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四章◆それは誇り◆
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心は寂しくて仕方ないのに、それでも朝は来て一日が始まる。
「琴葉ちゃんおはよう。今日もいただくわね。主人が好きなのよねぇ。あ、もちろん私も好きよ。」
朝早くから常連のおばあちゃんが来て、ニコニコしながらそんな事をしゃべりつつ食パンを買っていく。
「おばあちゃん、いつもありがとうございます。」
琴葉もとびきりの笑顔で受け答えする。
子ども連れのママがどれにしようねぇと言いながら、子どもとショーケースを覗きこむ。
「ひーくん、これがいい。」
そう指差したのは長いバゲットだ。
ママは一瞬躊躇ったものの、「シチューに合うわよね」と言いながら子供の希望通りのバゲットを注文した。
レジで商品を渡そうとすると、
「ひーくんが持つの!」
と言って一生懸命に両手を伸ばしてくる。
「持てるかな?」
琴葉がゆっくりとバゲットを渡すと、ひーくんは自分の背丈ほどもありそうな長いバゲットを嬉しそうに抱えた。
そんな日常がすごく贅沢で嬉しい時間だと、琴葉は改めて感じた。
ほら、私は大丈夫。
ちゃんとやっていけるよ。
また一人客が入ってきて、琴葉は入口の方へ向かって笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
上品な足取りで入ってきたのは、雄大の姉である綾菜だった。
「琴葉ちゃんおはよう。今日もいただくわね。主人が好きなのよねぇ。あ、もちろん私も好きよ。」
朝早くから常連のおばあちゃんが来て、ニコニコしながらそんな事をしゃべりつつ食パンを買っていく。
「おばあちゃん、いつもありがとうございます。」
琴葉もとびきりの笑顔で受け答えする。
子ども連れのママがどれにしようねぇと言いながら、子どもとショーケースを覗きこむ。
「ひーくん、これがいい。」
そう指差したのは長いバゲットだ。
ママは一瞬躊躇ったものの、「シチューに合うわよね」と言いながら子供の希望通りのバゲットを注文した。
レジで商品を渡そうとすると、
「ひーくんが持つの!」
と言って一生懸命に両手を伸ばしてくる。
「持てるかな?」
琴葉がゆっくりとバゲットを渡すと、ひーくんは自分の背丈ほどもありそうな長いバゲットを嬉しそうに抱えた。
そんな日常がすごく贅沢で嬉しい時間だと、琴葉は改めて感じた。
ほら、私は大丈夫。
ちゃんとやっていけるよ。
また一人客が入ってきて、琴葉は入口の方へ向かって笑顔を向ける。
「いらっしゃいませ。」
「こんにちは。」
上品な足取りで入ってきたのは、雄大の姉である綾菜だった。
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