8 / 50
一章◆お見合い
8
しおりを挟む
カジュアルなフレンチレストランで、前回のお見合い同様向い合わせで座る。
カジュアルというだけあり、ナイフとフォーク以外に箸も置いてあった。
「では僕はお箸でいただきます。ナイフとフォークはどうも苦手でして。」
「私もお箸の方がいいです。」
二人はお互いにこりと微笑み合うと、前菜から始まるコース料理にしばし舌鼓を打った。
お肉が柔らかくて美味しいだとか、付け合わせのこの野菜は何て言う名前だろうなど、終始当たり障りのない会話だったが、広人の柔らかい雰囲気のせいだろうか、全く苦ではない。
むしろ心がほだされるようだった。
広人が何度もメガネに手を当てるので、もしかして顔のサイズと合っていないのではと思い、杏奈は提案してみる。
「広人さん、そのメガネ変えてみたらどうですか?」
「え?」
「なんかもっとスタイリッシュで細いフレームの方が似合うような気がする…。」
メガネの形を想像しながら杏奈が広人の顔をまじまじと見ると、広人はおもむろにメガネを外した。
分厚いレンズに隠れていた素顔を見て、反射的にドキリとする。
「そういえばこのメガネ、何年も作り直していませんでした。もしよろしければこの後メガネ屋さんへ一緒に行ってもらえないでしょうか?」
「へ?」
「杏奈さんに選んでいてだきたいです。」
メガネを外した状態でにこりと微笑まれ、杏奈の胸は激しく脈打つ。
それはとても素敵な笑顔だった。
「え、ええ。いいですけど。」
自分の気持ちに戸惑いながらも了承をすると、杏奈は残りのデザートを口にした。
何だかとても甘く感じられるデザートだった。
カジュアルというだけあり、ナイフとフォーク以外に箸も置いてあった。
「では僕はお箸でいただきます。ナイフとフォークはどうも苦手でして。」
「私もお箸の方がいいです。」
二人はお互いにこりと微笑み合うと、前菜から始まるコース料理にしばし舌鼓を打った。
お肉が柔らかくて美味しいだとか、付け合わせのこの野菜は何て言う名前だろうなど、終始当たり障りのない会話だったが、広人の柔らかい雰囲気のせいだろうか、全く苦ではない。
むしろ心がほだされるようだった。
広人が何度もメガネに手を当てるので、もしかして顔のサイズと合っていないのではと思い、杏奈は提案してみる。
「広人さん、そのメガネ変えてみたらどうですか?」
「え?」
「なんかもっとスタイリッシュで細いフレームの方が似合うような気がする…。」
メガネの形を想像しながら杏奈が広人の顔をまじまじと見ると、広人はおもむろにメガネを外した。
分厚いレンズに隠れていた素顔を見て、反射的にドキリとする。
「そういえばこのメガネ、何年も作り直していませんでした。もしよろしければこの後メガネ屋さんへ一緒に行ってもらえないでしょうか?」
「へ?」
「杏奈さんに選んでいてだきたいです。」
メガネを外した状態でにこりと微笑まれ、杏奈の胸は激しく脈打つ。
それはとても素敵な笑顔だった。
「え、ええ。いいですけど。」
自分の気持ちに戸惑いながらも了承をすると、杏奈は残りのデザートを口にした。
何だかとても甘く感じられるデザートだった。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…
ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。
しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。
気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…
身代わりお見合い婚~溺愛社長と子作りミッション~
及川 桜
恋愛
親友に頼まれて身代わりでお見合いしたら……
なんと相手は自社の社長!?
末端平社員だったので社長にバレなかったけれど、
なぜか一夜を共に過ごすことに!
いけないとは分かっているのに、どんどん社長に惹かれていって……
私達の世界はタイトル未定。
宝ひかり
恋愛
【はじめに】
病気の症状に関してだけは、自分の実体験を元に書いております。
なので、一概には言えません。
◎その他の物語は、全てフィクションです。
~~~
『喉頭ジストニア(こうとう じすとにあ)』
という、声が出づらい障害を持っている鳰都《にお みやこ》。
病気のせいで大人しく暗くなってしまった都は、大学の学生課の事務員として働く25歳。
一方、クールで感情表現が苦手な、奈古千隼《なこ ちはや》は、都の務める大学に通う、一年生。
*
あるきっかけで出会う二人。
だが、都は人と関わることに引け目を感じ、中々前に進めないでいた。
自分は社会のお荷物だ、家族の厄介者だ、必要のないものだと、ずっとずっと思っていた。
*
「一歩、一歩、前を向いて歩こう。鳰さん、俺と一緒に歩こう」
執筆期間 2018.10.12~2018.12.23
素敵な表紙イラスト ─ しゃもじ様に許可を頂き、お借りしました。
『愛が切なくて』- すれ違うほど哀しくて -❧【タイトル変更しました】各話、タイトルただいま変更中~
設樂理沙
恋愛
砂央里と斎藤、こじれてしまった糸(すれ違い)がほどけていく様子を描いています。
元々の題名は『SHE&HE』でした。大幅加筆修正版を『恋に落ちて-Fall in love-』と
ドキドキしそうな表題にてup。(*^^)v
初回連載期間 2020.10.31~2020.12.13頃
◆都合上、[言う、云う]混合しています。うっかりミスではありません。
ご了承ください。
❧イラストはAI生成画像自作
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
【R18】男嫌いと噂の美人秘書はエリート副社長に一夜から始まる恋に落とされる。
夏琳トウ(明石唯加)
恋愛
真田(さなだ)ホールディングスで専務秘書を務めている香坂 杏珠(こうさか あんじゅ)は凛とした美人で26歳。社内外問わずモテるものの、男に冷たく当たることから『男性嫌いではないか』と噂されている。
しかし、実際は違う。杏珠は自分の理想を妥協することが出来ず、結果的に彼氏いない歴=年齢を貫いている、いわば拗らせ女なのだ。
そんな杏珠はある日社長から副社長として本社に来てもらう甥っ子の専属秘書になってほしいと打診された。
渋々といった風に了承した杏珠。
そして、出逢った男性――丞(たすく)は、まさかまさかで杏珠の好みぴったりの『筋肉男子』だった。
挙句、気が付いたら二人でベッドにいて……。
しかも、過去についてしまった『とある嘘』が原因で、杏珠は危機に陥る。
後継者と名高いエリート副社長×凛とした美人秘書(拗らせ女)の身体から始まる現代ラブ。
▼掲載先→エブリスタ、ベリーズカフェ、アルファポリス(性描写多め版)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる