24 / 50
二章◆山あり谷あり
24
しおりを挟む
言葉の意味をようやく理解するまで頭が回復すると、今度は突然の羞恥が襲ってくる。
「なっ、そんなの、情けないだけだし!」
「どうしてですか?」
「だって仕事だって上手くいってないし、ぜんぜんダメなんです。私なんて全然ダメ。。。はぁー。」
忘れていたわけではないが、仕事にも行き詰まっていることを思い出し、杏奈は更に肩を落とした。
広人がいくら褒めてくれたって、自分の中では仕事も恋愛もまったく上手くいっていないのだ。
自然と深いため息が出てしまう。
「仕事やめたいんですか?」
広人の問いに、躊躇いもなく首を横に振る。
仕事が上手くいかなくて悩んでいるけれど、それが“辞める”ことに直結するかといわれるとそうではない。
簡単に“辞める”ことは杏奈にはできない。
「私、諦めが悪いんです。何もしないであきらめるのが嫌なんです。何とかしてこの状況を打破できないかなって足掻いてる。…辞めちゃうのが一番楽だと思うけど…たぶんプライドが邪魔をしてるんだと…。」
今までだって困難なことがあってもちゃんと自分の力で切り開いてきた。
それくらいの努力と根性は持ち合わせているつもりだ。
だから今も、出口が見えなくても打開策が何ら見出だせなくても、仕事を辞めることはしていない。
「杏奈さんは頑張りやさんですね。頑張りやさんだから悩んでいるんでしょう?」
広人の優しい声に、杏奈は居たたまれなくて下を向いた。
頑張りやさんだなんて褒められるほど、何かを頑張っているわけではない。
ただ刻々と毎日が過ぎているだけなのだ。
「いつも上手くいくなんてあり得るでしょうか?完璧な人なんていませんからね。人生山あり谷ありですよ。良いこともあれば悪いこともある。例えばそうですね、僕は先日杏奈さんから断られてとてもショックでした。これは僕にとって悪いことです。でも偶然にも今日杏奈さんに会えた。これは良いことです。僕はまた杏奈さんに会いたいと思っていたから。」
未だ顔を上げられずにいる杏奈に、広人のふわりとした優しい声が包み込む。
「ね、山あり谷ありでしょう?仕事も、気負わず肩の力を抜いてやってみたら、案外上手くいくかもしれませんよ。僕も杏奈さんを見習わないといけませんね。」
何となくクスリと笑う気配を感じて、杏奈の心は締め付けられた。
そんな風に励まされたことは初めてだった。
「なっ、そんなの、情けないだけだし!」
「どうしてですか?」
「だって仕事だって上手くいってないし、ぜんぜんダメなんです。私なんて全然ダメ。。。はぁー。」
忘れていたわけではないが、仕事にも行き詰まっていることを思い出し、杏奈は更に肩を落とした。
広人がいくら褒めてくれたって、自分の中では仕事も恋愛もまったく上手くいっていないのだ。
自然と深いため息が出てしまう。
「仕事やめたいんですか?」
広人の問いに、躊躇いもなく首を横に振る。
仕事が上手くいかなくて悩んでいるけれど、それが“辞める”ことに直結するかといわれるとそうではない。
簡単に“辞める”ことは杏奈にはできない。
「私、諦めが悪いんです。何もしないであきらめるのが嫌なんです。何とかしてこの状況を打破できないかなって足掻いてる。…辞めちゃうのが一番楽だと思うけど…たぶんプライドが邪魔をしてるんだと…。」
今までだって困難なことがあってもちゃんと自分の力で切り開いてきた。
それくらいの努力と根性は持ち合わせているつもりだ。
だから今も、出口が見えなくても打開策が何ら見出だせなくても、仕事を辞めることはしていない。
「杏奈さんは頑張りやさんですね。頑張りやさんだから悩んでいるんでしょう?」
広人の優しい声に、杏奈は居たたまれなくて下を向いた。
頑張りやさんだなんて褒められるほど、何かを頑張っているわけではない。
ただ刻々と毎日が過ぎているだけなのだ。
「いつも上手くいくなんてあり得るでしょうか?完璧な人なんていませんからね。人生山あり谷ありですよ。良いこともあれば悪いこともある。例えばそうですね、僕は先日杏奈さんから断られてとてもショックでした。これは僕にとって悪いことです。でも偶然にも今日杏奈さんに会えた。これは良いことです。僕はまた杏奈さんに会いたいと思っていたから。」
未だ顔を上げられずにいる杏奈に、広人のふわりとした優しい声が包み込む。
「ね、山あり谷ありでしょう?仕事も、気負わず肩の力を抜いてやってみたら、案外上手くいくかもしれませんよ。僕も杏奈さんを見習わないといけませんね。」
何となくクスリと笑う気配を感じて、杏奈の心は締め付けられた。
そんな風に励まされたことは初めてだった。
1
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説


家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

好きな人がいるならちゃんと言ってよ
しがと
恋愛
高校1年生から好きだった彼に毎日のようにアピールして、2年の夏にようやく交際を始めることができた。それなのに、彼は私ではない女性が好きみたいで……。 彼目線と彼女目線の両方で話が進みます。*全4話
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
じれったい夜の残像
ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、
ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。
そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。
再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。
再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、
美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

【完】秋の夜長に見る恋の夢
Bu-cha
恋愛
製薬会社の社長の一人娘、小町には婚約者がいる。11月8日の立冬の日に入籍をする。
好きではない人と結婚なんてしない。
秋は夜長というくらいだから、恋の夢を見よう・・・。
花が戦場で戦う。この時代の会社という戦場、そして婚約者との恋の戦場を。利き手でもない左手1本になっても。
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高17位
他サイトにて溺愛彼氏特集で掲載
関連物語
『この夏、人生で初めて海にいく』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高32位
『女神達が愛した弟』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高66位
『女社長紅葉(32)の雷は稲妻を光らせる』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 44位
『初めてのベッドの上で珈琲を』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高 12位
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高9位
『拳に愛を込めて』
ベリーズカフェさんにて恋愛ランキング最高29位
『死神にウェディングドレスを』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高11位
『お兄ちゃんは私を甘く戴く』
エブリスタさんにて恋愛トレンドランキング最高40位

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる