そんな恋もありかなって。

あさの紅茶

文字の大きさ
上 下
41 / 50
四章◆変化

41

しおりを挟む
そんな気持ちで軽く悩みながら過ごした数日後、親からまた電話があった。
親の経営する会社で働いているとはいえ、比較的大きな会社のため社内で会うことはほとんどない。
それに杏奈は家を出て一人暮らしをしているので、用事がなければ電話もしない。

「何?お母さん。」

ぶっきらぼうに電話に出ると、対照的に明るい母の声が耳に響いた。

「あなた、次の日曜空けておきなさいね。いいご縁談話があるそうよ。」

「また?」

「またって、あなたが心配だから言ってるのよ。ダメなら次を探すものでしょう?」

母のトーンは杏奈に有無を言わせず、いつも決定事項を伝えてくる。
杏奈はせめてもの抵抗で大きなため息を落とした。

「今回は先方さんがどうしてもって。」

「はぁ。前回だってそう言ってなかった?」

「そうかしら?とにかく、おばあちゃんのお知り合いだから、ちゃんと行ってきなさい。」

また祖母を言い訳に出す母に杏奈はいい加減嫌気がさすが、かといって杏奈も強く言い返すことができないのが現状だ。

広人に会いたいと思っていただけに、次のお見合い話は杏奈に暗い影を落とした。

(私に次のお見合いの話が出るってことは、広人さんだってそうなのかも。)

そもそも広人とのお見合いは杏奈から断ったのだ。
それ以上、何かあるわけではない。
断られたら次の相手とお見合いをする。
そんなことは当たり前に行われる。
それがお見合いというものだ。

なのに、それを思うと杏奈は急に全身がぞわっとする感覚に陥った。
広人が他の人とお見合いをする。
上手く行けばきっと結婚もするだろう。

(すごく胸がざわつく。)

カバンを開けると、あのとき借りたハンカチが返す機会を失ったまま入っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

処理中です...