そんな恋もありかなって。

あさの紅茶

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五章◆好きな人

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(仕事…仕事…。)

自分にそう言い聞かせる。

「初めまして。三浦杏奈と申します。本日はよろしくお願い致します。」

一息に挨拶をして、意を決して顔を上げる。
と、杏奈は思わず声をあげた。

「え?!」

「初めまして。横山広人と申します。」

穏やかに名前を告げるその人は、先ほど出会ったスーツ姿の広人だ。

「広人さん?あれ?私部屋間違えました?」

焦ってキョロキョロとするが、広人は穏やかに微笑んで言う。

「いいえ、間違えてませんよ。」

「え?何で?」

「杏奈さん、今日のお見合い相手の顔写真とか見てないんですか?」

言われて、杏奈は何も情報を持っていないことに気付く。
お見合いなんてどうでもいいと思っていたし祖母の手前受けざるをえなかっただけなので、何も見てなかった。
そもそも、母親も電話一本寄越しただけだ。

杏奈は隣にいる母をチラリと見るが、さあ何のことかしら?ととぼけたフリをしている。
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