上 下
46 / 62
どうしたらいいかわからない

46

しおりを挟む
航太と杏介は同期で、入社当初から仲がいい。お互い自分のことを明け透けに話せるほどに打ち解けている仲だ。

仕事帰りに寄った焼肉屋で、二人はウーロン茶で乾杯をした。お互い車通勤で一旦家に帰るのが面倒だったため、アルコールはなしになった。

「今日は食うぞー!」

「焼肉なんて久しぶりだな。アルコールなしでよかったのか?」

「最近飲み過ぎたから今日は白飯がいい」

そう言って航太は早速大盛り白米の上にハラミをのせて大口で頬張る。脂がじゅわっとまろやかに溶けて、口の中を幸せにした。

「……少しは元気になったか?」

「いや、全然。でも肉食ってるときは元気だ。美味い」

「なんだそれ」

杏介は苦笑しながらも網の上に肉を追加する。脂がしたたって炭火に落ち、ジュッといい音がした。

「杏介はさぁ、例の彼女と上手くいってる?」

「ん? うーん、微妙かも」

「なんだよそれ、上手くいけよ」

「そりゃ上手くいきたいよ。でも自分を好きになってもらうのって難しい」

「……わかりみが深い」

航太は眉間にしわを寄せる。
杏介も曖昧に微笑んだ。

杏介は好きな彼女に告白をしてフラれた。けれどその返事は曖昧で、ズルズルとまるで付き合っているかのような関係が続いている。どうにか口説いてみせようと必死だ。

「航太の悩みは森下さん?」

「告白してフラれた」

「えっ?」

「……ような気がする」

「なんだよ、気がするって。曖昧だな」

「お前にいわれたくねー」

「ぐっ、確かに」

航太ははあっとため息ひとつ、一旦箸を置く。
網の上で焼かれている肉が小さくパチンとはぜた。杏介はそれをトングでひっくり返す。航太は頬杖をつきながらそれをぼんやりとみつめた。

「リカちゃんに告白してさ、その場では返事もらえなかったけどわりといい感じかなって思ってたんだよ。だけど昨日リカちゃん街コンに行くって言うからショックでさー」

「街コンって、合コンのこと?」

「スカート履いてめっっっちゃ可愛かったんだよ」

落ち込んでいたかと思えばデレっと頬が緩む航太に杏介は眉間を押さえながら「ショックなのか惚気なのかどっちだよ」と呆れた笑いをこぼした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

同僚くすぐりマッサージ

セナ
大衆娯楽
これは自分の実体験です

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...