう仰ってましたけど、そうなんですか?でも書類を確認したので間違いないですよ。すごいご縁ですよね。」
早瀬設計事務所が個人物件を取り扱った話など、雄大は聞いたことがない。
にわかに信じられないが、琴葉を疑うこともできなくて、雄大は困惑した。
琴葉はそんな雄大の手を優しく取ると諭すように言う。
「私は両親が残してくれたこのパン屋をこれからも守っていきたいんです。だから、大好きな人には迷惑をかけたくないんですよ。」
それは琴葉の精一杯な想いだった。
「俺が早瀬設計事務所の副社長だから恨んでる?」
「え?」
「琴葉のご両親が亡くなった事故に関係しているから。だから…?」
思いもよらない言葉に、琴葉は一瞬言葉を失った。まさかそのことを雄大が知っているとは思わなかったからだ。
それに、琴葉が雄大を恨んでいるだなんてとんでもないことだ。
琴葉は思い切り首を横に振った。
「違いますよ。」
「じゃあ…。」
「早瀬さん、うちのパン屋どう思います?」
質問の意味がわからなくて、雄大は首を傾げる。
「どういうこと?」
「えっと、見た目とか印象とか。」
minamiの見た目や印象。
雄大は店内を改めてぐるりと見回した。
「暖かみがあってお客さんのことを考えて作られているデザインかな。段差がないとか、出っ張ったところもないし。店内の視覚効果も広く見えるようになっていて考えられているよね。それに、中の動線も無駄がなくて素晴らしいと思う。」
雄大が率直な意見を述べると、琴葉は満面の笑みになって飛び跳ねんばかりの勢いで言う。
「ですよね!私もそう思います。このお店、早瀬設計事務所さんがデザインしたんですよ。」
「え?だけどうちは個人物件は扱ってないんだけど。」
「綾菜さんもそう仰ってましたけど、そうなんですか?でも書類を確認したので間違いないですよ。すごいご縁ですよね。」
早瀬設計事務所が個人物件を取り扱った話など、雄大は聞いたことがない。
にわかに信じられないが、琴葉を疑うこともできなくて、雄大は困惑した。
琴葉はそんな雄大の手を優しく取ると諭すように言う。
「私は両親が残してくれたこのパン屋をこれからも守っていきたいんです。だから、大好きな人には迷惑をかけたくないんですよ。」
それは琴葉の精一杯な想いだった。
0
お気に入りに追加
342
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ずっと君のこと ──妻の不倫
家紋武範
大衆娯楽
鷹也は妻の彩を愛していた。彼女と一人娘を守るために休日すら出勤して働いた。
余りにも働き過ぎたために会社より長期休暇をもらえることになり、久しぶりの家族団らんを味わおうとするが、そこは非常に味気ないものとなっていた。
しかし、奮起して彩や娘の鈴の歓心を買い、ようやくもとの居場所を確保したと思った束の間。
医師からの検査の結果が「性感染症」。
鷹也には全く身に覚えがなかった。
※1話は約1000文字と少なめです。
※111話、約10万文字で完結します。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる