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二章◆お姫様みたい◆
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そんな日々を繰り返していたある日のこと。
今日もパンを3つ紙袋に詰めながら、琴葉が訊ねた。
「パン屋の私が言うのもなんですが、毎日パンで大丈夫ですか?」
「え?」
「いや、あの、毎日来てもらって何だか申し訳ないです。」
紙袋を手渡しながら、琴葉は首をすくめた。
「迷惑?」
「いえ、全然!むしろ大歓迎なんですが、ちょっと心配になっちゃって。」
雄大の言葉に、琴葉は全力で否定の意味の手を振る。
何だか気まずくなってしまって、琴葉は目を伏せた。
「そういう南部さんはどうなの?売れ残ったパンを食べてるんじゃないの?」
「…食べてますよ?だからたまにはお米も食べたくなります。」
毎日の傾向から調整しながらパンを焼いているが、毎日完売とはいかずどうしても少し売れ残ってしまう。
廃棄なんてもったいなくてできないし、かといってお裾分けするような人もおらず、結局は琴葉自身が食べることになる。
雄大を心配しておきながら、自分もパンばかりたべているのだ。
「そっか、じゃあ今度寿司でも食べに行こうよ。」
雄大の提案に、琴葉はしばし固まった。
一瞬言われた意味がわからなかったのだ。
「えっ!?早瀬さんとですか?」
「俺とじゃ嫌?」
「いえ、そういう意味ではなくて。えっと、何ていうか、男の人と二人でご飯を食べに行く経験がなくてですね、ど、どうしたものかと思いまして。」
語尾がフェイドアウトしそうなくらいゴニョゴニョとなりながら、琴葉は顔を赤らめた。
今日もパンを3つ紙袋に詰めながら、琴葉が訊ねた。
「パン屋の私が言うのもなんですが、毎日パンで大丈夫ですか?」
「え?」
「いや、あの、毎日来てもらって何だか申し訳ないです。」
紙袋を手渡しながら、琴葉は首をすくめた。
「迷惑?」
「いえ、全然!むしろ大歓迎なんですが、ちょっと心配になっちゃって。」
雄大の言葉に、琴葉は全力で否定の意味の手を振る。
何だか気まずくなってしまって、琴葉は目を伏せた。
「そういう南部さんはどうなの?売れ残ったパンを食べてるんじゃないの?」
「…食べてますよ?だからたまにはお米も食べたくなります。」
毎日の傾向から調整しながらパンを焼いているが、毎日完売とはいかずどうしても少し売れ残ってしまう。
廃棄なんてもったいなくてできないし、かといってお裾分けするような人もおらず、結局は琴葉自身が食べることになる。
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「そっか、じゃあ今度寿司でも食べに行こうよ。」
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一瞬言われた意味がわからなかったのだ。
「えっ!?早瀬さんとですか?」
「俺とじゃ嫌?」
「いえ、そういう意味ではなくて。えっと、何ていうか、男の人と二人でご飯を食べに行く経験がなくてですね、ど、どうしたものかと思いまして。」
語尾がフェイドアウトしそうなくらいゴニョゴニョとなりながら、琴葉は顔を赤らめた。
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