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三章◆彼女さん◆
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体を離すと、雄大がいつになく真剣な声色で言う。
「鍵が空いてるなんて不用心だ。危ない。」
「閉め忘れちゃってました。ごめんなさい。」
素直にペコリと頭を下げる琴葉に、雄大はすぐに優しい眼差しになる。
「でもそのおかげで入れたよ。よく考えたら俺の行動は完全に不審者だったな。」
「ほんと、驚きましたよ。」
雄大が照れくさそうに頭を掻くので、琴葉はクスリと笑う。
お互い顔を見合わせてなぜだか可笑しくなってクスクスと笑い合った。
「そうだ、これお土産。」
雄大はポケットから小さな包みを出すと、それを琴葉に手渡す。
首を傾げながら包みを開けると、すずらんがモチーフのベネチアングラスのペンダントだった。
「うわあ、可愛い。」
「お姫様な琴葉にぴったりだろ。」
そう言って優しく笑う雄大に、琴葉は胸が締め付けられる思いがする。
優しくされればされるほど、雄大にとって琴葉は遊びなのではという思いが渦巻いて仕方がない。
「受け取れないです。」
「どうして?」
恐る恐る突き返す琴葉に、雄大は首を傾げる。
またお金の心配でもしているのだろうかと呑気なことを考えていた雄大だが、それはまったく違った。
「こういうものはちゃんと彼女さんにあげてください。私なんかに買ってきちゃダメですよ。」
震えそうになるのを抑えながら琴葉が紡ぐ言葉に、雄大は何事かと身構えた。
「鍵が空いてるなんて不用心だ。危ない。」
「閉め忘れちゃってました。ごめんなさい。」
素直にペコリと頭を下げる琴葉に、雄大はすぐに優しい眼差しになる。
「でもそのおかげで入れたよ。よく考えたら俺の行動は完全に不審者だったな。」
「ほんと、驚きましたよ。」
雄大が照れくさそうに頭を掻くので、琴葉はクスリと笑う。
お互い顔を見合わせてなぜだか可笑しくなってクスクスと笑い合った。
「そうだ、これお土産。」
雄大はポケットから小さな包みを出すと、それを琴葉に手渡す。
首を傾げながら包みを開けると、すずらんがモチーフのベネチアングラスのペンダントだった。
「うわあ、可愛い。」
「お姫様な琴葉にぴったりだろ。」
そう言って優しく笑う雄大に、琴葉は胸が締め付けられる思いがする。
優しくされればされるほど、雄大にとって琴葉は遊びなのではという思いが渦巻いて仕方がない。
「受け取れないです。」
「どうして?」
恐る恐る突き返す琴葉に、雄大は首を傾げる。
またお金の心配でもしているのだろうかと呑気なことを考えていた雄大だが、それはまったく違った。
「こういうものはちゃんと彼女さんにあげてください。私なんかに買ってきちゃダメですよ。」
震えそうになるのを抑えながら琴葉が紡ぐ言葉に、雄大は何事かと身構えた。
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