上 下
41 / 62
どうしたらいいかわからない

41

しおりを挟む
「どうかした?」

「あ、ううん。今回は私、やめとこうかな」

「うん、無理に付き合う必要ないもんね」

魚月は無理強いをしない。いつもリカの気持ちを尊重してくれるため、長く友人として付き合っていられるのかもしれない。

「私さ、先輩に告白されてさ……」

「は?!」

魚月は持っていたタブレットを落としそうになり慌てて抱え直す。

「ん?」

「ん?じゃなーい! なんでそういうことをもっと早く言わないのよ」

「え、だって……」

「だってじゃないわよ。もう、そんなことなら街コンなんてキャンセルしたのに」

「いやいや、出会いは大事でしょ? いいご縁があるといいねって魚月も言ってたじゃん」

「そんなご縁よりもリカの話の方が興味あるし。よし、今から飲みに行こう。その話、詳しく聞かせてもらおうか」

「ええー……」

「ほら、行くよ」

魚月も出会いを求めて街コンに参加したはずなのに、リカの思いがけない告白により思考がすべてそちらへ持っていかれた。
ガツガツと男を探すよりも、親友の恋バナのほうが面白くて仕方ないのだ。

「いやー、いつの間にそんな話になってたわけ?」

「まだここ数日の話なのよ」

魚月に引きずられるように居酒屋へ連れ込まれたリカは、ビール片手にフライドポテトをモシャモシャと口に放り込む。

先ほどの街コンでオレンジジュース片手に猫をかぶりながらお喋りしていたのとは違って、ずいぶん気楽なものだ。

「で、先輩って誰?」

「職場の先輩なんだけどね……」

「ちょっと待って。職場の先輩って、上司とは違うの?」

「あ、一応上司に当たる人」

「上司なのに先輩って呼ぶんだ? 根っからの体育会系だねぇ」

「同じ大学出身で……って、もしかして変?」

「ううん、いいと思うよ。てか、同じ大学? 私も知ってる人?」

「知らないと思う。入学と卒業がちょうど入れ違いなの。ジムでバイトしてたときに同じ大学って判明して、それで先輩って呼んでる」

「そんな前からの知り合い?」

「一応……」

考えてみれば大学一年のときにバイト先で航太と出会い、すでに六年が経とうとしている。
ずっと先輩としてしか見てこなかったため、今さら別の見方ができないでいる――と、リカは思う。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

やさしい幼馴染は豹変する。

春密まつり
恋愛
マンションの隣の部屋の喘ぎ声に悩まされている紗江。 そのせいで転職1日目なのに眠くてたまらない。 なんとか遅刻せず会社に着いて挨拶を済ませると、なんと昔大好きだった幼馴染と再会した。 けれど、王子様みたいだった彼は昔の彼とは違っていてーー ▼全6話 ▼ムーンライト、pixiv、エブリスタにも投稿しています

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

異常性癖者たちー三人で交わる愛のカタチー

フジトサクラ
恋愛
「あぁぁッ…しゃちょ、おねがっ、まって…」 特注サイズの大きなベッドに四つん這いになった女は、息も絶え絶えに後ろを振り返り、目に涙を浮かべて懇願する。 「ほら、自分ばかり感じていないで、ちゃんと松本のことも気持ちよくしなさい」 凛の泣き顔に己の昂りを感じながらも、律動を少し緩め、凛が先程からしがみついている男への奉仕を命じる。 ーーーーーーーーーーーーーーー バイセクシャルの東條を慕い身をも捧げる松本と凛だが、次第に惹かれあっていく二人。 異常な三角関係だと自覚しつつも、三人で交わる快楽から誰も抜け出すことはできない。 複雑な想いを抱えながらも、それぞれの愛のカタチを築いていく… ーーーーーーーーーーーーーーー 強引で俺様気質の東條立城(38歳) 紳士で優しい松本隼輝(35歳) 天真爛漫で甘えんぼな堂坂凛(27歳) ドSなオトナの男2人にひたすら愛されるエロキュン要素多めです♡

性欲の強すぎるヤクザに捕まった話

古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。 どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。 「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」 「たまには惣菜パンも悪くねぇ」 ……嘘でしょ。 2019/11/4 33話+2話で本編完結 2021/1/15 書籍出版されました 2021/1/22 続き頑張ります 半分くらいR18な話なので予告はしません。 強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。 誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。 当然の事ながら、この話はフィクションです。

【R18】愛人契約

日下奈緒
恋愛
この契約に愛はない はずだった……

処理中です...